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夜中に息苦しくて目が覚める人は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年03月25日

夜中に息苦しくて目が覚める症状は、睡眠時無呼吸症候群のサインである可能性があります。

自律神経の乱れや更年期のホルモン変化、ストレスやパニック障害なども、夜間の息苦しさや覚醒の一因となることがあります。

しかし、まずは睡眠時無呼吸症候群の可能性を考えることが、原因を見極めるうえで重要な視点となります。

この記事では、「睡眠中に息苦しい」と感じる原因を、睡眠時無呼吸症候群という病気のメカニズムに沿って解説します。

夜中に目が覚めることが多い人や、家族やパートナーに「いびきが激しい」と指摘された人は、ぜひ読んでください。

1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か

睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に気道が狭くなったり塞がったりすることで、呼吸が止まったり浅くなったりを繰り返す病気です。

具体的には、10秒以上呼吸が止まる無呼吸状態、もしくは呼吸が弱くなる低呼吸状態が、1時間あたり5回以上繰り返される場合に診断されます。

多くの場合、気道が狭くなることで大きないびきが生じ、さらに閉塞が強くなると無呼吸の状態に至ります。

無呼吸により体内の酸素濃度が低下し、さらに二酸化炭素が上昇すると、脳が呼吸の異常を察知して覚醒反応を引き起こします。

その結果、夜間に何度も目が覚めたり、息苦しさを感じたりすることがあります。

また、このような無呼吸と覚醒を繰り返すことで交感神経が活性化し、心拍数の上昇や血圧の変動、動悸などが生じることもあります。

【参考情報】『Chemoreflexes, Sleep Apnea, and Sympathetic Dysregulation』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4249628/

こうした状態が続くと睡眠の質が下がり、日中の強い眠気や集中力の低下、倦怠感といった症状につながります。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっとくわしく>>

2.睡眠時無呼吸症候群の原因


睡眠時無呼吸症候群の代表的な原因のひとつが肥満です。肥満により首やのど周辺に脂肪がつくと気道が圧迫され、睡眠中に塞がりやすくなります。

また、加齢によって気道周囲の筋肉がゆるむことも、気道を狭める一因です。

骨格や体の構造も関係します。あごが小さい、下あごが後退している、舌が大きいといった特徴があると、もともと気道が狭く無呼吸が起きやすい状態です。

生活習慣も見逃せません。アルコールは気道周囲の筋肉をゆるめるため、睡眠中の閉塞を悪化させます。睡眠薬の一部にも同様の作用があります。

また、仰向けの姿勢は舌が喉の奥に落ち込みやすく、無呼吸を引き起こしやすくなります。

【参考情報】『Effect of body position on tongue posture in awake patients with obstructive sleep apnoea』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9093342/

鼻づまりやアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎で鼻呼吸がしにくい場合も要注意です。口呼吸が増えると気道が不安定になりやすく、症状の一因となることがあります。

◆「副鼻腔炎の治療で睡眠時無呼吸症候群が改善?」>>

3.なぜ寝ている時に息苦しさを感じるのか


睡眠時無呼吸症候群は、気道が閉塞することで起こる「閉塞型」、脳や神経、心臓の病気などにより呼吸の指令がうまく働かなくなる「中枢型」、両方の要因が関与する「混合型」の3種類に分けられます。患者さんの大多数は閉塞型にあたります。

眠っている間は全身の筋肉がゆるむため、健康な人でものどの筋肉が弛緩し、気道は自然と狭くなります。

閉塞型の場合、もともと気道が狭い状態にあるため、睡眠中にさらに狭まり、完全に塞がってしまうことで無呼吸が起きます。

気道が狭くなるにつれ、吸った空気がスムーズに通り抜けるのが難しくなります。そのため、夜中に呼吸が苦しくなって目が覚めることがたびたび起きるようになります。

4.睡眠時無呼吸症候群の合併症


睡眠時無呼吸症候群の大きな問題のひとつは、寝ているときの息苦しさや日中の眠気といった症状だけでなく、合併症のリスクにあります。

寝ている間に呼吸が止まっても、すぐに呼吸は再開されるので、息苦しさを感じたとしてもほんの一瞬です。

そのため、無呼吸に気づかないまま過ごしている人や、目が覚めてもすぐに再び眠ってしまう人も多くみられます。

しかし、睡眠中に無呼吸が繰り返されると、体は低酸素状態と回復を繰り返すことになり、血管に負担がかかります。

その影響により動脈硬化が進行しやすくなり、心筋梗塞や脳卒中といった重篤な疾患のリスクが高まることが知られています。

夜中に息苦しくなって目が覚めるのも不快なものですが、その裏で重い病気が進行していく恐ろしさが、この病気の本質だと知っておいてください。

◆「合併症」のくわしい情報をチェック>>

5.夜中に息苦しくなる別の原因


睡眠時睡眠時無呼吸症候群以外の病気でも、寝ている間に息苦しくなって目が覚めることがあります。

5-1. 呼吸器の病気

喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患を抱えていると、睡眠中に呼吸状態が悪化して、息苦しさで目が覚めてしまうことがあります。

