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無気肺とはどんな病気?原因・症状・検査・治療を解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年01月06日

無気肺(むきはい)とは、肺の一部に空気が入らなくなり、しぼんだ状態になることを指します。

肺は無数の小さな袋状の肺胞で空気と血液のガス交換を行っていますが、無気肺ではこの肺胞が十分に広がらず、正常に働かなくなります。

無気肺により肺の一部が使われなくなると、酸素を取り込む効率が低下し、息切れや呼吸困難、咳、胸の違和感などが現れることがあります。しかし、無気肺になった範囲が小さい場合は、自覚症状がほとんどないこともあります。

この記事では、無気肺の種類や症状、検査、治療についてくわしく解説します。

1.無気肺の種類と原因


無気肺は原因により、閉塞性無気肺と非閉塞性無気肺に分類されます。

<閉塞性無気肺>
太い気管支がふさがれることで起こる

<非閉塞性無気肺>
気管支がふさがれる以外の原因で起こる

さらに、非閉塞性無気肺には、次のようなタイプがあります。

 ・圧排性無気肺(あっぱいせいむきはい)

 ・癒着性無気肺(ゆちゃくせいむきはい)

 ・瘢痕性無気肺(はんこんせいむきはい)

 ・荷重部無気肺(かじゅうぶむきはい)

また、無気肺には原因による分類とは別に、形態や発生部位、臨床像に基づいた名称もあります。

 ・円形無気肺(えんけいむきはい)

 ・板状無気肺(ばんじょうむきはい)

 ・中葉舌区症候群(ちゅうようぜっくしょうこうぐん)

 ・斑状無気肺(はんじょうむきはい)

【参考情報】『Atelectasis』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/atelectasis/symptoms-causes/syc-20369684

1-1.閉塞性無気肺


閉塞性無気肺は、太い気管支が何らかの原因でふさがれることで起こる無気肺です。原因として多いのは、痰などの分泌物の詰まり、腫瘍、異物の吸い込みなどです。

気管支がふさがれると、その先に空気が入り込めなくなり、すでに入っていた空気も徐々に吸収されて、肺がしぼんだ状態になります。

手術後や長期間横になっているとき、咳の力が弱くなることで痰がたまり、閉塞性無気肺を起こすこともあります。

治療は気管支をふさいでいる原因を取り除くことが基本です。主な治療法は次のとおりです。


<痰や分泌物が原因>
体位ドレナージ(体の向きを変えることで、肺の中にたまった痰を外に出しやすくする方法)、呼吸リハビリ、去痰薬の使用により、痰を出しやすくします。必要に応じて吸引を行います。

<異物による閉塞>
気管支鏡などを用いて異物を取り除きます。

【参考情報】『気管支鏡検査とはどのような検査ですか?』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q33.html

<腫瘍による閉塞>
手術、放射線治療、抗がん薬治療などで腫瘍を縮小・除去します。

◆「肺がん」についてくわしく>>

<術後や寝たきりが関係する場合>
なるべく早く床を離れ、深く息を吸う練習やしっかり咳をする練習を行って、気道が再びふさがらないようにします。


閉塞が改善すると肺は再び広がりやすくなりますが、放置すると肺炎を合併することがあるため、早期対応が重要です。

1-2.圧排性無気肺

圧排性無気肺は、肺が外側から押されることで十分に広がらず、しぼんでしまう状態です。

原因としては、胸水や気胸、腫瘍などに加え、心臓が大きくなることや、妊娠・腹水・腸のガスなどで横隔膜が持ち上がることが挙げられます。

圧排性無気肺の治療は、肺を押している原因を取り除くことが中心です。原因に応じて、次のような治療が行われます。


<胸水>
胸腔穿刺や胸腔ドレナージで胸水を排出し、肺が広がるスペースを確保します。

<気胸>
軽症では安静経過観察、必要に応じて胸腔ドレナージを行い、肺を再膨張させます。

◆「気胸」とはどんな病気?>>

<腫瘍による圧迫>
手術、放射線治療、薬物療法などで腫瘍を縮小・除去します。

<心拡大>
心不全治療(利尿薬、循環管理など)により心臓の負担を軽減します。

【参考情報】『心不全』国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/heart-failure/

<横隔膜の持ちあがり>
腹水の排液、腸管ガスの軽減、体位調整などで横隔膜の位置を下げます。


あわせて、深呼吸や呼吸リハビリ、体位ドレナージを行い、肺が再び広がりやすい状態を保つことも重要です。

1-3.癒着性無気肺

癒着性無気肺は、肺胞がうまく開かず、しぼんだ状態が続くことで起こる無気肺です。肺の内側の働きが低下することで空気が入りにくくなります。

主な原因は、サーファクタントと呼ばれる物質の不足や働きの低下です。サーファクタントは肺胞がつぶれないように保つ役割を持っており、これが減ると肺胞同士がくっつき、無気肺が生じやすくなります。

【参考情報】『The Role of Surfactant in Lung Disease and Host Defense against Pulmonary Infections』American Thoracic Society
https://www.atsjournals.org/doi/10.1513/AnnalsATS.201411-507FR

癒着性無気肺は、重症感染症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、未熟児などで見られることがあります。治療では、原因となる病気の改善に加え、呼吸管理や適切な換気、必要に応じた酸素投与が行われます。

【参考情報】『急性呼吸促迫症候群』日本救急医学会
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0114.html

1-4.瘢痕性無気肺

瘢痕性無気肺は、肺の組織が硬くなる線維化により、元の形に戻れなくなることで起こる無気肺です。炎症や傷が治る過程でできた瘢痕(はんこん)が原因となり、肺が十分に広がらなくなります。

