喘息で息切れが起こるのはなぜ?苦しい原因や対処法を解説

喘息による息切れは発作の時だけでなく、歩いているときや階段を上ったときなど、体を動かした際に現れたり悪化したりすることもあります。
一方で、息切れは心臓や肺の病気など、喘息以外の原因によって起こる場合もあるため、症状が続く場合や悪化する場合は注意が必要です。
この記事では、喘息で息切れが起こる原因や息切れを感じたときの対処法、病院を受診する目安についてわかりやすく解説します。
1. 喘息で息切れは起こる?
喘息というと「咳」をイメージする方が多いかもしれませんが、咳よりも息苦しさや息切れが目立つこともあります。
1-1.咳がなくても息切れだけが現れることがある
喘息の症状の出方には個人差があり、必ずしも咳や喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音)を伴うわけではありません。
特に軽症の場合や発症初期では、「歩くと息苦しい」「階段を上ると息切れがする」といった症状が目立ち、喘息だと気づかれないこともあります。
また、治療によって咳は改善していても、息切れが続くことがあります。
1-2.息切れは喘息のコントロールが不十分な場合にも起こる
気道の炎症が十分に抑えられていないと、目立った発作がなくても気道が狭い状態が続き、日常生活の中で息切れを感じることがあります。
歩行や階段の上り下り、荷物を運ぶといった、普段なら問題なくできる動作で息苦しさを感じるようであれば、喘息が十分にコントロールできていないサインかもしれません。
このような状態を放置すると、重い喘息発作につながることがあります。
息切れが続く、あるいは以前より悪化していると感じる場合は、吸入薬の使い方や治療内容について、一度呼吸器内科で見直してもらうことをおすすめします。
2.喘息で息切れが起こる3つの仕組み
この章では、喘息で息切れが起こる主な仕組みをわかりやすく解説します。
2-1.気道の炎症で空気の通り道が狭くなる
喘息は、気道(空気の通り道)の粘膜に慢性的な炎症が起きている状態です。炎症が続くと気道の壁が腫れて厚くなり、空気の通り道が狭くなっていきます。
すると、空気の出し入れがしにくくなり、体を動かしたときに必要な量の酸素を効率よく取り込み、二酸化炭素を十分に排出することが難しくなります。
また、狭くなった気道を通して空気を出し入れするには、普段より大きな力が必要となるため、呼吸そのものの負担も増加します。そのため、少し体を動かしただけでも息切れしやすくなります。
さらに、炎症により気道はさまざまな刺激に敏感になっているため、冷たい空気を吸ったときや運動したとき、花粉やハウスダストなどのアレルゲンを吸い込んだことをきっかけに、気道がさらに狭くなり、症状が悪化することがあります。
2-2.気管支収縮で呼吸がしづらくなる
喘息では、気管支の周囲にある筋肉が急激に縮む「気管支攣縮(れんしゅく:筋肉が自分の意思とは関係なく、急にキュッと縮んで固くなってしまうこと)」が起こることがあります。
【参考情報】『Bronchospasm』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/22620-bronchospasm
気管支が攣縮すると空気の通り道はさらに狭くなり、空気を十分に出し入れできなくなります。そのため、「息が吸えない」というよりも、「息を吐ききれない」「胸が締め付けられる」と感じることが少なくありません。
発作時には、この気管支攣縮が急激に起こることで、強い息切れや呼吸困難を引き起こします。
2-3.痰が増えて気道が詰まりやすくなる
喘息では、炎症の影響で気道から粘り気のある痰が多く分泌されることがあります。
この痰が気道の内側にたまると、もともと狭くなっている気道がさらに塞がれ、空気が通りにくくなります。その結果、呼吸が苦しくなり、息切れが強くなることがあります。
3. 歩くと息切れするのは喘息が原因?
