いびきと息が止まる症状から考える睡眠時無呼吸症候群

睡眠中のいびきや「息が止まる」症状は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインかもしれません。
家族の指摘で発覚するケースも多く、放置すると健康リスクが高まります。
この記事では、いびきの原因と改善法を解説します。
目次
1.いびきの原因
いびきは、睡眠中に気道(空気の通り道)が狭くなり、粘膜が振動することで発生します。
原因は生活習慣や体の構造など多岐にわたり、個人差も大きいのが特徴です。
ここでは、気道が狭くなる主な要因をわかりやすく解説します。
1-1.生活習慣によるもの
飲酒、喫煙、疲労、ストレスなどの生活習慣は、いびきの大きな原因です。
アルコールは気道の筋肉を緩め、喫煙は炎症やむくみを引き起こします。
疲労やストレスが自律神経に影響を与え、気道の筋肉をゆるめ、睡眠の質を低下させることがあります。
生活習慣は比較的改善しやすいため、いびきが気になる方はまず見直しを検討しましょう。
【参考情報】『Q14.夜、いびきをかく、と言われました』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q14.html
1-2.身体的な特徴によるもの
肥満や喉の構造によって気道が狭くなり、いびきが生じることがあります。
肥満体型の人は首や喉、舌に脂肪がつき、睡眠中に気道を圧迫します。
また、舌の筋力が弱っている人や、顎が小さい人、舌が大きい、舌の位置が低い(低位舌)人は、喉の奥のスペースがもともと狭く、寝ている間に舌が落ち込みやすい傾向があるため注意が必要です。
生まれつき気道が細い方も、少しのむくみや筋肉のゆるみで空気の通り道がふさがれやすく、いびきにつながりやすくなります。
このように、体型や骨格の特徴によって「構造的に気道が狭くなりやすい方」は、いびきが慢性化しやすい傾向があります。
1-3.鼻や喉、体の疾患などによるもの
鼻や喉の疾患は見逃されがちですが、いびきの根本原因となることが多く、早めの見直しが大切です。
鼻づまりがあると鼻呼吸がしづらくなり、無意識に口呼吸になりやすくなります。
口呼吸では舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道が狭まっていびきの原因になるでしょう。
特に慢性的な鼻づまりがある人は、就寝中ずっと口呼吸になっている可能性が高く、気道閉塞のリスクが上がります。
アデノイド(鼻や喉の一番奥に位置するリンパ組織)や扁桃(へんとう 口の奥に位置し、喉の両側にある)が肥大すると気道が狭まり、特に子どものいびきの原因になります。
放置すると口呼吸や睡眠の質低下につながることがあるでしょう。
【参考情報】”Snoring” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/snoring/symptoms-causes/syc-20377694
さらに、睡眠時無呼吸症候群(SAS)という病気が原因で、いびきとともに何度も息が止まるケースもあります。
大きないびきに加えて「息が止まる」「日中の強い眠気」がある場合は、早めに医療機関での検査を検討しましょう。
体の疾患によるいびきは自分では気づきにくいため、家族の指摘が重要な手がかりになります。
1-4.姿勢・加齢・ホルモン変化によるもの
仰向けで寝ると、重力により舌が喉の奥に落ち込み、気道が圧迫されていびきをかきやすくなります。
枕の高さや寝姿勢が合っていないと、さらに気道の確保が難しくなります。
横向き寝は気道が開きやすく、いびきの軽減に効果的でしょう。
また、加齢によって口まわりの筋力が衰えると、寝ている間に口が開きやすくなり、舌が下がって気道が狭くなります。
さらに、女性ホルモンには気道の筋肉を広げる働きがありますが、閉経後にその分泌が減ることで、いびきが悪化することもあると言われています。
加齢やホルモンの変化によるいびきは、「年齢のせい」と見過ごされやすいですが、睡眠の質や健康に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
1-5.いびきの原因まとめと見直しのポイント
いびきは、気道が狭くなることで発生し、その原因は生活習慣、体の構造、鼻や舌の状態、加齢や姿勢など多岐にわたります。
複数の要因が重なることで、いびきが慢性化・悪化することもあるため、自分の状態を見直すことが大切です。
以下のような項目に当てはまる方は注意が必要です。
・寝る前に飲酒する
・鼻づまりやアレルギーがある
・肥満傾向、首まわりに脂肪が多い
・家族にいびきや無呼吸を指摘された
・日中の眠気、熟睡感がない
・仰向け寝・枕の高さが合っていない
・閉経後からいびきが気になる
いびきを放置すると、睡眠の質や健康に影響を及ぼす可能性があります。
2.睡眠時無呼吸症候群とは
