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「咳」と「頭痛」の両方がある時に考えられる病気とは?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年04月13日

咳をした瞬間に頭に響くような痛みを感じたり、こめかみや目の奥がズキズキと痛んだりすることはありませんか?

こうした症状の多くは、咳によって一時的に頭の中の圧が高まることで起こるもので、必ずしも深刻な病気とは限りません。

ただし、なかには副鼻腔炎や片頭痛などの病気が関係しているケースや、まれに注意が必要な頭痛が隠れていることもあります。

1.咳で頭が痛くなる主な原因


まずは、咳と頭痛が同時に起こる主な原因と、それぞれの特徴について解説します。

1-1.風邪などの呼吸器感染症

咳と頭痛があるときにまず考えられるのは、風邪やコロナなどの呼吸器感染症にかかっている可能性です。

風邪で頭痛が起こるのは、ウイルスに対する免疫反応によりサイトカインなどの炎症物質が放出され、血管や神経に作用することが主な原因と考えられています。

【参考情報】『Cytokine Responses in the Common Cold and Otitis Media』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7089162/

風邪のときの頭痛は、発熱とともに現れることが多いのですが、熱がなくても頭が痛くなることもあります。

風邪は、特に治療をしなくても、安静にしていれば治ってしまうことがほとんどです。しかし、咳や頭痛が長引いていて、なかなか良くならない場合は、別の病気の可能性があるので病院を受診しましょう。

◆「風邪を引いた後に咳だけ残る原因と考えられる病気」>>

1-2.一次性咳嗽性頭痛

一次性咳漱(がいそう)性頭痛とは、咳やくしゃみ、大笑いをしたときや、トイレでいきんだときなどに一時的に起きる頭痛です。

後頭部に痛みが生じることが多く、咳をすればするほど頭痛がひどくなります。痛みは数分くらいで消えることがほとんどです。吐き気・めまい・睡眠の異常などの症状を伴うことも多いです。

咳の勢いによって胸や腹部に強い圧がかかり、その影響で静脈圧や脳脊髄液圧が変化し、一時的に頭の中の圧(頭蓋内圧)が上昇することで起こります。

一次性咳嗽性頭痛の多くは良性の頭痛で、あまり心配はいらないのですが、何度も繰り返して痛みが強いときにはほかに原因がある可能性があるため、医師に相談し内科や頭痛外来を受診して、痛み止めの薬を処方してもらいましょう。

【参考情報】【参考情報】『Primary Cough Headache』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/21071-primary-cough-headache

1-3.副鼻腔炎

副鼻腔炎では、鼻の奥にある空洞(副鼻腔)に炎症が起こり、内部に膿や分泌物がたまることで圧が高まり、圧迫感のある頭痛が生じます。

前頭部やこめかみ、目の奥にかけて重だるい痛みを感じるのが特徴で、「頭が締めつけられる」「奥から押されるような感じ」と表現されることもあります。

特に前かがみになったときや、顔を下に向けたときに痛みが強くなる場合は、副鼻腔内の圧が変化するため、副鼻腔炎が疑われます。

頭痛以外にも、鼻づまりや粘り気のある鼻水(黄色や緑色)、喉に鼻水が流れる後鼻漏、においがわかりにくくなるといった症状を伴うことが多いのも特徴です。

◆「副鼻腔炎とはどんな病気?」>>

1-4.片頭痛

片頭痛は、ズキズキと脈打つような痛みが特徴で、吐き気を伴ったり、光や音に敏感になったりすることがあります。

痛みはこめかみや目の奥に出やすく、日常動作でも悪化しやすいため、生活に支障をきたすことも少なくありません。

咳と頭痛が同時にみられる場合、片頭痛は咳そのものが原因というよりも、咳や体調の変化をきっかけに誘発される頭痛として考えるのが適切です。

もともと片頭痛のある人では、咳による頭の中の圧の変化や振動に加え、発熱や睡眠不足、脱水といった体調の変化が重なることで、頭痛が起こりやすくなります。

特に、安静にして暗く静かな場所で休むと軽くなる、吐き気や光・音への過敏さを伴うといった特徴があれば、片頭痛の関与が考えられます。

【参考情報】【参考情報】『Migraine』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/migraine-headache/symptoms-causes/syc-20360201

