血中酸素飽和度(SpO2)正常値とパルスオキシメータの使い方

息苦しさを感じたとき、病院で指先に小さなクリップ型の機器を挟まれた経験はありませんか?
この機器は「パルスオキシメータ」という医療機器で、血中酸素飽和度(SpO2)を測定するものです。
この記事では、血中酸素飽和度の意味や正常値、パルスオキシメータの使い方、数値が低いときに考えられる病気や受診の目安について、わかりやすく解説します。
目次
1. 血中酸素飽和度とは
血中酸素飽和度が何を表しているのか、なぜ重要なのかがわかると、日頃の健康管理をより安心して行えるようになります。
ここでは、血中酸素飽和度の基本的な仕組みについてご説明します。
1-1. 血中酸素飽和度( SpO2)って何?
血中酸素飽和度とは、血液中にある「ヘモグロビン」というタンパク質のうち、酸素と結合しているものの割合(%)のことです。
酸素は、呼吸により肺で二酸化炭素と交換されて体内に取り込まれ、赤血球の中のヘモグロビンと結合して全身に運ばれます。
そのため、ヘモグロビンがどれくらい酸素を運んでいるかを測ることで、体全体に酸素が十分届いているかどうかを確認することができます。
また、血中酸素飽和度は、パルスオキシメータでは「SpO2(エスピーオーツー)」と表示されます。
医療現場ではこの数値を「サチュレーション」と呼ぶことが多く、どちらも同じ血中酸素飽和度のことを指しています。
【参考情報】『Blood Oxygen Level』Clrveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diagnostics/22447-blood-oxygen-level
1-2. ヘモグロビンと酸素の関係
赤血球に含まれるヘモグロビンは、肺から酸素をもらって全身に届けるための「酸素の運び屋」です。
酸素とくっついたヘモグロビンは鮮やかな赤色になり、酸素を手放したヘモグロビンは黒っぽい色になります。
パルスオキシメータは、この「血液の色の違い」を光で読み取ることで血中酸素飽和度を測定しています。
1-3. なぜ血中酸素飽和度を測ることが大切なの?
血中酸素飽和度は「体の酸欠状態」を早期に発見できる重要なサインです。
脳や心臓などの重要な臓器は、常に十分な酸素を必要とします。
体の中で酸素が足りなくなっていても、最初は息苦しさなどの自覚症状がない場合もあります。
血中酸素飽和度を定期的に測ることは、症状が出る前の段階から体の異変に早めに気づくきっかけにもなるでしょう。
特に、呼吸器や心臓に持病がある方には、日常的な測定をおすすめします。
2. 血中酸素飽和度の正常値と数値の読み方
血中酸素飽和度の数値を測ったとき、「この数字は一体どういう意味なんだろう?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
正常値の範囲や年齢による違い、数値が下がったときに体に起こるサインを知っておくと、いざというときに慌てずに対応できます。
この章では、数値の正しい読み方についてご説明します。
2-1. 健康な方の正常値は96〜99%
健康な方の場合、血液中のヘモグロビンのほとんどが酸素と結合しているため、血中酸素飽和度は96〜99%となります。
何らかの原因で酸素が体内にうまく取り込めない場合や、肺に十分な酸素が入らない場合は、血中酸素飽和度が95%以下に低下します。
さらに、血中酸素飽和度が90%未満になると「呼吸不全」とみなされる状態です。
このような場合は、早めに気づいて対応することが大切ですので、数値が低い場合はすぐに医療機関にご相談ください。
【参考情報】『よくわかるパルスオキシメータ』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/file/pulse-oximeter_general20211004.pdf
2-2. 年齢による正常値の違い
血中酸素飽和度の正常値は、年齢によって少し異なります。
一般的な正常値(96〜99%)は、主に若い成人を基準にしたものです。
高齢者の方では、年齢とともに血中酸素飽和度が低下する傾向があり、75歳以上の方では94〜95%程度がその方にとっての平常値という場合もあります。
また、慢性的な肺や心臓の病気がある方は、もともとの平常値が一般的な正常値より低いことがあります。
大切なのは「自分自身の平常値」を知っておくことです。
