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睡眠時無呼吸症候群による酸素不足が招く症状とは?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年03月30日

「昼間の眠気」「起床時の頭痛」「激しいいびき」が続いている人は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。

この病気を治療せずに放っておくと、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が悪化したり、心筋梗塞や脳卒中が引き起こされることがあります。

これらの合併症が起こるのは、病気の影響で、寝ている間に血液中の酸素の量が減ってしまうからです。

この記事では、なぜ睡眠時無呼吸症候群になると血液中の酸素が減るのかを説明し、酸素不足によって生じるさまざまな合併症を紹介します。

1.睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か


睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に何度も呼吸が止まっては再開することを繰り返す病気です。

1-1.睡眠の質低下と日中への影響

睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、呼吸が止まるたびに、自分では気づかなくても一瞬、目が覚めています。

重症の場合、1分間に30回以上無呼吸になることもあり、そのたびに目が覚めるため、睡眠の質量が大きく損なわれます。

このように、毎晩のように睡眠が妨げられることで日中に強い眠気が生じ、仕事中にうとうとしたり、集中力が続かなくなったりすることも少なくありません。

こうした影響は個人の問題にとどまらず、居眠り運転や労働災害につながるケースもあり、社会的な問題としても注目されています。

◆「睡眠時無呼吸症候群と運転業務の関係」>>

1-2.睡眠時無呼吸症候群になりやすい人

睡眠時無呼吸症候群になりやすいのは、肥満体型の人です。

肥満により気道の周囲に脂肪がつくと、空気の通り道である気道が狭くなり、睡眠中の呼吸が妨げられやすくなります。

その影響で、激しいいびきが出ることがあります。

◆「いびきの原因は肥満?改善法と危険なサインを知っておこう」>>

標準体型やスリムな体型の人でも、以下にあてはまる人は、睡眠時無呼吸症候群になりやすい傾向があります。

 ・慢性的な鼻づまり

 ・扁桃肥大

 ・舌が大きい

 ・下あごが小さい

ほかにも、喫煙や飲酒の習慣や睡眠薬の服用が、この病気を引き起こす可能性があります。

【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群/SAS』健康日本21アクション支援システム(厚生労働省)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-026

◆「タバコで睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まる理由」>>

2.睡眠時無呼吸症候群と酸素不足の関係


睡眠時無呼吸症候群では、体内に十分な酸素が取り込めなくなるため、血液中の酸素量が低下します。

2-1.血中酸素飽和度(SpO2)の目安

血中酸素飽和度(SpO2)とは、赤血球に含まれるヘモグロビンのうち、どの程度が酸素と結合しているかを示す割合のことです。

◆「血中酸素飽和度とは?パルスオキシメータでチェック!」>>

健康な人では一般的に95〜99%程度が正常範囲とされ、95%未満になると低下傾向と判断されます。特に90%未満は低酸素血症が疑われる重要な目安です。

【参考情報】『Hypoxemia』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/symptoms/hypoxemia/basics/definition/sym-20050930

睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸や低呼吸により一時的に酸素が取り込めなくなり、SpO2が90%未満、場合によっては80%台まで低下することがあります。

こうした低酸素状態が繰り返されると、心臓や血管、脳などに慢性的な負担がかかり続けます。

2-2.睡眠中の酸素低下で起こる覚醒と呼吸再開の仕組み

睡眠中に呼吸が止まると、体内では酸素が減り、二酸化炭素が増えていきます。

こうした変化は、首や脳にあるセンサーによってすぐに感知され、「このままでは危険」という信号が脳に送られます。

その信号を受け取ると、脳は呼吸を再開させるために働きかけますが、眠っている状態では呼吸の力が弱くなっているため、それだけでは十分に呼吸が戻らないことがあります。

そこで体は、いったん眠りを浅くして、脳を一瞬だけ目覚めさせます。このとき、のどのまわりの筋肉が緊張して気道が広がり、止まっていた呼吸が再開します。

同時に、体は危険な状態に対応しようとして交感神経も活発になり、心拍数が増えたり血圧が上がったりします。

この一連の反応は命を守るための仕組みですが、睡眠中に何度も繰り返されると眠りが浅くなり、体への負担が大きくなっていきます。

【参考情報】『Brain circuitry mediating arousal from obstructive sleep apnea』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4259289/

