咳が止まらないけどプールに入って大丈夫?判断の目安と対処法

体育の授業や習い事、レジャーなどでプールに入る予定があるのに子どもが咳をしていると「入れても大丈夫かな?」「元気そうだけど念のためやめた方がいいかな?」と迷うことがあるでしょう。
咳が出ているときは、咳の程度や発熱の有無、普段の体調などを見ながら、プールに入るかどうかを判断することが大切です。
この記事では、咳が続いているときにプールを休ませる目安や、プールで咳が出る原因、塩素の影響、喘息との関係について詳しく解説します。
1.咳が止まらないときにプールに入ってもいい?
咳があるからといって、必ずしもプールや水泳を休む必要があるわけではありません。
大切なのは、咳の程度や原因、発熱など他の症状の有無、普段どおりに活動できているかどうかを見て判断することです。
特に、咳が強い、息苦しさがある、発熱している、いつもより元気がないといった場合は、プールや水泳を控え、まずは体調を回復させることを優先しましょう。
しかし、軽い咳がある程度で発熱もなく、普段どおり元気に過ごせている場合は、必ずしも水泳を休む必要はありません。
一方で、体調に問題がなさそうに見えても、学校やスイミングスクール、プール施設などによって参加基準やルールが定められている場合があります。
施設のルールがある場合は、保護者の判断は脇に置き、それに従いましょう。
2. プールに入ると咳が治まることもある?
プールのように湿度の高い環境では、乾燥した空気による気道への刺激が少なくなり、咳が一時的に楽に感じられることがあります。
ただし、プールに入ることで咳の原因そのものが治るわけではありません。
咳の原因には、風邪などの感染症や喘息、アレルギーなどさまざまなものがあり、原因によっては、プールでかえって咳を悪化させることもあります。
そのため、プールに入って咳が一時的に楽になったとしても、「プールに入ればよくなる」と考えるのは適切ではありません。
3. プールに入ると咳が止まらなくなることもある?
プールに入った後に咳が出たり、喉に刺激を感じたりする場合は、プールの環境が影響していることがあります。
プールでは、水を衛生的に保つために塩素系の消毒剤が使われています。塩素系消毒剤は、水中の汗や尿などに含まれる物質と反応して、クロラミンなどの消毒副生成物を生じることがあります。
【参考情報】『Chloramines and Pool Operation』CDC
https://www.cdc.gov/healthy-swimming/toolkit/chloramines-and-pool-operation.html
特に、換気が不十分な屋内プールでは、クロラミンなどが空気中に蓄積し、目や喉、気道を刺激することがあります。そのため、プールに入った後に咳が出たり、喉に違和感を覚えたりする人もいます。
ただし、咳の原因は感染症や喘息などさまざまです。また、運動そのものが咳や息苦しさを誘発する運動誘発性気管支収縮(EIB)が起こることもあります。
【参考情報】『Exercise-Induced Bronchoconstriction (EIB)』 American College of Allergy, Asthma & Immunology
https://acaai.org/asthma/types-of-asthma/exercise-induced-bronchoconstriction-eib/
運動誘発性気管支収縮は喘息のある人だけでなく、喘息と診断されていない人にも起こることがあります。
4.喘息のある人が水泳に期待できる効果と注意点
喘息があり、咳が心配だからといって、水泳を避けなければならないとは限りません。
適切に喘息を管理しながら水泳を続けることで、運動能力や一部の肺機能、喘息コントロールの改善に役立つ可能性があります。
4-1.喘息があっても水泳は続けられる
喘息のある子どもを対象とした研究では、水泳トレーニングによってピークフローなどの呼吸機能や喘息の重症度が改善したという報告があります。
【参考情報】『The effects of a swimming intervention for children with asthma』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19703065/
また、水泳によって一部の肺機能が改善する可能性も示されています。
【参考情報】『Swimming training for asthma in children and adolescents aged 18 years and under』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23633375/
ただし、水泳をすることで喘息そのものが治るわけではありません
4-2.喘息がある人が水泳をするときに注意したいこと
一方で、運動やプール環境によって症状が悪化することもあります。
喘息では、運動がきっかけとなって気道が狭くなり、咳や息苦しさなどが起こることがありますが、水泳も運動の一種であるため、こうした症状が誘発されることがあります。
ただし、水泳そのものが喘息に悪いというわけではありません。むしろ、水泳は陸上で行う運動に比べて、運動による気道の狭窄が起こりにくい可能性も指摘されています。
【参考情報】『Swimming and asthma. Benefits and deleterious effects』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1470792/
運動による症状は、喘息の状態を適切に管理し、無理のない範囲で運動することで予防・軽減できる場合があります。
水泳をするときも、体調や喘息のコントロール状態を確認し、必要に応じて準備運動などを行うことが大切です。
5. プールで咳が出たときの対処法
プールで泳いでいるときや泳いだ後に咳が出た場合は、無理に泳ぎ続けず、まずプールから出て休みましょう。
いったん休んで呼吸を整え、症状が落ち着くか確認します。咳が続いている場合や、息苦しさ、ゼーゼー・ヒューヒューするなどの症状がある場合は、無理に水泳を再開しないようにしましょう。
