風邪の初期症状と風邪かな?と思ったときの対処法

風邪は安静にしていれば治る病気ですが、「たかが風邪」と思っていつもと同じように過ごしていると、治りが遅くなったり、こじれたりすることがあります。
この記事では、風邪の初期症状と、風邪のひきはじめの頃にできる対処法を紹介します。症状が軽いうちに、早めの対策をして元気を取り戻しましょう。
目次
1.風邪とはどのような病気か
風邪とは、鼻やのどなど上気道の粘膜にウイルスが感染して起こる急性の炎症です。正式な名称は、「感冒」「風邪症候群」「急性上気道炎」などといいます。
原因となるウイルスは、ライノウイルスやRSウイルスなど200種類以上あるといわれています。
風邪の初期症状としては、以下のようなものがあります。さらに、発熱や頭痛などの症状が現れることもあります。
・くしゃみ
・鼻水
・鼻づまり
・のどの痛み
・咳
また、ウイルスが気管支に広がると気管支炎、肺に達すると肺炎になることがあります。子どもは風邪をきっかけに中耳炎を起こすことも多いです。
日本医師会によると、風邪の原因ウイルスにはそれぞれ特徴があります。
アデノウイルスはなかなか下がらない熱、ライノウイルスはひどく出る鼻水、RSウイルスは痰が絡んだゼコゼコとした咳といった特徴があります。
一般的にはまず水っぽい鼻水が出て、その後、熱が出ることが多く、症状は発症後2~3日でピークを迎え、1週間ほどで治まります。
【参考情報】『かぜのような症状が見られる時は』日本医師会
https://www.med.or.jp/clinic/sick2010_kaze.html
2.風邪のひきはじめのサイン
風邪のひきはじめには、以下のようなサインが現れることがあります。
2−1.寒気がする
急にゾクゾクっとした悪寒がして体が震えたり、厚着をしたり室温を上げても寒気が治まらないことがあります。
これは、体温を上げてウイルスと戦うために、体が筋肉を震わせることで起きる現象です。
【参考情報】『発熱のメカニズム』テルモ体温研究所
https://www.terumo-taion.jp/health/basic/article08.html
2−2.ボーっとする
頭がボーっとしたり、異常な眠気に襲われて、仕事や勉強に集中できなくなることがあります。
これは、免疫細胞から分泌されるサイトカインという物質の作用だと考えられています。
【参考情報】『Microbial Products and Cytokines in Sleep and Fever Regulation』NCBI
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29773024/
2−3.鼻やのどに違和感がある
鼻がムズムズしたり、のどがイガイガするような不快感を覚えることがあります。
妊娠初期にも、上記のような症状が出ることがあります。妊娠の可能性がある方は、風邪だと思い込んで市販薬を使うことがないように気をつけてください。赤ちゃんに良くない影響が出る恐れがあります。
2−4.倦怠感
風邪をひくと「体が重い」「だるい」などの倦怠感が生じやすくなります。
この倦怠感は、体がウイルスや細菌を排除しようとする防御反応の一環です。十分な休養を取ることで免疫の力を維持し、回復を早めることが大切です。
3.風邪ウイルスの体内侵入から症状発症まで
風邪を効果的に予防・治療するためには、ウイルスが体内でどのように活動するかを理解することが重要です。
ウイルス感染のプロセス 風邪ウイルスが体内に侵入すると、以下のような過程を経て症状が現れます。
1. 潜伏潜伏期(症状が現れる前): ウイルスが細胞内で増殖しますが、まだ自覚症状はありません
2. 発症期(1~2日): 免疫システムが反応し、初期症状が現れ始めます
3. ピーク期(2〜4日): 症状が最も強くなる時期です
風邪の感染力が最も強いのは、症状が出てから最初の1〜2日間です。この時期は他人への感染を防ぐため、マスクの着用や外出を控えることが重要です。
症状が弱くなっても、咳やくしゃみがある間は2〜3日間は他人にウイルスを移す可能性があるので注意してください。
【参考情報】『Cold Lifecycle』Verywell Health
https://www.verywellhealth.com/cold-lifecycle-5184284
4.風邪のひきはじめにしたいこと
風邪かな?と思ったら、なるべく仕事や家事の手を止めて体を休めましょう。「これくらいは大丈夫」と無理をすると、回復に時間がかかることがあります。
4−1.十分な睡眠
まずは十分に眠り、体力の回復に努めましょう。
睡眠中に分泌される成長ホルモンは、免疫細胞の活性化と組織の修復を促します。
特に深い睡眠(ノンレム睡眠)の時間が重要で、7〜8時間の質の良い睡眠を確保することで、ウイルスと戦う免疫システムをサポートすることができます。
症状が軽いと、ついテレビやゲームなどの娯楽に手が伸びてしまうかもしれませんが、なるべく余計なことはせず安静にしましょう。
