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外来

好酸球性肺炎とはどのような病気か

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年12月08日

好酸球性肺炎とは、アレルギー反応に関与している白血球の一種である好酸球によって引き起こされる肺炎です。

特定の薬剤や化学物質、タバコ、寄生虫、カビ(真菌)などのアレルゲンの吸入や、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症などの疾患が原因で発症することもありますが、原因不明であることも少なくない病気です。

この記事では、好酸球肺炎と一般的な肺炎との違いや、好酸球肺炎の症状や治療、日常生活でのポイントまで詳しく解説します.

1.好酸球性肺炎とは?


好酸球性肺炎を理解するために、まずはこの病気がどのような仕組みで起こりどんな特徴を持っているのかを、専門用語をできるだけかみ砕いて整理していきます。

一見すると普通の肺炎と似ているようでいて、原因や体の中で起きていることは大きく異なる点があります。

1-1.一般的な肺炎との違い

好酸球性肺炎は、細菌やウイルスが原因となる一般的な肺炎とは性質が大きく異なる病気です。

通常の肺炎では、病原体によって感染が起こり、免疫反応として肺に炎症が生じます。

一方、好酸球性肺炎では、体を守る免疫細胞のひとつである 「好酸球」 が、何らかの刺激や反応をきっかけに肺へ過剰に集まることで炎症が引き起こされます。

つまり、好酸球が本来の働きを超えて活性化し、肺の組織に入り込みすぎることで生じる「免疫反応型(アレルギー反応型)」の肺炎といえます。

このように好酸球性肺炎は感染症ではないため、細菌性肺炎やウイルス性肺炎のように他の人へうつる心配はありません。

◆「うつる肺炎、うつらない肺炎」>>

【参考情報】”Eosinophilic Pneumonia” by National Institutes of Health
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK537169/

1-2.好酸球性肺炎が起こる原因

薬剤粉じんカビ寄生虫化学物質喫煙などが発症のきっかけになると言われています。

特に薬剤では一部の抗菌薬解熱鎮痛薬が報告されており、環境因子ではカビホコリ、職場や生活環境で吸い込む粉じん、さらには化学ガスなどが誘因になることがあります。

また、寄生虫感染に伴うアレルギー反応が背景にあるタイプも存在します。

しかし、これらの要因が明らかに関与しないケースもあり、医学的には 原因が特定できない「特発性」 として扱われることもあります。

こうした点から、好酸球性肺炎は 好酸球性肺疾患の一つ であり、炎症が肺の組織に及ぶため 間質性肺炎のカテゴリーにも含まれる疾患として整理されています。

◆「間質性肺炎」について詳しく>>

【参考情報】『重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤性好酸球性肺炎』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000842161.pdf

1-3.急性と慢性に分類される

好酸球性肺炎は、経過の速さ症状の現れ方によって急性型と慢性型に分けられます。

急性型は数日から1週間ほどの短い期間で一気に悪化し、発熱、強い呼吸苦、乾いた咳などが急速に進行するのが特徴です。

急性呼吸不全を伴うこともあり、迅速な治療が必要です。

また、喫煙の再開や大量の粉じん吸入が引き金になるケースもあると報告されています。

一方、慢性型は数週間から数ヶ月と、長い時間をかけて進行します。

発熱は軽度のことが多く、疲れやすさ、軽い咳、息切れなど、はっきりしない症状が続くことがあります。

アレルギー体質の関与や、環境要因への長期的な曝露が背景にあることも多いとされています。

このように、急性型と慢性型では症状の強さ、発症の背景、治療で重視するポイントが異なるため、診察では発症のタイミングや生活環境の変化、薬剤の使用歴などを丁寧に確認をしています。

【参考情報】”Eosinophilic Pneumonia” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/23955-eosinophilic-pneumonia

