ブログカテゴリ
外来

咳と大気汚染の関係~PM2.5や黄砂で咳が出る理由

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年08月05日

風邪を引いた感じもしないのに咳が出るときは、PM2.5・黄砂・光化学スモッグ・排気ガスによる大気汚染が、咳の原因や症状の悪化に深く関わっていることがあります。

これらの物質を吸い込むと気道に炎症が起き、咳や喉の違和感、息苦しさといった症状が現れることがあるのです。

この記事では、咳を引き起こす主な大気汚染物質の種類や症状の特徴、そして具体的な予防策についてくわしく解説します。適切な対策を取るための参考にしてください。

1.咳と大気汚染の関係


私たちは呼吸によって空気を吸い込んでいますが、その中に有害な物質が含まれていると、気道に刺激や炎症が生じることがあります。

1-1.大気汚染とは何か

大気汚染とは、空気中に有害な物質が増加し、人の健康や生活環境に悪影響を及ぼす状態を指します。

代表的な大気汚染関連物質には、PM2.5(微小粒子状物質)、黄砂、光化学スモッグの主成分であるオゾン、自動車の排気ガスなどに含まれる二酸化窒素があります。

大気汚染の程度は季節や地域、天候によって変化するため、特定の日に咳やのどの不調を感じる場合は、大気汚染の影響を受けている可能性も考えられます。

【参考情報】『大気汚染の定義と汚染物質』環境省
https://www.env.go.jp/earth/coop/coop/document/02-apctmj1/02-apctmj1-012.pdf

1-2.大気汚染で咳が起こる仕組み

空気中に含まれる汚染物質を吸い込むと、空気の通り道である気道の粘膜が刺激を受けます。

気道には、吸い込んだ異物を体外へ排出する防御機能が備わっています。そのため、汚染物質による刺激や炎症が生じると、異物を取り除こうとして咳が出ることがあります。

また、気道が炎症によって敏感になると、冷たい空気やほこりなどのわずかな刺激にも反応しやすくなり、咳が出やすくなることがあります。

さらに、大気汚染の影響を受けることで、風邪などの呼吸器感染症や喘息、アレルギー性疾患の症状が悪化しやすくなることが報告されています。

そのため、もともと呼吸器疾患やアレルギーを持つ人は、大気汚染に注意が必要です。

2.咳を引き起こす主な大気汚染


大気汚染と一口にいっても、その原因となる物質はさまざまです。

なかでもPM2.5や黄砂、光化学スモッグ、排気ガスは、咳や呼吸器症状との関連がよく知られています。

2-1.PM2.5(微小粒子状物質)

PM(Particulate Matter)2.5とは、直径2.5マイクロメートル以下の極めて微小な粒子状物質です。

髪の毛の太さの約30分の1という小ささのため、鼻やのどでは十分に除去できず、気管支や肺の奥まで入り込んでしまいます。

PM2.5の主な発生源は、自動車の排気ガス、工場や発電所からの排煙、料理や暖房などによる家庭からの発生などです。

また、大気中で窒素酸化物や硫黄酸化物が化学反応を起こすことでも生成され、さらに、海外から飛来する大気汚染物質や黄砂がPM2.5濃度の上昇に影響することもあります。

PM2.5は気道や肺に炎症を引き起こし、咳・痰・息苦しさといった症状の原因になることがあります。喘息やCOPDのある方は気道の炎症が悪化しやすいため、特に注意が必要です。

健康な方であっても、PM2.5濃度が高い日にはのどの違和感や咳を感じることがあります。

【参考情報】『微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報』環境省
https://www.env.go.jp/air/osen/pm/info.html

2-2.黄砂

黄砂とは、中国やモンゴルなどの乾燥地域から舞い上がった砂塵が、偏西風に乗って日本まで運ばれてくる現象です。

主に春に観測され、空がかすんだり、洗濯物や車に砂が積もったりすることでよく知られています。

黄砂の問題は、砂そのものだけには限りません。長距離を移動する過程で、PM2.5や排気ガス由来の汚染物質、花粉、細菌などが砂粒に付着することがあります。

そのため、黄砂を吸い込むと気道への刺激やアレルギー反応が起きやすくなると考えられています。

黄砂が飛来する時期には、咳やのどの痛み、痰といった呼吸器症状を訴える人が増える傾向があります。特に喘息のある方は、黄砂の飛来をきっかけに発作や咳が悪化することがあるため注意が必要です。

【参考情報】『黄砂とその健康影響について』環境省
https://www.env.go.jp/chemi/%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%80%8C%E9%BB%84%E7%A0%82%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E5%BD%B1%E9%9F%BF%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%8D%E5%B0%8F%E5%86%8A%E5%AD%90.pdf

