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喫煙者は要注意!タバコで睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まる理由

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年05月15日

睡眠時無呼吸症候群は、放置すると高血圧や心血管疾患につながることもある、決して見過ごせない病気です。

その症状を悪化させる要因はいくつかありますが、なかでも見落とされがちなのが「喫煙」です。

タバコに含まれるニコチンは睡眠の質を低下させるだけでなく、気道に炎症を起こしたり呼吸機能を低下させたりすることで、睡眠中の無呼吸やいびきをさらに悪化させる可能性があります。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群と喫煙の関係を軸に、タバコが睡眠・呼吸に与える影響や、禁煙による改善の可能性についてわかりやすく解説します。

1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か


睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、寝ている間に無呼吸や低呼吸を繰り返す病気です。

<主な症状>

 ・大きないびき

 ・日中の強い眠気

 ・起床時の頭痛

 ・集中力の低下

また、自分では気づかず、家族などから「呼吸が止まっている」と指摘されて発見されることも少なくありません。

この病気になりやすいのは、肥満体型の人、扁桃肥大がある人、加齢による筋力低下がある人、顎が小さい人などです。

また、生活習慣とも深い関連があり、タバコやアルコールを摂取する習慣がある人は、発症しやすいと考えられています。

睡眠時無呼吸症候群を放置すると、睡眠中の低酸素状態や睡眠の質の低下が続くため、高血圧や不整脈、心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患のリスク上昇につながることがあります。

さらに、強い眠気によって居眠り運転や労働中の事故リスクが高まることも問題視されています。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっとくわしく>>

2. 喫煙は睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性がある


喫煙は、睡眠の質や気道の状態、呼吸機能にさまざまな悪影響を与えることが知られています。

そのため、睡眠時無呼吸症候群の発症や悪化に関係している可能性が指摘されています。

2-1. ニコチンは睡眠の質を低下させる

タバコに含まれるニコチンには覚醒作用があり、脳や自律神経を刺激することで睡眠に影響を与えます。

そのため、喫煙習慣がある人では、以下のような問題が起こることがあります。

 ・寝つきが悪くなる(入眠障害)

 ・夜中に目が覚めやすくなる(中途覚醒)

 ・眠りが浅くなる

 ・熟睡感が得られにくくなる

また、就寝中にニコチンが切れることで離脱症状が起こり、無意識に睡眠が浅くなったり、途中で目覚めたりすることもあります。

【参考情報】『Sleep quality in cigarette smokers and nonsmokers: findings from the general population in central China』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6591832/#CR7

2-2. タバコは気道に炎症を起こす

タバコの煙は、喉や気道の粘膜に慢性的な炎症を引き起こします。

その結果、以下のような問題が起こりやすくなります。

 ・気道粘膜の腫れ

 ・上気道のむくみ

 ・痰や分泌物の増加

 ・気道の狭窄

睡眠時無呼吸症候群では、もともと睡眠中に気道が塞がれやすくなっていますが、喫煙によってさらに気道が狭くなることで、無呼吸や低呼吸が起こりやすくなる可能性があります。

【参考情報】『Increased loop gain and upper airway collapsibility among smoking patients with obstructive sleep apnoea』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40761648/

3. 喫煙者は睡眠時無呼吸症候群のリスクが高い


喫煙と睡眠時無呼吸症候群の関係についてはさまざまな研究が行われており、喫煙者ではリスクが高い可能性が指摘されています。

その背景には、気道への炎症だけでなく、生活習慣や合併症など複数の要因が関係していると考えられています。

3-1. 喫煙者に睡眠時無呼吸症候群が多い理由

喫煙者に睡眠時無呼吸症候群が多い背景には、いくつかの要因が絡み合っています。

まず、タバコの煙が喉や鼻の粘膜を刺激することで、上気道に慢性的な炎症やむくみが生じます。これにより睡眠中の気道が狭くなり、いびきや無呼吸が起こりやすくなることが報告されています。

次に、喫煙者では慢性鼻炎や鼻づまりを伴うことが多く、鼻呼吸がしにくくなった結果として口呼吸が増えます。

【参考情報】『Smoking, environmental tobacco smoke and occupational irritants increase the risk of chronic rhinitis』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5851305/

口呼吸は上気道の安定性を低下させるため、睡眠時無呼吸症候群の悪化につながると考えられています。

また、喫煙習慣のある人は飲酒や運動不足といった、睡眠時無呼吸症候群のリスクを高める生活習慣を併せ持つ場合が多く、これらが影響している可能性もあります。

3-2. 受動喫煙でも影響を受ける可能性がある

タバコの影響は、喫煙者本人だけに限りません。

家庭や職場などでタバコの煙を吸い込む受動喫煙でも、鼻や喉の粘膜に刺激や炎症が生じる可能性があります。

【参考情報】『About Secondhand Smoke』CDC
https://www.cdc.gov/tobacco/secondhand-smoke/index.html?utm_source=chatgpt.com