主な原因としては、肺線維症、間質性肺炎、過敏性肺炎、サルコイドーシス、じん肺などがあげられます。これらにより肺の組織が線維化すると、その部分は柔軟性を失い、空気が入りにくくなります。

◆「間質性肺炎」について>>

◆「過敏性肺炎」について>>

◆「肺サルコイドーシス」について>>

◆「じん肺症」について>>

瘢痕性無気肺は、他のタイプと異なり、元に戻りにくいことが特徴です。そのため治療では、無気肺そのものを改善するというより、呼吸機能の低下を抑え、症状を管理することが中心となります。

1-5.荷重部無気肺

荷重部無気肺は、体の重みや重力の影響で、肺の一部が押しつぶされて起こる無気肺です。

長時間あお向けで寝ている状態や、動く機会が少ないときに起こりやすく、背中側や下側の肺に生じるのが特徴です。手術後や高齢者、重い病気で寝たきりの状態が続く人に多く見られます。

治療や予防としては、体位を変える、早めに体を起こす、深呼吸や呼吸体操を行うことが重要です。重力による圧迫を減らすことで、肺は再び広がりやすくなります。

1-6.円形無気肺

円形無気肺は、肺の一部が丸いかたまりのように見える特殊な無気肺です。多くは、胸膜の肥厚や癒着、過去の胸水や炎症がきっかけとなり、肺が内側に引き込まれて生じ、特に下の肺にできやすいのが特徴です。

画像検査では腫瘍のように見えることがありますが、実際には肺が内側に引き寄せられてつぶれ、丸くかたまった状態になったものです。

進行する病変ではないことが多く、症状も乏しいため、治療を行わず経過観察となる場合もあります。ただし、画像上は肺がんとの区別が重要となるため、慎重な評価が必要です。

1-7.板状無気肺

板状無気肺は、肺の一部が板のように細長くつぶれた状態になる無気肺です。画像検査では、線や帯のように見えます。肺の下のほうに生じることが多く、比較的軽い無気肺とされています。

主に、浅い呼吸が続いたときに起こりやすく、手術後、長時間の安静、痛みで深呼吸ができない状態などがきっかけになります。

板状無気肺は、深呼吸や体を動かすことで改善しやすくなります。呼吸を深くすることや、体位を変えることが予防と回復に役立ちます。

1-8.中葉舌区症候群

中葉舌区症候群は、右肺の中葉や左肺の舌区という部位に、無気肺や炎症がくり返し起こる状態を指します。

これらの部位は気管支が細く、分泌物がたまりやすいため、空気の通りが悪くなりやすいという特徴があります。

原因としては、痰の詰まり、慢性的な炎症、気管支の狭さや曲がりなどが挙げられます。その結果、肺が十分に広がらず、無気肺が長引いたり、肺炎をくり返したりします。非結核性抗酸菌の感染が関係している場合もあります。

【参考情報】『非結核性抗酸菌症』神奈川県立循環器呼吸器病センター
https://junko.kanagawa-pho.jp/diseases/non-tuberculous.html

治療では、痰を出しやすくするケアや呼吸リハビリが基本となります。改善しない場合には、気管支鏡による検査や治療が行われることもあります。

1-9.斑状無気肺

斑状無気肺は、肺の中に小さな無気肺が点々と散らばってできる状態です。一つひとつは小さいものの、広い範囲に生じることがあり、肺全体が均一に広がらず、部分的に空気が入りにくくなります。

浅い呼吸が続くことや、痰が十分に排出されないことが主な原因で、高齢者、寝たきり、手術後、感染症の経過中などに見られます。

斑状無気肺は、体位変換や深呼吸、呼吸リハビリによって改善することが多く、原因への対応とあわせたケアが重要です。

【参考資料】『新・呼吸器専門内科医テキスト』日本呼吸器学会
https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524226894/

2.無気肺の検査


無気肺の検査は、画像検査を中心に行われます。


<胸部X線(レントゲン)検査>
最も基本的な検査です。肺がしぼんだ部分が白く写り、肺の縮みや縦隔の偏位などから無気肺を疑います。

◆「呼吸器内科のレントゲン検査」について>>

<胸部CT検査>
無気肺の範囲や原因を詳しく確認できます。腫瘍、痰の詰まり、胸水などの有無を評価するのに有用です。

<気管支鏡検査>
閉塞性無気肺が疑われる場合に行います。気道の中を直接観察し、痰や異物、腫瘍の確認や除去が可能です。

<血液検査・血液ガス検査>
炎症の有無や、酸素不足の程度を評価するために行われます。


これらの検査を組み合わせて、無気肺の有無、原因、重症度を判断します。

【参考資料】「新・呼吸器専門内科医テキスト」日本呼吸器学会
https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524226894/

3.おわりに

無気肺は、肺がしぼんで空気が入りにくくなる状態で、原因や起こり方によって治療や対応が大きく異なります。浅い呼吸や長時間の安静など、日常的な状況がきっかけになることもあれば、病気が背景にある場合もあります。

軽い無気肺では、体位を変えることや深呼吸を意識するだけで改善することがあります。一方で、閉塞や圧迫が原因となっている場合は、その原因に対する治療が欠かせません。また、無気肺が続くと、痰がたまりやすくなり、肺炎を起こすリスクも高まります。

症状がはっきりしないこともありますが、息苦しさや呼吸の変化に気づいたときは、早めに医療機関で相談することが重要です。無気肺について正しく理解し、適切に対処することが、肺の状態を保つことにつながります。

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