2-3.光化学スモッグ

光化学スモッグとは、自動車や工場から排出された窒素酸化物や揮発性有機化合物が太陽の紫外線を受けて化学反応を起こし、オゾンなどの酸化性物質が生成される現象です。

濃度が高くなると、自治体から光化学スモッグ注意報が発令されることがあります。

日差しが強く風の弱い日に発生しやすく、春から夏にかけて特に多く見られます。晴天の日の日中から夕方にかけて濃度が上がりやすいため、注意が必要です。

光化学スモッグに含まれるオゾンなどの酸化性物質は、気道や目の粘膜を刺激します。その結果、咳やのどの痛み、胸の不快感、息苦しさといった症状が現れることがあります。

【参考情報】『光化学スモッグ発生のメカニズム』東京都光化学スモッグ情報
https://www.ox.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/meca.html

2-4.排気ガス(二酸化窒素)

自動車の排気ガスにはさまざまな有害物質が含まれていますが、なかでも二酸化窒素は呼吸器への影響が大きい物質として知られています。

交通量の多い道路沿いや都市部では濃度が高くなりやすく、日常的に吸い込む機会も少なくありません。

二酸化窒素を吸い込むと気道の粘膜に炎症が生じやすくなり、咳・痰・のどの違和感といった症状が現れることがあります。

また、長期間にわたって高濃度にさらされ続けると、気道の防御機能が低下し、呼吸器感染症や喘息症状の悪化につながる可能性があります。

【参考情報】『自動車の排気ガス』国土交通省
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/shouwa42/ind050402/002.html

3.大気汚染による咳の特徴


大気汚染による咳には、風邪や感染症による咳とは異なる特徴があります。

また、咳だけでなく、のどや目の症状を伴うことも少なくありません。

3-1.汚染濃度が高い日に悪化しやすい

大気汚染による咳は、PM2.5や黄砂、光化学スモッグなどの濃度が高い日に悪化しやすいことが特徴です。

普段は症状がほとんどなくても、汚染濃度が上昇した日に咳が増えたり、のどの違和感を感じたりすることがあります。

3-2.屋外活動で症状が出やすい

大気汚染物質は屋外の空気中に多く存在するため、外出時や屋外での活動中に症状が現れやすい傾向があります。

例えば、散歩やジョギング、通勤・通学などで長時間屋外にいると、汚染物質を吸い込む量が増え、咳が出やすくなることがあります。

また、運動によって呼吸量が増えると、より多くの大気汚染物質が気道に取り込まれるため、症状が強く現れる場合があります。

3-3.のどの痛みや目の刺激を伴うことがある

大気汚染による影響は咳だけではありません。

PM2.5や黄砂、光化学スモッグなどは気道だけでなく、のどや目の粘膜にも刺激を与えるため、次のような症状が現れることがあります。

 ・のどの痛み 

 ・のどのイガイガ感

 ・目のかゆみ

 ・目の痛み

 ・目の充血

 ・涙が出る

特に光化学スモッグでは、咳やのどの痛みに加えて目の刺激症状がみられることが少なくありません。

4.大気汚染による咳を予防する方法


大気汚染による咳を完全に防ぐことは難しいものの、日常生活のなかで対策を行うことで影響を減らせる可能性があります。

4-1.PM2.5や黄砂の飛散情報を確認する

大気汚染対策の基本は、現在の状況を把握することです。

PM2.5や黄砂の飛散状況は、環境省や気象情報サイトなどで確認できます。事前に情報を確認しておくことで、外出の予定を調整したり、マスクを着用したりといった対策を取りやすくなります。

特に喘息やCOPDなどの呼吸器疾患がある人は、日頃から大気汚染情報をチェックする習慣をつけるとよいでしょう。

4-2.汚染が強い日の外出を控える

PM2.5や黄砂、光化学スモッグの濃度が高い日は、不要不急の外出を控えることも有効な対策です。

長時間屋外にいると、その分だけ大気汚染物質を吸い込む量が増えてしまいます。

また、ジョギングやスポーツなどの運動を行うと呼吸量が増えるため、より多くの汚染物質を体内に取り込む可能性があります。

特に光化学スモッグ注意報が発表されている場合は、屋外での激しい運動を避けるようにしましょう。

4-3.マスクを活用する

マスクの着用は、大気汚染物質の吸入量を減らすための方法の一つです。

特にPM2.5のような微細な粒子に対しては、密着性の高い不織布マスクや高性能マスクが役立つ場合があります。

ただし、マスクを着用していてもすべての大気汚染物質を防げるわけではありません。

そのため、マスクだけに頼るのではなく、飛散情報の確認や外出時間の調整など、ほかの対策と組み合わせることが重要です。

◆「マスクの付け方と選び方」>>

4-4.帰宅後は手洗い・うがいを行う

外出中は、目に見えない大気汚染物質が体や衣類に付着しています。

帰宅後に手洗いやうがいを行うことで、口やのどに付着した汚染物質を洗い流し、刺激を軽減できる可能性があります。

【参考情報】『正しい手洗い(手指衛生)の方法』国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/kansen/fusegu/tearai.html

