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アトピー咳嗽とはどんな病気?咳が続く原因や治療法を解説します

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年03月18日

何かの拍子にコンコンと咳が出ることはよくあります。

しかし、ちょっとしたきっかけで咳が出ることが多かったり、のどがムズムズするようなかゆみが続いているなら、アトピー咳嗽(がいそう)という病気のせいかもしれません。

この記事では、アトピー咳嗽の原因や症状、治療について解説します。

似ている病気も紹介しますので、咳が続いて悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。

1.アトピー咳嗽とはどんな病気か


アトピー咳嗽とは、咳に対する感受性が上がり過ぎることにより、咳が出やすくなってしまう病気です。

空気の通り道である気道の粘膜の表面には、咳受容体と呼ばれるセンサーがあります。この咳受容体が、体内に入った異物を感知すると、脳に信号が伝達されて咳が出ます。

アトピー咳嗽の患者さんは、人より咳受容体が過敏になっているため、通常では咳が出ない弱い刺激、例えば運動や会話などがきっかけとなり、咳が出てしまうのです。

この病気になりやすいのは、アレルギー素因を持っている人です。

◆「アトピー素因とアレルギー性疾患の関係」について>>

具体的には、アトピー性皮膚炎などアレルギーが原因である病気にかかったことがある人や、家族の中にアレルギー体質の人がいる人です。

また、中高年の女性に多い病気とも言われています。

【参考情報】『Atopic cough and fungal allergy』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4222924/

2.アトピー咳嗽の症状


主な症状は、咳とのどの違和感です。

咳には、コンコンという乾いた音がするタイプ(乾性咳嗽)と、ゴホゴホという痰の絡んだ音がするタイプ(湿性咳嗽)がありますが、アトピー咳嗽の咳は乾いた音がします。

また、のどのイガイガやムズムズ、チクチク、ゴロゴロ、かゆみなどの違和感があり、のどに何かがへばりついているように感じる人もいます。

咳が出るきっかけはさまざまですが、冷たい空気や煙などを吸ってのどが刺激された時、また、会話や運動、緊張、ストレスなどが挙げられます。

咳は2週間以上続き、特に夜間や早朝に症状が出る人が多いです。

3.アトピー咳嗽の検査と治療


アトピー咳嗽が疑われる場合、病院では必要に応じて以下のような検査を行います。

3-1.画像検査

X線(レントゲン)やCTなどで胸部画像を撮影し、異常の有無などを確かめます。

アトピー咳嗽の場合、異常を認めないことがほとんどですが、似たような症状のある他の呼吸器疾患との鑑別のために、画像検査を行うことがあります。

3-2.血液検査

アレルギーの有無や原因となる物質を調べるため、血液中の好酸球数や血中総IgE値、特異的IgE抗体などをチェックします。

好酸球は、アレルギーに関与する細胞である白血球の一種です。アレルギー反応が起こると増加します。

IgE抗体とは、アレルゲンが体内に入ってきたときにアレルギー反応を起こす免疫グロブリンの一種です。

血中総IgE値は、アレルギー疾患がある場合に数値が上がります。特異的IgE抗体は、ダニや花粉、カビ、食物など、特定のアレルゲンがある場合に数値が上がります。

アトピー咳嗽は、アレルギーが関与している病気のため、血液検査でこれらの数値の上昇が認められます。

3-3.呼吸機能検査

肺や気道の機能を調べる検査です。スパイロメトリーやモストグラフ、呼気NO検査などの種類があります。

アトピー咳嗽の症状は、喘息や咳喘息とよく似ているため、呼吸機能検査でそれらの病気ではないことを確かめることがあります。

◆「呼吸器内科で行われる検査」について詳しく>>

4.アトピー咳嗽の治療


咳の原因がアトピー咳嗽であれば、アレルギーを抑える薬物療法治療が中心となります。

以下、アトピー咳嗽の治療に用いる薬について説明します。

4-1.ヒスタミンH1受容体拮抗薬

まず用いるのは、アレグラやアレジオンなどのヒスタミンH1受容体拮抗薬です。

◆抗アレルギー薬「アレグラ」の特徴と効果、副作用>>

アレルギーが起こるとヒスタミンという物質が放出され、咳などの反応を起こすのですが、ヒスタミンH1受容体拮抗薬はヒスタミンをブロックしてその働きを妨げます。

4-2.吸入ステロイド薬

ヒスタミンH1受容体拮抗薬だけでは良くならない時は、吸入ステロイド薬を用いることがあります。

吸入ステロイド薬は、気道の炎症を抑える薬です。気道に炎症があると、刺激に過敏となり、さらに咳が出やすくなるので、炎症を抑えて咳の症状を緩和します。

◆「吸入ステロイド」について詳しく>>

4-3.経口ステロイド薬

ヒスタミンH1受容体拮抗薬や吸入ステロイドでも効果が不十分な場合は、一時的に経口ステロイド薬を用いることもあります。

経口ステロイド薬は効果が高い反面、副作用も出やすいため、通常は短期間のみ使用します。

5.アトピー咳嗽と似た症状のある病気


アトピー咳嗽以外にも咳が長引く病気はあるため、他の病気との鑑別が必要になります。

以下、アトピー咳嗽と似た症状のある病気を紹介します。

5-1.喘息

気道に慢性的な炎症が起こり、咳や呼吸困難、ヒューヒュー・ゼイゼイという特徴的な呼吸音・喘鳴(ぜんめい)が現れる病気です。

アトピー咳嗽と同じく、喘息もアレルギーが原因で発症することが多い病気です。一方、ストレスなどアレルギー以外の原因がきっかけで発症することもあります。

治療では、吸入ステロイド薬をはじめとした薬で炎症をコントロールするとともに、原因となるアレルゲンの除去や生活習慣の改善などで治療の効果を高めていきます。

◆「喘息」について詳しく>>

◆「喘息治療に使う吸入薬の種類」について詳しく>>

5-2.咳喘息

咳だけが8週間以上続く病気です。風邪などの呼吸器感染症をきっかけに発症することが多く、その場合、風邪が治っても咳だけがしつこく続きます。

喘息とよく似た病気ですが、喘息の症状であるヒューヒュー。ゼイゼイという呼吸音や息苦しさはありません。

原因ははっきりとは分かっていませんが、アトピー咳嗽と同様に、アレルギー体質の人が発症しやすいと言われています。

治療には、喘息と同じように、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬を用います。

◆「咳喘息」について詳しく>>

6.おわりに

咳が2週間以上続いているときは、病院を受診して原因を調べましょう。アトピー咳嗽や喘息、咳喘息であれば、市販薬では症状がよくならないので、専門的な治療が必要になります。

また、喘息や咳喘息と診断されている人が、実はアトピー咳嗽ということもあります。通院や服薬を続けているにもかかわらず、咳の症状がよくならない場合は、咳にくわしい呼吸器内科で相談してみましょう。

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