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花粉症で咳が出る原因は?止まらない咳の対処法を解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年02月05日

花粉症の時期になると、くしゃみや鼻水だけでなく、咳が止まらなくて困っていませんか?

実は、花粉症による咳は数週間から数ヶ月続くこともあり、夜間や早朝に特に悪化しやすいという特徴があります。

咳で眠れない、仕事や勉強に集中できないなど、日常生活に大きな影響を与えることも少なくありません。

この記事では、花粉症で咳が出る原因や風邪との見分け方、そして効果的な対処法について、わかりやすく解説します。

1.花粉症とはどんな病気か


花粉症は、スギやヒノキなどの植物の花粉が原因で起こるアレルギー疾患です。

くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状が代表的ですが、人によっては咳やのどの痛み、皮膚のかゆみなど、さまざまな症状が現れます。

まずは、花粉症の基本的な症状や原因となる花粉の種類について確認しましょう。

1ー1.花粉症の主な症状

花粉症の代表的な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどですが、これらに加えて咳やのどの痛み、皮膚のかゆみ、頭痛、微熱、倦怠感などが現れることもあります。

厚生労働省の調査によると、症状が強いときは、鼻で吸収されなかったスギの抗原成分が鼻からのどへ流れ、のどのかゆみ、咳を引き起こし、鼻づまりによる頭痛、鼻やのどの炎症反応による微熱、だるさなどの症状に悩まされることが報告されています。

◆「花粉症」についてもっとくわしく>>

【参考情報】”Symptoms of Allergic Rhinitis” by American College of Allergy, Asthma & Immunology
https://acaai.org/allergies/allergic-conditions/hay-fever/

1ー2.原因となる主な花粉と飛散時期

 
【春~初夏】  
・スギ:2月〜4月頃  
・ヒノキ:3月〜5月頃  
・シラカンバ(白樺):4月〜6月頃

【初夏〜夏】  
・イネ:5月〜7月頃

【秋】   
・ブタクサ:7月〜10月頃  
・ヨモギ:8月〜10月頃    
・カナムグラ:8月〜9月頃 

特にスギは全国に広く分布し、花粉の飛散距離も長いことから、症状に悩む方が多くみられます。

そのため、花粉症と言えば「春」というイメージがあるのではないでしょうか。

しかし、初夏はシラカンバやイネ、秋にはブタクサやヨモギ、カナムグラなどが飛散するため、これらの花粉に反応する方は、夏や秋に症状が現れやすくなります。

秋の花粉(ブタクサ、ヨモギなど)でも咳の症状が強く出ることがあり、特にイネ科のアレルギー症状では、粘膜に強く症状が出るため、アレルギー性鼻炎から咳やのどの違和感を伴うといった呼吸器の症状が酷くなる場合もあります。

【参考情報】『主な花粉と飛散時期』環境省
https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/manual/2_chpt2.pdf

2.なぜ花粉に反応して咳が出るのか


花粉が体内に入ると、免疫システムが過剰に反応し、咳として症状が現れることがあります。

ここでは、なぜ花粉が咳を引き起こすのか、そのメカニズムと特徴などについて解説します。

2-1.花粉でアレルギーの症状が引き起こされる仕組み

私たちの体は、ウイルスや細菌など体内に侵入してきた異物を「敵」と判断すると、免疫の仕組みにより、これらの異物を攻撃して体外へ排除しようとします。

この免疫の仕組みが、本来は体に害のない花粉を誤って「敵」と判断すると、アレルギーの症状が現れます。

【参考情報】”Allergies” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/allergies/symptoms-causes/syc-20351497

ある特定の植物の花粉が体内に侵入して粘膜に付着し、敵だと判断されると、体内ではIgE抗体と呼ばれる物質が生成され、アレルギーに関与しているマスト細胞と結びつきます。

IgE抗体とマスト細胞が結びついた後に、敵だと認定された植物の花粉が再び体内に侵入すると、今度は花粉とIgE抗体が結びつき、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が放出されます。

それらの物質に刺激され、咳やくしゃみ、鼻水などのアレルギー症状が引き起こされるのです。

2-2.花粉による咳の特徴

花粉症による咳の最も大きな特徴は、痰が絡まない乾いた咳です。

のどにイガイガ感があり、激しく咳き込むことがあります。

花粉症の咳は花粉の飛散が続く限り症状が継続するため、数週間から数ヶ月続くことがあります。

また、特に夜間や早朝に悪化しやすく、これは「モーニングアタック」と呼ばれます。

さらに、花粉症の場合は鼻や目にも症状が現れます。

特に目のかゆみや充血があれば、風邪ではなく花粉症の可能性が高いでしょう。

◆「アレルギー」が原因の咳について>>

2-3.後鼻漏(こうびろう)による咳

花粉症で咳が出る大きな原因の一つに後鼻漏があります。

これは、鼻水がのどの奥に流れ込んでしまう状態のことです。

花粉に反応して鼻水が大量に出ると、鼻とのどはつながっているため、鼻水がのどの奥に流れ込んでしまいます。

すると、のどに溜まった鼻水を外に出そうとして、咳が引き起こされるのです。

花粉症による後鼻漏が原因の場合、咳止めを使用しても効果は得られにくいことがあります。

抗ヒスタミン薬点鼻ステロイド薬を服用して、鼻の炎症や症状を抑えることが重要です。

【参考情報】”Postnasal Drip” by American Academy of Otolaryngology–Head and Neck Surgery
https://www.enthealth.org/conditions/post-nasal-drip/

