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お風呂に入ると喘息が悪化する?その原因と、心がけたい注意点

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年04月01日

お風呂に入ると、体が清潔になってリラックスできる反面、喘息の症状が悪化することがあります。

喘息の患者さんは、気道への刺激をできるだけ避ける必要がありますが、実は浴室の中にも刺激が潜んでいるのです。

この記事では、入浴が原因で喘息の症状が現れる原因を紹介し、できるだけ咳や息苦しさを引き起こさないようにする対策についてお伝えします。

1.喘息の症状が悪化する原因は?


喘息の人の気道は、慢性的な炎症が起こっているため、少しの刺激にも反応してしまいます。

◆「喘息の症状・検査・治療の基本情報」>>

例えば、ホコリやカビ、花粉などアレルギーを起こす物質(アレルゲン)や、急激な温度変化、空気の乾燥、香水やタバコの強い匂いなどが刺激となります。

これらの刺激を受けたり、吸い込んだりすると、喘息の発作が起こる恐れがあるので、なるべく刺激を避ける必要があります。

お風呂に入る時も、これらの刺激を最小限にするため、環境を整えましょう。

【参考情報】『喘息発作を引き起こす刺激』アストラゼネカ
https://www.naruhodo-zensoku.com/zensoku/causes.html

◆「喘息を悪化させる5つの要因とは?」>>

2.お風呂で症状が悪化する原因と対策

では、お風呂の中には、どのような原因があるのかを紹介し、対策もお伝えします。

2−1.カビ

カビがもっとも育ちやすい環境は、湿度が65%以上、温度が25~28度です。浴室は、どうしても湿気も温度も上がるので、カビを完全になくすことは難しいのが現実です。

また、お風呂には、カビにとって必要な栄養分である石けんカスや皮脂などもたくさんあるので、繁殖には好都合な環境です。

そのような環境で、喘息の人がお風呂に入ると、カビを吸うことでアレルギー反応が起こり、症状が悪化する恐れがあります。

◆「喘息とアレルギーの密接な関係とは?」>>

カビ対策として、お風呂はなるべくこまめに換気・掃除するよう心がけましょう。入浴後に、バスタブや壁、床の水分をふき取っておくと、湿気が溜まりにくくなるのでおすすめです。

カビの胞子は、お風呂の天井にもくっついています。1カ月に1回ほど、天井も掃除しておくと、カビ防止に効果的です。

カビが頑固で、自分で掃除しても取り除けない場合は、専門の業者に依頼するといいでしょう。

【参考情報】『カビ対策マニュアル 基礎編』文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/sonota/003/houkoku/08111918/002.htm

2−2.カビ取り剤


しつこいカビを落とすため、カビ取り剤を使うこともあるでしょう。しかし、このカビ取り剤が原因で、喘息の症状が現れることがあります。

カビ取り剤の成分には、塩素系のにおいが強いものがあります。そのにおいを吸い込むと、喘息の発作が引き起こされることがあります。

カビ取り剤を使う際は、十分な換気を行い、マスクを着けて掃除しましょう。また、一度に大量に使ったり、長時間使用することはやめましょう。

◆「喘息・アレルギーを悪化させない、カビと掃除の注意点」>>

2−3.入浴剤


入浴剤の中には、香りが強いものがあります。また、アレルギーを引き起こす成分が入っているものもあります。

喘息の人は、香りや特定の成分により、発作を引き起こしてしまう可能性があります。もし、どうしても入浴剤を使いたい場合は、無香料の製品や、刺激の少ないものを選ぶとよいでしょう。

2−4.湯気

お風呂の湯気を吸い込むと、炎症で過敏になった気道が刺激され、喘息の発作が起きることがあります

湯気を吸い込むことを防ぐのは難しいですが、吸入ステロイド薬をはじめとした喘息の治療を毎日続けることで、気道の状態を改善し、刺激に反応しにくい状態にしていきましょう。

◆「喘息治療のゴールと治療法」>>

◆「喘息治療に使う吸入薬の種類」について詳しく>>

2−5.リラックス

意外かもしれませんが、お風呂に入ってリラックスすると、喘息の悪化につながることがあります。

私たちの体は、自律神経によって、体温や代謝などのバランスが整えられています。

自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があり、交感神経が優位になると心身が活発になり、副交感神経が優位になると緊張が緩んできます。

【参考情報】『Autonomic Nervous System』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/body/23273-autonomic-nervous-system

入浴後は、副交感神経が優位となるためリラックスするのですが、副交感神経が優位になると、気道の筋肉も緩みます。

気道の筋肉が緩むと、気道は狭くなります。すると、喘息の発作が起こりやすい状態になるのです。

お風呂上りに発作が起きやすい方は、入浴は短時間で済ませ、長風呂は避けるようにするとよいでしょう。

2−6.温度差


冬場の寒い時期に、暖かい部屋から外に出ると、冷たい空気に刺激されて咳き込むことがあるように、お風呂場と脱衣所の寒暖差が大きいと、喘息の発作が引き起こされることがあります。

寒い時期は、脱衣所を暖かくしておくことで浴室との寒暖差を小さくし、湯冷めを防ぎましょう。

◆「喘息と、天気や気候の関係を解説します!」>>

3.入浴の前後に水分補給を

お風呂に入ると、体の中から水分が失われるため、自分では気づかなくても喉が渇いています。

喉が渇く、つまり気道が乾燥すると発作が起こりやすくなるので、入浴の前後には忘れずに水分を補給しましょう。

【参考情報】『「健康のため水を飲もう」推進運動』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html

◆「咳が止まらない時こそ乾燥に注意!」>>

4.おわりに

喘息の人がお風呂に入るにあたり、事前に対策を行うことで、体調の悪化を防ぐことができます。

しかし、発作で息苦しい時や、体調がよくないと感じた時や、無理に入浴せず、安静にしていましょう。

対策を行うとともに、毎日の服薬で症状をコントロールすることも必要です。

薬で症状を抑えつつ、喘息と上手く付き合いながら、お風呂の時間を楽しめるようにしていきましょう。

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