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外来

喉に違和感を感じたら、呼吸器内科へ

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年11月24日
喉が痛い

「喉の痛み」や「喉の違和感」は、多くの人が一度は経験したことのある症状ではないでしょうか。

喉の痛みや違和感という“なんとなく誰でもありそう”な症状の背景には、さまざまな疾患が潜んでいることがあります。

風邪やインフルエンザなどの症状として発現する喉の痛みだけではありません。アレルギー反応によって喉に痛みや違和感が出現することもあれば、ストレスなどの精神的なダメージを受けることで発症する病気も存在します。

このように「喉の違和感」にはさまざまな要因が考えられるため、早めに呼吸器内科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。

そこで今回は、喉の違和感の原因となる代表的な疾患を紹介しながら、呼吸器内科が専門的に診療を行う病気の中で、喉の違和感が出現しやすい喘息と気管支炎について解説していきます。

1.喉の違和感で考えられる原因と病気

喉の痛み

「喉の違和感」という症状は、具体的には次のようなものがあります。

・喉が痛い
・喉がイガイガする
・喉がザラザラする
・喉に何かがつかえている感じがする
・ものを飲み込んだ時に違和感を感じる

このように、「喉の違和感」といっても症状はそれぞれです。そのため、医師が明確な診断ができるように、受診時には具体的な症状を伝えていただくことが重要です。

喉のどのあたりが痛いのか、いつも痛いのか、朝起きた時にだけ痛むのか、ものを飲み込まなければ痛みは出ないのか、食事ができないほど痛いのかなど、喉が痛む状況や痛みの程度などをしっかりと伝えていただくことが、スムーズに問診を進めるためのポイントです。

◆「咳や喉の痛みの原因は風邪なのか」について詳しく>>

1−1.感染症による喉の違和感

喉の痛みや違和感の原因として最も多いのが、ウイルスや細菌による呼吸器感染症です。

<ウイルス>

風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスなどが喉の粘膜に感染し、防御反応として炎症が起こり、痛みやイガイガ感が生じます。

特に2024年より流行している新型コロナウイルスの変異株(NB.1.8.1、通称ニンバス)による感染症では、初期症状として「ガラスを飲み込んだような痛み」と表現されるほどの強い喉の痛みが伴うと報告されています。

ウイルス感染では、咳や発熱、倦怠感などの症状を伴うことが多いです。

◆「呼吸器感染症の種類と予防法」について詳しく>>

【参考情報】『新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する治療薬の効果に影響を及ぼす可能性があるウイルスゲノム変異によるアミノ酸置換について』国立感染症研究所
https://id-info.jihs.go.jp/diseases/sa/covid-19/180/20251003_SARS-CoV-2_mutation_9.pdf

<細菌>

溶連菌(溶血性レンサ球菌)感染症に注意すべきです。

子どもに多いと思われがちですが、大人も感染する細菌です。

特に、免疫力が低下している時などに感染すると注意が必要です。

溶連菌感染症には、「喉の痛み」、「38℃以上の発熱がある」、「首のリンパ節が腫れている」、「喉の奥の扁桃腺に白い付着物(白苔)がある」といった特徴があります。

溶連菌を放置すると、リウマチ熱や急性糸球体(しきゅうたい)腎炎などの合併症を引き起こすことがあり、さらに重症化すると、劇症型溶血性レンサ球菌感染症という致死率30%を超える重篤な状態になることもあるため、早期の診断と治療が大切です。

◆「喉がイガイガして咳が止まらない原因」について詳しく>>

【参考情報】『劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137555_00003.html

1−2.アレルギー性の喉の違和感

花粉症やアトピー咳嗽といったアレルギー反応によって喉に違和感が生じることもあります。

<花粉症による喉の症状>

花粉症では鼻水や目のかゆみが代表的な症状ですが、喉の粘膜にもアレルギー症状が起こることがあります。「季節性喉頭アレルギー」とも呼ばれ喉の痛みやかゆみ、イガイガ感を感じます。

スギ花粉症の方の30~50%、シラカンバ花粉症の方の55%に喉頭アレルギー症状が認められており、花粉症患者さんでは決してめずらしくない症状です。

◆「花粉症で咳が出る理由」について詳しく>>

<アトピー咳嗽>

「アトピー咳嗽(がいそう)」は、気管支の中枢にアレルギー性炎症が起こり、咳受容体の感受性が高まることで咳が出やすくなる病気です。

夜から早朝にかけての喉のイガイガ感を伴う乾いた咳が特徴で、中年以降の女性に多く見られます。会話中の咳や、運動、ストレスにより誘発されることもあります。

◆「アレルギーが原因となる咳」について詳しく>>

【参考情報】『喉頭アレルギー・アトピー咳嗽』日本咳嗽学会
https://www.kubix.co.jp/cough/c_doctor.html

1−3.その他の原因による喉の違和感

感染症やアレルギー症状の他に、以下のような場合でも喉の違和感を覚えることがあります。

<喉の乾燥>

喉が乾燥すると、ウイルスや細菌に対するバリア機能が低下し、炎症を起こしやすくなります。特に湿気の少ない冬は、喉が乾燥して痛みや違和感を感じることが多くなります。

また、鼻炎などで鼻が詰まっている人は、口呼吸が原因で喉の粘膜が乾燥しやすくなります。

口呼吸をすると、鼻の粘膜が持つフィルター機能や加湿・加温機能が働かないため、喉が無防備になってしまうのです。

【参考情報】『Mouth Breathing』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/22734-mouth-breathing

