睡眠時無呼吸症候群の危険度をセルフチェック！
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に無呼吸や低呼吸を繰り返す病気です。
この病気になると、重要な会議の最中や運転中でも眠ってしまうことがあります。
さらに、心筋梗塞など命にかかわる病気を発症したり、生活習慣病のリスクが高まることもわかっています。
もし最近、「寝ても疲れが取れない」「昼間に強い眠気を感じる」「家族からいびきを指摘された」など、思い当たることがある場合は、一度セルフチェックをしてみましょう。
睡眠時無呼吸症候群は放置すると合併症のリスクが高まりますが、早めに気づいて対策すれば改善できる病気です。
目次
１.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か
睡眠時無呼吸症候群の症状と言えばいびきが有名ですが、この病気の真の恐ろしさは、命と健康を脅かす合併症にあります。
１ー１.主な症状
・激しいいびき
・いびきが途中で止まり、その後再開する
・夜中に息苦しさで目が覚めることがある
・日中の強い眠気や集中力の低下
・起床時に頭が重い
・睡眠中にのどや口が渇く
◆「寝ている間に喉が渇くのはなぜ？睡眠時無呼吸症候群との関係」＞＞
１ー２.合併症とリスク
寝ている間に呼吸が止まって睡眠の質が低下すると、日中の眠気や集中力の低下だけでなく、さまざまな健康リスクが高まります。
＜心臓や血管への影響＞
就寝中、毎晩のように呼吸が止まるたびに、体が一時的に低酸素状態になります。これが続くと血圧が上がりやすくなり、高血圧の原因になります。
【参考情報】『Sleep Apnea and High Blood Pressure A Dangerous Pair』American College of Cardiology
https://www.cardiosmart.org/news/2015/5/sleep-apnea-and-high-blood-pressure-a-dangerous-pair
さらに、心臓に負担がかかるため、不整脈や心筋梗塞、心不全などのリスクも高まります。
＜脳への影響＞
呼吸が止まるたびに何度も目が覚めるため、深い睡眠がとれません。その結果、日中の強い眠気や注意力の低下、記憶力の低下などが起こります。
さらに、脳卒中や認知症のリスクも高まるとされています。
【参考情報】『Sleep apnea contributes to dementia in older adults, especially women』Michigan Medicine
https://www.michiganmedicine.org/health-lab/sleep-apnea-contributes-dementia-older-adults-especially-women
＜生活習慣病との関連＞
睡眠中の低酸素状態や睡眠の質の低下は、糖尿病や肥満との関連が指摘されています。
特にインスリンの働きが悪くなることで血糖値が上がり、糖尿病のリスクが増加します。
【参考情報】『Sleep Apnea Can Make Managing Diabetes More Difficult: What You Need To Know』Cleveland Clinic
https://health.clevelandclinic.org/sleep-apnea-can-make-managing-diabetes-more-difficult-what-you-need-to-know
◆「睡眠時無呼吸症候群と糖尿病の関係」＞＞
＜日常生活への影響＞
強い眠気や集中力の低下により仕事の効率が落ち、社会的信用が低下する恐れがあります。
また、居眠り運転や、危険を伴う作業中の事故のリスクが上昇します。
◆「睡眠時無呼吸症候群の合併症」についてもっと詳しく＞＞
２.睡眠時無呼吸症候群になりやすい人
睡眠時無呼吸症候群は、肥満体型の中高年男性に多い病気ではありますが、やせ型の人や女性もなることがあります。
２−１.肥満体型
肥満になると、首やのどの周囲に脂肪がつき、空気の通り道である気道が狭くなるので、空気が通りにくくなります。
また、内臓脂肪が多いと横隔膜の動きも妨げられるため、呼吸が浅くなりやすくなります。
２−２.あごが小さい
あごが小さい人（下顎が後退しているタイプ）は、もともと気道が狭く、少し体重が増えただけでも気道がふさがりやすくなります。
日本人は欧米人に比べて顔の骨格が平たく、あごが小さい人が多いため、やせていても睡眠時無呼吸症候群を発症するケースが少なくありません。
２−３.更年期以降の女性
女性は、「プロゲステロン」という女性ホルモンの働きによって、呼吸を維持する筋肉が活発に動くため、睡眠時無呼吸症候群の発症は男性より少ない傾向にあります。
しかし、閉経によりプロゲステロンの分泌が減ると、喉や舌の筋肉がゆるみやすくなり、発症リスクが高まります。
また、更年期にはホルモンバランスの変化によって体重が増えやすくなることもあり、それも一因となります。
【参考資料】「図解 睡眠時無呼吸症候群を治す！最新治療と正しい知識」白濱龍太郎 日東書院
https://tg-net.co.jp/tatsumi_book/8439/
２−４.慢性的な鼻づまりがある人
アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などにより鼻が詰まって、鼻の通りが悪い人は、寝ている間に自然と口呼吸になりやすい傾向があります。
