睡眠時無呼吸症候群で骨粗鬆症のリスクが高くなる?理由と予防法について

「夜中のいびきがひどい」「日中どうしても眠くなってしまう」そんな悩みを抱えている方の中には、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を心配されている方も多いでしょう。
実は最近の研究で、睡眠時無呼吸症候群と意外な病気との関連が明らかになってきました。
それが「骨粗しょう症」です。
「睡眠の問題が、骨の健康にまで影響するの?」と驚かれるかもしれません。
しかし、複数の研究によって、睡眠時無呼吸症候群のある方は、ない方と比べて骨粗しょう症になるリスクが約2〜3倍も高くなることが分かってきたのです。
特に、高齢者や閉経後の女性は骨粗しょう症のリスクが高いと言われています。
健康な生活を続けていくためにも、睡眠時無呼吸症候群のサインに気づいたら、すぐに治療につなげることをおすすめします。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群と骨粗しょう症の関係性や合併のリスクについ分かりやすく解説していきます。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まったり、呼吸が浅くなることを繰り返す病気です。
この病気は、何らかの原因によって気道が狭くなるために起こる「閉塞性」と、心臓や神経の病気によって呼吸の指令がうまく働かないことで起こる「中枢性」があります。
患者さんのほとんどは閉塞性で、主に肥満などが原因で気道の閉塞が生じています。
この病気の一般的な症状は、大きく激しいいびきや日中の眠気、起きた時の倦怠感などです。
放っておくと、睡眠中の無呼吸や低呼吸による酸素不足により、心臓や血管に負担がかかります。
その結果、心血管疾患や生活習慣病などの合併症が引き起こされる危険があります。
また、日中の眠気や集中力の低下により、仕事や学習のパフォーマンスが下がることでストレスを感じたり、居眠り運転による自動車事故を招くこともあります。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html
2.骨粗しょう症とは
骨粗しょう症は、骨の量(骨密度)が減ったり、骨の内部構造がスカスカになることで、骨がもろくなってしまう病気です。
健康な骨は、まるで頑丈な建物の鉄骨のように、内部がしっかりとした構造で支えられています。
しかし、骨粗しょう症になると、この内部構造が崩れて隙間だらけになってしまうため、ちょっとした衝撃でも簡単に折れてしまうようになります。
転んだ拍子はもちろん、場合によってはくしゃみや咳、重いものを持ち上げようとしただけで骨折してしまうこともあるのです。
骨量は、年齢とともに減っていきます。
特に女性はホルモンの影響により、閉経後に骨粗しょう症が増える傾向にあります。
骨を強くするための食事や運動で、骨密度の低下を抑えることも大切ですが、生活習慣の見直しだけでは改善できない場合は、ビスホスホネートや活性型ビタミンD3などの薬剤を用いて治療します。
【参考情報】『骨粗鬆症(骨粗しょう症)』日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/osteoporosis.html
骨粗しょう症でよく起こる骨折の部位には、次のようなものがあります。
・背骨:
背中や腰の骨が潰れるように骨折します。強い痛みが出ることもあれば、気づかないうちに進行していることもあります。
・太ももの付け根:
高齢者がこの骨折を起こすと、手術が必要になることが多く、そのまま寝たきりになってしまうリスクが高まります。
・手首の骨:
転んで手をついた際に折れやすい部位です。
こうした骨折は、一度起こると日常生活に大きな支障をきたし、介護が必要になってしまうこともあります。
生活の質を維持するためにも、骨折を起こす前の「予防」が何よりも重要なのです。
3.なぜ睡眠時無呼吸症候群で骨が弱くなるのか?3つの理由
それでは、なぜ睡眠時無呼吸症候群があると骨粗しょう症のリスクが高まるのでしょうか。
その仕組みを、3つのポイントから見ていきましょう。
3-1.夜間の酸素不足が骨の代謝バランスを崩すため
睡眠時無呼吸症候群では、寝ている間に何度も呼吸が止まったり弱くなったりします。
そのたびに血液中の酸素濃度が一時的に下がり、体は「酸素が足りない!」という強いストレス状態に陥ります。
実は私たちの骨は、常に「壊す」と「作る」を繰り返しながら、新しく生まれ変わっています。
骨を壊す細胞(破骨細胞)と、骨を作る細胞(骨芽細胞)がバランスよく働くことで、健康な骨が保たれているのです。
ところが最近の研究では、このような「断続的な低酸素」が続くと、骨を壊す細胞の働きが強まってしまう一方で、骨を作る細胞の働きが弱まってしまう可能性が示されています。