<喉への刺激・酷使>

タバコの有害物質、アルコールなどが刺激となり、喉の粘膜を傷つけて痛みが出ることがあります。

また、カラオケ、スポーツの応援などで長時間大声を張り上げたり、無理に声を出し続けると、声帯が刺激され、炎症が起こります。このような場合は、できるだけ喉を休めることが必要です。

<逆流性食道炎・咽喉頭逆流症(LPRD)>

胃酸が食道に逆流することで胸やけなどの不快な症状を引き起こすことを「逆流性食道炎」といいます。

さらに、胃内容物の逆流が食道だけでなく喉まで及び、喉の違和感や声がれ、慢性的な咳の原因となる病態を「咽喉頭(いんこうとう)逆流症(LPRD)」といいます。

喉は神経が多く敏感なため、少量の逆流でも咽喉頭逆流症の症状が誘発されます。

◆「胃食道逆流症(GERD)」について詳しく>>

【参考情報】『Evaluation and management of laryngopharyngeal reflux』National library of medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16189367/

<ストレス(咽喉頭異常感症)>

喉に炎症などの明らかな異常が認められないにもかかわらず、喉のつかえ感や違和感、締め付けられる感じがする病態を「咽喉頭異常感症」といいます。

ストレスや不安、疲労などの精神的な要因によって自律神経やホルモンの調子が崩れ、喉の筋肉を緊張させるために引き起こされる症状と考えられています。

2.呼吸器内科と耳鼻咽喉科、どちらを受診すべき?

喉に違和感がある場合、「呼吸器内科と耳鼻咽喉科、どちらを受診すればよいのか」と迷う方も多いでしょう。以下、受診の目安をご紹介します。

2−1.呼吸器内科を受診すべき症状

喉の違和感に加えて、以下のような症状がある場合は、呼吸器内科の受診をおすすめします。

【呼吸器内科を受診すべき症状】

・咳や痰が出る
・息苦しさや息切れがある
・胸の痛みや圧迫感がある
・呼吸をすると「ゼーゼー、ヒューヒュー」という音がする
・長年タバコを吸っていて喉に違和感がある、喘息やアレルギーの既往がある
・喉のイガイガ感が長く続く

呼吸器内科は、鼻から喉(咽頭・喉頭)、気管、気管支、肺などの呼吸器の症状や疾患を専門とする診療科です。

喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺炎、気管支炎、肺がんなどの病気が考えられる場合は、呼吸器内科での専門的な検査と治療が必要です。

◆「呼吸器内科を受診すべき症状」について詳しく>>

2−2.耳鼻咽喉科を受診すべき症状

喉の違和感に加えて、以下のような症状がある場合は、耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。

【耳鼻咽喉科を受診すべき症状】

・声がかすれる、声が出にくい(嗄声)
・下を向くと眉間のあたりが痛む
・鼻水や鼻づまりがある
・耳から膿が出る
・耳に痛みがある

耳鼻咽喉科は、呼吸器内科と同じように呼吸器を専門に診察していますが、鼻や耳といった「喉から上」の部分を得意としています。

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、中耳炎、アレルギー性鼻炎などの病気が考えられる場合は耳鼻咽喉科を受診しましょう。

2−3.どちらを受診すべきか迷ったら

実際のところ、喉の違和感の原因を患者さん自身で判断することは難しいため、まずは医療機関を受診することが大切です。

どちらの診療科を受診すべきか迷った場合は、呼吸器内科の受診をおすすめします。

呼吸器内科では、喉の違和感だけでなく、咳や息切れ、胸の症状など呼吸器全般を総合的に診察できるため、喘息や気管支炎など、見逃されやすい病気の早期発見につながります。

また、喉の違和感の背景に肺や気管支の病気が隠れているケースもあるため、呼吸器専門医による詳しい検査を受けることで、より正確な診断が可能になります。

もし診察の結果、耳鼻咽喉科での専門的な治療が必要と判断された場合は、適切な診療科への紹介を受けることもできますので、あまり深く悩まずに、まずは呼吸器内科を受診しましょう。

◆「咳が止まらない時は何科の病院か」について詳しく>>

3.検査について

聴診器
「喉の違和感」がある場合、病院では問診のほか、頸部を触って腫れやしこりがないかを触診したり、聴診器で胸の音を聞いたりします。また、喉を直接観察することで、炎症(腫れ)や傷などの状態を診ます。

さらに必要があれば、X(エックス)線検査やCT検査、MRI検査、頸部超音波検査(エコー)、内視鏡などによって、より詳しく状態を探っていきます。場合によっては血液検査を行うこともあります。

