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車に乗ると咳が出る原因は?アレルギーと車内環境の対策を解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年06月09日

「車に乗るとなぜか咳が出る」という方は、アレルギーの疑いがあります。

車の中には、カビやホコリのようなアレルギーを引き起こす物質が蓄積していることがあります。

また、車に使われている塗装剤などに含まれる化学物質や、車の乗り降りによる急激な温度変化、車内の芳香剤・消臭スプレーの成分も咳の原因となることがあります。

この記事では、車に乗ると咳が出る場合の原因と対策について説明します。

1.車に乗ると咳が出る理由


車に乗ると咳が出る原因は、いくつか考えられます。

ここでは、代表的な4つの理由をわかりやすく解説します。

1-1.カーエアコンが汚れている


車内の快適な温度を保つために欠かせないカーエアコンですが、清潔にしていないとカビや汚れが発生し、咳の原因になることがあります。

カーエアコンの冷房を使用すると、内部が結露しやすくなり、これがカビの発生につながると言われています。

また、車のドアを開け閉めする際に入ってくるホコリや花粉がカーエアコンに付着して、汚れの原因になることもあります。

このように、汚れたカーエアコンの風を吸い込むことが、咳が出やすくなる原因のひとつと言えるでしょう。

【参考情報】『The impact of cold on the respiratory tract and its consequences to respiratory health』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6031196/

1-2.車内の汚れ・ダニ

車の中は、汚れが溜まりやすい場所です。

例えば、靴に付いた泥や砂などが落ちてそのままになっていたり、ドアの開け閉めによってホコリや花粉が入ってきたりと、さまざまな原因で汚れていきます。

そのため、車内の掃除が不十分だった場合、ホコリや砂などの汚れを吸い込んで気道が刺激され、咳が出ることがあります。

また、車内にラグやぬいぐるみなどの布製品を置きっぱなしにしていると、ダニが発生しやすくなるでしょう。

ダニが発生すると、死骸やフンが空気中に舞い上がり、それらを吸い込んでしまうとアレルギーを起こし、咳の原因となる場合もあります。

【参考情報】『Dust Mites and Cockroaches』National Institute of Environmental Health Sciences
https://www.niehs.nih.gov/health/topics/agents/allergens/dustmites

1-3.エアコンの冷気による刺激と車内の乾燥

車内での冷房・暖房の使い過ぎが気道に負担をかけることがあります。

特に夏の暑い時期は、車に乗り込むとすぐに車内を冷やしたいと思う方も多いでしょう。

しかし、冷房の温度を下げ過ぎたり、エアコンから出てくる冷気を直接浴びたりすると、冷気で気道が刺激され、咳が出ることがあります。

また、冬場はもともと湿度が低く空気が乾燥するので、車内で暖房を使用すると、湿度は一層下がります。

車内の湿度が低いために気道が乾燥すると、ホコリなどの異物を排除しようとする気道粘膜の防御反応が低下して、咳が出やすくなる可能性があります。

◆「咳が止まらない時こそ乾燥に注意!」>>

1-4.VOCの影響

車に使われている塗装剤や接着剤から、VOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)という化学物質が発生することがあります。

これを吸い込むと、アレルギー反応を引き起こし、咳などのさまざまな症状が現れることがあります。

この状態は「シックカー症候群」とも呼ばれています。

特に新車を購入した直後は、VOCの濃度が高い状態です。

また、車内の温度が上がると、VOCの濃度も高くなることが分かっています。

VOCによる影響の現れ方には個人差があり、同じ環境でも症状が出やすい方と出にくい方がいます。

特に、アレルギー体質の方や、喘息・咳喘息のある方、気道が敏感な方では、わずかな刺激でも咳や喉の違和感を感じる場合があります。

さらに、換気が不十分な状態でエアコンを使用し続けると、車内にVOCがこもりやすくなり、短時間の運転であっても、乗車するたびに刺激を受けることで、症状が繰り返される可能性も考えられます。

原因に気づかずそのような空気を吸い続けていると、症状が長引く場合もあるため注意が必要です。

【参考情報】『車室内VOC低減に対する自主取り組み』日本自動車工業会
https://www.jama.or.jp/operation/ecology/hazardous_substances/voc.html

1ー5.芳香剤や消臭スプレー

車内で使用される芳香剤や消臭スプレーに含まれる香料成分が、咳の原因になることがあります。

これらの製品には、合成香料や化学物質が含まれている場合があり、人によっては少量でも喉や気道を刺激し、咳、喉のイガイガ感、息苦しさなどの症状が現れることがあります。

車内は密閉された空間のため、香り成分が逃げにくく、知らないうちに吸い込み続けてしまうことも少なくありません。

「芳香剤を使い始めてから咳が出るようになった」「特定の香りで症状が強くなる」と感じる場合は、使用を控え、無香料の環境を心がけることが大切です。

2. 寒暖差アレルギーと車内の温度変化

車の乗り降り時の急激な温度変化も、咳の大きな原因のひとつです。

この章では、「寒暖差アレルギー」について詳しく解説します。

2-1.寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)とは?