いびきが疲労や飲酒による一時的なものであれば、自然におさまることもあります。
しかし、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」が原因で気道が塞がっている場合は、いびきや無呼吸が毎晩繰り返され、改善しません。
SASは、睡眠中に何度も息が止まることで体に大きな負担をかける疾患です。
2-1.睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは
この病気は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする状態が繰り返される病気です。
医学的には10秒以上呼吸が完全に止まる状態を「無呼吸」、酸素の取り込みが大きく下がる状態を「低呼吸」と呼びます。
これらが1時間あたり5回以上確認されると、SASと診断されます。
無呼吸が起こると脳が呼吸を再開させようと働き、一時的に覚醒状態になります。これが何度も続くことで、深い睡眠がとれず、翌日の眠気や疲労につながります。
さらに酸素不足が続くと心臓や脳に負担がかかり、高血圧や心疾患、脳卒中などのリスクも高まるでしょう。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群(SAS)』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html
2-2.原因
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因は、「閉塞性」「中枢性」「混合型」の3つに分類されます。
このうち約9割を占めるのが「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」で、眠っている間に喉や舌の筋肉がゆるみ、気道が塞がれることで呼吸が止まります。
原因には、肥満、扁桃・アデノイドの肥大、顎が小さい、舌が大きい(低位舌)、仰向け寝などがあります。
「中枢性(CSA)」は、脳からの呼吸指令がうまく出ずに呼吸が止まるタイプで、心不全・脳卒中・一部薬剤の影響で起こります。
両者が混在する「混合型」もあり、重症例や高齢者に多く見られます。見た目では判断が難しいため、正確な診断のため必ず検査を受けてください。
2-3.症状
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表的な症状は、「大きないびき」と「睡眠中の呼吸停止」です。
いびきは閉塞性が多く、中枢性では目立たないこともあります。
無呼吸により睡眠の質が低下し、日中の強い眠気や集中力の低下、頭痛などが生じます。夜間頻尿や寝汗、息苦しさなどもよくある症状です。
閉塞性では、いびきの途中で呼吸が止まり「フガッ」「プシュー」という音とともに再開することがあります。
このとき一時的に脳が覚醒しており、本人に自覚がなくても睡眠は分断されています。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群の病態・診断・治療』近畿中央呼吸器センター
https://kcmc.hosp.go.jp/cnt0_000236.html
2-4.検査
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、まず検査で呼吸の状態や無呼吸の頻度を確認します。
検査には「簡易検査」と「精密検査」の2段階があります。
簡易検査では、自宅でアプノモニターという小型機器を装着し、呼吸回数・酸素濃度・いびき音などを測定します。
より詳しい評価が必要な場合は、医療機関で「精密検査(PSG)」を行います。
脳波や呼吸、心電図などを同時に記録し、睡眠と呼吸の異常を総合的に診断します。
診断には「AHI(無呼吸・低呼吸指数)」という指標が使われ、1時間あたりの回数によって重症度が分類されます。
症状に心当たりがある方は、早めの検査がおすすめです。
2-5.治療
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療は、重症度や原因に応じて選ばれます。
中等症〜重症の方にはCPAP療法が基本となり、鼻から空気を送り込み、気道を広げて無呼吸を防ぎます。
CPAPはいびきや日中の眠気を改善し、継続することで高血圧や心疾患など合併症のリスク低下も期待されます。
軽症の方やCPAPが合わない方には、下顎を前に出すマウスピース(OA装置)が使われることもあります。
また、心不全を伴う中枢性無呼吸では、ASV(自動調整型陽圧呼吸療法)が選択される場合があります。
扁桃やアデノイドの肥大が原因の場合は、外科的手術が検討されることもあります。
どの治療も、まず検査で重症度と原因を明らかにし、医師と相談しながら進めることが大切でしょう。