歩いているときに息切れを感じる場合、喘息が原因となっている可能性があります。
3-1.軽い運動でも息切れが起こることがある
喘息の症状には個人差がありますが、喘息のコントロールが十分でない場合は、ハードなスポーツやトレーニングだけでなく、日常生活の動作でも息切れが起こることがあります。
例えば、買い物や犬の散歩、駅まで歩くといった普段の生活の中で、「以前より息が上がりやすくなった」「途中で立ち止まりたくなる」と感じる場合は、喘息が影響している可能性があります。
また、通常の速さでは問題なく歩けても、急いで歩いたり、信号に間に合うように速歩きをしたりすると息切れが現れることがあります。
このような変化は、年齢や体力の低下によるものと思われがちですが、喘息のコントロールが不十分なサインであることも少なくありません。
3-2.階段で息切れするのは喘息が原因?
階段を上る動作では、脚の筋肉を大きく使うため、平地を歩くよりも多くの酸素が必要になります。
その結果、呼吸の回数や深さが増えますが、喘息で気道が狭くなっていると、必要な量の空気を十分に出し入れしにくくなり、呼吸量の増加に対応しづらくなります。
また、狭くなった気道を通して呼吸するにはより大きな力が必要となるため、呼吸の負担も増加します。
そのため、「数階上っただけで息が切れる」「途中で立ち止まらないと苦しい」といった症状が現れることがあります。
3-3.運動誘発性気管支収縮が起こることもある
喘息のある方では、運動をきっかけに気管支が一時的に狭くなる「運動誘発性気管支収縮」が起こることがあります。
【参考情報】『Exercise-Induced Bronchoconstriction (EIB)』American College of Allergy Asthma and Immunology
https://acaai.org/asthma/types-of-asthma/exercise-induced-bronchoconstriction-eib/
これは運動中から運動後にかけて起こり、多くは運動終了後数分以内に、息切れや咳、喘鳴、胸の圧迫感などが現れる状態です。
特にランニングや階段の昇降など、呼吸量が増える運動で起こりやすく、冷たく乾燥した空気の中ではさらに発症しやすいとされています。
3-4.歩くだけで息切れする場合は治療の見直しが必要
喘息の治療によって気道の炎症が十分に抑えられていれば、日常生活で歩くだけで息切れを感じたり、活動が制限されたりすることは多くありません。
そのため、「以前より歩くのがつらい」「少し歩いただけで息苦しくなる」「発作治療薬を使う機会が増えている」といった場合は、現在の治療で喘息が十分にコントロールできていない可能性があります。
このような症状が続く場合は、吸入薬の使い方や薬の種類・量を見直すことで改善できることがあります。自己判断で薬を中止したり我慢したりせず、呼吸器内科を受診して現在の状態を確認してもらいましょう。
4. 喘息による息切れが起きたときの対処法
喘息による息切れを感じたときは、軽い症状でも無理をせず、早めに対処することが大切です。
4-1.まずは安静にする
息切れを感じたら、運動や歩行を中止し、その場で休みましょう。「もう少し歩けば着くから」などと無理をすると、酸素の消費量がさらに増え、症状が悪化することがあります。
特に、階段や坂道を上っている途中に息苦しくなった場合は、無理に歩き続けず、安全な場所で呼吸を整えることが大切です。
また、ベルトやネクタイなど首や胸を締め付けるものがあれば緩めると、呼吸がしやすくなることがあります。
4-2.発作治療薬(リリーバー)を使用する
医師から発作治療薬(リリーバー)が処方されている場合は、指示された方法で使用してください。
発作治療薬は気管支をすばやく広げる作用があり、多くの場合、数分以内に息苦しさの改善が期待できます。
ただし、発作治療薬を使用する機会が増えている場合は、喘息のコントロールが十分ではない可能性があります。症状が落ち着いた後も、自己判断せず病院で相談しましょう。
4-3.楽な姿勢で呼吸を整える
息苦しいときは、呼吸しやすい姿勢を取ることも重要です。
椅子に座って少し前かがみになり、机や膝に腕を置く姿勢は、呼吸を助ける筋肉が働きやすくなり、呼吸が楽になることがあります。
一方、息苦しいときに横になると、横隔膜が動きにくくなり、かえって呼吸がしづらくなることがあります。