つまり、 「骨を壊すスピード > 骨を作るスピード」 という状態になり、少しずつ骨密度が下がっていくと考えられているのです。
実際に、睡眠時無呼吸症候群のある人を対象にした調査では、そうでない人に比べて骨粗しょう症のリスクが2.7倍高く、骨密度が低い傾向があることが報告されています。
【参考情報】『Obstructive sleep apnea and risk of osteoporosis: a population-based cohort study in Taiwan』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24735427/
【参考情報】『Relationship between obstructive sleep apnea-hypopnea syndrome and osteoporosis adults: A systematic review and meta-analysis』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9712780/
3-2.睡眠の質が低下すると、骨の修復が追いつかないため
無呼吸によって何度も目が覚めてしまうと、本人は「ぐっすり寝たつもり」でも、実際には深い睡眠がほとんど取れていないことがよくあります。
睡眠には、体のダメージを修復し、細胞を再生させるという重要な役割があります。
特に深い睡眠の間には、成長ホルモンをはじめとするさまざまなホルモンが分泌され、骨や筋肉の再生が活発に行われると考えられています。
ところが、
・睡眠時間が極端に短い
・途中で何度も目が覚めてしまう
・朝起きたときにぐったりと疲れている
といった状態が続くと、骨の修復が十分に行われず、少しずつダメージが蓄積していってしまうのです。
実際に、短時間睡眠の人ほど骨密度が低い、あるいは骨折しやすいという研究報告もあります。
「よく眠れていない」という状態そのものが、骨にとって大きな負担になっていると言えるでしょう。
【参考情報】『Short Sleep Is Associated With Low Bone Mineral Density and Osteoporosis in the Women’s Health Initiative』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31692127/
3-3.ホルモンバランスや生活習慣の乱れが骨を蝕むため
睡眠時無呼吸症候群は、体のさまざまなシステムに影響を与えます。
その中でも、ホルモンバランスや生活習慣の乱れは、骨の健康にとって見過ごせない問題です。
・ストレスホルモンの増加:
睡眠時無呼吸症候群があると、交感神経が過剰に働き、ストレスホルモン(コルチゾールなど)が増えやすくなります。コルチゾールが長期間高い状態が続くと、骨を作る働きが抑制されてしまいます。
・成長ホルモンの減少:
子どもの成長だけでなく、大人になってからも骨の健康維持に欠かせないホルモンです。骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを活発にし、骨の形成を促進する役割がありますが、深い睡眠が取れないことで、この働きも弱くなってしまいます。
・食欲調節ホルモンの乱れ:
睡眠不足は、食欲を調節するホルモン(レプチンやグレリンなど)のバランスを崩し、食べ過ぎや体重増加につながりやすくなります。肥満は睡眠時無呼吸症候群を悪化させるだけでなく、骨にも負担をかけます。
・運動不足:
日中の強い眠気やだるさのせいで、体を動かす気力が失われ、運動不足になりがちです。運動不足は骨密度の低下を招く大きな要因の一つです。
特に高齢者や閉経後の女性では、もともと女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって骨が弱くなりやすい状態にあります。
そこに睡眠時無呼吸症候群が加わることで、「骨にとって二重三重に不利な状態」になってしまうのです。
4.あなたは大丈夫?睡眠と骨のセルフチェック
ここまで読んで、「もしかして自分も当てはまるかも…」と感じた方は、次のセルフチェック項目を試してみてください。
〈睡眠時無呼吸症候群が疑われるサイン〉
□ パートナーや家族に「いびきが大きい」「いびきが途中で止まる」と言われる
□ 夜中に何度もトイレに起きる
□ 朝起きたときに口の渇き、頭痛、だるさがある
□ 日中に強い眠気があり、会議中や運転中にウトウトしてしまう
□ 肥満気味で、首回りが太いと言われる
〈骨粗しょう症が心配なサイン〉
□ 50歳以上(特に女性で閉経後)
□ 最近、身長が縮んできた、背中が丸くなってきた気がする
□ ちょっと転んだだけで骨折したことがある
□ 普段運動をほとんどしていない
睡眠の項目と骨の項目、両方でいくつも当てはまる場合は、一度医療機関で相談してみることをおすすめします。
5.検査はどのように進むの?