1-5.緊張型頭痛

長時間のデスクワークやスマートフォンの使用、精神的なストレスなどが続くと、首や肩、後頭部まわりの筋肉が緊張し、頭全体を締めつけるような鈍い痛みが続く「緊張型頭痛」が起こることがあります。

痛みは頭の両側に現れることが多く、「重い」「締めつけられる」といった感覚が特徴です。片頭痛のように心臓の拍動に合わせてズキンズキンと波打つような痛みや、強い吐き気を伴うことは通常ありません。

この状態では、筋肉のこわばりによって血流が低下し、痛みを感じやすくなっています。さらに、同じ姿勢を長時間続けることや、目の疲れ(眼精疲労)が加わることで、症状が慢性化することもあります。

このように筋肉が緊張した状態で咳をすると、胸や腹部だけでなく首や肩まわりの筋肉にも瞬間的に強い力がかかり、もともとの緊張がさらに増します。その結果、頭が締めつけられる感覚が強まったり、後頭部から首筋にかけての痛みが悪化することがあります。

また、風邪などで咳が続いているときは、睡眠の質の低下や全身の疲労も重なりやすく、これらも緊張型頭痛を悪化させる要因となります。特に、咳をするたびに首や肩に力が入る癖がある人では、筋肉の緊張がさらに強まり、頭痛が長引くことがあります。

【参考情報】【参考情報】『Tension headache』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/tension-headache/symptoms-causes/syc-20353977

1-6.喘息

喘息は、気道(空気の通り道)の慢性的な炎症によって気道が狭くなり、呼吸がしづらくなる病気です。

主な症状として、咳、痰、呼吸困難、喘鳴(ヒューヒュー・ゼイゼイという呼吸音)などがみられます。

喘息のある人では、気圧の変化や季節の変わり目に症状が悪化することがあります。特に、台風の接近などで気圧が低下すると、気道が刺激されて咳が出やすくなることが知られています。

一方で、気圧の変化によって頭痛や肩こり、だるさなどの不調が起こることもありますが、これらは喘息そのものの症状というよりも、自律神経の変化などによる「気象の影響(いわゆる天気痛)」と考えられています。

そのため、咳と頭痛が同時にみられる場合でも、それぞれ異なる仕組みで起こっている可能性があります。

2.注意すべき危険な頭痛


咳に伴う頭痛の多くは一時的なものですが、なかには早急な対応が必要なケースもあります。

次のような症状がみられる場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。

 ・突然、これまで経験したことがないほど強い頭痛が出た

 ・咳やいきみ(排便時など)で頭痛がどんどん悪化していく

 ・強い吐き気や嘔吐を伴う

 ・手足がしびれたり、力が入りにくい

これらは、くも膜下出血や脳出血、脳腫瘍など、脳に関わる重大な病気のサインである可能性があります。

まれなケースではありますが、放置すると深刻な事態を招くこともあるため、このような異変を感じた場合は救急で病院を受診してください。

3.咳で頭が痛いときの対策


咳による頭痛は、原因に応じて対処することが重要です。ここでは、自宅でできる基本的な対策を整理します。

3-1.咳を抑える

症状を和らげるには、まず頭痛の引き金となっている咳を抑えることが大切です。

<部屋の加湿>
空気が乾燥すると気道が敏感になり、咳が出やすくなります。加湿器を使用するか、濡れタオルを室内に干すなどして、湿度は50〜60%を維持してください。

◆「加湿器を選ぶポイントと注意点」>>

<こまめな水分補給>
喉の粘膜を潤すことで、痰の切れを良くし、咳の回数自体を減らします。常温の水や、喉を保護する成分(ハチミツなど)を含む温かい飲み物が良いでしょう。

◆「喉の乾燥対策完全ガイド」をチェック>>

3-2.頭痛への対処

頭痛があるときは、無理をせず安静に過ごすことが基本です。

<上半身を高くして休む>
横になると痰や鼻水が喉に流れやすくなり咳が出やすくなります。また、体勢の変化により頭が重く感じられることがあります。

症状がつらい時は、枕やクッションを重ねて上半身を30度〜45度程度起こした状態で安静にしてください。

<急な動きを避ける>
咳が出そうな時は、あらかじめ壁や机に手をついて体を支え、衝撃を分散させるのが有効です。

<軽いストレッチ>
特に長時間同じ姿勢を続けている場合は、首や肩の軽いストレッチを行い、筋肉の緊張をやわらげると痛みの軽減につながります。

<患部を冷やす・温める>
冷やすか温めるかは頭痛のタイプによって異なります。

ズキズキと拍動するような痛みの場合は冷やすと楽になりやすく、締めつけられるような鈍い痛みの場合は温めることで血行が改善し、症状が和らぐことがあります。

4.咳と頭痛に使われる薬


咳と頭痛が同時にある場合、軽い症状であれば、市販薬で対応できる場合があります。

それぞれの症状に応じた薬を適切に使い分けることが重要です。

4-1.鎮咳薬(咳止め)

