小児喘息で入院になる基準は?注意したい症状と入院後の治療について

喘息と診断されたお子さんがいるご家庭では、「発作が起こったらどうすればいい?」「喘息で入院するのはどんなとき?」といった不安や疑問があるのではないでしょうか。
この記事では、乳幼児が喘息で入院する基準や、入院後の治療について解説します。もしものときに備えて、喘息発作の種類や注意すべき症状の見分け方についても知っておきましょう。
目次
1.乳幼児が喘息で入院になる基準
乳幼児の喘息では、年齢によって重症化のしやすさや入院の判断基準が異なります。ここでは、2歳未満と2歳以上に分けて入院の目安を解説します。
1-1.2歳未満
2歳未満の乳児は気道が細く、わずかな炎症でも呼吸状態が悪化しやすいため、比較的早い段階で入院が検討されます。
入院の目安としては、以下のような状態が挙げられます。
・中発作以上の喘息発作がみられる
・呼吸が速い、陥没呼吸(胸がへこむ呼吸)がある
・哺乳量が低下している、水分が十分にとれない
・活気がなく、ぐったりしている
・酸素飽和度(SpO₂)の低下がみられる
乳児では症状の進行が早く、自宅での管理が難しいことも多いため、中等度の発作でも安全を優先して入院となるケースが少なくありません。
1-2.2歳以上
2歳以上になると気道が成長し、ある程度は発作に耐えられるようになります。そのため、軽発作〜中発作の一部は外来で管理可能です。
ただし、次のような場合には入院が検討されます。
・中発作で外来治療に反応しない
・大発作(強い呼吸困難、会話が困難など)
・SpO₂の低下が持続している
・吸入治療を繰り返しても改善しない、またはすぐに悪化する
・水分摂取が難しい、全身状態が悪い
2歳以上では「重症度+治療への反応」が重要で、中発作でも改善が乏しければ入院、大発作であれば基本的に入院と考えられます。
「喘息発作かな?」と思ったら、お子さんの様子を注意深く観察して、早めの受診を心がけましょう。
【参考情報】『Asthma and Babies/Small Children』Asthma Initiative of Michigan
https://getasthmahelp.org/infant-public.aspx
2.入院が必要なのは「中発作」以上のとき
中発作を起こすと、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった喘鳴(ぜんめい)と呼ばれる異常な呼吸音が、はっきりと聞こえます。喘鳴は、空気の通り道である気道が狭くなって、呼吸がしにくくなっているというサインです。
また、息を吸うときに胸がへこむ陥没呼吸や、肩を動かしながら苦しそうに呼吸する様子が見られます。
あやしても機嫌が悪く、興奮して泣き止まなかったり、ひどく咳き込んで、嘔吐したりすることもあるでしょう。体を起こしている方が楽に呼吸できるため、横になるのを嫌がり、抱っこやお座りで過ごすことを好みます。
乳幼児が中発作を起こしたときには、まず気管支拡張薬や、酸素投与による治療を行います。発作がおさまらなかったり、悪化したりするときには、入院してステロイド薬などを使用した治療を受ける必要があります。
【参考情報】『ぜん息発作の程度は、どのように見極めるのでしょうか?』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/child/09_02_01.html
3.乳幼児が息苦しいときのサインと受診の目安
発作の程度を見分けるのが難しく、悩むこともあるでしょう。下記のような様子がお子さんに見られたら、速やかに医療機関を受診しましょう。
・呼吸や脈が速くなり、苦しそうにしている
・息を吸うと、のどや鎖骨、肋骨などが明らかにへこむ
・「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音が聞こえる
・咳き込んで眠れなかったり、嘔吐したりする
・母乳やミルクなどをあげても飲まず、水分がとれない
・機嫌が悪く、興奮して泣き叫んでいる
・顔色や唇の色、爪の色が悪い
・ぼーっとしていて活気がない
症状がひどい場合や、夜間や休日などですぐに受診できない場合には、必要に応じて救急車を呼びましょう。
【参考情報】『もしものときの救急車の利用法 どんな場合に、どう呼べばいいの?』政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/article/201609/entry-7888.html
医療機関を受診するまでの間は、かかりつけ医から指示されている、発作時の対応に従います。
4.乳幼児が喘息で入院したときの治療
乳幼児が喘息発作で入院すると、呼吸状態を改善させるために、さまざまな治療を行います。
4-1.酸素療法
血液中の酸素の状態(SpO₂)を持続的に測定し、低下がみられる場合には酸素投与を行います。一般的にはSpO₂が92〜94%以下となる場合に酸素投与が検討され、鼻カニューレやマスクを用いて酸素を補います。酸素投与中は過不足がないように、モニタリングを行いながら調整されます。
