喘息・咳に加湿器は効果あり?加湿器を選ぶポイントと注意点

冬は空気が乾燥し、咳が出やすくなる季節です。
乾燥した空気は、のどや気道の粘膜を刺激し、咳や喘息の症状を悪化させることがあります。
そのため、加湿器を使って室内の湿度を保つことは、咳や喘息の対策として有効とされています。
ただし、「加湿すればするほど良い」というわけではありません。湿度が高すぎると、かえって咳を悪化させたり、ダニやカビが増えて室内環境が悪化する場合もあります。
この記事では、咳や喘息にとって効果的な加湿のポイントや、加湿器の選び方、使い方の注意点をわかりやすく紹介します。
目次
1.喘息と咳、湿度の関係とは
加湿器は、室内の乾燥を防ぎ、適切な湿度を保つための機器です。特に空気が乾燥しやすい冬に使用されることが多く、快適な生活環境の維持に役立ちます。
一般的に、室内の適正湿度は 40〜60% とされています。湿度が 40%未満 だと、風邪などウイルス感染のリスクが高まり、逆に 60%以上 ではカビが繁殖しやすくなります。
では、なぜ湿度を管理することが重要なのでしょうか。
喘息のある人の気道は慢性的な炎症が続いており、わずかな刺激でも敏感に反応します。そのため、乾燥した空気を吸い込むと、気道の粘膜が刺激され、咳が出やすくなります。
さらに、気道の粘膜が乾燥すると、病原体やアレルゲンを排除する「せん毛運動」の働きが弱くなります。これにより、風邪・インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症などにかかりやすくなり、感染症にかかると喘息症状も悪化します。
そのため、喘息のある人が湿度を適切に保ち、のどや気道を潤すことは、感染症予防と症状の悪化防止に大きく役立ちます。
【参考情報】『How Dry Winter Air Can Cause Respiratory Problems— From Bronchitis to Nosebleeds』Cleveland Clinic
https://health.clevelandclinic.org/can-best-combat-effects-dry-winter-air/
2.加湿器の種類と特徴
加湿器は、大きくわけて4種類あります。それぞれの特徴をみていきましょう。
2−1.超音波式
超音波で振動させて霧状にした水を放出し、加湿するタイプです。ヒーターを搭載せずに加湿するため、本体が熱くなることや室温が上昇することがありません。
シンプルな作りのため、コンパクトでスタイリッシュなデザインの製品が多く、インテリアとして楽しめるのも魅力的なポイントです。
一方、水を加熱しないことと、放出される水の粒子が大きいことから、カビが発生しやすいので、こまめにお手入れする必要があります。
2−2.気化式
水を含ませたフィルターに風を当て、蒸発させた水蒸気を放出して加湿するタイプです。こちらもヒーターを搭載していないため、放出される水蒸気は暑くなく、むしろ冷たいのが特徴です。
放出される水の粒子がごく小さいことから、雑菌が水に入ることができないため、雑菌の放出が抑えられるのもメリットの一つです。
しかし、水の自然な蒸発により加湿するため、他のタイプより加湿量が劣る傾向にあります。また、風の力で加湿量を上げるため、風の音が大きく感じるかもしれません。
2−3.スチーム式
お湯を沸かすようなイメージで、水をヒーターで加熱して水蒸気を発生させ加湿するタイプです。熱い水蒸気が出て室温が上昇するので、寒い時期におすすめです。
また、水を沸騰させるため、雑菌が繁殖しにくく衛生的なのも魅力です。
一方、水が湧くまでに時間がかることや、消費電力が高いことがデメリットとして挙げられます。
2−4.ハイブリッド式
ハイブリット式は、「超音波式+熱」と「気化式+熱」の2種類があります。
(1)超音波式+熱:加熱した水を超音波で細かい霧状にして加湿するタイプ
(2)気化式+熱:水を含ませたフィルターに温風を当てて素早く蒸発させて加湿するタイプ
どちらも、他のタイプの加湿器のデメリットを補える特徴があります。また、熱を使っているため加湿量が高く、室内を早く加湿してくれます。
【参考情報】『加湿器とは?』JEMA(日本電機工業会)
https://www.jema-net.or.jp/Japanese/ha/danbou/whats_k.html
3.喘息の人におすすめの加湿器
喘息の患者さんが加湿器を購入する際は、まず「カビが発生しにくい加湿器」を選ぶことが重要です。
3-1.おすすめは「スチーム式」
特におすすめなのは、水を沸騰させて殺菌できるスチーム式加湿器です。
スチーム式は水を加熱して細菌やウイルスを減らす効果があり、喘息や呼吸器に負担をかけにくい点が特徴です。