3.全身の低酸素状態が続くとどうなるか


睡眠中の無呼吸による酸素不足は、単なる眠気の原因にとどまらず、自律神経や血管、脳にまで影響を及ぼし、全身の健康リスクを高める要因となります。

3-1.無呼吸による交感神経の活性化と夜間高血圧

睡眠中に無呼吸が起こり、体内の酸素濃度が低下すると、それを補おうとする反応として自律神経のバランスが乱れ、交感神経が活性化します。

この影響により、心拍数の増加や血圧の上昇が起こりやすくなります。

さらに、無呼吸のたびに脳が覚醒して呼吸を再開させるため、本来は休息しているはずの睡眠中にも交感神経が優位な状態が繰り返されます。

その結果、夜間であっても血圧が十分に下がらない、いわゆる「夜間高血圧」の状態になりやすくなります。

夜間高血圧は、本来下がるはずの睡眠中の血圧が高いまま維持される状態で、脳卒中や心筋梗塞などの重大な循環器の病気のリスクを高めることが知られています。

【参考情報】『Nocturnal Hypertension』American Heart Association
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/hypertensionaha.118.10971

3-2.低酸素が引き起こす血管障害と心血管リスク

このような酸素低下と覚醒反応の繰り返しは、血管にも大きな負担をかけます。

血圧の急激な変動や低酸素状態による酸化ストレス、炎症反応などが重なることで、血管の内側の機能が損なわれ、動脈硬化が進行しやすくなります。

◆「動脈硬化」についてくわしく>>

その結果として、高血圧、心筋梗塞、心不全、不整脈、脳梗塞といった心血管疾患のリスクが高まることが知られています。

とくに重症の睡眠時無呼吸症候群では、夜間から早朝にかけて、心臓や血管に急性の疾患が起こりやすくなることが報告されています。

3-3.低酸素による認知機能と全身への影響

また、低酸素状態と睡眠の分断が慢性的に続くことで、脳への酸素供給が不安定になり、集中力や注意力の低下、記憶力の低下といった認知機能への影響が現れることがあります。

さらに、これらの影響が長期間にわたって続くと、生活習慣病の悪化や発症にも関与すると考えられており、糖代謝の異常やインスリン抵抗性の増加などが指摘されています。

このように、睡眠中の無呼吸による酸素不足は、一時的な症状にとどまらず、全身の健康に広く影響を及ぼす重要な問題です。

【参考情報】『Sleep apnea worsens heart disease, yet often untreated』American Heart Association
https://newsroom.heart.org/news/sleep-apnea-worsens-heart-disease-yet-often-untreated

◆「実は怖い合併症」>>

4.睡眠時無呼吸症候群の治療で酸素不足を改善


睡眠時無呼吸症候群の治療では、気道の閉塞を防いで安定した呼吸を保つことで、酸素不足の改善を目指します。

4-1.睡眠時無呼吸症候群の主な治療法

代表的な治療法がCPAP(シーパップ)療法です。就寝中に一定の圧力で空気を送り込み、気道を開いた状態に維持することで、無呼吸や低呼吸が起こりにくくなります。

この治療で呼吸が途切れずに続くようになると、血中酸素飽和度の低下も防ぐことができます。

◆「CPAP」とは>>

マウスピース(口腔内装置)による治療も有効です。下あごを前方に動かすことで気道が広がり、呼吸の停止が減って酸素不足の改善につながります。

◆「マウスピース」とは>>

扁桃肥大や鼻づまりが原因の場合は、手術で気道を物理的に広げることで、同様の改善が期待できます。

◆「副鼻腔炎の治療で睡眠時無呼吸症候群が改善?」>>

4-2.生活習慣の改善と原因への対策

生活習慣の見直しも大切です。体重管理や睡眠姿勢の工夫によって気道の閉塞が軽減され、睡眠中の酸素状態が安定しやすくなります。

このように、適切な治療で無呼吸そのものを減らすことが、睡眠中の酸素不足の改善に直結し、日中の眠気の軽減や心血管リスクの低下にもつながります。

また、肥満や鼻・のどの病気など、睡眠時無呼吸症候群を悪化させる要因があれば、そちらの改善や治療も必要です。

◆「CPAP」とは>>

治療と生活習慣の改善により、睡眠中の無呼吸が改善すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが健康な人と変わらない程度になります。

また、昼間の眠気や倦怠感、いびきも改善されるので、朝の目覚めがよくなり、仕事や勉強にも集中できるようになるでしょう。

5.おわりに

睡眠時無呼吸症候群による酸素不足は、生活の質を下げるだけでなく、心臓や血管の大きな病気を引き起こす要因となります。

大きないびきを家族から指摘されたり、気になる症状があったりする場合は、放っておかずに呼吸器内科で相談しましょう。

バス・タクシー・鉄道などの事業者は、居眠り運転による事故などを防ぐため、運転をする従業員に対し、3年に1回程度睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査を行うよう国土交通省から要請されています。

検査で動脈血酸素飽和度(SpO2)の値が90%以下だと指摘されたら、すぐに病院を受診して治療を開始してください。重症度が高い人ほど、治療の効果をすぐに実感できることが多いです。

◆「当院の睡眠時無呼吸症候群の治療について」>>

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