寒暖差アレルギーとは、急激な気温差によってくしゃみ・鼻水・咳などが出る状態です。

医学的には「血管運動性鼻炎」と呼ばれ、7℃以上の気温差が生じたときに症状が出やすいとされています。

花粉症などとは異なり、血液検査でアレルゲンを見つけるのは難しいとされています。

体温を一定に保つ「自律神経」のバランスが崩れることで、鼻や喉の粘膜が過剰に反応することが原因と考えられています。

発熱や目のかゆみがない点が風邪・花粉症との違いと言えるでしょう。

2-2.車の乗り降り時の気温差が咳を引き起こすしくみ

夏や冬の車内と車外の温度差は、思っている以上に大きいものです。

たとえば、夏は外気温が35〜40℃でも、エアコンの効いた車内は25〜27℃程度に保たれています。

冬も外気温が2〜10℃であっても、車内は23〜25℃前後になることが多いでしょう。

このように、車に乗り降りするだけで体には一瞬で約10℃ほどの気温差が生じます。

気管支が弱い方や喘息のある方では、この気温差が刺激となり、気道が収縮して発作的な咳が出ることがあります。

また、前日との気温差が3℃以上あると喘息発作が起こりやすいという報告もあり、特に季節の変わり目には注意が必要です。

【参考情報】『The impact of cold on the respiratory tract and its consequences to respiratory health』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6031196/

2-3.後鼻漏(こうびろう)と咳の関係

寒暖差や車内のアレルゲンによってアレルギー性鼻炎が起きると、鼻水が増えやすくなります。

この鼻水が喉の奥へ垂れ込む状態を後鼻漏(こうびろう)といい、この刺激により、咳が出やすくなることがあります。

「車に乗ると喉の奥に鼻水が流れる感じがして咳が出る」という方は、後鼻漏が原因の可能性も考えられるでしょう。

後鼻漏は、アレルギー性鼻炎だけでなく、慢性副鼻腔炎(ちくのう症)が原因になることもあります。

「咳はあるが息苦しさはない」という場合は、耳鼻咽喉科や呼吸器内科への受診を検討しましょう。

◆「副鼻腔炎とはどんな病気?」>>

3.車内で咳が出る場合の対処法

第1章・2章では、車に乗ると咳が出やすくなる主な原因として、車内の空気環境やエアコン使用時の影響や寒暖差などについてお伝えしました。

車内での咳は、こうした要因を知り、日々の工夫を取り入れることで、予防・軽減できる場合があります。

この章では、すぐに実践できる4つの対処法をご紹介します。

3-1.掃除

車の中は、一見、汚れていないように見えても、実際にはホコリなどが残っていることが多いものです。

定期的に掃除を行い、車内を清潔に保ちましょう。

また、カーエアコンからカビのような匂いがする場合は、早めに掃除をしましょう。

カビをそのままにしていると、エアコンの風でカビの胞子が車内に広がってしまいます。

自分でエアコンを掃除するのが難しい場合は、ガソリンスタンドや、カー用品店、ディーラー、洗車専門店などで対応している場合があるので、必要に応じて活用すると良いでしょう。

3-2. 換気と芳香剤の見直し

車内に溜まったVOCは、換気することで濃度が下がります。

乗車する前にしっかりと換気を行い、VOCを外に追い出すことで咳が出にくくなることが期待できます。

特に新車に乗る際は、こまめに換気を行いましょう。

また、強い香りの芳香剤・消臭スプレーを使っている場合は、無香料タイプに切り替えることを検討しましょう。

アレルギー体質の方は、合成香料が咳の引き金になることがあります

3-3.マスクの着用と湿度管理

冷たい空気や乾燥が咳の原因の場合、マスクを着用することで気道への刺激を和らげる効果が期待できます。

特に季節の変わり目や冬場の乗車時におすすめです。

◆「マスクの付け方と選び方」>>

また、車内の湿度が低いと気道が乾燥して咳が出やすくなります。

車内に小型加湿器を置くなどして湿度を50〜60%程度に保つ工夫もおすすめします。

気道の乾燥を防ぐため、水分を摂るのも良いでしょう。

ただし、冷たい飲み物は気道を刺激する恐れがあるため、常温または温かい飲み物を選んで喉の潤いを保つようにしましょう。

3-4.寒暖差を小さくする工夫

車内で咳が出やすくなる原因の一つに、急な寒暖差があります。

乗車後すぐに強い冷風・温風を当てるのではなく、風量や温度設定を控えめにし、徐々に車内温度を調整するようにしましょう。

また、エアコンの吹き出し口が喉や顔に直接当たらないよう向きを調整することも、咳の予防につながります。

さらに、羽織れる上着やひざ掛けなどを用意しておくことで、エアコン設定に頼りすぎず寒暖差を和らげることができます。

こうした小さな工夫を重ねることで、車内での咳を軽減できる可能性があります。

4.車内で咳を繰り返す時に考えられる病気

対策を行っても車内での咳が続く場合、何らかの病気が原因かもしれません。

この章では、考えられる4つの病気について説明します。

4-1.喘息

喘息は、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が生じることで、咳や息苦しさなどの症状が現れる病気です。