喘息の場合、気道の炎症や過敏性が原因で、夜間から早朝にかけて症状が出やすくなります。

咳や「ゼーゼー・ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)、そして息苦しさによって、睡眠が妨げられることも少なくありません。

◆「いびきと喘息の関係は?」>>

COPDでは、気道が狭くなることで空気をうまく吐き出せなくなり、「息が吐ききれない」「空気が足りない」という感覚が生じます。

症状が重くなると、安静時や睡眠中にも息切れが起こるようになり、夜中に目が覚める一因となります。

◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

5-2. 心臓の病気

心不全では、心臓のポンプ機能が低下することで肺に血液がうっ滞し、呼吸困難が生じます。

初期には日中の息切れが中心ですが、進行すると睡眠中にも症状が現れるようになります。

特に、発作性夜間呼吸困難と呼ばれる状態では、寝てから数時間後に突然強い息苦しさで目が覚めるのが特徴です。

また、横になると症状が悪化し、上体を起こすと楽になる(起坐呼吸)という特徴もみられます。

【参考情報】『心不全とはなにか』日本心臓財団
https://www.jhf.or.jp/check/heart_failure/02/

5-3. 胃食道逆流症

胃食道逆流症でも、睡眠中の息苦しさが生じることがあります。

胃酸が食道へ逆流すると、のどや気道を刺激して咳や違和感を引き起こし、結果として呼吸がしづらくなることがあります。

特に就寝中、横になることで逆流が起こりやすく、夜間の覚醒につながります。

◆「胃食道逆流症」についてくわしく>>

5-4. 自律神経や精神的要因


明らかな身体疾患がない場合でも、強い不安やストレスによって呼吸が浅くなり、息苦しさで目が覚めることがあります。

【参考情報】『不安症』こころの情報サイト|国立精神・神経医療研究センター
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=BLA9JV0KhiWPIMzX

これはパニック発作や過換気症候群の一部として現れることもあります。

◆「過換気症候群」の情報をチェック>>

また、更年期障害に伴うホルモンバランスの変化によって自律神経が乱れると、動悸やほてり(ホットフラッシュ)とともに息苦しさを感じることがあります。

こうした症状が睡眠中に現れることで、夜間の覚醒につながる場合もあります。

5-5. 鼻づまり

鼻づまりがあると、睡眠中の呼吸が妨げられ、息苦しさで目が覚めることがあります。

鼻は本来、空気の通り道として重要な役割を担っていますが、鼻腔が狭くなると空気の流れが悪くなり、十分に呼吸ができなくなります。

その結果、無意識のうちに口呼吸となり、のどや気道が乾燥しやすくなるほか、気道の抵抗が増して呼吸がしづらくなります。

鼻づまりの原因としては、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などが代表的です。また、鼻中隔弯曲症などの構造的な問題によって慢性的に鼻の通りが悪くなっている場合もあります。

【参考情報】『Deviated Septum』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/16924-deviated-septum

こうした状態は、いびきや睡眠時無呼吸症候群を悪化させる要因にもなり、結果として睡眠の質の低下や夜間の覚醒につながることがあります。

5-6. 肥満・体型による気道の圧迫

睡眠時無呼吸症候群と診断されていない場合でも、肥満や体型の影響によって気道が圧迫され、睡眠中に息苦しさを感じて目が覚めることがあります。

特に首まわりやあごの下に脂肪がつくと、横になった際に空気の通り道である気道が狭くなりやすくなります。

これにより空気の流れが悪くなり、十分に呼吸ができず、「息がしづらい」「空気が足りない」といった感覚につながります。

特に、「いびきがある」「仰向けで症状が強くなる」「体重増加とともに症状が出てきた」といった場合には、体型の影響が関与している可能性があります。

◆「いびきの原因は肥満?改善法と危険なサインを知っておこう」>>

5-7. 薬剤の影響

服用している薬の種類によっては、呼吸や睡眠に影響を及ぼし、夜間に息苦しさを感じて目が覚めることがあります。

例えば、睡眠薬や抗不安薬の中には中枢神経の働きを抑える作用があり、呼吸が浅くなることで息苦しさにつながる場合があります。

また、降圧薬の一種であるACE阻害薬では、副作用として咳が出ることがあり、この咳が睡眠中の覚醒の原因になることがあります。

そのほか、一部の薬剤では気管支を収縮させる作用があり、呼吸がしづらくなるケースも報告されています。

こうした影響は頻度としては高くありませんが、薬の開始後や変更後に症状が出現した場合には、薬剤の影響も考慮する必要があります。

5-8. 神経・筋肉の病気

筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経・筋肉の病気では、呼吸に関わる筋肉の働きが低下することで、睡眠中に呼吸が浅くなり、息苦しさで目が覚めることがあります。

