風邪の症状・引きはじめの対処法・病院受診の目安

「のどが痛い」「鼻水が出る」「咳が出る」という症状が出たら、まず「風邪をひいた」と思うのではないでしょうか。
この記事では、風邪という身近な病気の基本について解説します。風邪と間違いやすい病気も紹介しますので、病院を受診する際の参考にしてください。
目次
1.風邪とはどのような病気なのか
風邪とは、鼻やのどなどの上気道にウイルスが感染して起こる病気です。正式な病名は「かぜ症候群」といいます。
【主な症状】
・咳
・鼻水
・のどの痛み
・痰
・くしゃみ
・発熱
・頭痛
・倦怠感
・寒気(悪寒)
原因となるウイルスは200種類以上あり、代表的なものにライノウイルス、RSウイルス、アデノウイルスなどがあります。
コロナウイルスも風邪の原因ウイルスの一種ですが、一部が変異し、重症肺炎を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)となりました。
風邪をひいても、多くの場合は数日~1週間程度で自然に回復しますが、放置したり無理をして過ごしたりすると症状が長引き、気管支炎や肺炎へ進行したり、中耳炎や副鼻腔炎を発症することがあります。
特に高齢者、乳幼児、基礎疾患のある人は重症化しやすいため、早めの対処が重要です。
【参考情報】『Common Cold』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/12342-common-cold
2.風邪をひき始めた時の対処法
風邪を早く治すためには、ひき始めの時期に体への負担を減らし、免疫の働きをサポートすることが重要です。
2−1.十分な睡眠をとる
まずは体を休めることが基本です。無理に動いたり家事を続けたりせず、横になって安静に過ごしましょう。
十分な睡眠時間をとると、T細胞やナチュラルキラー細胞などの免疫細胞が活発に働き、ウイルスと戦う力が高まります。
また、昼間に軽く仮眠をとることで、夜の睡眠の質が高まり、体力の回復が促されます。寝る前にスマホやパソコンを長時間見ないことも、眠りの質を上げるポイントです。
2−2.消化のよい食事
風邪をひいたときは、胃腸に負担をかけない食事が望ましいです。おかゆ、うどん、スープ、煮た野菜など、消化しやすく温かい食べ物を中心に摂りましょう。
のどの痛みで固形物を摂るのがつらい場合は、ゼリー、プリン、ヨーグルト、温かいミルクなど、のどごしの良いものがおすすめです。
また、熱や発汗による脱水を防ぐため、水や白湯、スポーツドリンク、経口補水液などで、失われた水分や電解質を補給します。
カフェイン入りの飲み物には利尿作用があり、大量に飲むと水分不足を招く可能性があるため、飲み過ぎないようにしましょう。
【参考情報】『Do caffeinated drinks, such as coffee or energy drinks, hydrate you as well as water?』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/healthy-lifestyle/nutrition-and-healthy-eating/expert-answers/caffeinated-drinks/faq-20057965
2−3.体を温める
寒さを感じる場合は、太い血管がある「首」「手首」「足首」の3つの首を温めると全身の血流が良くなり、免疫機能をサポートします。
熱が下がって汗をかくようになったら、脇の下や足の付け根を軽く冷やすと体温調節がしやすくなります。
熱が38度未満で体調が許せば、入浴して体を温めるのも効果的です。ただし長風呂は体力を消耗するため避け、湯上り後は体を冷やさないように注意しましょう。入浴後の水分補給も忘れずに行います。
さらに、カイロや厚手の靴下、毛布などで足元や腰を温めることで、寒さによる免疫低下を防ぎます。加えて、室内は適度に加湿し、空気の乾燥によるのどや鼻の粘膜へのダメージを軽減することも回復を助けます。
2−4.セルフケアとグッズの活用
軽度の症状であれば、のど飴やのどスプレーを使用して症状を和らげることも可能です。
のど飴は、唾液の分泌を促してのどの乾燥を防ぎ、ウイルスや細菌が付着しにくい環境を作るのに役立ちます。
のどスプレーは、のどの炎症部分に直接作用し、痛みや違和感を軽減する効果があります。
いずれも対症療法であり、ウイルス自体を退治するわけではありませんが、快適さを保つ上で有効です。
また、風邪をひいたときはマスクの着用も重要です。マスクは、咳やくしゃみによる飛沫の拡散を抑えるだけでなく、乾燥した空気からのどや鼻の粘膜を守る役割もあります。
さらに、温かい飲み物を保温できるタンブラーや、首・肩を温めるネックウォーマーなどを使うのもいいでしょう。これらは体を冷やさずに血流を促し、免疫機能をサポートする手助けになります。
3.病院を受診するタイミング
ほとんどの風邪は1週間くらいで自然に治りますが、咳が激しかったり、咳が2週間以上続いている場合は、病院を受診した方がいいでしょう。
自分でつらさを訴えられない子どもや高齢者の場合は、「元気がない」「食欲がない」「いつもと違う」と感じたら医師に診せてください。
3−1.気管支・肺・耳などに炎症が及んだ場合
風邪をひいて体力が落ちると、からだのさまざまな場所に炎症が起きることがあります。特に、気管支や肺などの呼吸器や、耳や鼻に炎症が及ぶことはよくあります。
「咳が激しくて夜も眠れない」「呼吸をするのも苦しい」といった状態が続いているなら、気管支炎や肺炎を起こしている可能性があるので、呼吸器内科を受診しましょう。
ウイルスが耳の中に入ると中耳炎になることがあります。また、ウイルスが鼻の奥深くまで入ると、鼻の内部の副鼻腔という部分が炎症を起こし、副鼻腔炎になることがあります。
