「息も吸えない」くらい激しい咳が出る原因と対処法

咳が続き、息を吸おうとしても空気が入ってこないように感じると、強い不安を覚えることでしょう。こうした症状は、一時的な咳き込みや過呼吸のように自然に落ち着くものから、早急な対応が必要な病気まで、原因はさまざまです。
健康な人でも、楽しく会話をしている時に笑いすぎて咳き込み、息が苦しくなることはあります。しかし、そのような場合とは比べ物にならないほどの激しい咳が出て、呼吸困難になることを繰り返すなら、喘息などの呼吸器疾患の疑いがあります。
この記事では、咳のし過ぎで息が吸えないと感じたときに、その場でできる対処法、見逃してはいけない危険なサイン、そして、救急車を呼ぶべきかどうかの判断基準を、分かりやすく解説します。
目次
1.咳で息が吸えないと感じる主な原因
激しく咳き込んで息が吸えないという場合、必ずしも病気とは限らず、咳そのものが引き起こす呼吸の乱れや反射が関係していることもあります。
この章では、咳が続いて息ができないように感じる主な原因を解説します。
1-1.呼吸の乱れ
まず多いのが、激しく咳き込むことで呼吸のリズムが乱れ、一時的に過呼吸のような状態になるケースです。
激しく咳き込むと、呼吸の際に、息を吸うより吐く方に偏りやすくなります。咳は強く息を吐く動きが連続して起こるため、息を吸うタイミングがうまく取れなくなるのです。
その結果、体の中の二酸化炭素が一気に減り、呼吸のリズムを調整している脳が混乱します。すると、「もっと呼吸しなければ」という指令が過剰に出て、実際には空気があるのに、「息が吸えない」「苦しい」と感じる状態になります。
これは空気が足りないのではなく、呼吸のリズムが乱れている状態です。多くの場合、咳がおさまり、ゆっくり息を吐くことを意識すると、自然に呼吸は整っていきます。
【参考情報】『Hyperventilation』Johns Hopkins Medicine
https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/hyperventilation
1-2.喘息
喘息では、気道に慢性的な炎症が起こり、わずかな刺激でも気道が過敏に反応して狭くなります。
この状態で強い咳が続くと、呼吸のリズムが乱れ、息を吸う前に次の咳が出てしまうため、「息を吸いたいのに吸えない」という感覚が生じやすくなります。
また、炎症で気道が狭くなると、息を吐く動きに時間がかかり、息を吐ききれないまま次の呼吸に移るため、肺の中に空気が残りやすくなります。
すると、新しい空気が入りにくくなり、「息が吸えない」と感じやすくなります。
1-3.喉頭けいれん
喉頭けいれんとは、喉の入り口にある筋肉が急に強く縮み、空気の通り道が一時的に狭くなる状態です。
強く咳き込むことで喉の粘膜が刺激されると、喉の筋肉が過敏になり、異物が入ったと体が誤って判断することがあります。その結果、防御反応として喉の入り口が反射的に閉じ、空気が通りにくくなります。
喉頭けいれんが起こると、短時間でも息が吸えない感覚が強く出ます。さらに、その苦しさが反射的な咳を引き起こし、喉への刺激が重なることで、症状が一時的に悪化することもあります。
多くの場合、発作は数十秒から数分で自然に治まりますが、強い恐怖感を伴いやすいため、咳と息苦しさが同時に出る原因として知っておくことが重要です。
【参考情報】『Laryngospasm』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/22406-laryngospasm
1-4.その他の原因
その他、激しい咳で痰が気道の入り口に集まり、空気の通り道を一時的にふさぐことが原因で息がしにくくなることがあります。
また、強く咳き込んだことでお腹に力が入って胃酸が逆流し、喉や気道が刺激されると、その刺激で咳が出て、さらに気道が反射的に狭くなり、息が吸いにくく感じることがあります。
2.咳で息が吸えないと感じたときの対処法
咳き込みが強く「息が吸えない」と感じたときは、慌てずに体勢を整えることが大切です。
2-1.体勢と呼吸の整え方
横になるよりも、上体を起こし、やや前かがみになります。こうすることで気道が広がりやすくなり、呼吸が楽になることがあります。
無理に息を吸おうとせず、ゆっくり息を吐くことを意識してください。咳で呼吸のリズムが乱れている場合でも、吐く動作を整えることで、自然に息を吸いやすくなります。
深呼吸を無理に行うと、過呼吸を招くことがあるため注意が必要です。
【参考情報】『Work of breathing and lung volume during forward leaning supported by the upper limbs』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37141930/
2-2.刺激を避け、必要な薬を使う
冷たい空気や煙、強いにおいは咳や喉の反射を悪化させます。できるだけ刺激の少ない環境に移動してください。
喘息や咳喘息があり、発作時の吸入薬を処方されている場合は、医師の指示どおりに使用します。焦らず、呼吸が自然に整うのを待つことが重要です。
2-3.様子を見てよい場合と受診の目安
体勢を変えたり、呼吸を整えることで息苦しさが軽くなる場合は、緊急性は高くありません。
一方で、咳と同時に息が吸えない状態が続く、苦しさが強まっている、顔色や様子が明らかに普段と違う場合は、様子見を続けず、病院受診や救急対応を検討してください。
3.すぐに受診・救急を考えるサイン
次のような症状がある場合は注意が必要です。
救急車を呼ぶかどうかの判断軸として、当てはまるかを冷静に確認してください。