「心配だけれど、どんな検査をするのか不安」という方のために、一般的な検査の流れを簡単にご紹介します。
5-1.睡眠時無呼吸症候群の検査
1. 問診・診察
いびきの有無、日中の眠気、生活習慣、既往歴などを詳しく確認します。
2. 簡易睡眠検査(自宅で可能)
鼻や指先、胸などにセンサーをつけて眠り、無呼吸の回数や酸素濃度の変化を調べます。
入院不要で自宅で行うことができるので、経済的にも、時間的にも、負担が少ない検査です。
3. ポリソムノグラフィー(PSG)
必要に応じて、より詳しい検査を行います。
脳波、呼吸、心電図、筋電図などを同時に測定し、睡眠の状態を詳細に評価します。
5-2.骨粗しょう症の検査
〈骨密度検査(DXA法)〉
現在もっとも標準的な検査方法です。
腰の骨や太ももの付け根の骨に弱いX線を当てて、骨の密度を測定します。
検査時間は比較的短く、痛みもほとんどありません。
〈血液検査〉
カルシウム、ビタミンD、骨代謝マーカー(骨がどのくらい壊されているか、作られているかを示す指標)などを調べることもあります。
6.〈治療と予防〉今日からできることは?
「睡眠時無呼吸症候群になったら、もう骨粗しょう症は避けられないの?」決してその様なことはありません。
適切な治療と生活習慣の改善を組み合わせることで、将来の骨折リスクを大きく下げられる可能性があります。
6-1.睡眠時無呼吸症候群の治療
〈CPAP(シーパップ)療法〉
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法です。
就寝時に鼻マスクを装着し、空気を送り込むことで気道の閉塞を防ぎます。
無呼吸や低呼吸の回数が大きく減り、夜間の低酸素状態や睡眠の分断が改善します。
〈生活習慣の改善〉
・減量:体重を5〜10%落とすだけでも、無呼吸が改善することがあります。
・飲酒・睡眠薬の見直し:アルコールや一部の睡眠薬は、気道の筋肉を緩ませて無呼吸を悪化させることがあります。
6-2.骨粗しょう症の治療
骨粗しょう症が疑われる場合や、すでに骨折歴がある場合には、薬物療法が検討されます。
どの薬を使うかは、年齢、性別、骨折歴、他の病気との兼ね合いなどを総合的に考慮して決められます。
6-3.今日からできる生活習慣の改善
睡眠時無呼吸症候群と骨粗しょう症、どちらの予防にも共通して大切なのが「生活習慣」です。
①適度な運動
ウォーキングや軽い筋トレは、体重コントロールと骨の強化の両方に役立ちます。
特に、骨に適度な負荷がかかる運動(ウォーキング、ジョギング、階段の昇り降りなど)は、骨密度を高める効果が期待できます。
【参考情報】『骨粗鬆症の予防のための運動』健康日本21アクション支援システム|厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-05-001
②バランスのよい食事
・カルシウム:
牛乳、ヨーグルト、チーズ、小魚、大豆製品、小松菜などの緑黄色野菜
・ビタミンD:
サケ、サンマなどの魚、きのこ類。また、1日15分以上の日光浴も重要です。
・ビタミンK:
納豆、ほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜
これらの栄養素を意識して摂ることで、骨の健康を支えることができます。
③禁煙・節酒
喫煙は骨の血流を悪化させ、骨密度低下を招きます。また、多量の飲酒も骨や睡眠に悪影響を及ぼします。
④規則正しい睡眠習慣
就寝・起床時間をできるだけ一定にし、寝る前のスマホ、カフェイン、アルコールを控えることで、睡眠の質が上がります。
こうした生活習慣の見直しは、すぐに劇的な変化が出るわけではありません。しかし、長期的に続けることで、骨と睡眠の両方に良い影響をもたらしてくれます。
7.おわりに
激しいいびきや、日中の猛烈な眠気に悩まされている人は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。
疲れた時や、お酒を飲み過ぎた時などに、たまにいびきをかく程度なら心配ありません。
しかし、毎晩のようにいびきが出ているなら話は別です。
睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放っておくと、骨粗しょう症のほか、高血圧や糖尿病、心筋梗塞など、さまざまな病気が引き起こされる恐れがあります。
特に女性は、閉経後に睡眠時無呼吸症候群と骨粗しょう症、両方のリスクが高くなるため、注意してください。









