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喘息の方におすすめのスポーツと、運動時の発作を予防する対処法

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年07月27日

喘息があると、「運動をすると発作が起きるのではないか」「スポーツは控えた方がよいのでは」と不安に感じる方もいるでしょう。

しかし、喘息が適切にコントロールされていれば、多くの場合、スポーツを楽しむことができます。

むしろ、適度な運動は体力や持久力の維持・向上につながるだけでなく、健康維持にも役立ちます。

この記事では、喘息の方におすすめのスポーツや、運動中の発作を予防する方法、症状が現れたときの対処法についてわかりやすく解説します。

1. 喘息でもスポーツはできる?


適切な治療によって喘息が安定していれば、多くの場合はスポーツや運動を楽しむことができます。

1-1.適度な運動が喘息にもたらすメリット

適度な運動を継続すると、体力や筋力、心肺機能の維持・向上につながります。また、運動耐容能(運動を続けられる能力)が高まることで、日常生活や運動時の息切れを感じにくくなることが期待できます。

さらに、運動は適正体重の維持にも役立ちます。肥満は喘息のコントロールを悪化させる要因の一つとされているため、運動習慣を身につけ、適正体重を維持することは、喘息を良好に管理するうえでも重要です。

◆「喘息と肥満の関係」について>>

また、適度な運動はストレスの軽減や気分転換にもつながり、心身の健康維持や生活の質(QOL)の向上も期待できます。

◆「ストレスが喘息に及ぼす影響とは?」>>

一方で、運動のたびに咳や息苦しさ、ゼーゼー・ヒューヒューといった症状が現れる場合は、喘息のコントロールが十分ではない、あるいは運動誘発気管支収縮(EIB)への対策が十分でない可能性があります。

そのような場合は無理に運動を続けるのではなく、主治医に相談し、治療内容や運動前の予防方法について見直すことが大切です。

1-2. 運動誘発気管支収縮(EIB)とは

運動誘発気管支収縮(Exercise-Induced Bronchoconstriction:EIB)とは、運動によって一時的に気道が狭くなり、咳やゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)、息切れ、胸の苦しさなどの症状が現れる状態です。

症状は運動中に現れることもありますが、多くは運動終了後5~10分頃に最も強くなり、通常は30~60分ほどで自然に改善します。

症状が十分に改善した場合は、体調を確認しながら無理のない範囲で運動を再開できることもあります。

一方で、症状が強い場合や運動のたびに繰り返し起こる場合は、喘息のコントロールや運動前の予防対策が十分でない可能性があります。無理に運動を続けず、主治医に相談して治療内容を見直すことが大切です。

【参考情報】『Exercise-Induced Bronchoconstriction (EIB)』American College of Allergy Asthma and Immunology
https://acaai.org/asthma/types-of-asthma/exercise-induced-bronchoconstriction-eib/

1-3. 運動誘発気管支収縮が起こりやすい条件

運動誘発気管支収縮は、次のような条件では症状が現れやすいことが知られています。

 ・喘息のコントロールが十分でない

 ・気温が低く、空気が乾燥している

 ・花粉や黄砂、PM2.5などの大気汚染物質が多い環境

 ・激しい運動や長時間続ける持久系の運動

このほか、風邪などの感染症にかかっているときや、十分なウォーミングアップを行わずに急に激しい運動を始めた場合も、症状が現れやすくなります。

運動誘発気管支収縮を予防するためには、日頃から喘息を良好にコントロールするとともに、体調や環境に合わせて無理のない運動を行うことが大切です。

2. 喘息の人におすすめのスポーツ


スポーツを選ぶ際に大切なのは、「喘息だからできる・できない」で判断するのではなく、自分の症状や体力に合った運動を選ぶことです。

無理のない範囲から始め、体調を見ながら少しずつ運動量を増やしていきましょう。

2-1. 基本は「続けられるスポーツ」を選ぶ

喘息のある方が運動を始める場合は、自分が楽しみながら長く続けられるスポーツや運動を選ぶことが大切です。

どれほど健康によい運動でも、途中でやめてしまっては十分な効果は期待できません。まずは自分が楽しめる運動を選び、無理のないペースで継続することを目指しましょう。

また、その日の体調や喘息のコントロール状況に応じて、運動量や運動強度を調整することも重要です。

咳や息苦しさがある日や体調が優れない日は無理をせず、運動を休んだり、軽い運動に切り替えたりしましょう。

運動習慣がない方や、運動すると症状が出やすい方は、事前に主治医へ相談し、自分に合った運動の種類や強度、必要な予防対策についてアドバイスを受けてから始めると安心です。