また、顔を洗ったり衣類を着替えたりすることも、体表に付着した汚染物質を除去するうえで役立ちます。

日常的に行いやすい対策であるため、外出後の習慣として取り入れるとよいでしょう。

4-5.室内環境を整える

屋外の大気汚染が強い日は、室内に汚染物質を持ち込まない工夫も大切です。

窓を長時間開けたままにすると、PM2.5や黄砂が室内に入り込みやすくなります。そのため、汚染濃度が高い日は換気の時間を短くしたり、空気の状態が比較的良い時間帯に換気したりすることが推奨されます。

また、空気清浄機を活用することで、室内の粒子状物質を減らせる場合があります。

◆「空気清浄機の効果」についてくわしく>>

5.咳が続く場合は別の病気の可能性も


大気汚染によって咳が生じることはありますが、咳が長期間続く場合は別の病気が隠れている可能性もあります。

特に数週間以上咳が続く場合や、夜間に悪化する場合、息苦しさを伴う場合には注意が必要です。

5-1.喘息

喘息は、気道に慢性的な炎症が生じる病気です。炎症によって気道が過敏な状態になるため、わずかな刺激でも咳や息苦しさが起こりやすくなります。

PM2.5・黄砂・光化学スモッグといった大気汚染物質は、こうした喘息症状を悪化させる要因として知られています。

特に夜間や早朝に咳が出やすい場合や、季節によって症状が変わる場合には、喘息の可能性も考えられます。

咳に加えて胸の圧迫感や呼吸時のゼーゼーという音がある場合は、早めに病院を受診することをおすすめします。

◆「喘息」についてもっとくわしく>>

5-2.咳喘息

咳喘息は、咳が主な症状として現れる喘息の一種です。症状は咳だけなので、「風邪が長引いているだけ」と見過ごされてしまうことがあります。

夜間から早朝にかけて咳が悪化しやすく、冷たい空気やタバコの煙、大気汚染物質などが引き金となって咳が出ることもあります。

咳喘息を未治療のまま放っておくと、本格的な喘息へ移行することがあるため、長引く咳がある場合は早めに病院を受診することが大切です。

◆「咳喘息の原因・症状・治療」について>>

5-3.COPD

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、主に長年の喫煙によって引き起こされる呼吸器疾患です。

気道や肺に慢性的な炎症が生じ、空気の流れが妨げられることで、咳や痰、息切れなどの症状が現れます。

初期には「年齢のせい」「体力の低下」と思われることもありますが、進行すると日常生活にも支障をきたすようになります。

また、PM2.5や排気ガスなどの大気汚染物質はCOPDの症状を悪化させることがあり、急性増悪の原因となる場合もあります。

喫煙歴があり、慢性的な咳や痰が続いている場合はCOPDの可能性も考慮する必要があります。

◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

5-4.呼吸器感染症

咳の原因として最も一般的なのが呼吸器感染症です。

風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、気管支炎、肺炎などでは、咳が主な症状の一つとして現れます。

感染症による咳は、発熱やのどの痛み、鼻水、倦怠感などを伴うことが多いのが特徴です。

また、感染が治った後も気道の炎症が残ることで、数週間にわたって咳だけが続くこともあります。

大気汚染による咳だと思っていても、実際には感染症やその後遺症が原因である場合もあるため、症状が長引く場合や悪化する場合には病院を受診しましょう。

◆「呼吸器感染症の主な種類と予防法」>>

6.おわりに

咳が続く原因は風邪やアレルギーだけではなく、大気汚染が関係している場合もあります。

大気汚染による咳を予防するためには、PM2.5や黄砂の飛散情報を確認し、対策を行うことが重要です。

一方で、咳が長期間続く場合は、喘息や咳喘息、COPDなどの病気が隠れている可能性もあります。

咳がなかなか改善しない場合や、息苦しさを伴う場合は、早めに病院を受診して原因を確認しましょう。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします

  • 咳が2週間以上続いている
  • 息切れや息苦しさを感じることがある
  • 痰がからんで気になる
  • 健康診断で肺や呼吸の異常を指摘された
  • 市販薬を飲んでも症状が改善しない

当てはまる項目がある方は、呼吸器専門医に相談してみませんか?

迷う方はAI問診で簡単チェック

1分で受診の目安をお伝えします

AI問診をはじめる
横浜市南区六ツ川1-81 FHCビル2階