睡眠中に口呼吸になると、舌の根元（舌根）がのどの奥に落ち込み、気道が狭くなってしまいます。
２−５.扁桃腺が大きい人
扁桃腺はのどの奥にあるリンパ組織で、ウイルスや細菌から体を守る働きをしていますが、もともと扁桃腺が大きい人は、気道が扁桃腺に塞がれて狭くなります。
この傾向は子どもにも多く見られますが、大人のでも、扁桃腺の腫れや肥大があると、いびきや無呼吸の原因になります。
３.あなたの危険度チェック
以下、睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状です。あてはまるものにチェックしてみましょう。
＜睡眠中の様子＞
□ 大きないびきをかく
□ いびきが途中で止まることがある
□ 呼吸が止まっていると指摘されたことがある
□ 寝ている間にむせる、息苦しさを感じることがある
＜日中の症状＞
□ 日中に強い眠気を感じる
□ 集中力が続かない、仕事や勉強の効率が落ちている
□ 朝起きたときに頭痛がある
□ 急に居眠りしてしまうことがある
＜体格・生活習慣＞
□ 肥満気味（特に首回りの脂肪が多い）
□ 高血圧がある
□ 喫煙習慣がある
□ 飲酒後に眠るといびきが強くなる
＜その他＞
□ 睡眠中に何度も目が覚める
□ 夜間頻尿がある
□ 睡眠中に口が渇く、のどが痛くなることがある
【チェックの目安】
・0〜2個：可能性は低めですが、気になる症状があれば医師に相談
・3〜5個：やや注意が必要。生活習慣の改善や医療機関での相談を検討
・6個以上：睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いので、早めに検査を受けることをおすすめ
４.睡眠時無呼吸症候群の検査
セルフチェックで睡眠時無呼吸症候群の可能性があると感じたら、まずは医療機関で検査を受けましょう。
４－１．問診・診察
問診では、医師がいびきの状態や日中の眠気、生活習慣などを詳しく聞き取ります。
睡眠の質や寝起きの状態、家族から「いびきが止まっている」と指摘されたことがあるかなども重要な情報です。
また、肥満の有無、飲酒や喫煙の習慣、持病（高血圧・糖尿病など）も、発症リスクを判断する材料になります。
さらに、鼻やのどの形、扁桃腺の大きさ、あごの骨格などを確認し、気道が狭くなっていないかをチェックします。
鼻づまりや鼻中隔のゆがみ、舌の位置、口蓋（こうがい）の形状なども診察のポイントです。
【参考情報】『鼻中隔弯曲症〈びちゅうかくわんきょくしょう〉』日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease_kids/index.php?content_id=19
４－２．簡易検査
まずは、鼻や指にセンサーを付けて一晩眠る、簡易検査を行うことが多いです。
この検査は、自宅で普段通りの環境で眠れるため、身体的・精神的な負担が少ないのが特徴です。
＜簡易検査の測定項目＞
・呼吸の回数
・酸素の濃度（SpO₂）
・いびきの有無
・無呼吸や低呼吸の回数と持続時間
・体位（仰向け・横向き）による変化 など
測定結果から、睡眠中にどれくらい呼吸が止まっているかを示す「無呼吸低呼吸指数（AHI）」が算出されます。
このAHIが5以上であれば睡眠時無呼吸症候群の可能性があるとされ、重症度に応じて治療が検討されます。
検査機器は医療機関で貸し出され、返却すれば結果を解析してもらえます。
４－３．精密検査
より詳しい検査が必要な場合は、医療機関で一晩入院して行う「終夜睡眠ポリグラフ検査（PSG）」を受けます。
※当院では自宅での精密検査も可能です
＜精密検査の測定項目＞
・脳波
・眼球運動
・筋電図
・心電図
・呼吸の流れ など
これにより、無呼吸や低呼吸の回数だけでなく、呼吸が止まった際の酸素不足の程度や、睡眠の深さ、途中で目が覚める頻度なども正確に評価できます。
５.睡眠時無呼吸症候群の治療
検査で睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、症状の重さや原因に応じて治療が行われます。主な目的は、睡眠中にしっかり呼吸できるようにして、日中の眠気や健康リスクを減らすことです。
５－１．CPAP（シーパップ）
寝ている間に、専用の医療機器から空気を送り込み、気道が閉じないようにします。
装着して眠るには慣れが必要ですが、使い続けることでいびきや日中の眠気が改善し、血圧や心臓への負担も軽くなります。
５－２．マウスピース
軽症〜中等症の場合は、歯科で作るマウスピースを使う治療もあります。
下あごを少し前に出した状態に固定し、気道を広げて呼吸を保ちやすくします。
マウスピースは、虫歯や歯周病があると使うことができません。また重症の患者さんにはほとんど効果がありません。
５－３．生活習慣の改善
睡眠時無呼吸症候群の多くは、生活習慣を見直すことで症状を軽減できます。
・体重管理：肥満は気道を狭くする最大の要因の一つです。
・飲酒の制限：寝酒は筋肉をゆるめ、無呼吸を悪化させます。
・仰向けで寝ない：横向きに寝ると気道が確保されやすくなります。
・禁煙：喫煙は気道の炎症を起こし、症状を悪化させます。
５－４．手術療法
扁桃腺肥大や鼻づまりなど、構造的な問題で気道が狭くなっている場合は、手術で症状が改善することもあります。
＜主な手術＞
・扁桃腺切除術
・鼻中隔湾曲矯正術
・口蓋垂・軟口蓋形成術 など
６.おわりに
睡眠時無呼吸症候群は、単にいびきをかくだけの病気ではありません。日中の眠気や疲労の原因になり、心臓や血圧にも影響することがあります。
チェックリストにあてはまる項目が多い人は、油断せずに早めに呼吸器内科を受診しましょう。
