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いびきは遺伝する?体質・家族歴と対策をわかりやすく解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年04月20日

 ✅ 子どもの頃からずっといびきをかいている

 ✅ 親もいびきをかいている

このような経験から、「いびきは遺伝する?」と感じる方は多いのではないでしょうか。

結論から言うと、答えはYesでもNoでもありません。いびきそのものが直接遺伝するわけではありませんが、いびきを起こしやすい体質や身体的な特徴は、家族間で受け継がれることはあります。

この記事では、遺伝する要素としない要素を整理しながら、いびきの仕組みと注意点をわかりやすく解説します。「体質だから仕方ない」と様子を見ていいケースと、対策や受診を検討すべきケースの見極め方も紹介します。

1.いびきは遺伝するのか?


「いびきをかく家系」という言い方がありますが、厳密にはいびきという現象そのものが遺伝子によって直接引き継がれるわけではありません。

遺伝するのは、原因となる身体的特徴や体質です。

1-1.顎や顔の骨格

下顎が小さい、あるいは後方に引っ込んでいる場合、睡眠中に舌の根元が喉の奥へ沈みやすくなり、気道が狭くなることでいびきが出やすくなります。

このような下顎の形状は、上顎との位置関係や噛み合わせ、顔全体の骨格バランスと密接に関係しており、遺伝的な影響を受けやすい体の特徴とされています。

【参考情報】『Advance in candidate genes in mandibular retrognathism: A systematic review』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40132276/

そのため、家族内で「顎が小さい」「横顔が似ている」といった共通点がある場合、気道の構造も似やすく、いびきのパターンが家族間で似通うことがあります。

子どもの頃からこの骨格的特徴がある場合、口呼吸や歯並びの乱れを伴いやすく、顎の発達が不十分なまま成人になるケースもあります。

一方で、成人になると加齢による筋力低下が加わり、若い頃は目立たなかったいびきが急に気になりはじめることもあります。

1-2.首が太くなりやすい体型

首周囲に脂肪が多いと、のどまわりの柔らかい組織が厚くなり、気道が外側から押されやすくなります。その結果、空気の通り道が狭くなり、いびきが出やすくなります。

脂肪のつき方には個人差があり、同じ体重増加でも腹部に集中する人、下半身に現れやすい人、首周りや顎下に脂肪がつきやすい人がいます。

【参考情報】『Genome-wide association study of body fat distribution identifies adiposity loci and sex-specific genetic effects』Nature
https://www.nature.com/articles/s41467-018-08000-4

家族内で首や顎下に脂肪がつきやすい傾向がある場合、似たような体質が受け継がれていることが考えられます。そのため、同じ家族でいびきが目立つケースも珍しくありません。

ただし、家族で似た脂肪分布やいびきの傾向がある場合でも、遺伝だけで決まるわけではなく、食習慣や運動習慣などの生活環境の影響も大きく関わっています。

1-3.鼻や喉の構造

鼻中隔の曲がりや慢性的な鼻炎、扁桃やアデノイドの大きさは、生まれつきの体質や成長の影響を受けやすい特徴です。これらがあると鼻での呼吸がしづらくなり、無意識のうちに口呼吸になりやすくなります。

口呼吸になると、舌やのどの柔らかい部分が後ろに落ちやすくなり、のどの振動が起こりやすくなるため、いびきが出やすくなるのです。


<鼻中隔の曲がり>
鼻中隔が曲がっていると、片側または両側の鼻の通り道が狭くなり、息を吸うときに抵抗が生じます。その分、吸う力が強くなり、のどの奥の柔らかい部分が大きく揺れて、いびきが出やすくなります。

【参考情報】『鼻中隔弯曲症〈びちゅうかくわんきょくしょう〉』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease_kids/index.php?content_id=19

鼻中隔の形は成長や骨格の影響を受けやすく、家族で似た構造を持つことも少なくありません。


<慢性的な鼻炎>
慢性的な鼻炎がある場合、鼻の粘膜が腫れたり分泌物が増えたりして、鼻の通りがさらに狭くなります。

特にアレルギー性鼻炎では、季節や環境によって鼻づまりが悪化し、寝ている間に口呼吸になりやすくなります。この状態が続くと、いびきが常態化し、睡眠の質にも影響します。