◆「睡眠時無呼吸症候群の検査と治療」について>>
3.睡眠時無呼吸症候群の合併症
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、いびきだけでなく、放置すると高血圧や心疾患など命に関わる合併症を引き起こす恐れがあります。
自覚しにくく、気づいたときには病気が進行していることも少なくありません。
3-1.高血圧
夜間睡眠中は、通常は副交感神経の働きにより血圧が下がります。
しかし睡眠時無呼吸症候群になると、無呼吸のたびに覚醒反応が起こり、本来は日中に働く交感神経が活発になり夜に血圧が上がります。
これが繰り返されると血管に負担がかかり、高血圧を発症しやすくなります。
さらに、SASの患者さんでは降圧剤が効きにくい「治療抵抗性高血圧」を伴いやすく、治療が難航することもあります。
特に朝方に血圧が急上昇する「早朝高血圧」は、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めるため注意が必要です。
【参考情報】”Obstructive Sleep Apnea” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/obstructive-sleep-apnea/symptoms-causes/syc-20352090
3-2.心臓病
睡眠中に呼吸が止まると、体内に十分な酸素を取り込めなくなるため、不足分を補おうとして心臓の動きが早くなります。
その結果、心臓や血管に負担がかかり続け、心臓の動きが弱くなったり、心臓の血管が詰まったりすることがあります。
この負担は長期的に心不全・不整脈・狭心症・心筋梗塞といった重大な心血管疾患の発症につながると報告されています。
◆「睡眠時無呼吸症候群と心不全」の関係>>
3-3.脳卒中
夜間の高血圧や体内の酸素不足により血管に負担がかかり続けると、血管は弾力を失って硬く、もろくなります。
その結果、血栓により詰まったり破れたりしやすくなるため、脳卒中を発症するリスクが高まります。
特に「夜間の無呼吸 → 酸素低下 → 血圧上昇」の流れは、脳血管障害の直接的な引き金になるといわれているため、特に注意が必要です。
3-4.糖尿病
睡眠時無呼吸症候群により夜間に何度も目が覚めると、熟睡できず睡眠時間が短くなります。
その結果、食欲を増進させるホルモンである「グレリン」が増え、肥満を引き起こしやすくなります。
肥満になると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが悪くなるため糖尿病のリスクを高める要因となります。
また、SASによる慢性的な酸素不足や睡眠障害も、インスリン抵抗性を高め、糖尿病の進行や治療の効果に悪影響を与える可能性があるでしょう。
◆「睡眠時無呼吸症候群の合併症」についてさらにくわしく>>
4.睡眠時無呼吸症候群による日常生活への影響
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、健康だけでなく仕事や家庭など日常生活にも大きな影響を与える病気です。
特に「日中の眠気」や「集中力の低下」は、周囲にも支障を及ぼすことがあります。
4-1.交通事故
睡眠時無呼吸症候群の影響で夜間に熟睡できないと、日中に眠気が襲ってきます。
この眠気は、居眠り運転や事故のリスクを高め、反応速度や判断力も低下します。
特に長距離運転や単調な作業中は注意が必要です。
◆「睡眠時無呼吸症候群と運転業務の関係性」>>
4-2.集中力の低下
夜間に呼吸が止まることを繰り返すと、そのたびに一瞬目が覚めてしまうので、十分に眠ったつもりでも心身の疲れが十分にはとれません。
このように睡眠の質が下がることが続くと、集中力が維持できなくなり、仕事のミスが増えたり、勉強に身が入らなくなってしまうことがあります。
イライラしやすくなるなど精神面への影響も見られ、「年齢のせい」などと誤解され、病気に気づきにくいケースもあります。
4-3.人の安眠を妨げる
SASによるいびきは大きく頻繁なため、周囲の人の睡眠を妨げ、家庭内でのストレスにつながることもあります。
特にパートナーと同室で眠る場合、「眠れない」「別室で寝るようになった」など、生活への影響が出やすいのが特徴です。
結果として、人間関係や生活の質(QOL)が低下することもあります。
5.おわりに
「いびき」や「寝ている間に息が止まる」症状は、睡眠時無呼吸症候群のサインかもしれません。
放置すると、生活の質だけでなく健康寿命にも影響を及ぼす可能性があります。
心当たりのある方は、まず正しい情報を知り、早めの検査や治療を検討しましょう。
それが、ご自身とご家族の健康を守る第一歩になります。
◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>