2-4.口呼吸によって症状が現れる可能性

鼻水や鼻づまりの症状が出ると、空気の通り道が塞がれてしまいます。

それにより、口での呼吸になってしまいます。

鼻には外の空気を加湿・加温する機能や、空気清浄機のような機能があり、異物をキャッチして気管に直接届くのを防いでいます。

しかし、口呼吸になると、直接気管に乾いた空気や冷たい空気が入り込み、のどが乾燥することはもちろん、花粉がのどの粘膜に付着しやすい状態となります。

このように、口呼吸によりのどの粘膜に花粉が付着することで、アレルギー反応としてくしゃみや咳などの症状があらわれる可能性が出てきます。

【参考情報】『花粉症で咳が止まらない…辛い咳の原因と止めるための対処法』慢性咳嗽ナビ
https://mansei-gaisou.jp/column/228/

【参考情報】”Mouth Breathing” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/22734-mouth-breathing

3.花粉症の検査


特定の季節に限って咳が出る場合は、花粉症の疑いもありますが、他の呼吸器疾患やアレルギー疾患の可能性もあります。

まずは以下のような検査を行い、本当に花粉が原因で咳が出ているのかどうか、また、何の植物の花粉が原因なのかを調べる必要があります。

【参考情報】”Allergy Testing” by American College of Allergy, Asthma & Immunology
https://acaai.org/allergies/allergy-testing/

3-1.血液検査

血液検査では、採血をして血液に含まれるIgE抗体を調べます。

IgE抗体には種類があるため、花粉と結びつくIgE抗体の量が多ければ花粉症と診断されます。

血液検査で花粉の種類も特定できるため、どの時期に症状が出るのか、花粉の種類を推測し検査します。

3-2.鼻水の検査


鼻水の検査には、以下の2種類があります。

・鼻汁好酸球検査(びじゅうこうさんきゅうけんさ)
鼻水を綿棒で軽くぬぐって採取し、好酸球(アレルギー反応に関わる白血球)の数を調べます。

鼻の奥まで綿棒を入れないため、痛みはほとんどありません。

アレルギー性の鼻炎かどうかを判定できますが、何のアレルギーかまでは特定できません。

・鼻粘膜誘発検査(びねんまくゆうはつけんさ)
疑われる花粉エキスをしみ込ませたろ紙を鼻の粘膜に貼り付け、10~15分後に反応を観察します。

くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が出れば、その花粉に対するアレルギーがあると判断されます。