休むときは、椅子に座る、または上半身を起こした姿勢を保つほうが呼吸しやすい場合が多くあります。
また、あわてて大きく息を吸おうとすると、かえって苦しさが増すこともあります。できるだけ落ち着いて、ゆっくり呼吸することを意識しましょう。
4-4.症状が改善しない場合は早めに受診する
安静にしても息苦しさが続く場合や、リリーバーを使用しても十分に改善しない場合は、早めに病院を受診してください。
特に、「会話が困難なほど息苦しい」「唇や爪が紫色になる」「呼吸が非常に速い」などの症状がある場合は、重い喘息発作の可能性があります。速やかに救急外来を受診するか、救急車を要請してください。
【参考情報】『消防救急無線・119番緊急通報』総務省消防庁
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/kyukyumusen_kinkyutuhou/119.html
5. こんな息切れは早めに受診を
喘息による息切れの中には、自宅で様子を見てもよいケースもありますが、症状によっては早めの受診や緊急対応が必要な場合があります。
以下のような症状がみられる場合は、症状の程度に応じて速やかに病院を受診しましょう。
| 症状 | 対応 |
|---|---|
| 会話を続けるのが苦しいほど息切れがある | 当日中に受診 |
| 発作治療薬(リリーバー)を使用しても症状が改善しない | できるだけ早く受診 |
| 唇や爪が紫色になる(チアノーゼ)がみられる | 救急車を要請するなど、すぐに救急受診 |
| 夜間や早朝に息切れを繰り返す | 呼吸器内科を受診し、喘息のコントロール状態を確認してもらう |
6. 喘息以外で息切れを起こす病気
息切れは喘息以外にも、さまざまな病気で起こることがあります。
特に、これまで喘息と診断されたことがない方や、喘息の治療を続けているにもかかわらず息切れが改善しない方は、他の病気の可能性も考慮する必要があります。
6-1.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPDは、主に長年の喫煙が原因で肺の機能が徐々に低下していく病気です。
初期は坂道や階段で息切れを感じる程度ですが、進行すると平地を歩くだけでも息苦しさを感じるようになります。咳や痰が長く続くのも特徴のひとつです。
喘息と症状が似ていますが、COPDでは肺の弾力性が失われることに加え、気道にも慢性的な炎症や狭窄が起こるため、息を吐き切るのに時間がかかるようになります。また、気管支拡張薬を使っても気道の狭窄は完全には改善しません。
一方、喘息では発作時に気道が狭くなりますが、適切な治療によって改善しやすい点がCOPDとの大きな違いです。
◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>
6-2.心不全
心不全では、心臓の働きが低下して全身へ十分な血液を送り出せなくなるため、息切れが起こります。
歩行や階段で息苦しくなるほか、横になると呼吸が苦しくなる、足のむくみがある、急激な体重増加がみられる場合は心不全の可能性があります。
喘息による息切れとは原因も治療法も異なるため、早めの診断が重要です。
【参考情報】『心不全』国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/heart-failure/
6-3.貧血
貧血では、酸素を運ぶ赤血球やヘモグロビンが不足するため、全身が酸素不足になり、息切れを感じやすくなります。
歩いたり階段を上ったりしたときに息が上がるほか、疲れやすい、顔色が悪い、動悸がするといった症状を伴うことがあります。
6-4.肺炎
肺炎では肺に炎症が起こり、酸素を十分に取り込めなくなるため、息切れが現れることがあります。
発熱や咳、痰、胸の痛みを伴うことが多く、高齢者では食欲低下や元気がないといった症状が目立つこともあります。
6-5.肺塞栓症
肺塞栓症は、血栓が肺の血管に詰まる病気で、突然の息切れや胸の痛みを引き起こします。
長時間の飛行機移動や手術後、長期間安静にしていた後などに発症しやすく、重症化すると命に関わることがあります。
突然強い息切れが現れた場合は、速やかに救急医療機関を受診してください。
【参考情報】『Pulmonary embolism』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/pulmonary-embolism/symptoms-causes/syc-20354647>