◆「鼻といびきの関係・改善方法を解説」>>


<扁桃やアデノイドの大きさ>
扁桃やアデノイドが大きいと、気道が塞がれて狭くなり、いびきが出やすくなります。特に子どもでは、アデノイド肥大が原因で、いびきが大きくなることがあります。

【参考情報】『扁桃炎・扁桃肥大・アデノイド肥大』大阪医療センター
https://osaka.hosp.go.jp/shinryo-navi/disease/e01.html

1-4.脂肪がつきやすい体質

体重が増加すると、首まわりや舌の付け根、咽頭周囲に脂肪が蓄積しやすくなります。これにより、気道が内側・外側の両方から狭められる状態が生じ、睡眠中に空気の通りが悪くなります。

特に、就寝中は筋肉の緊張が低下するため、脂肪による圧迫の影響が強く現れ、いびきが出やすくなります。

舌の付け根に脂肪がつくと、仰向け寝の際に舌が後方へ落ち込みやすくなり、咽頭部を部分的に塞ぎます。この状態では、吸気のたびに気道が振動しやすくなり、いびきの音が大きくなる傾向があります。

肥満傾向そのものは、生活習慣の影響が大きい一方で、太りやすさや脂肪のつき方には遺伝的要素が関与します。

◆「いびきの原因は肥満?改善法と危険なサインを知っておこう」>>

2.いびきにつながる家族共通の生活習慣


遺伝ではなく、家族で共通しやすい生活習慣や環境が、いびきの原因になっていることも少なくありません。

遺伝と環境が重なり合うことで、体質の問題に見えるケースもあります。

2-1.食生活

食生活は家族で似通いやすいため、体重が増えやすい習慣も共有されがちです。


<高カロリー・高脂質中心の食事>
揚げ物、脂身の多い肉、加工肉、バターや生クリームを多用した料理が多い食生活は、エネルギー過多になりやすく、体重増加につながります。



<糖質の過剰摂取>
余分な糖質は脂肪として蓄えられやすいため、白米・パン・麺類に加え、菓子類や甘い飲料を頻繁に摂る食習慣も肥満リスクを高めます。



<夜遅い時間の食事・間食>
就寝前の食事や夜食は、消費されにくく脂肪として残りやすいのが特徴です。

特に炭水化物や脂質が多い内容だと、体重増加とともに、胃食道逆流症や喉の違和感を通じていびきを悪化させることもあります。

◆「胃食道逆流症(GERD)」とは?>>


<アルコールを含む食事が多い>
アルコール自体にカロリーがあるうえ、食欲を増進させやすく、つまみも高脂質・高塩分になりがちです。

これが習慣化すると体重増加を助長し、さらにアルコールによる筋弛緩作用が加わり、いびきが出やすくなります。


<野菜・たんぱく質が少ない>
野菜や良質なたんぱく質が不足すると、満腹感が得られにくく、結果として食べ過ぎにつながります。

2-2.飲酒

晩酌が習慣化している家庭では、家族全員が食事とともにアルコールを摂ることが多く、その結果として複数の家族がいびきをかく状況が生まれます。

さらに、アルコールは脂肪の代謝や食欲にも影響するため、体重増加につながりやすく、首やのど周囲の脂肪が増えることで気道がさらに狭くなり、いびきが悪化することもあります。

特に、就寝前のアルコール摂取は、咽頭や舌の筋肉を緩め、気道を支える力を弱めるため、睡眠中に気道が閉塞しやすくなります。

【参考情報】『The impact of alcohol on breathing parameters during sleep: A systematic review and meta-analysis』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30017492/

2-3.寝る姿勢

仰向けで寝る習慣があると、重力の影響で舌や軟口蓋が喉の奥へ落ち込みやすくなり、気道が狭くなります。

【参考情報】『The effect of body posture on sleep-related breathing disorders: facts and therapeutic implications』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15310498/

寝るときの姿勢自体には直接的な遺伝はありませんが、骨格や筋肉の構造、関節の柔軟性といった体の特徴が影響するため、結果として家族で似た寝姿勢になりやすい傾向があります。