【参考情報】『筋萎縮性側索硬化症(ALS)』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/52

これらの病気では、横隔膜や肋間筋といった呼吸筋の力が弱くなるため、特に睡眠中のように呼吸の調節が無意識に行われている状態では、十分な換気が保てなくなることがあります。

その結果、体内の酸素が不足したり二酸化炭素がたまりやすくなり、息苦しさとして自覚され、覚醒につながります。

まれな病気ではありますが、日中の息切れや疲れやすさ、横になると呼吸が苦しくなるといった症状が徐々に進行しているようなら、早めに病院を受診してください。

6. 息苦しさで目が覚める場合の対処法


夜間に息苦しさで目が覚める症状がある場合は、原因に応じた適切な対処が重要です。

6-1. 医療的な対策

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、まずは睡眠中の呼吸状態を調べる検査を受けましょう。

◆「呼吸器内科で睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができます」>>

診断された場合には、CPAP(持続陽圧呼吸療法)によって気道を広げ、呼吸を安定させる治療が行われます。

◆「CPAP」についてくわしく>>

これにより、血中酸素の低下を防ぎ、夜間の覚醒や日中の眠気の改善が期待されます。

また、心不全などの心臓の病気や、COPDなどの呼吸器疾患が関与している場合には、循環器内科や呼吸器内科での専門的な診療と治療が必要にとなります。

6-2. 生活習慣の改善

体重の増加は気道の圧迫を招きやすいため、適正体重の維持を意識することが大切です。

あわせて、無理のない範囲での運動や、毎日同じ時間に寝起きするなど規則正しい生活を心がけることで、睡眠の質の改善につながります。

ウォーキングや軽い筋力トレーニングなどの継続は、体重管理だけでなく、呼吸機能や睡眠の質の改善にもつながります。

ただし、就寝直前の激しい運動は交感神経を刺激するため、寝る2〜3時間前までに済ませるのが望ましいとされています。

アルコールは気道周囲の筋肉をゆるめて呼吸を不安定にするため、就寝前の飲酒は控えることが望ましいとされています。

また、寝る直前の食事は胃食道逆流症を悪化させ、夜間の息苦しさの原因となることがあるため注意が必要です。

加えて、喫煙は気道の炎症を引き起こし、慢性的な呼吸のしづらさや睡眠の質の低下につながるため、可能であれば禁煙が望まれます。

◆「タバコで睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まる理由」>>

6-3. ストレス管理

自律神経の乱れや不安が関与している場合には、ストレスのコントロールも重要になります。

自律神経は、日中に活動を高める交感神経と、休息や回復を促す副交感神経のバランスによって成り立っていますが、ストレスや緊張が続くと交感神経が優位な状態が続き、呼吸が浅く速くなりやすくなります。

その結果、睡眠中でもリラックスしきれず、わずかな呼吸の変化を「息苦しい」と感じて目が覚めることがあります。

思い当たる場合、就寝前に深呼吸や軽いストレッチを行うことで、交感神経の過剰な働きを抑え、リラックスした状態で眠りにつきやすくなります。

また、不安感や緊張が強く、日常生活にも影響が出ている場合には、医療機関やカウンセリングなど専門家への相談も検討されます。

6-4. 緊急時の対応

強い息苦しさに加え、呼吸困難、激しい動悸、胸の痛みなどを伴う場合には、心筋梗塞や肺塞栓症など重大な病気が関与している可能性があります。

このような症状が急に現れた場合や、これまでにない強い症状が出た場合には、救急で病院を受診しましょう。

7.おわりに

夜中に何度も目が覚めても、ストレスや加齢のせいだと考え、仕方ないとあきらめてしまう人も少なくないでしょう。

しかし、睡眠時無呼吸症候群と診断され治療を受けると、悩みや症状が改善し、しかも恐ろしい合併症を防ぐことができる可能性があります。

「最近、睡眠時に息苦しさを感じることが多くなった」「夜中に何度も目が覚めてしまう」という方は、ぜひ検査ができる病院を受診してください。

治療を開始すると、「こんなにぐっすり眠れるなんて!」と、体調の変化に驚く方も多いです。

◆「当院の睡眠時無呼吸症候群の治療について」>>

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