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なぜ、睡眠時無呼吸症候群の人は悪夢を見るのか

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年03月12日

「何かに追われる」「誰かに叱られる」など、不安や恐怖を伴う夢を「悪夢」と言います。

悪夢は誰でも見るものですが、頻繁に見るようなら、強いストレスや何らかの病気が原因となっている可能性があります。

この記事では、悪夢を見る原因のひとつとして考えられる病気である睡眠時無呼吸症候群について説明します。

「最近、いやな夢ばかり見る」「悪夢でしばしば睡眠が中断する」という悩みがある方は、ぜひ読んでください。

1.人はなぜ悪夢を見るのか


悪夢は、睡眠中に脳が感情を整理する過程で、不安や恐怖などの強い感情が夢として表れたものと考えられています。

1-1.レム睡眠と夢の関係

人の睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返しながら進みます。夢は主にレム睡眠のときに見やすく、内容も鮮明になりやすいとされています。


<ノンレム睡眠>
眠りに入ると、まずノンレム睡眠が始まります。浅い眠りから徐々に深い眠りへと移行し、脳の活動が低下して体の回復が進むと考えられています。

<レム睡眠>
脳の活動が覚醒時に近い状態になる睡眠で、体は休んでいる一方で脳は活発に働いています。夢を見やすいのもこの段階です。

【参考情報】『Sleep』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/body/12148-sleep-basics



レム睡眠中は、記憶の整理や感情の処理が行われていると考えられています。このとき、感情に関わる扁桃体の活動が高まりやすい一方、感情をコントロールする前頭前野の働きは相対的に低下します。

そのため、不安や恐怖といった感情が夢の中で強調されやすく、怖い夢や不安を伴う夢、いわゆる悪夢として認識されることがあります。

1-2.悪夢が増える主な要因

悪夢が増える背景には、日常のストレスや人間関係の悩み、強い不安といった心理的な要因が関わっていることがあります。

また、睡眠不足や過度の飲酒があると睡眠の質が乱れ、レム睡眠のバランスに影響を与えることで、悪夢を見やすくなると考えられています。

さらに、抗うつ薬や一部の降圧薬など特定の薬が、夢の内容を変化させたり悪夢を引き起こしたりすることも報告されています。

ただし、こうした影響には個人差があり、すべての人に当てはまるわけではありません。

【参考情報】『夢の情動体験発生起序と機能的意義に関する研究』小川景子
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24730622/

2.睡眠時無呼吸症候群と悪夢の関係


睡眠時無呼吸症候群では、睡眠が途中で中断されやすくなるため、夢を覚えている機会が増えることがあります。

さらに、息苦しさや睡眠の質の低下が重なることで、不安や恐怖を伴う悪夢として記憶に残ることもあります。

2-1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か?

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が何度も止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。

呼吸が止まると体内の酸素が不足するため、脳は危険を回避しようと覚醒反応を起こし、自分では気づいていなくても、一瞬目が覚めることがあります。

この覚醒は、一晩に何十回、場合によっては100回以上に及ぶこともあります。そのため、睡眠が細かく分断され、深い眠りが十分にとれなくなります。

【参考情報】『Sleep apnea』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sleep-apnea/symptoms-causes/syc-20377631

2-2.睡眠時無呼吸症候群で悪夢が増えたと感じる理由

人の睡眠では、夢を見やすいレム睡眠が周期的に現れます。

睡眠時無呼吸症候群では、レム睡眠のときに気道を支える筋肉の力が弱くなるため、いびきや無呼吸、低呼吸が起こりやすくなることがあります。

【参考情報】『Physiological mechanisms of upper airway hypotonia during REM sleep』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24587579/