そのため、寝る姿勢に関連するいびきの出やすさも、遺伝的な体の特徴を通して間接的に家族内で似た傾向が見られることがあります。

3.遺伝が関係していそう?いびきのセルフチェック


以下の項目に当てはまるかを確認してみてください。いびきの背景に、遺伝的な体質が関与しているかを判断する目安になります。


両親や兄弟にいびきをかく人が多い
家族内で共通する骨格や気道の特徴が影響している可能性があります。


若い頃からいびきをかいている
加齢や生活習慣の変化だけでなく、生まれつきの体質が関係している場合があります。


痩せているのにいびきをかく
肥満が主な原因でない場合、顎や気道の形といった体の構造が影響していることがあります。

◆「痩せているのにいびきがひどい!その理由と対策」>>


首が短い、または太めである
首周りの脂肪や骨格の特徴が気道を狭めやすく、遺伝的に受け継がれることがあります。


下顎が小さい、または後方に引っ込んでいる
下顎後退の体型は舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道を狭める要因になります。


扁桃やアデノイドが大きい
小児期にいびきが目立つ場合、扁桃やアデノイド肥大が関係していることがあります。


鼻の通りが悪い
鼻呼吸がしにくく、口呼吸になりやすい体質は家族で似る傾向があります。


家族で体型や脂肪のつき方が似ている
首やのど周囲の脂肪のつき方も、体質として受け継がれることがあります。


これらに複数当てはまる場合は、遺伝的な要因が関係している可能性が高いと考えられます。

4.遺伝的ないびきは治らない?


骨格や体質がいびきの原因になっている場合、完全に改善するのが難しいこともあります。

ただ、生活習慣や環境を見直すことで、症状を和らげることは十分可能です。


<体重管理>
体重を減らすことで首まわりの脂肪が減り、空気の通り道に余裕ができ、いびきを軽減する効果が期待できます。


<寝る姿勢>
仰向けで寝ると舌が喉の奥に落ちやすくなり、気道が狭くなっていびきが出やすくなります。横向きで寝る、抱き枕などで姿勢を固定することで改善が見込めます。


<飲食習慣>
寝る前のアルコールや高脂肪・高カロリーの食事は、咽頭筋の緩みや気道の圧迫を助長し、いびきを悪化させます。これらを控えるだけでも症状の軽減につながります。


<鼻呼吸を助ける対策>
鼻中隔の曲がりや慢性的な鼻炎がある場合、鼻呼吸がしやすくなるように加湿やアレルギー対策、鼻腔スプレーなどを活用すると、口呼吸によるいびきを減らせます。

◆「口呼吸がいびきにつながる理由と予防のためにできること」>>


<舌やのどの筋肉を鍛える>
口腔体操や舌のストレッチで気道を支える筋力を強化することで、睡眠中の気道の閉塞を防ぎ、いびきを軽くすることができます。

5.いびきが心配な場合の病院受診の目安


骨格や体質の遺伝によっていびきが発生する場合、症状自体は病気ではないことも多いですが、いびきの強さや生活への影響によっては受診を検討したほうがよいケースがあります。


<いびきが大きく、家族から指摘される>
寝室で一緒に寝ている家族から「毎晩のように大きないびきをかいている」と言われる場合は、呼吸が一時的に止まっている可能性があります。

◆「いびきがうるさいと言われたら?」>>


<日中の強い眠気や集中力低下がある>
睡眠中に呼吸が十分にできていないと、日中に眠気や集中力の低下、疲労感が現れることがあります。


<呼吸が止まる、息苦しさを伴う>
いびきに加えて、「寝ている間に呼吸が止まる」「呼吸が乱れる」「息苦しさを感じる」場合は、睡眠時無呼吸症候群などの可能性があるため早めの受診が必要です。


<生活の質に影響が出ている>
いびきのせいで熟睡できず、仕事中や運転中にウトウトすることが多ければ、いびきが軽度であっても受診を検討するとよいでしょう。


受診先は、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠外来がいいでしょう。

◆「呼吸器内科とはどんなところ?」>>

6.いびきと関連して注意すべき代表的な病気


いびきは多くの場合、骨格や体質、生活習慣によるものですが、睡眠中の呼吸異常や体の健康に関わる病気のサインになることもあります。

6-1. 睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が一時的に止まったり、浅くなる病気です。睡眠中に呼吸が何度も途切れるため、十分な酸素が体内に行き渡らず、睡眠の質が低下します。