普段から測定して記録し、いつもよりも3〜4%低下した場合は、かかりつけ医に連絡する目安とされています。
2-3. 数値が低いときに現れるサイン
血中酸素飽和度が下がり、酸素が体に行き渡らなくなると、息切れ・呼吸困難・頭痛・めまい・体のだるさなどの症状が現れます。
さらに悪化すると、皮膚や唇・爪の色が青紫色になる「チアノーゼ」が現れ、意識がぼんやりとしてくる場合もあります。
3. パルスオキシメータの正しい使い方と注意点
自宅で血中酸素飽和度を測るにはパルスオキシメータを使いますが、測り方が正しくないと、数値が不正確になってしまうことがあります。
ここでは、機器の仕組みから正しい手順、測定時の注意点まで、正確に測るためのポイントをご説明します。
3-1. パルスオキシメータとは
血中酸素飽和度を測定には、パルスオキシメータという医療機器を使います。
パルスオキシメータは、指先に光を当てることで、その光の通過量(血液の赤さ)から血中酸素飽和度を測定する仕組みとなっています。
採血などは一切必要なく、痛みもありません。
血中酸素飽和度と同時に脈拍数(1分間に心臓が動く回数)も測定できます。
3-2. 正しい測定手順
正確な数値を測るために、測定の手順を確認しておきましょう。
1.測定前に数回、深呼吸をして、安静にします。
運動直後は血中酸素飽和度が一時的に変動することがあります。
2.指をセンサー部分の奥までしっかり差し込み、爪を上に向けます。
装着位置がずれると数値が不正確になりやすいです。
3.測定中は体を動かさず、じっとして10〜30秒待ちます。
動くと測定値がばらつくことがあります。
4.1回だけでなく、複数回測定して安定した数値を確認しましょう。
3-3. 測定時の注意点
パルスオキシメータは非常に便利ですが、以下のような場合には正確な数値が得られないことがあります。
・タバコを吸った直後
機器が正確に判断できず、実際よりも高い値が表示されることがあります。
・指先が冷たいとき
血流が悪くなり、正確に測れないことがあります。手を温めてから測定しましょう。
・マニキュアやジェルネイルをしているとき
光の通りを妨げるため、できるだけ装飾のない指で測定しましょう。
また、貧血の方の場合も注意が必要です。
貧血でヘモグロビン自体が少ない場合は、数値が正常に見えても、体に届く酸素の量が不足している場合があります。
体のだるさや息切れなど気になる症状がある場合は血液検査での確認をおすすめします。
3-4. スマートウォッチでの血中酸素飽和度測定について
最近では、一部のスマートウォッチに血中酸素濃度を測る機能が搭載されているものがあります。
しかし、スマートウォッチの測定機能は医療機器として国に認められていないものがほとんどであり、あくまでも健康管理の参考程度と捉えましょう。
体調に不安がある場合は、医療機器として認められたパルスオキシメータを使用し、医師に相談するようにしましょう。
【参考情報】『承認・認証されたパルスオキシメータについて』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/pulse_oximeter.html
4.血中酸素飽和度が低下する主な病気
血中酸素飽和度が低下する原因は、肺や心臓の病気など様々です。
自分や家族の体の状態を正しく把握するためにも、どのような病気が数値に影響するのかを知っておくことが大切です。
この章では、血中酸素飽和度低下に関わる代表的な病気について解説します
4-1. 肺炎
肺炎は、細菌やウイルスなどの病原体が肺に侵入し、炎症を引き起こす病気です。
原因となる病原体には、肺炎球菌・インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは異なる細菌です)・マイコプラズマ・クラミジアなどがあります。
主な症状としては、咳や痰、息苦しさなどがあげられます。
これらの原因によって肺に炎症が起きると、十分な酸素が体内に取り込めなくなり、その結果、血中酸素飽和度が低下します。
また、新型コロナウイルス感染症が重症化すると、肺炎に進行することがあります。
新型コロナウイルス感染症由来の肺炎では、血中酸素飽和度が低くても息苦しさを感じないことがあり、これを「ハッピー・ハイポキシア(Happy Hypoxia)」と呼びます。
この場合、自覚症状がないため、重症化に気づかず急変するリスクが高いので、十分な注意が必要です。