2-2. 比較的取り組みやすいスポーツ

喘息の方でも比較的取り組みやすいスポーツには、次のようなものがあります。

<水泳>

水泳は湿度の高い環境で行うため、気道が乾燥しにくく、運動誘発気管支収縮(EIB)が起こりにくい運動とされています。

特に室内の温水プールは、冷たく乾燥した空気による刺激を受けにくいため、喘息のある方にも比較的取り組みやすいスポーツです。

ただし、プールの塩素臭が症状の誘因となる方もいるため、症状が出る場合は主治医に相談しましょう。

<ウォーキング>

ウォーキングは運動強度を調整しやすく、体力に合わせて始められます。運動習慣のない方でも取り組みやすく、継続しやすいことが特徴です。

<サイクリング>

サイクリングは、自分のペースで運動強度を調整しやすい有酸素運動です。

心肺機能や体力の維持・向上にも役立ちますが、寒い日や空気が乾燥している日、花粉やPM2.5が多い日は症状が出やすくなることがあるため、環境に注意しましょう。

◆「喘息と天気や気候の関係」>>

<ヨガ>

ヨガは、ゆっくりとした動きと呼吸を組み合わせるため、体への負担が比較的少ない運動です。

柔軟性や筋力の維持に加え、リラックス効果や呼吸法の習得にも役立つ可能性があります。

<ゴルフ>

長時間歩くことが中心で、自分のペースで休憩を取りながら進められるスポーツです。急激に呼吸が乱れにくい点もメリットです。

<野球・バレーボールなど>

野球やバレーボールなど、プレーの合間に休憩や待機時間がある競技では、呼吸を整える時間を確保しやすく、症状に応じて運動量を調整しやすいという特徴があります。

一方で、競技レベルが高くなると運動強度が上がるため、症状が出やすい場合は無理をせず、主治医と相談しながら取り組みましょう。

【参考情報】『Clinical Effects of Yoga on Asthmatic Patients: A Preliminary Clinical Trial』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3275836/

2-3. 持久系スポーツをするときの注意点

ランニングやサッカー、バスケットボール、マラソンなど、高い換気量を必要とするスポーツでは、運動誘発気管支収縮(EIB)が起こりやすい傾向があります。

しかし、これらのスポーツが喘息のある方に禁止されているわけではありません。喘息が十分にコントロールされていれば、多くの場合は安全に参加できます。

運動中に咳や息苦しさが出やすい場合は、運動強度を下げたり、こまめに休憩を取ったりするなど、自分の症状に合わせて調整しましょう。また、十分なウォーミングアップを行うことも、運動誘発気管支収縮の予防に役立ちます。

必要に応じて、医師から指示された吸入薬を運動前に使用することで、運動誘発気管支収縮を予防できる場合もあります。自己判断で薬を変更せず、主治医の指示に従って使用しましょう。

実際に、喘息がありながらトップアスリートとして活躍している選手も少なくありません。適切な治療と日頃の喘息管理を続けることで、競技スポーツに取り組むことも十分可能です。

【参考情報】『ぜん息児へのエール プロサッカー選手/大津祐樹選手』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/44/yale/index.html

3. 運動中の発作を予防する方法


喘息の人にとって大切なのは、「発作が起きたら対処する」のではなく、発作を起こさないように日頃から準備しておくことです。

3-1. 普段から喘息をコントロールする

運動誘発気管支収縮(EIB)を予防するために最も重要なのは、普段から喘息を良好にコントロールしておくことです。

症状がない日でも、吸入ステロイド薬などのコントローラー(長期管理薬)は、医師の指示どおり毎日継続して使用しましょう。気道の炎症が十分に抑えられることで、運動によって症状が誘発されにくくなります。

3-2. 運動前にウォーミングアップを行う

運動を始める前には、5~10分程度かけてウォーミングアップを行いましょう。

いきなり激しい運動を始めると、呼吸が急激に速くなり、冷たく乾燥した空気を多く吸い込むことで、気道が冷えたり乾燥したりして運動誘発気管支収縮(EIB)が起こりやすくなります。

まずはゆっくり歩いたり、軽いストレッチをしたりして体を温め、その後、少しずつ運動強度を上げていくことが大切です。

このようなウォーミングアップを行うことで、運動誘発気管支収縮が起こりにくくなる場合があります。

【参考情報】『Effect of warm-up exercise on exercise-induced bronchoconstriction』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21811185/

