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睡眠時無呼吸症候群の治療で夜尿症が改善?2つの病気の関連性について解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年05月15日

睡眠時無呼吸症候群の患者さんのなかには、夜間の頻尿や夜尿に悩まされている人がいます。

排尿に関するトラブルは周囲の人に相談しにくく、ひそかに苦しんでいる人もいるでしょう。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群と夜尿症の関連や、治療によって夜尿症が改善する可能性について解説します。

1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。肥満体型の人や、あごが小さい人に多くみられます。

この病気になると、寝ている間に大きないびきをかいたり、寝相が悪くなって寝汗が増えることがあります。また、何度もトイレにいきたくなって目が覚めてしまう人もいます。

◆「夜間のトイレの原因は?睡眠時無呼吸症候群と頻尿の関係」>>

睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放っておくと、高血圧や糖尿病、脳梗塞などのリスクが高まることがわかっています。また、この病気による居眠り運転での交通事故も報告されています。

◆「睡眠時無呼吸症候群と運転業務の関係性」>>

治療は、睡眠中の呼吸をサポートする装置を使って行います。中でも代表的なものがCPAPです。ほかにも、患者さんの体調に応じて、マウスピースやASVと呼ばれる器具を使った治療も検討されます。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっとくわしく>>

2.夜尿症とはどんな病気か


夜尿とは、いわゆる「おねしょ」のことで、睡眠中に無意識に尿が漏れてしまう症状です。5歳を過ぎてもこうした症状が続く場合、夜尿症と診断されることがあります。

子どもの夜尿は成長とともに自然に改善することも多いですが、7歳以上でも約10%にみられるとされており、大人まで続くケースもあります。

治療では、就寝前の排尿習慣や夕方以降の水分摂取の調整などの生活指導・行動療法が行われます。症状によっては、抗利尿ホルモン薬(デスモプレシン)や夜尿アラーム療法などが検討されることもあります。

【参考情報】『おねしょ(夜尿症)が治らない』日本泌尿器科学会
https://www.urol.or.jp/public/symptom/09.html#:~:text

3.夜尿症の原因


夜尿症の原因には、病気や加齢、生活習慣などがあります。

3-1.病気とその治療に関連したもの


夜尿や夜間頻尿の原因となる病気のひとつに、過活動膀胱があります。過活動膀胱とは、何らかの原因で膀胱が過敏に収縮しやすくなり、頻尿や急な強い尿意、尿失禁などを引き起こす病気です。

【参考情報】『過活動膀胱』日本臨床内科医会
https://www.japha.jp/doc/byoki/039.pdf

過活動膀胱は、脳梗塞やパーキンソン病などの脳神経系の病気や、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症といった脊髄の病気、末梢神経障害を起こす糖尿病などによって引き起こされることがあります。

また、高血圧や腎機能障害によって夜間の尿量が増えることも、夜尿や夜間頻尿の原因となる場合があります。

さらに、一部の降圧薬では、むくみや尿量の変化などの影響によって、夜間頻尿につながることがあります。

3-2.加齢によるもの


男性では、加齢に伴って前立腺が大きくなる「前立腺肥大症」によって、尿道が圧迫され、夜間頻尿や排尿トラブルが起こることがあります。

【参考情報】『Benign prostatic hyperplasia (BPH)』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/benign-prostatic-hyperplasia/symptoms-causes/syc-20370087

女性では、加齢や出産などの影響で骨盤底筋がゆるみ、骨盤臓器脱が起こることで、夜尿や頻尿などの排尿トラブルにつながる場合があります。

3-3.生活習慣に関連したもの


塩分の多い食事や、就寝前の過剰な水分摂取といった生活習慣は、夜間の尿量を増やし、夜尿や夜間頻尿につながる可能性があります。

【参考情報】『Effect of salt intake reduction on nocturia in patients with excessive salt intake』Tomohiro Matsuo, Yasuyoshi Miyata, Hideki Sakai
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192051/201911081A_upload/201911081A202008201456143740029.pdf

ほかにも、緊張やストレスなどによって必要以上に水分をとってしまうことで尿量が増える場合もあり、夜尿や夜間頻尿の原因はさまざまです。

4.睡眠時無呼吸症候群と夜尿症との関連

ところで、睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、なぜ夜間の頻尿や夜尿を起こしやすいのでしょうか。ここでは、2つの理由を解説します。

4-1.交感神経が優位になりやすい


睡眠中は、通常であれば体を休ませるために副交感神経が優位になります。

しかし、睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸や低呼吸による低酸素状態や覚醒反応が繰り返されることで、交感神経が活発になりやすいと考えられています。

