赤ちゃんの喘息~原因・症状・見分け方

赤ちゃんの気管支は大人より未熟なため、ちょっとした風邪でも「ヒューヒュー」「ゼーゼー」と、喘息のような呼吸音がすることがあります。
しかし多くの場合、このような呼吸音は成長とともに落ち着いてきます。これは、赤ちゃんの気管支や肺が少しずつ太く丈夫になり、呼吸が安定してくるからです。
ただし、何度も同じような呼吸音が出る場合や、アレルギー体質の赤ちゃんでは、喘息の可能性があります。
この記事では、赤ちゃんの喘息についてわかりやすく解説します。また、喘息と似た症状が出る病気も紹介するので、病院に行くタイミングを考える際の参考にしてください。
目次
1.子どもの喘息は年齢により区別される
喘息は、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起こることで、咳や息苦しさなどの症状が出る病気です。
原因は、ダニやカビ、花粉などのアレルギーによるものと、疲労やストレスなどアレルギー以外のものがありますが、子どもの喘息のほとんどはアレルギーが原因です。
喘息という病気の基本的な仕組みは、どの年齢でも同じです。しかし年齢によって、症状の現れ方や診断のしやすさ、そして治療の方法も少しずつ異なります。
したがって、小児気管支喘息治療・管理ガイドラインでは、子どもの喘息のうち、5歳以下を「乳幼児喘息」、6~15歳の学童期の喘息は「小児喘息」として区別しています。
【参考資料】『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023(web版)』日本小児アレルギー学会
https://www.jspaci.jp/journal/asthma2023/
2.喘息とアレルギーの関係
人間の体には、細菌やウイルスなどの異物から身を守る「免疫」という仕組みがあります。
免疫は本来、体に害を及ぼすものだけを攻撃する役割を持っていますが、何らかの原因でこの働きが過剰になることがあります。
その結果、花粉やハウスダスト、食べ物など、体に害のないものにまで反応してしまうことがあります。これを「アレルギー反応」と呼びます。
アレルギー反応が起こると、皮膚のかゆみや湿疹、くしゃみ、鼻水、咳など、さまざまな症状が現れます。
また、アレルギー反応を起こしやすい体質は、親や祖父母などの血縁者から受け継ぐことがあります。
家族に喘息やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーの人がいる場合、赤ちゃんも同じような体質を持つことがあり、症状が出やすいと考えられています。
さらに、アレルギーは遺伝だけではなく、生活環境や日常の習慣も関係します。たとえば、室内のホコリやカビ、ペットの毛などは、アレルギー症状を悪化させる要因になり得ます。
【参考資料】『Allergies』Clevelad Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/8610-allergies
3.赤ちゃんの喘息の主なサイン
大人や年長児の喘息の診断には、呼吸機能検査を行いますが、赤ちゃんには難しい検査なので、症状の出方や家族の体質などをもとに判断します。
目安として、以下のようなことが診断に役立ちます。
<繰り返す「ヒューヒュー」「ゼーゼー」>
このような呼吸音は風邪をきっかけに出ることがありますが、1回だけでは喘息とは限りません。何度も繰り返す場合に注意が必要です。
◆「ヒューヒュー・ゼーゼーという呼吸音・喘鳴(ぜんめい)」とは?>>
<咳や呼吸の様子>
「咳で眠れないことがある」「激しい咳で嘔吐する」「息をすると胸や鎖骨のあたりがへこむ」場合もサインです。
<家族や赤ちゃん自身のアレルギーの体質>
血縁者に喘息やアトピー性皮膚炎、花粉症などがある場合や、赤ちゃん自身に湿疹がある場合、喘息の可能性が高まります。
<食欲や機嫌の変化>
機嫌が悪くて泣き叫ぶことが多かったり、母乳やミルクを飲まなくなるのは、体調不良を示している可能性があります。
赤ちゃんの喘息を疑うには、このように症状の出方や繰り返しの様子を観察することが大切です。
【参考資料】『Asthma in Infants』AAFA.org(Asthma&Allergy Foundation of America)
https://www.aafa.org/asthma-in-infants/
4.乳幼児喘息の診断と治療
診断には、赤ちゃんの咳や呼吸の様子、発作の出方、症状が出る時間帯や頻度などを詳しく医師に伝えることが大切です。
また、家族に喘息やアレルギー体質の人がいるかどうかも診断の参考になります。
診察では、医師が聴診器で胸の音を確認し、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった呼吸音があるかを見ます。
場合によっては、喘息治療用の吸入薬を使って症状が改善するかを確認したり、アレルギーの原因を調べる血液検査や皮膚検査を行うこともあります。
診察の結果、乳幼児喘息だと判断したら、重症度や状況に応じて、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬による薬物療法を行います。赤ちゃんの状態によっては、長期にわたる治療や定期的な通院が必要になることがあります。
