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外来

過換気症候群について

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2022年06月21日

人間は呼吸により体内の二酸化炭素を体外に排出していますが、何らかの原因により呼吸の回数が必要以上に増え“過換気”の状態になると、体内の二酸化炭素濃度が正常より下がりすぎてしまいます。このような状態を過換気症候群といいます。

1.原因

過換気が起こる原因にはさまざまなものがありますが、一般的には臓器に異常はなく、心理的な要因(発熱・痛み・妊娠等によるパニック発作など)により誘発されるものを過換気症候群と呼んでいます。

心理的ストレスによる過換気症候群では、一時的にひどい呼吸困難を自覚しますが、命にかかわるものではありません。

10~20代の女性に多く、男女比は1:2~4といわれていて、過換気症候群を繰り返す方は精神疾患のある場合が多いです。

【参考資料】『Hyperventilation』University of Michigan Health
https://www.uofmhealth.org/health-library/hypvn

2.症状


過換気症候群では、以下のような症状が起こります。

[呼吸器症状]呼吸困難、不規則な呼吸、呼吸筋の疲労
[心臓・循環器の症状]頻脈、不整脈、動悸、胸痛
[末梢神経・筋肉の症状]テタニー(痛みのある筋肉のけいれん)、知覚異常、ふるえ、筋肉の過緊張、筋肉のけいれん
[中枢神経症状]頭痛、めまい、失神、意識障害
[精神症状]不安、恐怖、パニック障害
[消化器症状]吐き気、口の渇き、腹痛、お腹の張り
[その他]全身倦怠感、だるさ、汗が出る、不眠

気管支喘息の持病がある方が過換気になると、気管支収縮を引き起こし、喘息症状を悪化させる原因になることがあります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の方が過換気になると、肺に空気がたまってしまい、息苦しさの悪化につながることもあります。

3.検査


まずは、胸部レントゲン、心電図、スパイロメトリー(呼吸機能検査)などの検査により、心理面以外に呼吸器や心臓の病気がないかを確認します。

喘息など別の病気を疑った場合は、必要に応じて詳しい検査を行います。

また、精神疾患により症状が引き起こされている可能性もあるため、問診による聞き取りも重要となります。

◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査について」>>

4.治療

心理的なストレスが原因の過換気症候群と診断されれば、命にかかわる病気ではないことを説明し、患者さんの不安を取り除きます。

発作を繰り返し、不安が強い場合は、抗不安薬や抗うつ薬を処方することがあります。

また、セルフコントロールも重要なので、精神科や心療内科と連携し、心理カウンセリングなども検討する必要があります。

治療法のひとつに、紙袋で鼻と口を覆い、吐いた息を再呼吸するペーパーバック法がありますが、体内の酸素濃度が下がりすぎたり、二酸化炭素濃度が上がりすぎたりと注意が必要なため、積極的に推奨されていません。

ペーパーバック法を行う場合には、体内の酸素濃度を測りながら慎重に行い、必要に応じて酸素吸入を行う場合もあります。

【参考資料】『新・呼吸器専門内科医テキスト』日本呼吸器学会/南江堂
https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524226894/?fbclid=IwAR3HXKhqiuker_02pE5wPuZPmoAa9Rg-6-g_RgcRMak8rjaAOvIDxZIXIMs

5.おわりに

過換気症候群は、心理的なストレスにより誰にでも起こる可能性がある病気です。

まずは落ち着いてゆっくりと呼吸することを意識し、改善がなければ迷わず医療機関を受診しましょう。

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