【参考情報】『Oxygen Therapy (Supplemental Oxygen)』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/treatments/23194-oxygen-therapy
4-2.輸液療法
呼吸が苦しいと哺乳や食事が十分にできず、脱水になりやすくなります。そのため、必要に応じて点滴により水分や電解質を補います。特に乳幼児では脱水の進行が早いため、早めの対応が重要です。
4-3.ステロイド薬の使用
中発作以上の喘息発作では、気道の炎症を速やかに抑えるために全身性ステロイド(内服または点滴)が使用されます。通常、できるだけ早期に投与することで、発作の悪化を防ぎ、回復を早める効果が期待されます。
一方、吸入ステロイド薬は発作時の即効性治療ではなく、再発予防を目的とした長期管理薬として退院後も継続されることがあります。
4-4.気管支拡張薬の使用
発作時の基本治療は、短時間作用型β2刺激薬(SABA)の吸入です。ネブライザーや吸入補助具(スペーサー)を用いて反復投与され、気道を広げて呼吸を楽にします。症状が強い場合には、短い間隔で繰り返し吸入が行われます。
重症例では、点滴によるβ2刺激薬やアミノフィリン製剤などが使用されることもあり、その際は心拍数の増加などの副作用に注意しながら慎重に管理されます。
【参考情報】『小児気管支喘息の薬物療法における適正使用ガイドライン』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/07/dl/tp0727-1a.pdf
5.退院の目安
退院は、以下のような状態がそろったことを確認して判断されます。
・呼吸状態が安定し、息苦しさが改善している
・酸素投与が不要となり、SpO₂が安定している
・食事や水分が十分にとれる
・睡眠がしっかりとれる
・吸入治療の間隔が延ばせる
喘息は一時的に良くなっても、気道の炎症自体は残っていることがあります。
そのため、退院後も吸入ステロイド薬などのコントローラー治療を継続し、発作の再発を予防することが重要です。
また、発作のサインや対応方法について医師から指導を受け、家庭でも適切に対処できるようにしておくことが大切です。
6.喘息の発作を予防する方法
喘息のあるお子さんでは、日常の管理を適切に行うことで発作の悪化を防ぎ、入院のリスクを下げることが可能です。
6-1.毎日の治療をきちんと続ける
喘息では、症状がないときも気道に炎症が残っていることがあります。
そのため、医師から処方された吸入ステロイド薬などの長期管理薬(コントローラー)は、毎日継続することが基本です。
症状がないからといって自己判断で中断すると、気道の炎症が再び強まり、発作を起こしやすくなります。
6-2.発作のサインを早めに察知する
発作は突然起こるように見えても、前ぶれとなる変化が現れることが多くあります。
・咳が増える(特に夜間や早朝)
・「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音が出る
・少し動いただけで息切れする
・機嫌が悪い、元気がない
こうした変化に気づいた時点で早めに対応することで、重症化を防ぐことができます。
6-3.発作時の対応をあらかじめ決めておく
発作が起こったときに慌てないよう、家庭での対応方法を事前に確認しておくことが重要です。
・どのタイミングで吸入薬を使うか
・何回使っても改善しない場合の対応
・受診や救急受診の目安
医師から発作時の対応プランを具体的に教えてもらい、家族で共有しておきましょう。
6-4.環境中の悪化因子を減らす
喘息は、さまざまな刺激によって悪化します。できる範囲で原因を減らすことが大切です。
・室内のホコリ・ダニ対策(こまめな掃除、寝具の管理)
・タバコの煙を避ける(受動喫煙も含む)
・ペットの毛やフケへの配慮
・花粉の多い時期の対策
完全に排除することは難しくても、これらの悪化因子を減らすだけでも効果があります。
6-5.体調管理と感染予防
風邪などの呼吸器感染症は、喘息発作の大きなきっかけになります。
・手洗い・うがいの習慣
・十分な睡眠
・バランスのよい食事
・インフルエンザなどのワクチン接種
日頃の体調管理が、発作予防につながります。
6-6.定期受診で状態を確認する
症状が落ち着いていても、定期的に医療機関で評価を受けることが重要です。
・治療が適切かどうかの見直し
・成長に合わせた薬の調整
・吸入手技の確認
継続的なフォローにより、発作の予防と早期対応がしやすくなります。
7.おわりに
喘息の治療は長期間に及ぶため、親も子も負担を感じることがあるでしょう。しかし子どもの喘息は、大人になれば症状が治まることがほとんどです。
お子さんが喘息と診断されたら、服薬管理や悪化因子への対策を行って、大きな発作を予防することが大切です。
小児喘息の治療にくわしい、信頼できるかかりつけ医を見つけて、根気よく治療を続けていきましょう。