耳や鼻の奥が痛かったり、詰まるような感覚が強いなら、耳鼻咽喉科を受診しましょう。特に子どもは、耳と鼻をつなぐ耳管が短く、ウイルスや細菌が耳の中に入りやすいため、中耳炎になることが多いです。
【参考情報】『近くの耳鼻咽喉科専門医を探しましょう!』 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/search_citizens/
3−2.風邪とは別の感染症の疑いがある
風邪と同じような症状は、ほかの感染症でも現れます。例えば、風疹、おたふく風邪、りんご病(伝染性紅斑)など子どもによくある病気がそうです。
【参考情報】『風しん』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index.html
これらの病気は、発熱やのどの痛み、咳など風邪と共通する症状が現れることがあり、初期段階では見分けがつきにくいことがあります。
また、インフルエンザやマイコプラズマ肺炎の初期症状も風邪とよく似ていますし、新型コロナウイルス感染症も、軽症だと風邪とほとんど見分けがつきません。
次のような場合は、自己判断せずに早めに医療機関を受診することが推奨されます。
・39度以上の熱が3日以上続いている
・熱に加えて発疹が出ている
・最近、家族や身近な人が風邪以外の感染症にかかっている
また、熱が高くなくても、以下のような症状がある場合は注意が必要です。
・水分がほとんど摂れない
・何度も嘔吐する
・いつもと様子が違う、元気がない
これらは脱水や重症化のサインである可能性があり、早期の受診が合併症の予防につながります。
3−3.咳が2週間以上続く
風邪をひいて咳が出ることはよくあります。しかし、風邪が原因で咳が2週間以上続くことは、めったにありません。
咳が2週間以上続いているときは、肺がんなど重篤な病気や、喘息など呼吸器に症状が出る別の病気の疑いがあります。
いずれも、早いうちに治療を開始した方がよいので、咳が2週間以上続いたら、迷わず呼吸器内科を受診して検査を受けてください。
◆「その症状、本当にただの風邪? 「風邪が治らない」と思ったときに疑われる別の病気」>>
4.市販薬を使う際の注意
風邪を根本的に治す薬は、現時点では存在しません。
ドラッグストアや薬局で販売されている風邪薬は、あくまで風邪の症状を和らげるための薬であり、ウイルス自体を排除するものではありません。
また、服用したからといって早く治るわけでもなく、あくまで体が自然に回復するのをサポートする役割に留まります。
ただし、ひどい咳をしずめる薬、のどの痛みをやわらげる薬、鼻水や鼻づまりを軽減する薬などは、症状を一時的に抑えるのに役立ちます。
特に咳や痛みで夜眠れないときは、こうした薬を使ってぐっすり眠ることで、免疫力の回復を助ける環境を整えることができます。
睡眠不足のままでは体の自然治癒力が十分に働かないため、症状を抑えて休むことは重要です。
ただし、市販の風邪薬に含まれている成分が体に合わない場合、副作用や健康被害を起こすことがあります。特に子ども、妊娠中の方、高齢者、持病のある方は注意が必要です。
ドラッグストアで購入する際は、薬剤師に相談して自分に合った製品を選ぶことが安心です。
【参考情報】『Cold medicines and children』 MedlinePlus
https://medlineplus.gov/ency/patientinstructions/000942.htm
5.風邪の予防法
風邪の予防法は、「ウイルスの侵入を防ぐ」ことと「体力をつける」ことです。
5−1.ウイルスの侵入を防ぐ
風邪だけでなく、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症もそうですが、ウイルスに触れる機会が多いほど感染リスクは高まります。
外出時のマスク着用や、人込みを避ける行動は、ウイルスとの接触を減らす基本的な対策です。
さらに、帰宅時や調理の前後、トイレの後などこまめに手を洗うことで、手に付着したウイルスを体内に取り込むリスクを下げられます。
また、ドアノブや手すり、共有のスイッチなど、多くの人が触れる場所をアルコールや次亜塩素酸水で定期的に消毒することも有効です。
室内の換気も忘れずに行い、ウイルスが滞留する空気を入れ替えることが感染予防につながります。
加えて、咳やくしゃみをする際のエチケットも重要です。ティッシュや肘で口・鼻を覆い、使用後はすぐにティッシュを廃棄、手を洗うことで飛沫の拡散を抑えられます。
これにより、自分だけでなく周囲の人への感染リスクも減らせます。
5−2.体力をつける
ウイルスが体内に侵入しても、体力や免疫機能が十分に働いていれば感染や発症を防ぐ力が高まります。
日ごろからの生活習慣が免疫力を左右するため、以下のような点を意識するとよいでしょう。
<十分な睡眠・休養>
睡眠中に免疫細胞が活発に働き、ウイルスへの防御力が高まります。
<栄養バランスのとれた食事>
タンパク質、ビタミン、ミネラルを含む食事は、免疫細胞の働きを支えます。特にビタミンCや亜鉛は風邪予防に有効とされています。
<適度な運動>
ウォーキングやストレッチなど、軽度〜中程度の運動は血流を改善し、免疫細胞が体内を巡りやすくなります。
また、ストレスや過労も免疫力低下につながるため、休息を取り入れた生活リズムを整えることが大切です。
6.おわりに
風邪は、基本的には安静に過ごしていれば回復する病気です。風邪をひいたら無理をせず、できるだけ体を休めて早く治しましょう。
ただし、症状が激しくてつらい時や、「本当に風邪なのだろうか」と不安になった時は、病院を受診することも検討してください。