通院時に赤ちゃんの咳や呼吸音の出る時間帯、発作の様子、薬の使用状況を記録し、医師に伝えると非常に役立ちます。これにより、症状の変化に応じた適切な治療調整が可能になり、赤ちゃんの安全と健康を守ることにつながります。
5.症状の悪化を防ぐ対策
赤ちゃんの喘息は、風邪やアレルギー、環境の変化などで症状が悪化することがあります。
家庭でできる対策を実行し、発作を防ぎましょう。
<室内の環境を整える>
アレルギーによる喘息では、ダニ対策が重要となります。ダニは布団や布製のソファなどを好むため、これらの寝具や家具を中心に、なるべくこまめに掃除をしましょう。
できれば布製の家具や雑貨は、部屋に置かない方がいいです。ぬいぐるみは処分するか、洗えるタイプのものを選んで月1回は洗濯しましょう。
ペットも飼わない方がいいのですが、すでに飼っている場合は、毛やフケが飛び散らないように、ペットの体を清潔に保ってください。
タバコの煙は赤ちゃんの肺に非常に負担がかかるため、家の中での喫煙は絶対に避けてください。
<風邪や感染症の予防>
風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症は、喘息の症状を悪化させる原因になります。
家族や周囲の人は、手洗いやうがい、予防接種をきちんと行いましょう。また、症状が出ている人との接触を避けることも大切です。
<医師の指示に従った薬の使用>
吸入薬やその他の薬は、医師の指示どおりに使うことが重要です。症状がなくても、予防のために定期的に薬を使う場合があります。
<急な発作への備え>
発作が起きたときにどうするか、家族全員で共有しておくと安心です。吸入薬の使い方や受診のタイミングをあらかじめ確認しておきましょう。
6.乳幼児喘息とよく似た異常
喘息以外にも、赤ちゃんに咳が出て呼吸が苦しくなる場合はあります。参考までに、乳幼児喘息とよく似た症状の病気や異変を紹介します。
6-1.喘息性気管支炎
気管支炎とは、気管や気管支が炎症を起こす病気です。風邪にかかった後に起こることが多く、発熱、咳、鼻水などの症状が現れます。
赤ちゃんが気管支炎にかかると、喘息のような呼吸音が出ることがあります。このような「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音が出る気管支炎を、喘息性気管支炎といいます。
「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音があっても、顔色がよく、水分をしっかりとれているなら自宅で様子をみましょう。呼吸が苦しそうな場合は、病院を受診してください。
6-2.クループ症候群
6歳くらいまでの子どもに多い症状です。発熱やのどの痛みのほか、声がかすれて「ケンケン」という犬が吠えるような音の咳や、オットセイが吠えるような「オウッオウッ」といいう咳が出ることがあります。
また、喘息のような「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音が聞こえることもあります。
このような特徴のある音の咳がしたら、スマホなどで録音しておくと、病院を受診する際に役立ちます。
症状が軽い場合は、なるべく安静にして水分を補給していれば、1~2週間で回復します。しかし、夜間に突然症状が悪化して呼吸困難を起こすこともあるので、そのようなときは、救急で病院を受診してください。
6-3.ピーナッツの誤飲
ピーナッツの誤飲でも、喘息のような咳や呼吸音が出ることがあります。ピーナッツは表面がツルンとしているせいか気道に入りやすく、いったん気道に入るとなかなか吐き出せません。
気道に入ったピーナッツが水分でふやけると、膨らんで大きくなり、呼吸が苦しくなることがあります。また、ピーナッツから出る油分で、肺の組織が炎症を起こすこともあります。
ピーナッツはレントゲンに写りにくいため、誤飲と診断するのは難しいのが困りものです。また、ピーナッツを取り出す処置には全身麻酔が必要なので、子どもの体に大きな負担がかかります。
【参考情報】『お子様と麻酔について』日本小児麻酔学会
https://jspedanes.smoosy.atlas.jp/ja/relation_about_pa
5歳以下の子どもには、ピーナッツのようなナッツ類や、煎り大豆などの豆類は与えないようにしましょう。節分の豆まきの後は、豆が部屋に残らないよう、すぐに掃除をしましょう。
【参考情報】『食品による子どもの窒息・誤嚥(ごえん)事故に注意!』消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_047/
7.おわりに
大人の喘息は、症状が治まってもずっと治療が必要な病気ですが、乳幼児の喘息は治ることが多いです。
しかし、放っておくと小児喘息に移行することもあるので、お子様をよく観察し、心配な症状や気になる症状がある場合は、油断せずに適切な治療を受けてください。
治療の目標は、発作を防ぎ、赤ちゃんがぐっすり眠り、元気に遊び、日常生活に支障を出さない状態を保つことです。
家庭で症状をよく観察し、医師と喘息をコントロールすることで、赤ちゃんが元気に過ごせる毎日を守ることができます。