喘息の治療を受けていて、発作時などに使用する薬を医師から指示されている場合は、医師から指示された使用方法に従って使用してください。
なかなか症状が治まらないからと言って、自己判断で薬の使用量や回数を増やすことは避けましょう。
6. こんな場合はプールを休んで受診しましょう
咳が続いているからといって、必ずしも受診が必要になるわけではありません。
ただし、次のような症状がある場合は、呼吸器の専門医に相談しましょう。
・咳が長期間続いている
・咳が以前より強くなっている
・息苦しさがある
・ゼーゼー、ヒューヒューと音を立てて呼吸している
・胸に痛みがある
・発熱を伴っている
・痰に血が混じっている
・夜間に咳が続いて眠れない
・運動すると毎回咳が出る
・プールに入ると毎回、咳や息苦しさなどの症状が悪化する
7.咳とプールに関して当院でよくある質問と答え
Q. 風邪のあとに咳だけ残っている場合、いつから水泳を再開していい?
咳の程度や体調によっては水泳を再開できることがあります。ただし、「何日たてば再開できる」という一律の基準があるわけではありません。
熱がなく、普段どおり元気に過ごせていて、日常生活で息苦しさがなく、軽い咳だけが残っているような場合は、体調を見ながら再開を検討できます。
一方で、咳が強い、運動すると咳が増える、息苦しさがある、疲れやすいなどの場合は、もう少し休むことが大切です。再開後に症状が悪化する場合も、無理に続けないようにしましょう。
Q2. 喘息の子どもは、水泳の前に発作の薬を使ったほうがいい?
喘息の薬を水泳前に使用するかどうかは、喘息の状態や処方されている薬によって異なります。
運動によって症状が出やすい人では、医師から運動前に薬の使用を指示されることがあります。その場合は、指示されたタイミングや方法で使用してください。
一方、自己判断で「水泳をするから念のため薬を使う」「症状が出ないので薬を使わない」などと変更するのは避けましょう。
水泳をすると咳や息苦しさが出やすい場合は、運動時の症状について医師に相談し、自分に合った対策を確認しておくことが大切です。
Q3. プールの塩素による咳と喘息による咳は、どう見分ければいい?
症状だけで、プールの環境による刺激なのか、喘息など別の原因によるものなのかを自分で判断するのは難しい場合があります。
プールに入ったときだけ咳が出て、プールから離れると比較的早く症状が落ち着く場合は、プールの環境による気道への刺激が関係している可能性があります。
一方、プール以外でも運動すると咳や息苦しさが出る、夜間にも咳が出る、ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴を伴うといった場合は、喘息などが関係している可能性があります。
ただし、これらはあくまで目安です。プールに入るたびに症状が出る場合や、症状が強い場合は、原因を自己判断せず医療機関に相談しましょう。
Q4. 子どもが「大丈夫」と言っていても、水泳を休ませたほうがいいのはどんなとき?
子ども本人が「大丈夫」と言っていても、呼吸の様子や普段の活動性に変化がある場合は注意が必要です。
たとえば、いつもより呼吸が速い、少し動いただけで息切れする、会話が途切れる、咳を繰り返している、顔色が悪い、普段より明らかに元気がないといった場合は、水泳を休ませましょう。
「泳ぎたい」という本人の希望だけで判断せず、保護者が普段との違いを確認することも大切です。
Q5. 水泳中の咳を繰り返す場合、どんな検査をする?
水泳中や運動後に咳を繰り返す場合、病院では症状が出る状況や回数、息苦しさの有無などを確認したうえで、必要に応じて検査を行います。
喘息が疑われる場合には、呼吸機能検査などによって気道が狭くなりやすい状態がないかを調べることがあります。
症状や年齢によっては、ほかの病気との区別のために胸部X線(レントゲン)検査などを行うこともあります。
8. おわりに
軽い咳が少し残っているだけで、発熱がなく、元気や食欲もある場合は、必ずしもプールを休まなければならないとは限りません。
一方で、咳が強い、発熱がある、息苦しさがあるなどの場合は、無理に水泳をせず、休養を優先することが大切です。
プールに入るたびに咳が出る、泳ぐと毎回症状が悪化する、咳が長引いているといった場合は、病院を受診して原因を調べましょう。
以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします
- 咳が2週間以上続いている
- 息切れや息苦しさを感じることがある
- 痰がからんで気になる
- 健康診断で肺や呼吸の異常を指摘された
- 市販薬を飲んでも症状が改善しない
当てはまる項目がある方は、呼吸器専門医に相談してみませんか?














