咳が止まらないときの原因と検査を呼吸器内科医が解説

咳が止まらないときの検査では、肺炎などの感染症に加え、喘息やCOPD、鼻・のどの症状、胃酸の逆流などを幅広く確認します。
咳だけでは原因を判断しにくいため、問診や診察で症状の経過を整理し、必要に応じて胸部レントゲン・肺機能検査・呼気NO検査などを組み合わせることが大切です。
この記事では、咳が続くときに行われる検査の流れと、それぞれの検査で何を確認するのかを解説します。
1.咳が止まらないとき、なぜ検査が必要なのか
咳が止まらないときは、咳を止めることだけでなく、咳が続く理由を調べることが重要です。咳の原因によって、必要な治療や生活上の注意点が変わります。
1-1. 咳だけでは原因を決めにくい理由
咳は、空気の通り道に入った異物や痰を外に出すための防御反応です。
風邪などの感染症をきっかけに出ることもありますが、咳が長引く場合は、気道や肺に炎症が残っていたり、別の病気が関係していたりすることも少なくありません。
咳の難しいところは、原因が違っても同じような症状に見えることがある点です。
乾いた咳が続く場合でも、喘息、感染後の咳、胃食道逆流症、後鼻漏(こうびろう:鼻水がのどへ流れ込む状態)、薬の副作用などさまざまな原因が候補になります。
痰が絡む咳でも、気管支炎やCOPD、気管支拡張症、副鼻腔炎などが関係していることがあるため、咳の性質だけで原因を決めるのは難しいでしょう。
また、原因が一つとは限りません。
感染後に気道が敏感になっている状態に、後鼻漏や胃酸逆流などが重なる場合もあります。そのため、検査では症状だけで原因を決めつけず、肺の状態や空気の通り道、気道の炎症、鼻や胃食道の症状などを段階的に確認します。
考えられる原因を整理し、見落としを減らすことが目的の一つです。
【参考情報】『Cough in Adults』MSD MANUAL
https://www.msdmanuals.com/home/lung-and-airway-disorders/symptoms-of-lung-disorders/cough-in-adults
1-2. 2週間以上咳が続く場合の考え方
風邪のあとに咳が残ることはありますが、2週間以上咳が続く場合は、風邪だけでは説明しにくいケースもあります。
特に、以下のような症状を伴う場合は、原因を確認することが大切です。
・夜間や早朝に咳が強い
・ゼーゼーする
・息切れがある
・痰が増えている
・血痰がある
・発熱や体重減少を伴う
ただし、咳の期間だけで重症度を判断することはできません。短期間でも息苦しさが強い場合や、持病がある場合は注意が必要です。
咳の長さだけで決めつけず、検査結果と症状を合わせて原因を整理することが大切です。
2.咳が止まらないとき、検査の前に確認されること
咳が止まらないときの診察では、いきなり機械を使う検査から始まるわけではありません。
まずは、咳の出方や体の状態、生活環境などを確認し、どの検査が必要かを考えていきます。
2-1. 問診と聴診で確認する症状の経過
問診では、咳が始まった時期や悪化しやすい時間帯、痰・発熱・息苦しさの有無などを確認します。胸の痛みや鼻水、のどの違和感、胸やけなども、咳の原因を考えるうえで大事な情報です。
また、食後や横になったときに咳が悪化するかどうかも確認します。咳の出方や一緒にみられる症状を詳しく確認することで、原因を絞り込みやすくなります。
診察では、聴診器で胸や背中の呼吸音を確認します。
ゼーゼー、ヒューヒューという音が聞こえる場合は、空気の通り道が狭くなっているサインかもしれません。
ただし、聴診で異常がないからといって、咳の原因がないとは言い切れません。
喘息では、診察時に呼吸音の異常がはっきりしない場合もあります。そのため、問診や聴診の結果をもとに、必要な検査を組み合わせながら原因を考えていきます。
2-2. 生活環境や服用中の薬の確認
咳が止まらない原因を考えるときは、生活環境や服用中の薬も重要です。
たとえば、職場で粉じんや薬品、煙、香料などを吸い込む機会がある人では、刺激による咳や職業性喘息が関係することがあります。
自宅では、ほこりやカビ、ペット、寝具、エアコンの使用状況なども確認したいポイントです。
喫煙歴が長い人では、COPDや慢性気管支炎の確認が必要になることがあります。受動喫煙が咳に関係することもあるため、周囲の環境も大切な情報です。
また、確認しておきたいのが服用中の薬です。血圧の薬の一部では、副作用として咳が出る場合があります。ただし、自己判断で薬を中止せず、気になる場合は処方した医師に相談することが大切です。診察時に薬の名前やお薬手帳を確認できると、原因を考えるうえで役立つでしょう。
