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外来

無気肺について

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2021年12月08日

何らかの原因により気管支がふさがれたために、肺に空気が入らずにしぼんでしまった状態を無気肺と言います。

1.無気肺の種類

無気肺は原因により、閉塞性無気肺と非閉塞性無気肺に分類されます。
さらに、非閉塞性無気肺は圧排性無気肺、癒着性無気肺、瘢痕性無気肺、荷重部無気肺に分類されます。
また、特別な名前を持つ無気肺として、円形無気肺、板状無気肺、中葉舌区症候群、斑状無気肺があります。

1−1.閉塞性無気肺

閉塞性無気肺とは、太い気管支がふさがれてしまうことにより肺に空気が入らなくなってしまう状態です。
吸収性無気肺ともいいます。
気管支がふさがれる原因は、がんや気管支結核、気管支結石、粘液や異物がつまることなどが主なものです。

1−2.圧排性無気肺

圧排性無気肺とは、胸水やがん、心臓の肥大などにより肺が圧迫されることが原因で、肺に空気が入らなくなった状態です。
肺が収縮しようとする力と肺を膨らませる力のバランスが崩れてしまうことにより生じます。
受動性無気肺ともいいます。

1−3.癒着性無気肺

癒着性無気肺とは、肺胞を膨らみやすくする「肺サーファクタント」が減少したり、働きが悪くなることで肺胞がしぼんでしまう状態です。
肺が未成熟で肺サーファクタントが欠乏する新生児呼吸窮迫症候群や、がんの放射線治療が原因で発症する急性放射線肺炎で認められます。
閉塞性無気肺と異なり、気管支は空気を取り込める状態です。

1−4.瘢痕性無気肺

瘢痕性無気肺とは、肺の周りが厚く硬くなる「肺の繊維化」により、肺胞が膨らむことができなくなった状態です。
真菌症など慢性感染により肺が破壊されて硬くなり、無気肺になります。
肺結核や放射線肺炎などにもみられます。
肺の繊維化の原因として、肺線維症、間質性肺炎、過敏性肺炎、サルコイドーシス、じん肺などがあげられます。

1−5.荷重部無気肺

荷重部無気肺の代表的なものとしては、寝たきりによるものです。
寝たきりにより、粘液が背中側にたまり、肺の一部に空気が入らなくなってしまう状態です。

1−6.円形無気肺

円形無気肺とは、胸部CT検査で円形にみられる無気肺です。
胸に水がたまることにより、肺が圧迫されて一部が無気肺になり、正常な肺との境に胸水が吸収されて無気肺が包み込まれたようになると推測されています。

1−7.板状無気肺

板状無気肺とは、肺の空気を含まない部分がやや太い線状にみえる無気肺です。
主に横隔膜と並行な方向に影が生じます。
横隔膜の可動できる範囲が低下することにより、十分に肺が広がらないことにより生じると考えられています。

1−8.中葉舌区症候群

中葉舌区症候群とは、肺の「中葉」や「舌区」に無気肺や慢性的な炎症を起こしている状態です。
中葉と舌区につながる気管支は粘液を排出しにくく、中葉は発育が不十分なことが多いため、無気肺を生じやすいです。
非結核性抗酸菌の感染が関係している場合もあります。

1−9.斑状無気肺

斑状無気肺とは、出血やむくみにより肺が液体で埋まってしまう状態です。

【参考資料】「新・呼吸器専門内科医テキスト」日本呼吸器学会
https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524226894/

2.症状


閉塞性無気肺では、気管支がふさがることに伴い、呼吸困難や胸痛の症状があります。
無気肺の部分が広範囲になるほど、息切れや呼吸困難、胸痛などの症状が現れます。
重症の場合は、呼吸不全を生じます。
軽症の場合は、自覚症状がない場合もあります。

【参考資料】「Atelectasis – Symptoms & causes」Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/atelectasis/symptoms-causes/syc-20369684

3.検査

主な検査として、胸部レントゲン検査を行います。
胸部レントゲン検査では、無気肺で閉塞した部分に影を確認します。

◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査について」>>

4.治療

無気肺の原因に対する治療を行います。
痰が排出できない場合には機械で吸引したり、粘液や異物がつまっている場合にはそれらを取り除きます。
呼吸不全を生じた場合は、人工呼吸管理などの対応を行います。

【参考資料】「新・呼吸器専門内科医テキスト」日本呼吸器学会
https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524226894/

5.おわりに

無気肺の原因には様々なものがあり、誰もがかかる可能性がある病気です。
息切れや胸痛などの気になる症状がありましたら、早めに呼吸器内科を受診しましょう。

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