主な症状は、毎晩のように繰り返される激しいいびきです。また、日中には強い眠気や集中力の低下、頭痛、疲労感などが現れることがあります。

これらの症状は、単なる寝不足のせいだと思われがちですが、無呼吸が原因でいびきが出ている場合、糖尿病などの生活習慣病や心疾患のリスクも高まります。

睡眠時無呼吸症候群は、いびきの背景に隠れている可能性のある重要な病気であり、早めの対応が健康維持につながります。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっとくわしく>>

6-2. 扁桃肥大・アデノイド肥大

扁桃肥大・アデノイド肥大は、いびきが軽く、日常生活や睡眠に支障がなければ必ずしも治療が必要というわけではありません。

ただし、次のような場合は注意が必要です。

 ・睡眠中に呼吸が止まる、息苦しさを伴う

 ・日中に強い眠気や集中力低下がある

 ・口呼吸が続き、口の渇きや歯並びの悪化が見られる

 ・繰り返す中耳炎や慢性的な鼻づまりがある

これらがある場合は、いびきの有無にかかわらず、睡眠中に気道が狭くなることで十分な酸素が確保できず、睡眠の質が低下している可能性があります。

子どもでは、睡眠の質の低下により、成長ホルモンの分泌が妨げられる恐れがあるほか、慢性的な睡眠不足により、「落ち着きがない」「衝動的な行動が増える」「気分が不安定になる」などの傾向が見られることがあります。

6-3. 鼻腔の構造異常

鼻中隔の曲がり(鼻中隔弯曲)は、いびきや鼻づまりなどの症状がほとんどない場合は、必ずしも治療が必要というわけではありません。

ただし、次のような場合は注意が必要です。

 ・慢性的な鼻づまりや息苦しさがある

 ・口呼吸が続き、口の渇きや歯並びへの影響がある

 ・いびきや睡眠の質に影響が出ている

 ・頻繁な副鼻腔炎や鼻炎がある

慢性的な鼻づまりや口呼吸が続くと、睡眠の質が低下し、いびきや日中の眠気、集中力の低下につながることがあります。

また、鼻腔の通りが悪い状態が長く続くと、副鼻腔炎や口腔・歯並びへの影響などの合併症が起こりやすくなります。

◆「副鼻腔炎とはどんな病気?咳・アレルギー・いびきとの関係」>>

6-4. 肥満に伴う呼吸障害

首や喉周囲に脂肪が多いと、気道が外側から圧迫されて狭くなり、空気の通りが悪くなるため、いびきが出やすくなります。

特に、睡眠中は筋肉の緊張が低下するため、わずかな圧迫でも気道がさらに狭くなり、呼吸が部分的に止まることがあります。

この状態は、肥満による呼吸障害の一つとして睡眠時無呼吸症候群のリスクを高める要因となります。

「太っているから仕方ない」と思って放置すると、症状が進行したり健康への影響が出ることもあります。

【参考情報】『肥満と睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群』日本肥満症予防協会
https://himan.jp/column/diseases/009.html

6-5. その他の呼吸器や心臓の病気

慢性の肺疾患や心臓病がある場合、肺や心臓の機能が十分に働かず、体内への酸素供給が不十分になりやすくなります。その結果、睡眠中に気道の酸素濃度が低下し、いびきや呼吸の乱れが現れることがあります。

また、喘息やCOPDなどの肺疾患や、心不全や不整脈などの心臓病がある場合は、いびきの状態や呼吸パターンの変化が健康状態の変化を示すこともあります。

急にいびきが悪化した、寝ている間に息が止まることがある、または日中に強い眠気や疲労感が出るといった場合は、早めに医師に相談しましょう。

◆「急にいびきをかくようになった原因は?」>>

7.おわりに

いびきそのものが遺伝することはありません。いびきはあくまで症状であり、直接受け継がれるものではないという点をまず押さえておく必要があります。

一方で、顎や気道の形、脂肪のつきやすさといった遺伝的体質が、いびきに強く影響するケースは少なくありません。そのため、家族にいびきをかく人が多くても、不思議なことではありません。

重要なのは、「体質だから仕方ない」と放置しないことです。生活習慣の見直しや適切な対策をとり、それでもいびきがひどくて困っているようなら、睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるので病院を受診してください。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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