特に子どもでは、もともと気道が狭いため、受動喫煙の影響を受けやすいとされています。慢性的な鼻づまりやいびき、睡眠の質の低下につながる場合もあり、小児の睡眠呼吸障害との関連が指摘されています。

また、家族に喫煙者がいる環境では、本人が喫煙していなくても長期間にわたって煙へさらされるため、注意が必要です。

4. 禁煙で改善が期待できること


喫煙は睡眠時無呼吸症候群の悪化要因のひとつと考えられており、禁煙によって睡眠や呼吸状態の改善が期待できる場合があります。

4-1. 睡眠の質の改善

喫煙中は、ニコチンの覚醒作用や夜間の離脱症状によって睡眠が浅くなりやすいですが、禁煙によってこうした影響が軽減されることで、以下のような変化がみられることがあります。

 ・夜中に目が覚めにくくなる

 ・熟睡感が得られやすくなる

 ・日中の眠気が改善する

ただし、禁煙直後は一時的に睡眠が不安定になることもあります。

4-2. 気道炎症の軽減

喫煙によって起きていた喉や気道の炎症、むくみが軽減されることで、以下のような変化が期待できます。

 ・いびきの改善

 ・咳や痰の減少

 ・鼻づまりの軽減

気道の状態が改善すると、睡眠中の空気の通りもよくなり、無呼吸や低呼吸の悪化を防ぐ助けになる可能性があります。

4-3. CPAPの影響

睡眠時無呼吸症候群の治療でCPAP(シーパップ)を使用している人では、禁煙が治療の継続をサポートする場合もあります。

喫煙による鼻や喉の炎症があると、以下のような問題が起こりやすくなります。

 ・マスク装着時の不快感

 ・鼻づまり

 ・喉の乾燥や刺激感

禁煙によってこうした症状が軽減すると、CPAPを継続しやすくなり、治療効果の向上につながる可能性があります。

◆「CPAP」についてくわしく>>

5. 加熱式タバコ・電子タバコでも注意が必要


加熱式タバコや電子タバコは、紙巻きタバコより安全というイメージを持たれることもありますが、睡眠時無呼吸症候群との関係については、現時点では十分に解明されていない部分も多く、注意が必要です。

加熱式タバコの多くにはニコチンが含まれており、紙巻きタバコと同様に覚醒作用によって睡眠へ影響を与える可能性があります。

また、エアロゾルや化学物質による気道への刺激が、喉や気道の炎症につながる可能性も指摘されています。

加熱式タバコや電子タバコと睡眠時無呼吸症候群との直接的な関係については、まだ十分な研究はありません。

ただし、これらの製品でも気道への炎症や刺激が生じる可能性が指摘されており、睡眠中の呼吸に影響する可能性が考えられています。

【参考情報】『Lung Damage Caused by Heated Tobacco Products and Electronic Nicotine Delivery Systems: A Systematic Review』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33924379/

6. 睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合


睡眠時無呼吸症候群は、自分では気づきにくい病気ですが、以下のような問題が続いているなら病院を受診しましょう。

 ・毎日のように大きないびきをかく 

 ・家族から「睡眠中に呼吸が止まっている」と指摘される

 ・日中に強い眠気がある

 ・起床時に頭痛がある

 ・十分寝ても疲れが取れない

 ・倦怠感が長く続いている

睡眠時無呼吸症候群を放置すると、高血圧や心血管疾患のリスク上昇、居眠り運転などにつながることもあるため、早めに相談することが大切です。

◆「睡眠時無呼吸症候群と運転業務の関係性」>>

気になる場合は、呼吸器内科や睡眠外来などで相談してみましょう。検査によって、睡眠中の呼吸状態を確認することができます。

◆「呼吸器内科で睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができます」>>

7. おわりに

睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣と深く結びついた病気です。

喫煙はそのリスクを高める要因のひとつである可能性があり、禁煙はCPAP療法と並んで、治療や予防において意味のある取り組みといえます。

「最近いびきがひどくなった」「朝起きても疲れが取れない」――そんな変化を感じている方は、加齢や疲れのせいと片付けず、睡眠時無呼吸症候群の可能性も考えてみてください。

睡眠時無呼吸症候群は、単なる「いびき」の問題ではありません。日中の眠気や集中力の低下だけでなく、高血圧、心疾患、脳卒中、糖尿病などのリスクとも関連するとされています。

気になる症状が続く場合は、呼吸器内科や睡眠外来などの医療機関に相談し、必要に応じて検査を受けることが大切です。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群の治療について>>

以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします

  • 咳が2週間以上続いている
  • 息切れや息苦しさを感じることがある
  • 痰がからんで気になる
  • 健康診断で肺や呼吸の異常を指摘された
  • 市販薬を飲んでも症状が改善しない

当てはまる項目がある方は、呼吸器専門医に相談してみませんか?

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