横になると息苦しいときに考えられる理由と対処法
横になると息が詰まるように感じたり、息苦しさを覚えたりすると、不安になるかもしれません。
そんなときは、寝る姿勢を変えてみたり、緊張を緩めてリラックスすることで、症状が和らぐことがあります。
しかし、息苦しさがなかなか改善しない場合、呼吸器や心臓の病気が隠れている恐れもあります。
この記事では、横になると息苦しくなる原因や考えられる病気について解説します。
目次
1.横になると息苦しいときに考えられる理由
横になると息苦しくなり、ぐっすり眠れない……。
そんなとき、健康な人でも起こりうる原因について紹介します。
1-1.寝姿勢の影響
横になると息苦しさを感じる原因の一つに、寝姿勢が関係していることがあります。
<うつ伏せ寝の場合>
顔が枕や布団に押しつけられ、気道が圧迫されると、呼吸がしにくくなることがあります。
さらに、肺も圧迫されて十分に膨らまなくなるため呼吸が浅くなり、酸素の取り込みが不十分になって息苦しさを感じることがあります。
<仰向け寝の場合>
仰向けで寝ると、重力の影響で舌が喉の奥に落ち込みやすくなり、気道が狭くなることで息苦しさを感じることがあります。
特に肥満体型の人は、首周りの脂肪が気道を圧迫しやすく、さらに呼吸が苦しくなりやすい傾向があります。
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1-2.寝具が合っていない
体に合わない寝具を使っていると、肩こりや腰痛が引き起こされることがありますが、実は呼吸にも影響を及ぼすことがあります。
<枕の高さ>
枕が高すぎると、あごが引かれた状態になり、喉が圧迫されて気道が狭くなります。
その結果、呼吸がしにくくなり、息苦しさを感じることがあります。
<マットレスの硬さ>
マットレスが柔らかすぎると、体が沈み込み、肋骨の動きが制限されてしまいます。
さらに、お尻が沈むことで横隔膜の動きも悪くなり、呼吸が浅くなる原因になります。
反対に、マットレスが硬すぎると、腰や背骨に負担がかかり、痛みが生じることがあります。
痛みで体がリラックスできないと呼吸が浅くなり、息苦しさを感じることにつながります。
【参考情報】『エアマットレスが臥床中の呼吸機能へ与える影響』井上貴裕,野中紘士,伊藤健一
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/32/2/32_183/_pdf/-char/ja
1-3.室内の換気が不十分
換気が不十分だと、室内の二酸化炭素濃度が上昇し、息苦しさを感じる原因になることがあります。
人が呼吸をすると二酸化炭素が増えるので、それが十分に外に排出されないと、室内の酸素が不足しやすくなります。
特に冷房や暖房を使っている間は、部屋を閉め切ることが多くなるため、空気がよどんでしまいがちです。
さらに、換気をしないと湿度が上がり、カビやダニなどのアレルゲンが溜まりやすくなります。これらが原因で咳が出たり、息苦しさを感じたりすることもあります。
カビやダニなどのアレルゲンは、空気清浄機で吸い込むことはできますが、空気清浄機では二酸化炭素の濃度は下がらないので、窓を開けて部屋の換気を行うことは必要です。
1-4.消化不良
寝る直前に食事をすると、胃の中に食べたものが消化されずに残ったまま、横になります。
すると、胃が圧迫されて横隔膜が押し上げられ、肺が膨らみにくくなります。その結果、呼吸が浅くなり、息苦しさを感じることがあります。
特に、炭酸飲料やアルコールは胃の膨満感を引き起こしやすいため、寝る前の摂取には注意が必要です。
【参考情報】『Bloated Stomach』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/21740-bloated-stomach
1-5.ストレスや不安
ストレスや不安で自律神経のバランスが乱れると、呼吸にも影響が及ぶことがあります。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、ストレスを感じると交感神経が優位になります。
交感神経が活発になると、体が緊張し、呼吸が浅く速くなることで息苦しさを感じることがあります。
特に、寝る前に考え事をして不安になったり、翌日に緊張する予定があったりすると、リラックスできずに息苦しくなりやすくなります。
さらに、交感神経の働きによって筋肉が緊張すると、呼吸に関わる筋肉も硬くなり、肺が膨らみにくくなります。その結果、呼吸が浅くなり、息苦しさを感じることがあります。
【参考情報】『How Your Body Controls Breathing』National Herat,Lung,and Blood Insutitude
https://www.nhlbi.nih.gov/health/lungs/body-controls-breathing
2.横になると息苦しいときに考えられる病気
横になると息苦しい日が続くと、ぐっすり眠れないだけでなく、「何か病気が隠れているのでは?」と不安になるかもしれません。
この章では、横になると息苦しくなる原因として考えられる病気について説明します。
2-1.呼吸器の病気