血液検査だけでは分からない実際のアレルギー反応を確認できる検査です。

3-3.皮膚の検査

アレルゲンを皮膚に入れたり付けたりして、反応を調べる検査です。

プリックテストやスクラッチテストなどの種類があります。

プリックテストは、皮膚にアレルゲンを滴下し、専用の器具でごく浅く皮膚に小さな穴を開けて反応を見る検査です。

一方、スクラッチテストは、皮膚にアレルゲンを付けたうえで、皮膚表面を軽く引っかいて反応を確認する検査です。

◆「花粉症の検査」についてもっとくわしく>>

4.花粉症の治療


咳が花粉症によるものだとわかったら、以下のような治療を行います。

ここでは、花粉症による咳に対する主な治療法について説明します。

4-1.対症療法

花粉症による咳の治療には、症状に合わせて様々な薬剤が使用されます。

主な治療薬は以下の通りです。

【内服薬】
●抗ヒスタミン薬 アレグラデザレックス
アレルギー症状の原因となるヒスタミンの働きを抑え、くしゃみ、鼻水、咳などの症状を緩和します。

現在では、眠気が少ない第二世代抗ヒスタミン薬が主に処方されています。

●ロイコトリエン受容体拮抗薬 オノン
気道の炎症や収縮を引き起こすロイコトリエンの働きを抑え、鼻づまりや咳の症状を改善します。

喘息を併発している方にも有効です。

【注射薬】
●抗IgE抗体薬 ゾレア
重症の花粉症と診断された場合に使用される注射薬です。

アレルギー反応の根本原因となるIgE抗体の働きを抑えます。

ただし、治療を受けるには年齢や体重、血液中の総IgE値など複数の条件を満たす必要があります。

なお、ドラッグストアなどで販売されている花粉症用の市販薬を使用する場合は、咳止め薬と一緒に服用することは避けましょう。

どちらにも同じ成分が含まれていることがあるので、その成分を摂り過ぎて、副作用が強く出る可能性があります。

◆「花粉症の市販薬」について>>

4-2.アレルゲン免疫療法

現在は、花粉症を完全に治す根治療法は確立されていませんが、アレルゲン免疫療法により、症状を長期間抑え、体質を改善できる可能性があります。

スギ花粉に対しては、シダキュアなどの薬剤を用いたアレルゲン免疫療法で症状を軽減し、アレルギー反応を抑える体質に変えていくことが期待できます。

アレルゲン免疫療法では、アレルゲンとなるスギ花粉のエキスを少量ずつ投与し続けることで、体がスギ花粉に過剰に反応しなくなる状態を目指します。

※現在、日本で保険適用されている花粉症の免疫療法はスギ花粉のみとなっています。

アレルゲン免疫療法には、以下の2つの方法があります。
●皮下免疫療法:医療機関で定期的に注射を受ける方法
●舌下免疫療法:自宅で毎日薬を服用する方法(通院頻度が少なく、日常生活への負担が軽い)

治療期間は個人差がありますが、通常3~5年程度続ける必要があるとされています。

治療がうまくいった場合、約1年後から効果を実感し始める方が多く、その効果は治療終了後も数年間続くことが報告されています。

5.花粉症による咳を緩和・予防する方法


花粉症による咳を和らげるには、薬の服用以外にもできることがあります。

ここでは、自分でできる咳の緩和と予防法などについて紹介します。

5-1.部屋の加湿

空気が乾燥しているとのども乾燥するので、のどの粘膜が刺激に弱くなり、花粉に反応しやすくなります。

咳を抑えるためには、加湿器などで部屋の湿度を40%~60%程度に保ってのどを潤すのが有効です。

また、加湿器から放出される水分が部屋の中を漂っている花粉に付着すると、水分の重みで花粉が床に落ちるので、体内に入りにくくなります。

部屋の加湿をおこない、適度な湿度を保つことは、のどの粘膜のバリア機能を正常に保ちます。

また、花粉は湿気を含むと重くなる性質があるため、雨の日などは飛散量が減少すると言われています。

雨の次の日に花粉症の症状が落ち着いていると言われるのはこのためです。

5-2.花粉の除去

部屋に入ってきた花粉は、掃除などで除去しましょう。

特に、花粉が入りやすい玄関や窓の周辺、花粉が付着しやすいソファなどの布製品をこまめに掃除すると、花粉を減らすことができます。

また、帰宅時には衣服や髪の毛に付着した花粉を払い落とすことで、室内への花粉の持ち込みを減らせます。

帰宅後、すぐにシャワーを浴びるのも効果的です。

シャワーが浴びられない場合でも、手洗いやうがい、顔を洗うことで、皮膚や粘膜に付着した花粉を落とせます。

外に洗濯物を干している場合、洗濯物にも花粉が付着します。

取り込む際にはしっかり払うようにしましょう。

室内の掃除をこまめにおこなうことも、花粉症による症状の予防や緩和に効果的です。

【参考情報】『花粉症対策 スギ花粉症について日常生活でできること』環境省・厚生労働省
https://www.env.go.jp/content/000194676.pdf

5-3.マスクなどで花粉を防ぐ


花粉が飛散している時期はマスクを着用し、できるだけ花粉を吸い込まないようにしましょう。

マスクは顔にフィットするものを選ぶことが大切です。

横に隙間があると、そこから花粉が入ってしまいます。

衛生面を考えて、使い捨てタイプを毎日交換することをおすすめします。

また、マスクは呼気でのどが潤うため、のどの乾燥対策にも有効です。

特に夜間にマスクをして寝ることで、咳の悪化を抑えることが期待できます。

5-4.花粉飛散情報の活用

花粉の飛散情報をチェックし、花粉が多い日は外出を控えることが推奨されます。

スギ花粉は、飛散が始まって7日から10日後くらいに花粉の量が多くなり、その後4週間程度が花粉の多い時期にあたります。

特に花粉が多くなる日の特徴は以下の通りです。
・晴れて、気温が高い日
・空気が乾燥して、風が強い日
・雨上がりの翌日や気温の高い日が2〜3日続いたあと

また、花粉は昼前後と夕方に多く飛散します。

外出時の服装は花粉が付着しにくいものを選び、マスク、メガネなどで花粉を防ぎましょう。

◆「花粉症対策」についてもっとくわしく>>

6.おわりに

花粉症の症状のひとつに「咳」があります。

花粉症の時期に咳がつらいときや、市販薬で効果が感じられないときは、呼吸器内科やアレルギー科で相談しましょう。

花粉症の薬は、花粉が飛散する前から服用しておくと効果が期待できます。

毎年花粉のシーズンに咳がひどくなる方は、症状が出始める頃から対策しておきましょう。

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