3.胸部レントゲン検査と血液検査で分かること
長引く咳では、肺の状態を確認する検査が行われることがあります。
胸部レントゲンや血液検査は、肺炎などの感染症や、ほかの呼吸器疾患を調べるために役立ちます。ただし、咳の原因は一つの検査だけで判断できるとは限りません。
画像検査や血液検査、呼吸機能の検査などを組み合わせて、全体の状態を見ていきます。
3-1. 胸部レントゲン検査でわかる肺の状態
胸部レントゲンでは、肺に影がないか、肺炎を疑う変化がないか、肺が過度にふくらんでいないか、胸水がたまっていないかなどを確認します。
咳が続く場合でも、胸部レントゲンで異常が見つからないことはありますが、それは「何も調べなくてよい」という意味ではありません。
【参考情報】『Chest X-Ray』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diagnostics/10228-chest-x-ray
喘息では、胸部レントゲンで明らかな異常が出ないこともあります。そのため、レントゲンは「喘息を診断する検査」というより、肺炎や肺の病気などを確認し、ほかの原因を見落とさないための検査として考えるとわかりやすいでしょう。
3-2. 血液検査でわかる炎症やアレルギーの傾向
血液検査では、炎症の程度や感染の可能性、貧血やアレルギーに関係する数値などを確認することがあります。
たとえば、発熱や強いだるさを伴う咳では、感染症が関係しているかを確認するために血液検査が役立つ場合があります。白血球やCRPなどの炎症に関係する項目は、体の中で炎症が起きているかを考える手がかりの一つです。
喘息やアレルギーが疑われる場合は、好酸球やIgEなどの項目が参考になることもあります。
ただし、血液検査だけで咳の原因がすべてわかるわけではありません。問診や呼吸機能の検査、呼気NO検査などと組み合わせて、症状とのつながりを確認します。
3-3. 必要に応じて追加される検査
胸部レントゲンや血液検査だけでは判断が難しい場合、胸部CT、痰を調べる喀痰(かくたん)検査、感染症の検査などが追加されることがあります。
たとえば、痰が多い場合は喀痰検査、レントゲンだけでは判断しにくい場合は胸部CTを行うことがあります。
また、肺炎が疑われる場合でも、原因となる病原体は一つではありません。マイコプラズマ肺炎やクラミジア肺炎などは、風邪と似た症状で始まり、咳が長引くことがあります。
検査は最初からすべて行うのではなく、症状や基本的な検査結果を踏まえて必要なものを追加していく流れです。
4.肺機能検査と呼気NO検査で分かること
胸部レントゲンで大きな異常がない場合でも、喘息やCOPDなどでは、気道の状態を調べる検査が重要になります。
肺機能検査や呼気NO検査、モストグラフなどは、咳の背景にある呼吸の変化を確認する検査です。
4-1. 肺機能検査でわかる空気を吸う量と吐く勢い
肺機能検査は、息を吸ったり吐いたりして、肺にどれくらい空気が入るか、どれくらい勢いよく吐き出せるかを調べる検査です。一般的にはスパイロメトリーと呼ばれる検査が行われます。
【参考情報】『Spirometry test』NHS
https://www.nhs.uk/tests-and-treatments/spirometry/
この検査では、肺活量や、最初の1秒間にどれくらい息を吐けるかなどを確認します。
気道が狭くなっていると、息を吐くスピードが落ちることがあります。喘息やCOPDなど、空気の通り道が狭くなる病気を考えるうえで参考になる検査です。
咳が続いている人の中には、「息苦しさはない」と感じていても、検査で息を吐き出しにくい傾向が見つかる場合があります。
検査中は、検査担当者の声かけに合わせて、できるだけ大きく息を吸い、勢いよく吐きます。
うまく検査するためには少しコツが必要ですが、自覚症状だけではわかりにくい呼吸の変化を数値で確認できる点が特徴です。
4-2. 呼気NO検査でわかる気道の炎症
呼気NO検査は、吐いた息の中に含まれる一酸化窒素の濃度を測る検査です。
気道にアレルギー性の炎症があると、呼気中のNO値が高くなることがあります。喘息が疑われるときに、気道の炎症を調べる手がかりの一つです。
ただし、呼気NOの数値だけで病名が決まるわけではありません。アレルギー性鼻炎がある人、喫煙している人、治療中の薬の影響などで、数値の見方が変わることがあります。
そのため、症状や肺機能検査、血液検査などと合わせて総合的に判断します。
