花粉症とはどのような病気か

執筆者: 三島 渉(医学博士、横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
呼吸器学会専門医/禁煙学会専門医/アレルギー学会専門医/内科学会認定医
医療法人社団ファミリーメディカル理事長

厚生労働省の発表によると、日本国民の29.8%以上が花粉症であるといわれています。毎年不快な症状に悩まされている人は、少しでも症状を改善したいと思っているでしょうし、今は問題なくても、「自分もいつか発症するのでは?」と不安な人もいるでしょう。まずはどのような病気なのか基本知識を身につけ、必要な対策を講じましょう。

1. 花粉症とは

花粉症とは、スギやヒノキなどの植物の花粉が鼻や目の粘膜に触れることによって、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ等のアレルギー症状を起こす病気です。

スギ花粉は2月~4月、ヒノキ花粉は3月~5月に多く飛散するので、その時期に症状が現れます。一日の中では、昼前から夕方にかけて多くなり、晴れて気温が高い日、風が強い日、雨上がりの翌日には特に多くなります。

スギやヒノキ以外にも、シラカンバ、ハンノキなどの木や、カモガヤ、ブタクサなどの植物で花粉症が引き起こされることがあります。その場合、春以外の季節でも症状が現れます。オリーブ栽培が盛んな瀬戸内地方では、オリーブによる花粉症も見られます。

2. 花粉症の症状

花粉症の症状が現れやすいのが、鼻と目です。

2-1. 鼻の症状

鼻の三大症状と言われるのは、くしゃみ、鼻水、鼻づまりです。風邪でも同じような症状が現れますが、熱がなく、鼻水が透明でサラサラしていて、症状が2週間以上続いていたら、花粉症の可能性が高いでしょう。

2-2. 目の症状

目の三大症状と言われるのは、目のかゆみ、目の充血、涙です。コンタクトレンズを着けていると、レンズに花粉がついてますます悪化するので、症状が現れたらメガネに切り替えましょう。

2-3. その他の症状

体がだるい、熱っぽい、イライラする、のどのかゆみ、皮膚のかゆみ、下痢などの症状が現れることがあります。

3. 花粉症の原因と理由

私たちの体には、細菌やウイルスのような異物から身を守る「免疫」という仕組みが備わっています。しかし食べ物や花粉など、もともとは体には害のないものが、免疫のシステムによって異物=敵とみなされると、敵を追い出そうとする仕組みがはたらいて、くしゃみやかゆみなどの症状が起こるのです。

このように、体を守るための免疫が、逆に体を傷つけてしまう反応を「アレルギー」といいます。花粉症もこのアレルギー反応の一種で、かゆみや炎症の原因となるヒスタミンという物質が細胞から大量に放出されることによって、不快な症状が引き起こされます。

しかしスギやヒノキは、昔からたくさん生えていたにもかかわらず、かつては花粉症で悩む人はほとんどいませんでした。なぜ最近になって、こんなに花粉症の人が増えたのでしょうか。考えられる理由は大きく4つあります。

3-1. スギの植林

戦中・戦後に、資材や燃料として山や森の木が伐採されたこと、そして、戦後の住宅建設などにより木材が不足したため、加工に便利なスギの木が大量に植林されました。その頃植えられたスギが開花の時期を迎え、花粉の量が増えていると考えられています。

3-2. 大気汚染の影響

車や工場から排出される物質で汚染された大気の中に含まれる微粒子が、花粉症の症状を出やすくしたり、症状を悪化させる作用を持つと考えられています。

花粉と結びついてスギ花粉の飛散量がほぼ同じで、自動車交通量の多い地域と少ない地域を比べたところ、交通量の多い地域の方がスギ花粉症患者が多いという報告もあります(*1)。
(*1) ディーゼル排気曝露がスギ花粉症様病態におよぼす影響
https://www.env.go.jp/chemi/report/h16-13/02_2_1.pdf

3-3. 食生活の欧米化

アレルギーの発症には、腸内環境が深くかかわっていいます。アレルギーを抑えるためには、私たちの腸内に住む「善玉菌」を増やし、腸内環境を整えることが大切です。

昔ながらの和食には、善玉菌を増やす食物繊維や発酵食品が豊富に含まれています。しかし現代は、食生活の欧米化やファストフードの普及により、毎日の食事で善玉菌を増やす機会が減っています。また、青魚に含まれるEPA・DHAなどのオメガ3系脂肪酸は アレルギー症状の改善に効果があるといわれていますが、現代人は昔に比べて青魚をあまり食べなくなったこともあり、このオメガ3系脂肪酸の摂取量が圧倒的に不足しています。

3-4. 住宅環境の変化によるダニ・カビの影響

ダニのフンや死骸、カビを含んだハウスダストが体の中に入ると、免疫のしくみがそれらを異物と判断して、花粉症をはじめとするアレルギー症状を起こしやすくなります。

昔の日本の家は、窓や戸を締め切っていても多少のスキマがある木造住宅でしたが、現代の家は気密性が高くなっています。また、冷暖房の普及で、季節を問わず快適な温度が保たれていることから、家の中でダニやカビが繁殖しやすくなっています。

3-5. その他

アレルギーの症状は自律神経と深くかかわっているため、ストレスや不規則な生活も、花粉症を招く一因となります。睡眠不足や過労で、自律神経のしくみがうまく機能しなくなると、免疫力が低下して、花粉症をはじめとしたアレルギーの症状が発症しやすくなるのです。

4. おわりに

今後、地球温暖化の影響で、花粉の飛散数がさらに増加すると予想されています。メガネやマスクなどで花粉を防止したり、こまめに掃除をすることで家の中の花粉を減らすとともに、できるだけ疲れやストレスを溜めない生活を心掛けましょう。既に花粉症に悩まされている人は、症状が軽いうちから治療を受けると有効なので、耳鼻科や眼科、アレルギー科のある病院を受診してみましょう。

参考文献

監修者プロフィール

三島 渉 (医学博士、横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
呼吸器学会専門医/内科学会認定医/禁煙学会専門医/アレルギー学会専門医
医療法人社団ファミリーメディカル理事長

平成9年横浜市立大学医学部卒業。呼吸器内科専門医として活躍する一方、現代医学の限界を痛感。医学研究による解決を目指し、横浜市立大学大学院入学。分子細胞生物学を専門として、がん転移に関連する細胞機能の研究を行い、平成17年医学博士取得。

その後再び臨床の現場に戻るも、症状がひどくなってからでないと来院してもらえない医療の世界の構造的な問題を認識。

「症状がまだ軽いうちに気軽にかかってもらえるクリニックをつくろう」と決意し、平成19年横浜市南区に呼吸器内科専門の「上六ツ川内科クリニック」を開院。病気が進行すると改善が難しい呼吸疾患の早期発見・早期治療の重要性を伝えている。

現在、毎月500人以上の喘息患者と100名以上のCOPD患者を診療。禁煙治療にも力を注ぎ、呼吸器疾患で苦しむ人のいない社会の実現を目指している。年間約100名の禁煙指導を行い、84.6%の禁煙成功率を達成している。

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