喘息は、かつては「アレルギーが原因かどうか」で分類されることが一般的でした。

しかし最新のガイドラインでは、体の中で起きている炎症の種類に注目した、より詳しい分け方が採用されています。

T2-high(高タイプ2)喘息
・体内で特定の炎症反応が強く起きているタイプ
・血液検査などで炎症の手がかりが見つかりやすい
・原因のアプローチがしやすい傾向がある

T2-low(低タイプ2)喘息
・上記の炎症反応がほとんど見られないタイプ
・検査で原因の手がかりが得られにくい場合がある
・治療の方向性を見つけるまでに時間がかかることもある

この分類が重要なのは、タイプによって効果的な治療法が異なるからと言われています。

自分の喘息がどちらのタイプかを把握することが、より適切な治療への近道になります。

4-2.咳喘息

咳喘息は、喘息とよく似た病気ですが、息苦しさなどの症状はなく、咳だけが長期間続く病気です。

風邪や新型コロナウィルス感染症などの呼吸器感染症をきっかけに発症することがあります。

咳喘息も喘息と同様に、アレルギーが原因の場合があるので、車内にアレルギーを引き起こす物質があれば、反応して咳が出ることがあります。

4-3.アトピー咳嗽

アトピー咳嗽は、以前にアレルギー疾患にかかったことがある方や、アレルギー疾患を持つご家族がいる方が発症しやすい病気です。

この病気の方は、咳に対する感受性が高くなり過ぎているため、冷たい空気のようなわずかな刺激にも反応して咳が出やすくなると言われています。

4-4.アレルギー性鼻炎

アレルギーを引き起こす物質を吸い込むことで、鼻の粘膜が刺激され、鼻水やくしゃみ、鼻づまりなどの症状が現れる病気です。

アレルギー性鼻炎により鼻水が生じると、鼻水が気道に流れ込んで咳が引き起こされることがあります。

【参考情報】『アレルギー性鼻炎』国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/allergic_rhinitis.html

5.呼吸器内科で行う検査


車に乗った時に毎回のように咳が出る場合は、医療機関での受診をおすすめします。

この章では、呼吸器内科で行う主な検査を紹介します。

5-1.画像検査

レントゲン(X線)やCTなどで肺の写真を撮影し、異常や炎症の有無を確認します。

アレルギーが原因で咳が出ている場合、画像では異常が見つからないことがほとんどですが、似た症状を持つ他の呼吸器疾患と区別するために検査を行うことがあります。

5-2.血液検査

血液検査では、アレルギーの有無や、アレルギーを引き起こす物質を調べることができます。

アレルギーを引き起こす物質には、ダニや花粉、ペットの毛などがありますが、何に対してアレルギー反応を起こすのかは、人によって異なります。

近年では39種類のアレルゲンを一度に調べられる血液検査(View39など)も行われており、原因特定に役立てられています。

◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査について」>>

5-3.呼吸機能検査

呼吸機能検査とは、肺や気道の機能を調べる検査です。

スパイロメトリーやモストグラフなどの種類があり、喘息や咳喘息の疑いがある場合に行われることがあります。

また、呼気一酸化窒素検査(FeNO検査)は気道炎症の程度を測る検査で、咳喘息の診断補助として用いられています。

6.おわりに

車に乗ると咳が出る原因は、カーエアコンのカビ・ホコリ、ダニ・VOC・芳香剤、そして急激な寒暖差など多岐にわたります。

定期的な車内の掃除・換気・マスク着用・湿度管理といった対策で改善することもありますが、咳が続く場合や市販薬が効かない場合は、アレルギーや喘息などの病気が隠れているかもしれません。

自己判断せずに呼吸器内科を受診して原因を特定し、適切なサポートを受けることをおすすめします。

◆「横浜市で呼吸器内科をお探しなら」>>

以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします

  • くしゃみ・鼻水・鼻づまりが2週間以上続いている
  • 目のかゆみや涙が止まらない
  • 市販薬では症状が十分にコントロールできない
  • 毎年同じ時期に同じ症状が出る
  • アレルギーの原因を特定したい

当てはまる項目がある方は、アレルギー専門医にご相談ください。

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