その結果、呼吸の乱れによって睡眠が中断され、途中で目が覚める回数が増えることがあります。

レム睡眠の途中や直後に覚醒すると、見ていた夢の内容を覚えている可能性が高くなります。

そのため、睡眠時無呼吸症候群の人では、「夢をよく見る」「悪夢が多い」と感じることがあります。

また、無呼吸や低呼吸によって息苦しさや胸の圧迫感などの不快感が生じると、それが夢の内容に影響することもあります。

たとえば、追いかけられる夢や逃げられない夢、溺れる夢など、不安や恐怖を伴う夢として現れる場合があります。

2-3.睡眠時無呼吸症候群の治療で悪夢が減る可能性

睡眠時無呼吸症候群の治療によって無呼吸や低呼吸が減ると、こうした覚醒反応の回数も少なくなり、睡眠が途中で妨げられにくくなります。

睡眠の連続性が保たれると、レム睡眠の途中で目が覚めることも減るため、夢を覚えていることが少なくなることがあります。

また、呼吸が安定することで睡眠中の息苦しさや胸の圧迫感などの身体的な不快感が軽減されると、夢の内容に影響する刺激も減る可能性があります。

こうした変化により、悪夢が減ったと感じる場合があります。

◆「あなたの危険度チェック!」>>

3.睡眠時無呼吸症候群の主な症状


睡眠時無呼吸症候群により睡眠の質が低下すると、夜間の症状だけでなく、日中の体調にもさまざまな影響が現れます。


<大きないびき>
睡眠時無呼吸症候群になると、空気の通り道である気道が狭くなるため大きないびきをかくことがあります。

いびきは断続的なリズムで、しばらく静かになったと思ったら、突然大きな音で再開することがあります。

これは、無呼吸により静かになった状態から、呼吸が再開して空気が一気に気道を通る際に音が出るためです。

◆「いびきは病気のサイン?原因と対処法、治療について解説」>>


<起床時の頭痛や強いだるさ>
睡眠時無呼吸症候群では、眠っている間に何度も呼吸が止まるため、血液中の酸素が不足しがちです。

脳への酸素供給が滞ると、朝目覚めたときに頭痛やだるさとして現れることがあります。

また、呼吸が乱れるたびに睡眠が浅くなるため、十分な時間眠ったはずなのに疲れが取れない、という感覚を覚える人も多いです。

◆「寝起きの頭痛といびきの関係」>>


<日中の強い眠気>
睡眠が分断され、熟睡できなくなるため、日中に強い眠気が出ることがあります。

会議中や運転中など、本来は眠らない場面でも眠気を感じることがあり、生活や仕事に影響する場合があります。

◆「そのいびき・昼間の眠気、睡眠時無呼吸症候群の初期症状では?」>>


<集中力の低下>
慢性的な睡眠不足により、集中力の低下や記憶力の低下、イライラなどの気分の変化が起こることもあります。

4.睡眠時無呼吸症候群の検査と治療


睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、医療機関で睡眠中の呼吸状態を調べる検査を行いましょう。

4-1.睡眠時無呼吸症候群の検査

眠時無呼吸症候群の検査には、簡易検査と精密検査があります。


<簡易検査>
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、まず行われることが多いのが自宅で行う簡易検査です。

小型の検査機器を用い、就寝時に指先や鼻にセンサーを装着して眠ります。装置は、睡眠中の呼吸の流れや血液中の酸素濃度、いびきの状態などを記録します。

検査結果から、睡眠中にどの程度の頻度で無呼吸や低呼吸が起きているかを確認します。結果によっては、より詳しく調べるために医療機関での精密検査が行われることもあります。

◆「簡易検査」について詳しく>>


<精密検査>
医療機関に一泊して睡眠中の状態を詳しく測定します。※当院では自宅での精密検査も可能です

頭や顔、胸などに複数のセンサーを装着し、脳波や呼吸の状態、血液中の酸素濃度、心拍数、体の動きなどを同時に記録します。

これにより、睡眠の深さや呼吸の乱れの程度を詳しく分析し、睡眠時無呼吸症候群の有無や重症度を評価します。

◆「精密検査」について詳しく>>

4-2.睡眠時無呼吸症候群の治療

治療方法は、症状の程度や原因によって異なりますが、代表的な治療法はCPAP(シーパップ)です。

CPAPは、専用の装置を使って鼻から空気を送り、気道がふさがるのを防ぐ治療法です。

この治療により、睡眠中の呼吸が安定し、いびきや日中の強い眠気などの症状の改善が期待できます。継続して使用することで、睡眠の質の向上にもつながります。

◆「CPAP」についてもっとくわしく

5.悪夢を見るほかの病気


睡眠時無呼吸症候群以外の病気でも、悪夢が増えることがあります。

5-1.レム睡眠行動障害

高齢の男性に多くみられる病気です。「追いかけられる」「けんかをする」などの悪夢を見て、夢の内容と同じような行動をしたり、叫んだりします。パーキンソン病やレビー小体型認知症の早期症状として現れる場合もあります。

【参考情報】『レム睡眠行動障害』健康日本21アクション支援システム(厚生労働省)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-070

5-2.心臓の病気

狭心症や心不全など、心臓の病気が原因で悪夢を見ることがあります。就寝中に「攣縮(れんしゅく)」と呼ばれる冠動脈の異常な収縮が起こり、その時に胸が苦しくなって目が覚めたり、悪夢を見ることがあります。

5-3.夜間低血糖

夜間睡眠中に低血糖になると、血糖値を上げるためにアドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾールなどのホルモンが放出されます。すると、眠りが妨げられ悪夢を見やすくなります。

◆「糖尿病予備軍は血糖値スパイクを要チェック!」>>

5-4.その他の病気


その他、うつ病や統合失調症、てんかん、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)などの病気で悪夢を見やすくことがあります。

また、子どもは大人より悪夢を見ることが多いです。悪夢のせいで泣いたり叫んだりすることがあっても、多くは成長につれ減っていきます。

【参考情報】『Nightmare disorder』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/nightmare-disorder/symptoms-causes/syc-20353515

6.おわりに

悪夢の原因として、ストレスやうつ病、PTSDなどメンタルヘルスの問題も考えられますが、意外な病気が潜んでいることもあります。

特に、肥満の方、糖尿病や高血圧などの持病がある方、激しいいびきを繰り返している方は、睡眠時無呼吸症候が原因で悪夢に悩まされている可能性があります。

思い当たる方は、早めに睡眠時無呼吸症候群の検査ができる病院を受診して相談してください。放っておくと、ますます睡眠が妨げられ、日常生活に支障が出てくる可能性が高いです。

◆「当院の睡眠時無呼吸症候群の治療について」>>

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