胸部レントゲンでは見えにくい気道の炎症を調べることで、咳が長引く理由を整理しやすくなります。
【参考情報】『呼気NO測定ハンドブック』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/06/pdf/a17112.pdf
4-3. モストグラフなどで見る気道の通りやすさ
医療機関によっては、モストグラフという検査を行うことがあります。
モストグラフは、普段通りに呼吸をしながら、気道の抵抗、つまり空気の通りにくさを調べる検査です。強く息を吐く必要がないため、スパイロメトリーが難しい人でも比較的行いやすいでしょう。
咳が止まらないときは、レントゲンで異常がない場合でも気道が敏感になっていたり、空気の通り道が狭くなっていたりする場合があります。モストグラフでは、こうした変化を数値やグラフで確認できる点が特徴です。
肺機能検査、呼気NO検査、モストグラフは、それぞれ見ているポイントが異なります。息を吐き出す力、気道の炎症、普段の呼吸での空気の通りにくさを別々の角度から見ることで、咳の背景を整理しやすくなります。
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5.検査結果を総合して咳が止まらない原因を考える
咳が止まらないときは、一つの検査結果だけで原因を決めるのではなく、症状の経過や複数の検査結果を合わせて考えます。
検査ごとに確認できる内容が違うため、結果を整理することで原因の方向性をつかみやすくなります。
<喘息やCOPDなど気道の病気>
夜間や早朝に咳が強い、冷たい空気や会話で咳が出やすい、風邪のあとに咳だけ残るといった場合は、喘息など気道の病気が関係していることがあります。
胸部レントゲンで大きな異常がなくても、肺機能検査で息を吐き出しにくい傾向が見られたり、呼気NO検査で気道の炎症が疑われたりする場合は、気道の状態を詳しく見る手がかりになります。
喫煙歴がある人で、咳や痰、息切れが続く場合は、COPDも確認したい病気の一つです。症状だけで判断しにくいため、肺機能検査の結果も合わせて考えます。
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<肺炎や気管支炎などの感染症>
発熱、痰、強いだるさなどを伴う咳では、肺炎や気管支炎などの感染症が関係していないかを確認します。
胸部レントゲンで肺に影があるか、血液検査で炎症を示す数値が上がっていないかなどは、感染症を考えるうえでの判断材料になります。
感染症による咳は、熱が下がればすぐに治まるとは限りません。マイコプラズマ肺炎などでは、発熱が落ち着いたあとも咳が長引く場合があります。
<後鼻漏や胃食道逆流症など肺以外の原因>
咳の原因は、肺や気管支だけとは限りません。後鼻漏は、鼻水がのどへ流れ込むことで、のどが刺激されて咳が続く状態です。
副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎が関係する場合もあり、鼻づまり、鼻水、のどに流れる感じ、顔の重さなどが手がかりになります。
胃食道逆流症では、胃酸や胃の内容物が食道に逆流し、のどや気道を刺激して咳が出ることがあります。食後や横になったときに咳が強くなる場合、胸やけ、酸っぱいものが上がる感じ、声のかすれがある場合は、胃酸の逆流との関連も考えます。
検査で大きな異常が見つからない場合でも、咳の原因がないとは限りません。咳が出る時間帯、悪化するきっかけ、生活環境、服用中の薬などを含めて整理することで、原因を考える手がかりが得られます。検査結果だけでなく、症状の経過も大切です。
6.おわりに
咳が止まらないときの検査では、問診や聴診で症状の経過を確認し、胸部レントゲン、血液検査、肺機能検査、呼気NO検査などを組み合わせて原因を考えます。
咳の原因は一つとは限らず、症状だけでは見分けにくい場合があります。
大切なのは、検査結果だけでなく、咳が出る時間帯や悪化するきっかけも合わせて整理することです。
咳が長引くときは、いつ、どのような場面で咳が出るのかを記録しておくと、診察時の理解に役立つでしょう。
以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします
- 咳が2週間以上続いている
- 息切れや息苦しさを感じることがある
- 痰がからんで気になる
- 健康診断で肺や呼吸の異常を指摘された
- 市販薬を飲んでも症状が改善しない
当てはまる項目がある方は、呼吸器専門医に相談してみませんか?













