息苦しさの原因は?喘息発作と過呼吸の違いを知っておこう

喘息と過呼吸は、どちらも強い息苦しさを感じますが、息苦しさが起こる仕組みも対処法も異なります。
さらに、喘息発作をきっかけに過呼吸が重なるケースもあり、息苦しさで不安が増していくこともあります。
この記事では、喘息と過呼吸の違いを整理し、症状の見分け方、併発する場合の考え方、受診が必要なサインまでを順に解説します。
目次
1. 喘息と過呼吸は何が違うのか
まずは、喘息と過呼吸の違いを整理し、それぞれの特徴と見分ける際のポイントを解説します。
1-1.喘息は気道の炎症で息苦しくなる病気
喘息の人の気道には、慢性的な炎症が生じているため、健康な人に比べると気道が狭くなっています。
この状態で発作が起こると、気道の収縮や粘膜のむくみにより、気道はさらに狭くなります。
もともと狭い気道が、発作でさらに狭くなると、咳や息苦しさ、喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸音)が現れ、息を吐きにくい感覚が強くなります。
1-2.過呼吸は呼吸のコントロールが乱れた状態
過呼吸は、不安や緊張、恐怖、強いストレスなどをきっかけに、呼吸が必要以上に速く・深くなる状態です。
実際には空気は十分に吸えているのに、息を吸っても「入ってこない」「うまく吸えない」と感じます。
また、過呼吸により、体内の二酸化炭素が急激に減少することで、息苦しさに加え、動悸、めまい、手足のしびれ、吐き気などが現れます。
過呼吸が起こっても、呼吸の仕方を整え、精神的な緊張が和らぐと改善することが多く、喘息のような体の器質的な異常はありません。
【参考情報】『Hyperventilation』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/hyperventilation
1-3.症状が似ていても原因は違う
喘息は、空気の通り道である気道そのものに問題が起きる病気です。一方、過呼吸は、呼吸の仕方や呼吸の調整がうまくいかなくなることで起こります。
見た目の苦しさは似ていても、治療法や緊急性、放置した場合のリスクは同じではありません。
特に、喘息を過呼吸だと勘違いしてしまうと、本来必要な治療が遅れる恐れがあります。
2.喘息の息苦しさと過呼吸の息苦しさの違い
喘息の発作が起こると、気道の筋肉の収縮や粘膜のむくみ、痰の増加によって気道が狭くなります。
そのため、肺の中に空気が残りやすくなり、息を十分に吐き出せない感覚が強くなって、「息が詰まる」「胸が苦しい」と感じるようになります。
この吐きにくさは、息を吸いすぎる状態である過呼吸とは明確に異なる点です。
喘息の症状は、夜間から早朝にかけて悪化しやすい傾向があります。そのため、夜中に咳で目が覚めたり、朝方に息苦しさを強く感じたりすることがあります。
一方、過呼吸にはこのような時間帯の傾向はなく、不安や緊張といった心理的なきっかけによって、昼夜を問わず起こります。この点も、両者を見分ける重要な違いの一つです。
また、喘息の息苦しさは、発作治療用の吸入薬によって、比較的はっきり改善することが多いです。
3.喘息発作で過呼吸になることはある?
喘息の発作が起こると、強い息苦しさや咳のために、「このまま息ができなくなるのでは?」という不安や恐怖を感じやすくなります。
その不安をきっかけに、喘息発作に過呼吸が重なって起こることがあります。
3-1.喘息発作に過呼吸が重なったときの症状と対応
喘息と過呼吸が同時に起こると、実際よりも息苦しさが強く感じられます。息を吐きにくい状態に、呼吸が速くなりすぎる過呼吸が加わるため、「吸えない」「吐けない」と感じる強い苦しさが生じます。
さらに、過呼吸により体内の二酸化炭素が必要以上にに排出され、血中濃度が低下することで、手足のしびれやめまい、動悸などが加わり、症状が急に悪化したように感じることもあります。
このような場合は、まず喘息の治療を優先し、医師から処方された発作治療薬を吸入してください。そのうえで、不安や緊張が強い場合に過呼吸への対応を考えます。
喘息は最悪の場合、呼吸困難により窒息し、命にかかわることがあります。一方で過呼吸は、強い苦しさや恐怖はあっても、命にかかわることはまずないので、喘息への対応が先となります。
【参考情報】『Hyperventilation syndrome and asthma』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3541595/
3-2.過呼吸への対応
過呼吸への対応は、基本的に「不安を和らげ、呼吸を整えること」が中心になります。