咳が続いている場合は、鎮咳薬を使うことで咳の回数を減らすことができます。咳が減ると、咳をするたびにかかる頭への圧力も軽減され、結果として頭痛の緩和につながります。

ただし、咳の状態によって使い方には注意が必要です。乾いた咳には有効なことが多い一方で、痰が多い咳では、無理に抑えず痰の排出を促すほうが望ましい場合もあります。

4-2.解熱鎮痛薬

頭痛に対しては、アセトアミノフェンやNSAIDs(エヌセイズ)などの解熱鎮痛薬が用いられます。これらは痛みを一時的に和らげ、日常生活への影響を抑えるのに有効です。

使用する際は、用法・用量を守り、長期間の連用は避けてください。特にNSAIDsは、胃腸への負担や腎機能への影響が出ることがあります。

【参考情報】【参考情報】『NSAIDsとアセトアミノフェン』日本ペインクリニック学会
https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keynsaids.html

4-3. 服用上の重要な注意点

<成分の重複>
風邪薬と頭痛薬を併用すると、同じ成分を重ねて摂取してしまうことがあります。

特に、アセトアミノフェンやNSAIDsなどの解熱鎮痛成分は、複数の市販薬に含まれていることが多く、過剰摂取によって肝機能障害や胃障害のリスクが高まります。

薬を併用する場合は、必ず薬剤師や登録販売者に「咳止めと頭痛薬を一緒に飲みたい」と伝え、成分の重複がないか確認してください。

<眠気への注意>
咳止めに含まれる成分の中には、眠気を引き起こすものがあります。服用後は、運転や精密な作業は避けるようにしてください。

市販薬を選ぶ際は、眠くなりにくい処方や眠気を起こしにくい成分の製品を選ぶと、安全に使用しやすくなります。

5.受診の目安

咳に伴う頭痛は、多くの場合一時的なもので、咳が落ち着けば自然に治まります。

ただし、症状が長引いたり悪化したりするようであれば、別の病気が隠れている可能性があるため、病院への受診をおすすめします。

<2週間以上続く>
咳や頭痛が2週間以上続く場合は、一般的な風邪だけでなく、副鼻腔炎や気道の慢性的な炎症などが関与している可能性があります

<咳が悪化している>
咳の回数や強さが増している、夜間や早朝に悪化するなどの変化がある場合は、気道の炎症が進行している可能性があり、喘息や感染症の関与も考えられます。

<日常生活に支障がある>
咳や頭痛によって仕事や家事に集中できない、睡眠が妨げられるといった場合は、生活の質が低下しているサインです。

無理に我慢せず、早めに受診して症状のコントロールを図ることが大切です。

<頭痛が強くなっている>
当初よりも痛みが強くなっている場合や、痛みの性質が変化している場合(ズキズキする、締めつけられるなど)は、咳による一時的な頭痛以外の原因が関与している可能性があります。

<発熱や全身症状を伴う>
発熱、強いだるさ、食欲低下などの全身症状を伴う場合は、単なる軽い風邪ではなく、感染症が悪化している可能性があります。特に高熱が続く場合は注意が必要です。

<呼吸に関する異常がある>
息苦しさ、呼吸が浅い・速い、ゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸音がある場合は、気道や肺に問題が生じている可能性があります。こうした症状がある場合は早めの受診が必要です。

6.おわりに

咳に伴う頭痛の多くは、咳によって一時的に頭の中の圧が高まることで起こるもので、深刻な異常ではないケースが大半です。ただし、副鼻腔炎や片頭痛などが関係している場合や、まれに注意が必要な病気が隠れていることもあります。

痛みが出る場所や、吐き気・光過敏といった症状の有無を手がかりにすることで、ある程度の見当をつけることは可能です。それでも判断に迷う場合や不安がある場合は、無理に様子を見続けず、早めに医療機関を受診することが重要です。

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