3-1.呼吸が成り立たない状態は緊急サイン
息を吸おうとしても空気がほとんど入らない状態では、血液中の酸素濃度が急速に低下します。
そして、酸素不足が進むと、脳や心臓が正常に働かなくなり、意識障害や不整脈、最悪の場合は命に関わります。
また、激しい咳が止まらず会話ができない・声が出ないほど苦しい場合は、気道が強く狭くなっている、あるいは一時的に塞がれている可能性があります。
重い喘息発作、喉頭けいれん、アナフィラキシー、異物による気道閉塞など、短時間で悪化する状態が含まれます。
3-2.危険度が高い具体的な症状
唇や顔色が紫色、または白っぽくなるのは、体に十分な酸素が行き渡っていないサインです。
これまでよりゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音が急に強くなった場合も、気道が急激に狭くなっている可能性があります。
さらに、意識がぼんやりする、横になると苦しくていられないといった状態は、体が限界に近づいていることを示します。
3-3.救急対応を判断する基準
呼吸が成り立たないほど苦しい状況では、本人が冷静に判断したり自力で対処したりすることは困難です。一つでも危険な症状が見られる場合は、周囲の人が迷わず救急対応を考えることが重要です。
判断に迷うときは、「今この状態が命に関わる可能性があるか」「呼吸が保てているか」「意識ははっきりしているか」を基準にします。
救急車を呼ぶか迷った場合は、救急相談窓口(#7119)に連絡し、専門職の判断を仰ぐことが適切です。
【参考情報】『救急安心センター事業(♯7119)ってナニ? 』総務省消防庁
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html
4.激しい咳を繰り返す場合に考えたい病気
咳が出て「息ができない感じ」が何度も繰り返される場合、その背景に病気が隠れていることがあります。
4-1.喘息
気道に慢性的な炎症が起こり、空気の通り道である気道が狭くなる病気です。
咳や喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音)、息苦しさが現れ、特に夜間や早朝に症状が強くなる傾向があります。
発作が起こると、気道が急に収縮し、息を吐くことが難しくなります。その結果、十分に息が吸えないように感じたり、咳が止まらず強い苦しさを伴うことがあります。
喘息は、症状がない時でも気道の炎症が続いていることがあり、自己判断で様子を見るていると悪化を繰り返す原因になります。
4-2.胃食道逆流症
胃酸や胃の内容物が食道へ逆流することで、咳や喉の違和感を引き起こす病気です。胸やけや酸っぱい感じが代表的な症状ですが、これらが目立たず、咳だけが続くタイプも少なくありません。
逆流した胃酸が喉を刺激すると、咳が続いて息を吸うタイミングがつかみにくくなり、息ができないように感じることがあります。
4-3.アレルギー
アレルギーのある人は、ハウスダストや花粉、動物の毛などが刺激となり、咳や気道の反応が繰り返し起こることがあります。
鼻水や鼻づまり、くしゃみを伴うことが多く、鼻水が喉に流れ落ちることで咳が続くケースもあります。喉の刺激が強いと、咳き込みが止まらず、一時的に息が詰まるように感じることがあります。
アレルギーによる咳は、特定の季節や環境で悪化しやすいのが特徴です。風邪が治っても咳だけが残る、外出や掃除の後に症状が強くなる場合は、アレルギー疾患が関与している可能性があります。
4-4.心因性咳嗽
気道や肺など体に明らかな異常がないにもかかわらず、咳が続く状態です。ストレスや緊張、不安などの心理的要因が引き金となり、無意識のうちに咳が出やすくなります。
特徴として、会話中や人前、緊張する場面で咳が強くなりやすい一方、睡眠中はほとんど咳が出ないことが挙げられます。咳き込みが続くことで息が詰まるように感じ、「息ができない感じ」を訴えることもあります。
検査で原因となる病気が見つからず、他の治療でも改善しない場合に疑われます。咳が長く続き、状況によって強さが変わる場合は、心因性の影響が関与していないかを考えることが重要です。
【参考情報】『ストレスから続く心因性せき』沖縄県医師会
https://archive.okinawa.med.or.jp/html/kouho/gusui/2019/0414.html
5.市販薬で対処できるか?
「咳がひどく、息も吸えない」と感じる場合、その多くは市販薬での対応が難しい状態です。
特に、「息を吸おうとしても空気が入らない」「会話ができない」「声が出ないほど苦しい」といった症状は、早急な医療対応が必要とされ、このような状況では、市販の咳止めや去痰薬を使っても十分な効果は期待できません。
一方で、息苦しさがなく、軽い咳が中心で、会話や日常動作に支障がない場合には、市販の咳止め薬などで一時的に症状が和らぐことがあります。
ただし、市販薬は咳の原因そのものを治す薬ではなく、症状を一時的に抑える薬です。効果が弱い、あるいは数日使っても改善しない場合は、病院を受診しましょう。
6.おわりに
咳で「息が吸えない」と感じたときは、まず上体を起こして前かがみになり、落ち着いて吐く呼吸を意識することが基本です。多くの場合、姿勢と呼吸を整えることで、自然に吸える状態に戻ります。
一方で、息が全く入らない、会話ができない、顔色が悪い、意識がはっきりしないといった危険サインがある場合は、様子見をせず、迷わず救急対応を選ぶことが重要です。
また、このような症状を繰り返す場合は、一時的な反応で終わらせず、喘息や逆流性食道炎などの原因を調べる必要があります。早めに医療機関を受診し、原因に合った対処を行うことが、再発予防につながります。










