喘息治療に使う吸入ステロイド薬の副作用は?

・喘息だと診断され、吸入ステロイド薬が処方された
・ステロイドには副作用もあると聞くけど、使っても大丈夫?
テレビやネットでステロイド薬の情報を見て、不安を感じてしまう方も多いと思います。
この記事では、喘息の治療で使う吸入ステロイド薬と、内服や注射のステロイド薬の違いを説明します。
副作用が気になる方はぜひ読んでください。
目次
1.ステロイド薬とは
喘息で処方される吸入ステロイド薬がどんな薬であるのか、気になる副作用について理解していきましょう。
「ステロイド=怖い薬」というイメージを整理し、正しい知識を持つことが安心につながります。
1−1.ステロイドは体内で作られるホルモン
ステロイドと聞くと、「強い薬」「体に悪いもの」という印象を持つ方が多いかもしれません。
しかし実は、ステロイドはもともと、副腎という臓器で作られるホルモンです。
副腎は腎臓の上に対になって位置する小さな臓器で、ステロイドをはじめとした各種ホルモンを分泌しています。
【参考情報】『ホルモンについて』日本内分泌学会
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=3
私たちの体は、怪我をしたときや病気になったとき、自然な防御反応として炎症を起こします。
多くの人が思い浮かべやすいのは、ケガをしたときに皮膚が赤くなったり、少し腫れて痛みを感じたりする反応でしょう。
これは体が傷を修復しようとする一時的な炎症で、通常は時間の経過とともに自然に落ち着いていきます。
この炎症反応は本来、体を守るための仕組みですが、過剰になると逆に体に負担をかけてしまいます。
炎症がうまく収まらずに長く続いてしまうと、組織への負担が積み重なり、結果としてさまざまな病気の引き金になることがあるのです。
【参考情報】”Inflammation” by National Institutes of Health
https://www.niehs.nih.gov/health/topics/conditions/inflammation
そこで体内のステロイドホルモンが、この炎症をちょうどよいバランスに調整してくれています。
この自然な働きを治療に活かすために開発されたのが「ステロイド薬」です。
1−2.ステロイド薬の種類と使い分け
ステロイド薬には、使い方によっていくつかの種類があります。
塗り薬は皮膚の炎症、特にアトピー性皮膚炎などに使われます。
吸入薬は喘息などの気道の病気に、飲み薬(内服薬)はリウマチや膠原病など全身性の炎症性疾患に、そして注射薬は強い炎症や痛みを素早く抑えなければならないときに使われます。
これらはすべて「ステロイド」という名前がついていますが、体への届き方、作用する場所、使用量が全く異なります。
病気の種類や重さ、炎症が起きている場所によって、最適な使い方が選ばれるのです。
喘息では、気道の炎症を直接抑えることができる吸入ステロイド薬が基本の治療として世界中で使われています。
これは、必要な場所に必要な量だけを届けることができる、理にかなった方法だからです。
ステロイド薬はさまざまな病気の治療に用いられ、病気の重症度や患者の状態によって、薬の種類や投与法を使い分けます。
【参考情報】『吸入ステロイド薬の安全性』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jititai05_0007.pdf
2.ステロイド薬の副作用
ステロイド薬には、炎症を抑える強い効果があります。
その反面、長期間使用したり、一度に大量に使用した場合に、副作用が現れることがあります。
2−1.内服・注射ステロイドで起こりうる副作用
ステロイド薬は炎症をしっかり抑える一方で、体を守る働き(免疫機能)を弱めてしまうことがあります。
そのため、感染症にかかりやすくなる点には注意が必要です。
また、長期間の使用では骨の代謝に影響し、カルシウムの吸収を妨げたり、骨を作る細胞の働きを低下させたりすることで、骨粗しょう症のリスクが高まることがあります。
そのほか、顔が丸くなるムーンフェイスと呼ばれる外見の変化、気分の浮き沈みや不眠などの精神面への影響がみられることもあります。
体重増加、血糖値や血圧の上昇といった変化も、内服や注射によるステロイド治療で注意したい点です。
こうした副作用の情報から、ステロイドは怖い薬という印象を持たれる方が多いのも事実です。
【参考情報】『ステロイド剤はこわい?』全日本民医連
https://www.min-iren.gr.jp/?p=26742
2−2.ステロイドが怖いと思われやすい理由
テレビやネットの記事では、内服や注射のステロイドについて、吸入ステロイド薬との違いが十分に説明されていないことがあります。
そのため、本来は性質の異なる薬であるにもかかわらず、「同じステロイドだから危険なのでは」と不安になってしまうのです。
特に、人の記憶というのは、良い情報よりも怖い情報の方が鮮明に残る傾向があるため、副作用に苦しんだという話は強く印象に残りやすく、それが「ステロイド全般」のイメージとして定着してしまうこともあります。
安全に使えている多くの方の経験よりも、まれに起こる深刻なケースの方が広く知られてしまうのです。
ただし、使い方や量が違えば、副作用の起こりやすさも大きく変わります。