2.急性好酸球性肺炎について


急性好酸球性肺炎とは、肺の中に多くの好酸球が集まって炎症を起こす病気です。

発症年齢は20~40歳と比較的若く、20歳前後の男性に目立ちます。

日本では、喫煙と関連しているという報告が多く、喫煙開始後、または禁煙に失敗して再びタバコを吸い始めた人がかかりやすいと言われています。

2-1.症状


発熱胸痛息切れ全身倦怠感呼吸困難などの症状があり、急速に進行します。

呼吸不全により病院に搬送される患者さんも多いです。

喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼーといった呼吸音)を伴うこともあります。

食欲不振関節痛筋肉痛など、ほかにもさまざまな症状がみられます。

◆「喘鳴について」>>

2-2.検査


主に、胸部画像検査血液検査を行います。

胸部エックス線検査や胸部CT検査では、肺に炎症の影があるか、肺に水が溜まっているかなどを確認します。

血液検査では、血液中に好酸球が増えているかなどを確認します。

◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査について」>>

2-3.治療


自然に治る場合もありますが、ほとんどの患者さんには、ステロイド薬による治療を行います。

感染症ではないので、抗菌薬は効きません。

通常は2~4週間以内で治るとされています。

◆「呼吸器内科で処方される薬について」>>

3.慢性好酸球性肺炎について

慢性好酸球性肺炎とは、原因不明の好酸球性肺炎のうち、2~6ヶ月の経過をたどるものを指します。

30~40歳代での発症が多く、女性は男性より約2倍発症しやすいと言われています。

急性好酸球性肺炎とは異なり、喫煙との関連は報告されていません。

3-1.症状

発熱呼吸困難喘鳴体重減少寝汗などの症状があり、胸痛血痰が出る場合もあります。

また、喘息アレルギー性鼻炎と併発する人も多いです。

◆『喘息の症状・検査・治療の基本情報』>>

【参考情報】”Idiopathic chronic eosinophilic pneumonia and asthma: how do they influence each other?” by National Institutes of Health
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12882444/

3-2.検査

主に、胸部画像検査血液検査肺機能検査などを行います。

胸部エックス線検査や胸部CT検査では、肺に炎症の影があるかなどを確認します。

血液検査では、血液中の白血球や好酸球、炎症反応で増加するCRPが増えているかなどを確認します。

肺機能検査では、肺活量が低下しているかなどを確認します。

◆『レントゲン検査でわかること』>>

3-3.治療

ステロイド薬がよく効きます。

しかし、薬の量を減らしたり中止した後に再発することも多く、ステロイド薬での治療が終わってからも1年程度は注意が必要です。

4.再発予防と日常生活で気をつけたいこと

好酸球性肺炎は、急性・慢性のどちらの場合も適切な治療で改善が期待できる病気です。

ただし再発や長期の経過観察が必要となる場合もあるため、治療後も安心して過ごせるように、日々の生活で気をつけたいことや体調の変化に気づくポイントを押さえておくことが大切です。

4-1.再発を防ぐために大切なポイント

好酸球性肺炎が治まったあとの過ごし方は、再発を防ぐうえでとても重要です。

症状が落ち着いた後も、次のポイントを意識しておくことが大切です。

●原因となる可能性がある薬剤や環境刺激を避ける
好酸球性肺炎は、アレルギー反応に関わる細胞である好酸球が肺に集まり、炎症を起こすことで生じる病気です。

薬剤の影響やカビ・真菌などの吸入がきっかけになることも知られていますが、はっきりとした原因が特定できないケースも多くあります。

治療後は、疑われる薬剤や環境刺激をできるだけ避けることが再発防止につながると考えられています。

【参考情報】『好酸球性肺炎』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-03.html

● 禁煙の重要性
急性・慢性どちらの場合でも、喫煙は呼吸器の病気にとって負担になりやすいといわれています。

タバコが気道の炎症を強くし症状を悪くしてしまうのです。

好酸球性肺炎を経験された方には禁煙が強く勧められます。

【参考情報】『喫煙と健康』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000550455.pdf

● 風邪が長引いているだけと決めつけない
慢性型では、咳や微熱、寝汗、息切れが数週間続くゆっくりとした再発が起こることがあります。

特に注意したい変化として、咳が再び長引く、夜に寝汗が続く、息切れが目立つ、体重が少しずつ減るといったことがあります。

こうした変化は再発の兆しとして注意が必要です。気になる症状があれば早めにご相談ください。

◆『寝汗は病気のサイン?病気との関連』>>

【参考情報】”Acute Eosinophilic Pneumonia. Causes, Diagnosis, and Management” by American Thoracic Society
https://www.atsjournals.org/doi/10.1164/rccm.201710-1967CI

4-2.日常生活で気をつけたいこと

回復期の過ごし方が整うと、体調が安定しやすく再発の早期発見にもつながります。

安心して生活を送るためのポイントを以下にまとめます。

●無理のない範囲で活動し、息切れなどの変化に注意する
好酸球性肺炎の治療後は肺の炎症が少しずつ落ち着いていく時期です。

そのため、階段で息切れが強い、深く息を吸うと胸が痛い、以前より息が吸いにくいといった変化には注意が必要です。

いつもと違う息苦しさは受診すべき大切なサインになります。

●微熱や寝汗、咳の悪化は早めに受診
慢性型では、再発のサインが微熱や寝汗、咳のぶり返しとして現れることがあります。

ちょっと変だなと感じた段階で受診することが、悪化を防ぐもっとも確実な方法です。

●市販の薬や健康食品は使用前に医師に相談を
治療中や回復期は、体の免疫や胃腸、血糖、代謝などの働きが治療薬の影響を受けやすく、市販の薬や健康食品が思わぬ作用を起こす可能性があります。

少しでも気になることがあれば、事前に医師にご相談いただくことで安心につながります。

5.おわりに

好酸球性肺炎は、肺の中に多くの好酸球が認められる特殊な肺炎です。

原因が特定できる場合、その原因を避けることで回復することもありますが、症状が急速に進むと呼吸不全に繋がったり、慢性化すると長期間にわたり治療が必要となったりする病気です。

咳や発熱などの気になる症状がありましたら、早めに呼吸器内科を受診しましょう。

◆『横浜市で呼吸器内科をお探しなら』>>

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