考えられる病気としては、喘息、咳喘息、睡眠時無呼吸症候群などがあります。
<喘息・咳喘息>
喘息や咳喘息の人は、気道に慢性的な炎症が生じているため、もともと気道が狭くなりやすい状態にあります。
◆「喘息の初期症状:早期発見のため知っておきたい兆候」>>
◆「咳喘息」についてくわしく>>
さらに、寝ている間は副交感神経が優位になる影響で筋肉がゆるみ、気道がさらに狭くなるため、息苦しさが悪化することがあります。
<睡眠時無呼吸症候群>
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に呼吸が止まったり、浅くなったりする病気です。
その結果、無呼吸による酸素不足や気道閉塞による咳が起こり、息苦しさを感じることがあります。
◆「睡眠時無呼吸症候群の原因|なぜ睡眠中に気道が狭くなる?」>>
2-2.心不全
心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる病気です。
特に左心不全の場合、呼吸器系の症状が強くなり、息苦しさを感じやすくなります。
<心不全の人が横になると息苦しくなる理由>
横になると、立っているときや座っているときよりも心臓に戻る血液の量が増えるため、息苦しさが現れやすくなります。
立っていると、重力の影響で血液が下半身にたまりやすくなります。しかし、横になると体が水平になり、血液が心臓へ戻りやすくなります。
本来であれば、心臓は戻ってきた血液をスムーズに送り出しますが、心不全の状態ではその力が弱いため、血液の流れが滞ってしまいます。
その結果、肺の血管に血液がたまり「肺うっ血」を引き起こし、十分な酸素を取り込めなくなり、息苦しさにつながるのです。
心不全の人は、仰向けで寝ると心臓に戻る血液の量が増えて負担がかかるため、特に息苦しさを感じやすくなります。
【参考情報】『心不全』国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/heart-failure/
2-3.胃食道逆流症
胃食道逆流症は、胃酸を含む胃の内容物が食道に逆流してしまう病気です。
<横になると症状が悪化する理由>
普段、立ったり座ったりしているときは、重力の影響で胃酸が逆流しにくくなっています。
しかし、横になると胃と食道が同じ高さになるため、胃酸が上がりやすくなり、症状が悪化することがあります。
<息苦しさを感じる原因>
胃酸が喉の近くまで逆流すると、粘膜が炎症を起こし、咳が出やすくなることで息苦しさを感じることがあります。
さらに、胃酸が気管に入り込むと、気道が刺激されて咳や喘息のような症状が現れ、息苦しさが悪化することもあります。
【参考情報】『胃食道逆流症(GERD:ガード)って、どんな病気?』東京大学医学部附属病院 予防医学センター
https://www.todai-yobouigaku-dock.jp/contents/useful/column/2022/07/gerd.html
3.病院での検査
横になると息苦しさを感じる症状が続くようであれば、病院で検査を受けることが大切です。
この章では、病院で行われる主な検査について説明します。
3-1.画像検査
画像検査では、肺や心臓の状態を確認することができます。
<X線(レントゲン)検査>
胸部レントゲンでは、肺の異常や水が溜まっていないか、心臓が大きくなっていないかなどを調べます。
◆「レントゲン写真から、呼吸器内科でわかること」>>
<CT(コンピューター断層撮影)検査>
CTは体の断面を複数枚撮影できるため、レントゲンよりも詳しく調べることが可能です。肺や心臓の異常をより正確に把握できます。
3-2.血液検査
血液検査では、血液中の成分を分析し、病気の有無や原因を調べます。
<アレルギーの有無>
喘息や咳喘息がアレルギーによるものと考えられる場合、アレルゲンに対する抗体があるかどうかを確認します。
◆「アレルギー」についてくわしく>>
<心不全の兆候>
心不全が疑われる場合、血液中のさまざまな数値に異常が見られることがあります。
例えば、心臓から分泌される利尿ホルモン(BNPやNT-proBNP)が上昇していると、心不全の可能性が高まります。
【参考情報】『血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について』日本心不全学会
https://www.asas.or.jp/jhfs/topics/bnp201300403.html
<その他の異常の確認>
心不全の影響で、以下のような異常が見られることがあります。
・低アルブミン(肝機能低下による栄養状態の悪化)
・血液凝固異常(肝障害の影響)
・腎機能の低下
・電解質のバランス異常
また、感染症や心筋梗塞などが心不全の原因となることもあるため、それらの有無を血液検査で確認することもあります。
3-3.心電図
心電図検査は、心臓が動く際に発生する電気信号を波形として記録する検査です。
通常、心臓は規則正しく動いていますが、異常があると波形に乱れが生じます。 この検査によって、以下のような疾患を発見できます。
・不整脈:心不全の原因となることがある
・心筋梗塞:心臓の血流が途絶える病気
・狭心症;心臓の血流が一時的に不足する病気