体全体に作用する内服薬や注射と、必要な場所だけに効かせる吸入薬とでは、安全性の考え方がまったく異なります。
吸入薬は、炎症が起きている気道に直接作用するため、全身への影響が少なく、内服や注射に比べて副作用のリスクが抑えられる治療法です。
【参考情報】『成人のぜん息 Q2.吸入ステロイドの副作用について教えてください』
https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/allergy/faq/asthma_adults.html#q02
3.なぜ吸入ステロイド薬は安全なのか
ステロイド薬は効果が高いものの副作用も強いため、慎重に扱うべき薬ではあります。
しかし、喘息の治療に用いる吸入ステロイド薬で強い副作用が現れることは、まずありません。
その理由を説明します。
3−1.吸入ステロイド薬が安全な理由
ステロイド薬を注射や内服で服用すると、血液に運ばれて全身に作用します。
そのため、症状のない部位にまで影響が出て、強い副作用が現れます。
しかし、吸入薬は使用した部位にのみ作用し、それ以外の部位にはほとんど吸収されません。
また、注射や内服に比べると使用量もごくわずかです。
喘息の治療に用いる吸入ステロイド薬は、空気の通り道である気道に直接届くように作られた薬です。
飲み薬や注射のように血液に乗って全身に広がることはほとんどありません。
吸入すると、薬の微粒子は気道の粘膜に付着し、そこで直接作用します。
一部は肺の奥まで届き、そこでも局所的に炎症を抑える働きをします。
また、1回の使用量は注射や内服薬の約100分の1に設定されています。
そのため、長期間使用しても、副作用は非常に少ないのです。
3−2.吸入ステロイド薬の副作用と予防法
吸入ステロイド薬の副作用はわずかではありますが、以下のような症状が現れることがあります。
・声がかすれる
・のどに違和感が残る
・舌や口の粘膜に白いものが付く(口腔カンジダ症)
これらの副作用は、口の中に薬が残っていることが原因で起こります。
副作用を防ぐには、吸入後にしっかりうがいをして、薬を水で洗い流しましょう。
うがいが難しい場合は、口の中をブクブクとすすいでみましょう。
◆「喘息の吸入薬使用後にうがいが必要な理由と方法」について>>
うがいをしても、患者さんによっては声がれなどが生じることがあります。
その場合は、薬の種類を変更するなど、対処できることもありますので、気になる症状があれば担当医に相談しましょう。
子どもの場合、吸入ステロイド薬の使用量が多いと身長が伸びにくくなるという報告もあります。
しかし、その差は吸入ステロイド薬を使わない子どもに比べて1cmほどで、極端な低身長になるわけではありません。
【参考情報】”Inhaled corticosteroids in children with persistent asthma: effects on growth” by National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25030198/
4.吸入ステロイド薬を毎日使う理由
喘息の薬には、毎日続けて使用する薬と、発作が起こった時にだけ使う薬があります。
吸入ステロイド薬は、毎日続けて使う必要があります。
4−1.吸入ステロイド薬の役割とは
吸入ステロイド薬は、喘息の原因である気道の炎症を抑えるために使用します。
喘息の患者さんは、発作がない時でも気道の炎症が続いています。
炎症を起こした気道は、ちょっとした刺激にも過敏に反応し、その結果、激しい咳が出たり呼吸が苦しくなります。
この状態を放っておくと、気道はさらに過敏になり喘息が悪化します。
すると、ますます呼吸が苦しくなり、最悪の場合、発作による呼吸困難で死に至ることもあります。
吸入ステロイド薬を止めると、薬の力で抑えていた気道の炎症がぶり返し、せっかく落ち着いてきた症状がまた現れ、以前よりひどくなることもあります。
吸入ステロイド薬1回の使用による効果が持続するのは約12~24時間とされています。
毎日薬を服用するのは面倒かもしれませんが、気道の炎症を抑えるためにはどうしても必要なことなので、自己判断で止めることは絶対にしないでください。
4−2.ステロイド薬はいつまで使うのか
喘息の治療で大切なのは、症状が出ない状態を保ち、発作を起こさずに日常生活を送れるようにすることです。
息苦しさや咳に振り回されることなく、普段どおりの生活を続けられる状態を目標に治療を行います。
症状が安定している時期こそ治療を続けることが、再発の予防につながります。
定期的に診察を受けながら、体調や検査の結果に合わせて治療を調整し、長く良い状態を保っていくことが大切です。
医師は、症状の頻度、肺機能検査の結果、過去の発作の重症度などを総合的に判断して、ステロイド薬の減量のタイミングを診断します。
自己判断で急にやめるのではなく、段階的に減らしていき、症状が悪化しないかを慎重に見ていくことが一般的です。
5.おわりに
吸入ステロイド薬は、「気道に直接作用する」「1回の使用量がとても少ない」という2つの理由で、毎日使用しても安全な薬として認められています。
吸入後にうがいをして声がれなどの副作用を防ぎ、毎日の使用で気道の炎症をコントロールしてください。




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