このような自律神経の乱れは膀胱機能にも影響し、夜間頻尿につながる可能性があります。

また、睡眠が浅く断片化されることで、通常なら気づかない程度の尿意でも目が覚めやすくなり、夜中に何度もトイレへ行く原因になる場合があります。

4-2.利尿ホルモンが分泌される

睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすると、閉塞した気道から空気を吸い込もうとして強い呼吸努力が起こります。その結果、胸の内部の圧力(胸腔内圧)が大きく低下し、心臓、とくに心房に負担がかかると考えられています。

こうした刺激によって分泌が増えるのが、「心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)」というホルモンです。

ANPには尿量を増やす作用があるため、本来は夜間に減少するはずの尿量が増え、夜間頻尿や夜尿につながる可能性があります。

実際に、ANPについて調べた研究では、健康な人では覚醒時と睡眠時でANP量に大きな差がみられない一方、睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、睡眠中のANP量が有意に増加していたことが報告されています。

【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群における心房性Na利尿ペプチド(ANP)の動態』日本胸部疾患学会雑誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrs1963/27/Supplement/27_Supplement_324/_pdf

4-3. 睡眠が浅くなり、尿意で目覚めやすくなる

睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸や低呼吸が起こるたびに、脳が呼吸を再開させるための覚醒反応を繰り返していると考えられています。

本人は自覚していなくても、睡眠が何度も中断されることで深い睡眠が減り、眠りが浅くなりやすくなります。

その結果、通常であれば眠ったまま我慢できる程度の尿意や、わずかな膀胱への刺激でも目が覚めやすくなり、夜中に何度もトイレに行く原因になる場合があります。

また、睡眠が断片化すると、トイレのために起きた回数そのものを強く意識しやすくなることもあり、夜間頻尿や夜尿の症状につながる可能性があります。

5.睡眠時無呼吸症候群の治療で夜尿症が改善する可能性


睡眠時無呼吸症候群では、低酸素状態や睡眠の分断によって自律神経の働きが乱れたり、ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)などのホルモン分泌に変化が生じたりすることで、夜尿や夜間頻尿につながる可能性があります。

一方で、治療によって睡眠中の呼吸状態が改善すると、こうした自律神経やホルモン分泌への影響も軽減され、夜尿や夜間頻尿が改善する場合があります。

【参考情報】『夜尿症を合併した成人の閉塞型睡眠時無呼吸症候群例』耳鼻臨床 100:12;1001~1007, 2007
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/100/12/100_12_1001/_pdf

また、睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられるCPAPによって、夜間頻尿や強い尿意が改善したという報告もあります。

【参考情報】『夜間頻尿は睡眠時無呼吸症候群の治療で改善するのか(第95回日本泌尿器科学会総会)』日本泌尿器科学会雑誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjurol/98/2/98_KJ00004613972/_pdf/-char/ja

◆「CPAP」とは?」>>

夜間の頻尿や夜尿に加えて、「いびきがひどい」「日中の眠気が強い」「十分寝ても疲れが取れない」といった症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群が関係している可能性もあります。気になる場合は、医療機関で相談してみましょう。

6.こんな夜尿・夜間頻尿は睡眠時無呼吸症候群のサインかも


夜尿や夜間頻尿は、加齢や水分摂取量、膀胱の病気などさまざまな原因で起こります。

しかし、次のような症状がある場合は、背景に睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性もあります。

 ・大きないびきをかく

 ・睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された

 ・日中に強い眠気がある

 ・朝起きたときに頭痛がする

 ・肥満傾向がある

 ・高血圧を指摘されている

 ・十分寝たつもりでも疲れが取れない

特に、いびきや日中の眠気を伴う場合は、一度病院で相談してみることも大切です。

7.おわりに

夜尿の原因はさまざまですが、そのひとつとして睡眠時無呼吸症候群が関係していることがあります。

「毎晩のように激しいいびきをかく」「日中に強い眠気がある」といった心当たりがある場合は、一度呼吸器内科を受診して検査を受けてみることをお勧めします。

睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、CPAPなどによって睡眠中の呼吸状態が改善すると、夜中に何度もトイレへ起きる症状や、夜尿が軽減する場合があります。

◆当院で睡眠時無呼吸症候群の治療が受けられます>>

以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします

  • 咳が2週間以上続いている
  • 息切れや息苦しさを感じることがある
  • 痰がからんで気になる
  • 健康診断で肺や呼吸の異常を指摘された
  • 市販薬を飲んでも症状が改善しない

当てはまる項目がある方は、呼吸器専門医に相談してみませんか?

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