心電図は短時間で行える簡単な検査ですが、心臓の異常を発見するうえで重要な役割を果たします。
【参考情報】『心電図検査ってどんなものですか』日本心臓財団
https://www.jhf.or.jp/check/ecg/inspect/
3-4.心エコー検査
心エコー検査は、超音波を使って心臓の形や動き、血流の状態を確認する検査です。
心臓の弁の動きが悪くなる「弁膜症」や、肺の血圧が高くなる「肺高血圧」などの異常を調べることができます。
息苦しさの原因を特定し、心不全の診断にも役立つ検査です。
【参考情報】『Echocardiogram』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/tests-procedures/echocardiogram/about/pac-20393856
3-5.胃カメラ(胃内視鏡)
口や鼻からカメラの付いた内視鏡を挿入し、胃や食道を直接見て確認する検査です。
胃食道逆流症の場合、食道に胃酸による炎症の有無を確認します。
検査に痛みや苦しさなどの不安がある場合は、鎮静剤を使用することもあります。
【参考情報】『上部消化管内視鏡検査(食道・胃・十二指腸内視鏡)と治療』日本消化器内視鏡学会
https://www.jges.net/citizen/check-cure/no3-1
4.横になると息苦しい時の対処法
横になると息苦しくなる原因が病気だとわかったら、まずは治療で症状を和らげましょう。
さらに、以下のような自宅でできる対処法を取り入れることで、症状の軽減が期待できます。
4-1.生活習慣・寝具の見直し
横になると息苦しくなる原因は、生活習慣や寝具にあるかもしれません。
食事や寝る姿勢、寝具の工夫で、ぐっすり眠れる環境を整えましょう。
<寝る直前の飲食を控える>
寝る前の飲食は、横隔膜の動きを妨げたり、胃の内容物が逆流しやすくなったりする原因になります。
夕食は就寝の2~3時間前までに済ませるようにしましょう。
<アルコールの摂取タイミングに注意>
アルコールには筋弛緩作用があるので、飲みすぎると気道の筋肉が緩み、気道が狭くなります。
寝酒は控え、就寝4時間前までに飲み終えるのが理想的です。
【参考情報】『お酒と睡眠 ~「眠るための飲酒」は避けましょう~』横浜市
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/kenko-iryo/kokoro/kokorosoudan/column/20211013162348942.html
<体重管理を意識する>
肥満体型の人は脂肪で気道が圧迫されて狭くなることがあり、それが息苦しさの原因につながります。
バランスの取れた食事と適度な運動を取り入れ、無理のない範囲で徐々に減量を目指しましょう。
<寝る姿勢を工夫する>
仰向けやうつ伏せは気道が狭くなりやすいため、横向きで寝るのが理想的です。
横向きに寝るのが慣れない場合は、抱き枕を活用するのもいいでしょう。
<寝具を見直す>
枕の高さやマットレスの硬さが合っていないと、気道の圧迫や肺の膨らみにくさの原因になります。
自分に合った寝具を選び、快適な睡眠環境を整えましょう。
4-2.リラクゼーション
不安やストレスが原因で息苦しくなり、寝つきが悪いと感じる場合は、リラックスできる習慣を取り入れてみましょう。
軽いストレッチやマッサージを行うと、筋肉の緊張がほぐれ、自律神経のバランスが整いやすくなります。すると、リラックス効果が高まり、息苦しさの軽減につながります。
心地よい香り、落ち着く香りを楽しむのもいいでしょう。特にラベンダーの香りは、ストレス緩和に有効であることを示す研究があります。
【参考情報】『The smell of lavender is relaxing, science confirms』Frontiers
https://www.frontiersin.org/news/2018/11/06/lavender-odor-relaxing-linalool
自然の音を聞くのも効果的です。虫や鳥の鳴き声、風や波の音などの環境音には、安心感をもたらし、ストレスを和らげる作用があります。
【参考情報】『1/fゆらぎ音のリラックス効果に関する一検討』佐巻優太ほか
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacbfsa/28/0/28_103/_pdf/-char/ja
さらに、ゆっくりと深呼吸をすることで、交感神経の興奮が鎮まり、心が落ち着きやすくなります。イライラや不安を感じたときは、意識して深くゆっくりと呼吸をしてみましょう。
【参考情報】『深呼吸によるストレス緩和効果』古賀麻奈美ほか
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2009/0/2009_0_H4P3260/_article/-char/ja/
5.おわりに
横になると息苦しくなる原因は、寝具や寝室の環境、生活習慣の問題だけでなく、呼吸器や心臓の病気の可能性もあります。
もし生活習慣や環境を見直しても症状が改善しない場合は、治療が必要な病気が隠れているかもしれません。
症状が改善しない場合は、早めに病院を受診し、原因をしっかり調べましょう。