3-3. 運動する環境を整える

気温が低く空気が乾燥している日は、冷たく乾いた空気が気道を刺激しやすく、運動誘発気管支収縮(EIB)の症状が現れやすくなります。

また、花粉や黄砂、PM2.5などの大気中の刺激物が多い日も注意が必要です。

このような日は、屋外ではなく体育館やフィットネスジムなど屋内で運動することも検討しましょう。ただし、屋内でも空気が乾燥している場合は注意が必要です。

寒い時期に屋外で運動する場合は、ネックウォーマーやマスクで口や鼻を覆うと、吸い込む空気が温められ、湿り気が保たれるため、気道への刺激を和らげる効果が期待できます。

3-4. 必要に応じて予防薬を使用する

運動誘発気管支収縮が起こりやすい方では、医師の指示により運動前にリリーバー(発作治療薬)を使用することがあります。

短時間作用型β2刺激薬(SABA)を運動前(通常5~20分前)に吸入すると、運動誘発気管支収縮の予防に有効です。

また、喘息の治療内容によっては、ほかの薬剤が選択されることもあります。

予防薬の種類や使用方法、吸入するタイミングは患者さんによって異なるため、自己判断で薬を追加したり、使用方法を変更したりしないようにしましょう。

4. 運動中に症状が出たら


十分に予防対策を行っていても、運動中や運動後に咳や息苦しさなどの症状が現れることがあります。

症状が出たときは無理をせず、早めに適切な対応を行うことが大切です。

4-1. すぐに運動を中止する

運動中に咳やゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音(喘鳴)、胸の苦しさ、息切れなどの症状が現れた場合は、すぐに運動を中止しましょう。

無理に運動を続けると症状が悪化し、喘息発作が強くなるおそれがあります。

運動を中止したら、呼吸がしやすい姿勢で安静にし、水分を補給しましょう。また、医師からリリーバー(発作治療薬)が処方されている場合は、指示どおりに吸入してください。

◆「もしも喘息発作が起こったら~緊急時の対処法~」>>

症状が改善した場合でも、体調を十分に確認し、無理をして運動を再開しないようにしましょう。症状が改善しない場合や繰り返し現れる場合は、早めに医療機関を受診してください。

4-2. 早めに受診した方がよい症状

次のような症状がある場合は、運動誘発気管支収縮だけではなく、重症の喘息発作の可能性もあるため、早めに医療機関を受診しましょう。

 ・リリーバーを吸入しても十分に症状が改善しない

 ・会話が苦しく、長く話せない

 ・息苦しさが強く、呼吸が困難である

 ・運動のたびに症状を繰り返す

また、唇や爪が紫色になる(チアノーゼ)、意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍いなどの症状がある場合は、重症発作の可能性があります。速やかに救急要請を行ってください。

【参考情報】『Cyanosis』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/24297-cyanosis

4-3. 運動時に毎回症状が出る場合

運動をするたびに咳や息苦しさなどの症状が現れる場合は、喘息のコントロールが十分ではない、あるいは運動誘発気管支収縮(EIB)への予防が十分でない可能性があります。

そのような場合は、「運動をやめる」のではなく、まず主治医に相談し、現在の治療内容や運動前の予防方法を見直すことが大切です。

吸入ステロイド薬などのコントローラー(長期管理薬)の調整や、運動前に使用するリリーバー(発作治療薬)の使い方を見直すことで、運動中の症状が改善することもあります。

運動中の症状を我慢したり、自己判断で薬の使い方を変更したりせず、主治医と相談しながら、自分に合った治療や運動方法を見つけましょう。

5. おわりに

喘息があるからといって、スポーツを諦める必要はありません。適切な治療によって症状を良好にコントロールできていれば、多くの方が自分に合った運動やスポーツを楽しむことができます。

自分に合った運動を無理なく継続することは、体力や心肺機能の向上だけでなく、健康維持や生活の質(QOL)の向上にもつながります。

一方で、運動中に症状が出たり、運動のたびに咳や息苦しさを感じたりする場合は、現在の治療内容を見直すサインかもしれません。

不安なことがあれば自己判断せず、主治医と相談しながら、安全に好きなスポーツや自分にあった運動を楽しみましょう。

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以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします

  • 咳が2週間以上続いている
  • 息切れや息苦しさを感じることがある
  • 痰がからんで気になる
  • 健康診断で肺や呼吸の異常を指摘された
  • 市販薬を飲んでも症状が改善しない

当てはまる項目がある方は、呼吸器専門医に相談してみませんか?

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