また、乾燥しやすい冬場でも湿度を素早く上げやすいため、のどや気道の乾燥対策にも役立ちます。
3-2.注意が必要な加湿器
超音波式加湿器は、おしゃれで可愛いデザインの製品が多く人気がありますが、内部や水タンクにカビや雑菌が繁殖しやすいため注意が必要です。
喘息や咳が出やすい人が使用すると、微細な菌やカビの粒子を吸い込むリスクがあるため、呼吸器の健康を考えると控えるのが安心です。
気化式やハイブリッド式加湿器も選択肢としてありますが、フィルター交換が必要なタイプでは、フィルターにカビが生えることがあります。
定期的なフィルター交換や掃除を行わないと、逆に室内の空気を汚す原因になる場合があります。購入時には、掃除や管理の手間も考慮して選びましょう。
4.加湿器を使う時の注意点
適切な加湿器を選んでも、使い方が間違っていればカビや雑菌が発生し、肺炎になることがあります。
4-1.加湿器を安全に使うためのお手入れ
スチーム式加湿器を使用する場合でも、お手入れを怠るとカビや雑菌が繁殖する可能性があります。
水タンクの水は毎日交換し、内部も定期的に掃除することが大切です。専用ブラシや洗浄剤を使うと、より簡単に清潔を保つことができます。
【参考情報】『家庭用加湿器の貯留水と吹出気における微生物の検討』日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsogd/39/1_2/39_65/_pdf/-char/ja
4−2.加湿器肺炎・レジオネラ肺炎に注意
カビの発生した加湿器を使い続けると、「加湿器肺炎」を引き起こす可能性があります。
加湿器肺炎は、正式には「過敏性肺炎」と呼び、カビ(真菌)などを吸い込むことで、咳、呼吸困難、発熱などの症状が現れる病気です。重症になれば酸素療法や薬物療法が必要になります。
加湿器の水の中では、レジオネラ属菌が繁殖することもあります。水と一緒に空気中に放出された菌を吸い込むと肺炎が引き起こされ、高齢者施設での死亡例も報告されています。
【参考情報】『加湿器のレジオネラに注意しましょう』大阪健康安全基盤研究所
http://www.iph.osaka.jp/s012/050/010/030/050/20181121153857.html
健康な人にとっても肺炎は恐ろしい病気ですが、喘息の患者さんは、肺炎にかかると喘息の症状がさらに悪化するため、加湿器のお手入れはこまめに行いましょう。
4−3.加湿器に入れる水は「水道水」
加湿器に入れる水は、塩素処理がされている「水道水」にしましょう。
【参考情報】『塩素消毒』東京都水道局
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/topic/07.html
ミネラルウォーターや浄水器の水を入れた方がいいのでは?と思う人もいるかもしれません。しかし、これらの水はおいしさを優先して塩素処理がされていない、あるいは塩素が除去されているため、水道水に比べると細菌が繁殖しやすくなります。
5.加湿器と咳・喘息に関するよくある質問
Q1. 加湿器を使っても咳が止まりません。何が原因でしょう?
加湿器で乾燥を防いでも、咳の原因が「アレルギー」「呼吸器感染症」「副鼻腔炎」などの場合、湿度だけでは改善しません。原因の特定と医療機関での治療も必要です。
Q2. 加湿器の水にアロマを入れてもいいですか?
アロマオイルには揮発性の化学成分が含まれており、気道の粘膜を刺激して咳や喘息症状を悪化させることがあります。また、加湿器の劣化や故障の原因となる恐れもあるので、基本的に推奨されません。
Q3. 加湿器の置き場所で咳の出やすさは変わりますか?
加湿器は部屋の中央や風通しの良い場所に置くのが効果的です。一方、ベッドや暖房器具の近くに置くと、湿度や水滴が偏り、カビやダニが増えて咳を誘発することがあります。
Q4.冬以外の季節でも加湿器を使った方がいいですか?
夏はエアコン使用で室内が乾燥することがあります。特に冷房で長時間過ごす場合は、加湿器や濡れタオルで適度な湿度を維持することが咳の予防に有効です。
Q4.一晩中加湿器をつけっぱなしにして寝てもいいですか?
長時間つけっぱなしだと湿度が高くなり過ぎるため、避けた方がいいでしょう。湿度が高くなり過ぎると、カビが発生しやすくなります。
6.おわりに
乾燥した空気は喘息の悪化につながるため、加湿器で湿度をコントロールするのはいいでしょう。
しかし、加湿器にカビが発生すると、そのカビを吸い込んで症状が悪化したり、肺炎になる恐れがあります。
喘息の発作を予防するための加湿器が、かえって逆効果にならないよう、使用法とお手入れの仕方を確認し、自分にあった製品を選びましょう。