6-6.呼吸器感染症の後
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの呼吸器感染症にかかった後は、回復しても息切れがしばらく続くことがあります。
感染による肺の炎症や体力の低下が影響している場合がありますが、症状が長引く場合や悪化する場合は、肺炎や心臓の病気などが隠れている可能性も否定できません。
7. 息切れを予防するためにできること
喘息による息切れを予防するには、発作が起きてから対処するのではなく、日頃から気道の炎症を抑え、症状が出にくい状態を維持することが大切です。
7-1.吸入薬を継続して使用する
喘息治療の基本は、吸入ステロイド薬を中心とした長期管理薬(コントローラー)を毎日継続して使用することです。
これらの薬は、気道の炎症を抑え、発作や息切れを予防する目的で処方されています。症状がない日でも医師の指示どおりに使用することが、喘息を良好にコントロールするために重要です。
息切れや咳が改善すると、「もう治った」と思って薬をやめてしまう方もいます。
しかし、症状がなくても気道の炎症が続いていることがあります。自己判断で吸入薬を中止すると炎症が再び悪化し、息切れや喘息発作を起こしやすくなるため注意が必要です。
7-2.アレルゲンや刺激物質を避ける
喘息の症状は、アレルゲンや気道への刺激によって悪化することがあります。
ハウスダストやダニ、花粉、ペットの毛、カビなどのアレルゲンに加え、たばこの煙や線香、香水、冷たい空気なども症状を誘発することがあります。
室内をこまめに掃除し、寝具を清潔に保つなど、できる範囲で原因となる物質を避けることが大切です。
◆「掃除が苦手でもできる!喘息を悪化させない部屋づくりのコツ」>>
7-3.禁煙
喫煙は気道の炎症を悪化させ、喘息のコントロールを難しくする大きな要因です。
また、自分が吸わなくても、周囲のたばこの煙を吸い込む受動喫煙でも喘息症状が悪化することがあります。
息切れや発作を予防するためにも、禁煙するとともに、たばこの煙を避ける生活を心がけましょう。
7-4.適度な運動で体力を維持する
喘息が安定している場合は、適度な運動を続けることも大切です。
ウォーキングや軽いサイクリングなどの有酸素運動は、体力や持久力の維持に役立ち、日常生活で息切れしにくい体づくりにつながります。
ただし、運動中に息苦しさや咳が出る場合は無理をせず中止し、必要に応じて医師に相談してください。
7-5.呼吸器内科で定期的に診察を受ける
喘息は症状が落ち着いていても、定期的に診察を受けることが重要です。
診察では、症状の変化だけでなく、吸入薬の使用状況や吸入方法が適切かどうかも確認できます。また、必要に応じて薬の種類や量を調整することで、息切れや発作を未然に防げる場合があります。
「以前より歩くと息切れしやすくなった」「発作治療薬を使う回数が増えた」と感じたときは、次回の受診日を待たず、早めに呼吸器内科へ相談しましょう。
8. おわりに
息切れは、喘息でよくみられる症状の一つです。気道の炎症や気管支の収縮によって空気の通り道が狭くなるため、歩行や階段の上り下りなど、日常生活の中でも息苦しさを感じることがあります。
一方で、息切れはCOPDや心不全、肺炎など、喘息以外の病気が原因で起こることも少なくありません。特に、症状が急に現れた場合や、以前より悪化している場合、発作治療薬を使用しても改善しない場合は、別の病気が隠れている可能性も考えられます。
息切れを繰り返したり、日常生活に支障をきたしたりしている場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、呼吸器内科を受診して原因を確認することが大切です。適切な診断と治療を受けることで、息切れの改善だけでなく、喘息発作や重症化の予防にもつながります。
以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします
- 息苦しさやゼーゼー・ヒューヒューという音がある
- 季節の変わり目や天候の変化で症状が悪化する
- 運動時に息切れや咳が出やすい
- 夜間や早朝に咳や息苦しさで目が覚める
- 以前「喘息かも」と言われたが、治療を中断している
当てはまる項目がある方は、呼吸器専門医に相談してみませんか?














