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高齢者の喘息は悪化しやすい?注意点と治療のポイントを解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年01月17日

喘息は、子どもがかかる病気という印象が強いかもしれません。しかし、実は乳児から高齢者まで、幅広い年代で発症します。

高齢者が喘息を発症した場合、加齢による呼吸機能の低下や持病との兼ね合いなどを考慮して、対策を講じる必要があります。

この記事では、高齢者が喘息にかかった場合の特徴や治療のポイントについて説明していきます。

1.喘息とはどんな病気か


喘息とは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起こり、咳や息苦しさが現れる病気です。

炎症が起こっている気道は、わずかな刺激にも敏感に反応し、以下のような症状が引き起こされます。

 ・激しく咳き込む

 ・喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー・ゼイゼイという呼吸の異常音)

 ・呼吸が苦しくなる

 ・急に動けなくなる

 ・胸に痛みが出る

 ・背中に張りを感じる

喘息の原因は、アレルギー性と非アレルギー性に分類されます。

アレルギー性は、ダニやカビ、花粉など、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)に反応して症状が現れます。

非アレルギー性は、風邪などの呼吸器感染症やタバコ、ストレスなどをきっかけに発症します。

高齢者の喘息は、アレルギー性よりも非アレルギー性が多いといわれています。

◆「喘息」についてもっと詳しく>>

2.高齢者の喘息の特徴


高齢者の喘息は、以下の理由により、症状のコントロールが難しい面があります。

2-1.呼吸機能低下による診断の困難さ

高齢になるにつれ、体のさまざまな機能が低下していきますが、肺や気管支などの呼吸器の機能も、やはり衰えていきます。

そのため、咳や息苦しさがあっても、加齢によるものだから仕方ないと思うこともあるでしょう。

実際、症状があっても、加齢によるものなのか、それとも病気によるものかを判断するのは難しいものです。

症状が強くなってきてから、心配になって病院を受診したときには、喘息が進行して重症化していることもあります。

【参考情報】『Lung Capacity and Aging』American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/how-lungs-work/lung-capacity-and-aging

2-2.免疫機能低下の影響

高齢者は免疫機能が低下しているため、風邪などの呼吸器感染症にかかりやすい傾向があります。

呼吸器感染症にかかると、もともと炎症を起こしている気道の粘膜がますます過敏になり、喘息が悪化しやすくなります。

【参考情報】『老化と免疫』日本老年医学会
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/perspective_geriatrics_48_3_205.pdf

◆「免疫力」をアップさせる食事>>

2-3.持病の治療とのバランス

高齢者の多くは、持病を抱えています。それら持病の薬の中には、喘息の薬と相性が悪いものが含まれている場合もあります。

異なる薬物が影響し合うことで、薬の効果が強まったり弱まったりする可能性があるため、薬剤の処方には適切な調整が必要となります。

2-4.薬の副作用が起きやすい

薬は、必要な場所に届けられると肝臓で分解され、無毒化されます。その後、腎臓を通して体の外へ排出されます。

しかし高齢者は、肝臓の機能や腎臓の機能が低下していることが多いため、薬が十分に分解・排出されずに体の中に溜まってしまいがちです。その結果、副作用が出やすくなります。

2-5.薬の服用や管理が難しい

運動機能や認知機能の程度によっては、薬の服用や管理が難しくなることがあります。

たとえば、「指先の力が弱まり薬を取り出すことができない」「視力が低下して薬を見分けられない」などの問題が発生することが考えられます。

さらに、認知機能に問題があると、薬の服用を忘れたり、薬の置き場所を覚えていなかったりすることがあるため、服薬管理が難しいこともあります。

3.高齢者の喘息治療におけるポイント


高齢者が喘息にかかった場合・喘息の疑いがある場合における治療のポイントを解説します。

3-1.呼吸器内科の受診

咳や息苦しさなど、喘息が疑わしい症状が2週間以上続いているなら、呼吸器内科を受診しましょう。

病気による症状なのか、加齢によるものなのかを、専門的な検査で確かめることができます。

検査の結果、喘息だと診断されたら、体調や持病などに配慮しながら、適切な治療を提案します。

◆「呼吸器内科とはどんなところ?何をするのかを解説します」>>

3-2.ワクチン接種による感染症予防

呼吸器感染症にかかると、喘息が悪化する恐れがあります。インフルエンザ、肺炎球菌、コロナウイルスなどの呼吸器感染症を予防するため、ワクチンを接種しておきましょう。

予防接種を受けていても、感染することはありますが、それでも重症化を防ぐことはできます。重症化を防ぐことで、喘息への影響も最小限にできます。

加齢で弱ってきた呼吸器の機能を守り、さらに全身の健康を守るためにも、ぜひワクチンで予防に努めましょう。

◆「65歳になったら肺炎球菌ワクチンを受けましょう」>>

3-3.持病の治療薬とのバランス調整

持病がある場合は医師に伝え、もともと内服している持病の薬と喘息の薬が影響し合うかどうか確認しましょう。

持病の治療薬を考慮して、適切な喘息治療薬を選ぶことが大切です。

3-4.服薬が難しい薬があれば相談する

喘息の治療に使われる吸入薬の中には、使用方法や吸入のタイミングが難しいものがあります。

また、指先の力が弱いとパッケージが開けにくいものや、吸入用の容器に薬剤をセットするのに、細かな作業が必要なものもあります。

薬の取扱いに支障がある場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。別の薬に変更できる可能性もありますし、薬が吸入しやすくなる補助具を紹介してもらえることもあります。

3-5.定期的な受診で体調を安定させる

治療により体調が安定し、症状が出なくなっても、喘息が治ったわけではありません。

喘息発作を未然に防ぐためには、定期的な受診により体の状態や薬の効果を確認し、体調を安定させることが大切です。

◆「喘息が定期通院を必要とする理由とは?」>>

3-6.緊急時の対処法を確認

もし発作が起こった場合に備え、とっさの対処法や救急外来の情報を確認しておきましょう。

緊急時の対応については、家族や介助者にも情報を共有しておくと、スムーズに対応できます。

◆「もしも喘息発作が起こったら~緊急時の対処法~」>>

4.おわりに

咳や息切れが2週間以上続いていれば、喘息の疑いがあります。思い当たる人は呼吸器内科を受診して、適切な検査と治療を受けましょう。

高齢者は他の健康問題が多く、感染症にも弱くなっています。症状の変化を見逃さないためにも、定期的な受診により体調を管理しましょう。

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