【参考情報】『The mystery of the pandemic’s ‘happy hypoxia’』Science Magazine
https://www.science.org/doi/10.1126/science.368.6490.455
4-2. 喘息
喘息が重症化すると、体内に十分な酸素が行き渡らなくなり、血中酸素飽和度が低下することがあります。
そのため、日頃から血中酸素飽和度を確認しておくことが大切です。
喘息の重症度と血中酸素飽和度の目安として、小発作(軽症)では96%以上を維持、中発作では91〜95%、大発作では90%以下に低下し、唇や爪が青紫色になるチアノーゼが現れることがあります。
4-3. COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、別名「タバコ病」ともいわれ、喫煙者に多い病気です。
ニコチンなどの化学物質を長期間吸い続けることで、肺に炎症が起きて硬くなり、咳や痰、息切れなどが生じる事があります。
炎症によってダメージを受けた肺胞は、回復が難しいとされており、次第に呼吸機能が低下し、血中酸素飽和度が保ちにくくなる場合があります。
4-4. 心不全
心不全は、心臓のポンプとしての働きが弱まり、全身に必要な血液をうまく送り出せなくなった状態のことをいいます。
血液は、心臓の動きによって全身に巡りますが、心臓の働きが低下すると血液の流れが滞り、酸素を十分に運べなくなってしまいます。
その結果、血中酸素飽和度が下がる場合があります。
【参考情報】『心不全』国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/heart-failure/
4-5. 睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に何度も呼吸が止まっては再開することを繰り返す病気です。
呼吸が止まるたびに血中酸素飽和度が90%以下にまで低下することもあり、これが繰り返されると、高血圧・脈の乱れ(不整脈)・心不全・脳卒中などの深刻な合併症につながるリスクがあります。
大きないびきや、日中の強い眠気などが気になる場合は、医療機関での検査をおすすめします。
5. 病院を受診する目安と日常の管理方法
血中酸素飽和度が低下したとき、「すぐに救急車を呼ぶべきか」「様子を見てよいか」の判断は、いざというときにとても重要です。
また、日頃からの管理習慣が早期発見につながります。ここでは、受診の目安と日常でできる管理方法についてご説明します。
5-1. すぐに救急車(119番)を呼ぶべきとき
以下のような場合は、迷わず救急車を呼んでください。
・血中酸素飽和度が90%未満になった(特に息苦しさ・チアノーゼ・意識障害を伴う場合)
・顔・唇・指先が青紫色になった(チアノーゼ)
・意識がぼんやりしている、または呼びかけへの反応がない
・呼吸が非常に速い・または止まっている
5-2. 早めに病院を受診すべき目安
2章でお伝えしたように、血中酸素飽和度が95%以下が続く場合、また自分の普段の数値よりも3〜4%低下した場合は、体内の酸素が不足しているサインかもしれません。
息苦しさがなくても数値が低下している場合は、病院で原因を調べてもらうことが大切です。
◆「息苦しい・呼吸がしにくいと感じたら」、呼吸器内科を受診しましょう>>
5-3. 持病がある方の日常的な血中酸素飽和度管理
慢性的な肺や心臓の病気がある患者さんは、普段から血中酸素飽和度が低い場合があります。
このような方は、「今の自分の数値が普段と比べてどう変化しているか」を把握しておくことが大切です。
測定するタイミングを毎日同じ時間帯に統一し、数値を記録しておく習慣をつけましょう。
また、症状が安定しているときの値と比較して、3〜4%以上の低下が続く場合はすぐにかかりつけ医に相談しましょう。
6. おわりに
血中酸素飽和度(SpO2)は、体に酸素が十分届いているかを示す大切なサインです。
パルスオキシメータを使って正しく測定し、自分の平常値を日頃から把握しておくことが早期発見につながります。
また、血中酸素飽和度の低下には、肺炎・COPD・喘息・心不全・睡眠時無呼吸症候群など様々な原因が隠れている可能性があります。
数値の低下や息苦しさを感じた際は、迷わず医療機関を受診しましょう。












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