まず、命に関わる状態ではないことを認識し、呼吸が速くなっているだけで空気そのものは足りていることを意識します。これだけで、呼吸が落ち着き始めることもあります。
次に、呼吸の仕方を整えます。息を吸うことよりも、ゆっくり吐くことを意識して、鼻から吸って口をすぼめて長く吐くなど、呼気を長めにする呼吸にします。
姿勢は座った状態でやや前かがみにし、肩や首の力を抜くことで、呼吸がしやすくなります。
併せて、なるべく静かな場所に移動し、騒音や強い光を避けたりして、刺激の少ない環境を整えることも重要です。
【参考情報】『呼吸が速くなります。過換気だと言われました。』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q13.html
4.喘息発作を過呼吸と思い込む危険性
息苦しさや動悸、不安感が強く出ると、「過呼吸ではないか」と自己判断してしまう人は少なくありません。
しかし、実際には喘息発作であるにもかかわらず、過呼吸だと思い込んでいるケースもあります。
4-1.喘息発作が「過呼吸」に見えやすい理由
喘息発作では、息苦しさに加えて強い不安が生じやすく、呼吸が乱れたり動悸が出たりすることがあります。こうした症状が前面に出ると、過呼吸やパニック障害と思ってしまうことがあります。
【参考情報】『Hyperventilation in Panic Disorder and Asthma – NCBI』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2937087/
また、喘息では息苦しさのほか、咳や喘鳴といった症状もありますが、初期のうちは必ずしも喘鳴ががはっきり出るとは限らないので、軽い発作では、喘息らしく見えないこともあります。
さらに軽い発作では、時間の経過とともに症状が和らぐことがあるため、落ち着いたら治った=過呼吸だったと解釈されがちです。しかしこの勘違いが続くと、本来必要な治療のチャンスを逃してしまい、気道の炎症が悪化する恐れがあります。
4-2.過呼吸と間違えて喘息を見逃す危険性
過呼吸であれば、まず命にはかかわりませんが、喘息発作を見逃すと、重症化の危険があります。
喘息の発作を繰り返し、気道の炎症が十分に抑えられない状態が続くと、気道のリモデリングが起こります。気道のリモデリングとは、慢性的な炎症によって気道の壁が厚くなったり硬くなったりし、気道が狭いまま固定されてしまうことです。
【参考情報】『Airway Remodelling Explained』Asthma.ca
https://asthma.ca/airway-remodelling-explained/
この変化が進むと、気道は元の状態に戻りにくくなり、発作が起こりやすく、起きたときの息苦しさも強くなります。
その結果、通常の治療では症状を抑えにくくなり、息苦しさが急激に悪化して、入院や救急対応が必要になることもあります。
5.呼吸器内科で行われる診察と検査
強い息苦しさを繰り返す場合、呼吸器内科では「原因が気道にあるのか」「治療が必要な病気が隠れていないか」を確認します。
<問診>
いつから症状が出ているのか、どのくらいの頻度で起こるのか、夜間や早朝に悪化することはないかといった経過を詳しく確認します。
併せて、咳や痰、ゼーゼーする呼吸音の有無、アレルギー歴や喫煙歴なども重要な判断材料になります。
<診察>
聴診では呼吸音を聞き、喘鳴があるか、呼気が長くなっていないか、呼吸数が過剰に増えていないかなどを確認します。
ただし、軽い発作や発作が落ち着いている時期には、はっきりした異常音が聞こえないこともあります。
<呼吸機能検査>
肺の機能を調べるスパイロメトリー、気道の炎症を調べる呼気一酸化窒素(呼気NO)検査などの検査で、喘息の有無や重症度を調べます。
<胸部X線(レントゲン)検査>
肺炎や気胸、心不全など他の病気が隠れていないかを確認します。さらに詳しい検査が必要な場合には、CT検査が追加されることもあります。
<血液検査>
アレルギーや感染の有無を確認する場合に行います。
6.おわりに
喘息と過呼吸は、どちらも強い息苦しさを引き起こすため混同されやすいものの、原因や治療の考え方はまったく異なります。喘息は気道の炎症や収縮による病気であり、過呼吸は呼吸調節の乱れによって起こる状態です。
また、喘息発作をきっかけに不安が高まり、過呼吸が併発することもあります。この場合、症状が実際以上に強く感じられ、自己判断がさらに難しくなります。
息苦しさがあるときに重要なのは、安易に過呼吸や心因性と決めつけず、まず喘息などの呼吸器疾患を否定しない視点を持つことです。迷った場合は医療機関で評価を受け、原因を正しく見極めることが、適切な治療につながります。