【参考情報】『睡眠と免疫機能』 National library of medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3256323/
【参考情報】『睡眠と免疫システムの相互作用:炎症恒常性と疾患発症への影響』 National library of medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11559494/
4−2.体を温める
風邪のひきはじめは、体を温かくして熱を上げましょう。
発熱は体がウイルスと戦うために必要な反応なので、38℃くらいまでは無理に下げずに様子を見ます。汗をかきすぎるとかえって体が冷えるので、心地よい程度に温かくしてください。
熱が下がってきたら、薄着にして首の後ろや脇の下をタオルでくるんだ保冷剤などで冷やすといいでしょう。この場合も心地よい程度にし、不快なら冷やさなくても構いません。
【参考情報】『いつ冷やすどこ冷やす』大阪小児科医会
https://www.osk-pa.or.jp/child-care/cc2/20060901142.html
4−3.水分補給
発熱による脱水症状を防ぐため、こまめに水分を補給しましょう。
水分補給には、白湯、しょうが湯、はちみつレモン湯などが特に効果的です。しょうがには体を温める作用があり、はちみつには抗菌・抗ウイルス作用が期待できます。(ただし、1歳未満のお子さんには絶対に与えないでください。)
また、緑茶も抗ウイルス作用のあるカテキンが豊富で、うがいにも使用できるため一石二鳥です。
一日の水分摂取目安は、通常の1.5倍程度(約2〜2.5リットル)を心がけましょう。
高齢者の場合は、のどの渇きが感じづらく、脱水に気がつかないことがあるため、意識的に水分を摂るよう心掛けましょう。
栄養ドリンクやエナジードリンクは、薬との飲み合わせが悪い成分が含まれていることがあるので、風邪薬や咳止め薬などを服用しているときは避けた方が無難です。飲みたい人は、薬剤師に相談してから購入しましょう。
【参考情報】『ショウガ( Zingiber officinale)エキス含有飲料による女性の末梢皮膚表面温度上昇効果』 National library of medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6196930/
【参考情報】『蜂蜜:その薬効と抗菌作用』 National library of medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3609166/
4−4.部屋の加湿
乾燥した空気は、風邪で炎症を起こした鼻やのどの粘膜を刺激します。また、空気が乾燥するとウイルスが蔓延しやすくなるといわれています。加湿器や濡れタオルなどで部屋を加湿して、部屋の湿度を60%程度に保つようにしましょう。
体にウイルスなどの侵入を防ぐ目的はもちろん、鼻やのどの粘膜の保湿として、マスクを付けることも効果的です。
4−5.栄養補給
うどんやおかゆ、鍋物など、栄養があり消化がしやすいメニューがおすすめです。味噌汁やスープも水分と栄養が同時に摂れ、体も温まるので効率的です。
食欲がないときは食べなくてもよいですが、水分は忘れずに補給しましょう。
5.病院を受診する目安
ほとんどの風邪は、初期のうちに適切な対処をすれば、長くても10日程度で治ります。
しかし、小児や高齢者など体力が乏しい人や、過労やストレスで体力が落ちている人は、風邪で弱った体に、さらにウイルスや細菌が感染して、気管支炎や肺炎になることがあります。
特に高齢者は、肺炎になっても軽い風邪のような症状しか出ないことも多いので注意が必要です。
風邪がなかなか良くならず、以下のような症状があるときは、病院を受診しましょう。
・咳がひどくて眠れない
・咳がひどくて呼吸が苦しい
・咳が2週間以上続いている
・微熱が2週間以上続いている
新型コロナウイルス感染症も、風邪のような症状から始まることが多いです。コロナかもしれないと思ったときは、かかりつけ医に電話で相談するか、お住まいの市区町村のホームページから窓口を探して相談してください。
特に65歳以上の高齢者、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患など)がある方、妊娠している方は、軽い症状でも早めの受診を検討してください。
【参考情報】『新型コロナウイルス感染症に対する医療について』 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html
6.おわりに
寒気やだるさを感じ、風邪をひいたかも?と思ったときは、初期のうちに体を休めた方が早く回復に向かいます。
しかし、安静に過ごしているにもかかわらず、咳や発熱が続いているときは、風邪をきっかけに肺炎が引き起こされたり、風邪とよく似た別の病気にかかっている可能性があるので、病院を受診してください。

