◆「レントゲン写真でわかること」について詳しく>>

3−1.呼吸機能検査

喉の違和感の原因が、「喉」ではなく、気管支などの別の場所に見つかった場合には、より詳細な検査を行うことになります。

呼吸器内科でできる専門的な検査として「呼吸機能検査」という検査方法があります。呼吸機能検査は喘息の診断や病態確認で行われる検査であり、気道がどのくらい狭くなっているかを調べることができる検査です。

喘息を患っている患者さんの気道は、健康な人よりも狭くなっており、空気が通りにくい状態になっています。気道の狭さは「スパイロメータ」という機器を使うことで、数値やグラフで表すことができます。

◆「呼吸器内科での専門的な検査」について詳しく>>

また、モストグラフという検査機器を使って、気道の状態をより詳しく確認することもあります。

これらの検査により、肺年齢を調べたり、呼吸機能の程度と病気の重症度を判断することができます。

喉の違和感だけではなく、呼吸の違和感や咳などの症状があるという方は、一度呼吸器内科にご相談ください。

3−2.血液検査

血液の中の細胞や抗体を調べ、体の中が正常か異常かを判断します。

一般的な血液検査では、白血球などに異常が認められるかどうかを検査し、ウイルスや細菌に感染しているかを確認します。

白血球は細菌がいる時に主に上昇するため、採血することで、ある程度細菌性かウイルス性かを確認することができます。

呼吸器内科では「血液ガス分析」や「特異的IgE抗体検査」という専門的な血液検査も必要に応じて行います。

これらの専門的な検査では、血中の酸素や二酸化炭素量を測定することで肺機能が正常かどうかを判断したり、アレルギーの有無や、アレルギーを引き起こす物質を特定を行います。

4.治療法と日常でできる対処法


喉に違和感を感じた場合、痛みを取り除くための「消炎鎮痛薬」や、痰のからみを取り除く「去痰薬」などの市販薬を使用することが多いと思います。

しかし、市販薬には喉の違和感そのものを治療するための薬は存在しないため、医療機関にて違和感の原因を探り、その原因に対する治療を行うことが重要となります。

4−1.医療機関での治療

医療機関では、原因に応じて主に以下のような治療を行います。

<ウイルス感染>

ウイルス感染症の場合、病気を根本的に治す薬はありませんが、喉の痛みがつらい時は、痛みを和らげる薬を処方します。インフルエンザなど治療薬がある病気は、その病気に合った治療薬を処方します。

【参考情報】『Sore throat – Diagnosis & treatment』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sore-throat/diagnosis-treatment/drc-20351640

<細菌感染>

溶連菌などの細菌感染が原因の場合は、抗菌薬(サワシリンなど)を処方します。溶連菌は合併症のリスクがあるため、しっかりと治療することが重要です。

<アレルギー性疾患>

季節性喉頭アレルギーやアトピー咳嗽などのアレルギー性疾患が原因の場合は、抗ヒスタミン薬による治療を行います。

症状が強い場合は、ロイコトリエン受容体拮抗薬などを適宜追加します。

【参考情報】『ロイコトリエン受容体拮抗薬』厚生労働省
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/95/8/95_8_1470/_pdf

<逆流性食道炎・咽喉頭逆流症>

胃酸の逆流が原因の場合は、PPI(プロトンポンプ阻害薬)などの制酸剤を使用して、胃酸の分泌を抑える治療を行います。

【参考情報】『Laryngopharyngeal Reflux: Diagnosis, Treatment, and Latest Research』National library of medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4297018/

4−2.日常でできる喉のケアと対処法

医療機関での治療に加えて、日常生活で以下のような対処法を実践することで、喉の違和感を軽減することができます。

喉の違和感の一番の対処法は、うがいで喉についている菌やウイルスを洗い流すことです。

また、うがいをすることで水分を補給することができ、乾燥予防にもつながります。

まずは、うがいをする習慣をつけましょう。

また、喉の乾燥を防ぐため、以下のように保湿することも大切です。

・部屋を加湿する(湿度50~60%が理想)
・マスクを着用する
・のど飴やのどスプレーの使用
・こまめな水分補給

さらに喉への負担を減らすために、以下のことにも注意して生活しましょう。

・禁煙(タバコは喉の粘膜を傷つけます)
・アルコールの摂取を控える
・激辛料理など刺激物を避ける

喉の違和感を感じたら、治療と合わせてこれらの対処法を実践しましょう。

◆「喉の乾燥対策」について詳しく>>

5.おわりに

「喉の違和感」という大まかな症状から考えられる病気やその検査方法などを紹介しました。

症状として喉の違和感が出現する病気は多く存在しますが、その原因が喉にあるとは限りません。喉の違和感の原因が気管支や肺などにある場合も考えられます。

喉に違和感があり、さらに咳や倦怠感、息切れや胸の痛みなどの症状がある場合には、お早めに呼吸器内科を受診することをおすすめします。

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