気管支炎と喘息のちがいとは?

気管支炎も喘息も、主な症状は「咳」です。咳が出ている場合、その原因が気管支炎によるものか、喘息によるものか、あるいは他の疾患によるものかは、専門医による診察や検査によって判断されます。
しかし、患者さん自身が咳の原因を見極めることは非常に難しく、軽い風邪だと思って放置していた咳が、徐々に悪化し、息苦しさや呼吸困難に悩まされるようになるケースも少なくありません。
この記事では、気管支炎と喘息の違いや症状の特徴、診断のための検査方法、治療のポイント、日常生活での注意点などについて、わかりやすく解説します。咳が長引いている人は、ぜひ最後までお読みください。
目次
1.気管支炎とはどんな病気か?
気管支炎は、気管支の内側に炎症が起きている状態です。炎症が短期間で起こるものを「急性気管支炎」、長く続くものを「慢性気管支炎」と呼びます。
1-1.急性気管支炎
急性気管支炎は、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染が原因で起こることが多く、咳や痰、軽い熱などの症状が出ます。
急性気管支炎は、風邪と症状が似ているため、初期の段階では見分けるのが難しいことがあります。また、風邪の症状が気管支まで広がると、風邪と急性気管支炎が同時に起こることがあります。
急性気管支炎の多くはウイルス感染が原因であるため、特別な治療薬は必要なく、自然に回復するのを待つ対症療法が中心です。
【参考情報】『Bronchitis』Cleveland linic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/3993-bronchitis
1-2.慢性気管支炎
慢性気管支炎は、長年タバコを吸ったり、空気の悪い場所で過ごしたりすることで、気管支が慢性的に炎症を起こす状態です。
咳や痰が数か月以上続き、症状が進むとCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など他の呼吸器の病気と関係することもあります。
急性気管支炎は、特別な治療がなくても症状が改善することがほとんどですが、慢性気管支炎は、薬物治療と禁煙が基本となります。
【参考情報】『Chronic Bronchitis』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/chronicbronchitis.html
2.喘息とはどんな病気か?
喘息は、空気の通り道である気道が慢性的に炎症を起こし、さまざまな刺激に対して過敏になる病気です。
炎症のために気道が狭くなり、息がしにくくなったり、咳や喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー・ゼイゼイという呼吸音)が出たりすることがあります。
喘息の発作は、花粉やハウスダストなどのアレルギー物質や冷たい空気、運動、タバコの煙、ストレスなど、さまざまな要因で引き起こされることがあります。
症状の程度や発作の頻度は人によって異なり、軽い症状がたまに出る人もいれば、日常生活に支障を感じるほど頻繁に発作が起きる人もいます。
喘息は完治する病気ではありませんが、吸入ステロイド薬を中心とした治療と生活管理で症状をコントロールし、発作を予防することが可能です。
一方、未治療のまま放っておくと、気道が硬く狭くなって元の状態に戻らなくなり(気道のリモデリング)、難治化していきます。
【参考情報】『Asthma』CDC
https://www.cdc.gov/asthma/index.html
3.喘息と急性気管支炎の違い
喘息と急性気管支炎は、どちらも気道に影響を与える病気ですが、原因や症状の特徴、経過が異なります。
3-1.原因の違い
急性気管支炎は、主にウイルス感染によって一時的に気管支が炎症を起こす病気です。
風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症に伴って発症することが多く、まれに細菌感染が関与する場合もあります。
どちらの場合も感染が原因であり、人から人へうつる可能性があります。
一方、喘息は気道の慢性的な炎症により、ダニ、花粉、ペットの毛、冷たい空気、運動、ストレスなどのさまざまな刺激に過敏に反応する状態です。
感染症ではないため、人にうつることはありません。また、遺伝やアレルギー体質も発症の要因として関与しています。
3-2.症状の違い
急性気管支炎では、咳や痰のほかに、軽い発熱やのどの痛み、倦怠感などが伴うことがあります。症状は通常、数日から2週間程度で改善します。
痰の色や量は経過によって変化し、細菌感染が加わると濃い黄色や緑色の痰が出ることもあります。
喘息では、咳や痰に加え、呼吸時のヒューヒュー・ゼイゼイという音(喘鳴)、息切れ、胸の圧迫感などが特徴です。咳は夜間や早朝に出やすく、発作として突然現れることがあります。
咳は夜間から早朝にかけて出ることが多く、2週間以上続きます。
3-3. 経過と管理の違い
急性気管支炎は、健康な人であれば自然に回復することが多く、治療は咳や痰、発熱など症状を和らげる対症療法が中心です。
喘息は慢性的な病気であるため、長期的な管理が求められます。吸入ステロイド薬や気管支拡張薬などの薬物療法に加え、アレルゲンの回避や生活環境の工夫、定期的な通院などが重要です。
4.喘息と慢性気管支炎の違い
喘息と慢性気管支炎は、どちらも気道に影響を与える慢性の病気ですが、原因は大きく違います。
4-1. 原因の違い
慢性気管支炎は、長年の喫煙や大気汚染、粉じん、化学物質などの有害物質の吸入によって気管支が慢性的に炎症を起こす病気です。
免疫やアレルギー体質とは関係が薄いことが多く、年齢とともに症状が進行する場合があります。
喘息は、咳や痰に加え、呼吸時のヒューヒュー音(喘鳴)や息切れ、胸の圧迫感などが起こります。発作がない時はほとんど症状がない場合があります。
4-2. 症状の違い
慢性気管支炎は、咳や痰が長期間(数か月以上)続き、慢性的に呼吸機能が低下することがあります。症状が進むと、COPD(慢性閉塞性肺疾患)に移行することがあります。
喘息は、咳や痰に加え、呼吸時のヒューヒュー音(喘鳴)や息切れ、胸の圧迫感などが起こります。発作がない時はほとんど症状がない場合があります。
4-3. 経過と管理の違い
慢性気管支炎の治療は、生活習慣や環境の改善が基本です。特に禁煙は最も重要な対策であり、症状進行を防ぐポイントです。
薬物療法としては、気道の炎症を抑える吸入薬や去痰薬、必要に応じて抗菌薬が使われることがあります。
喘息の治療は、発作の予防と症状のコントロールが中心で、吸入薬による治療が基本です。生活環境の管理やアレルゲン回避も大切です。
5.気管支炎と喘息の違いを見分ける診察と検査
気管支炎と喘息はどちらも咳を主な症状とする病気ですが、原因や治療法が異なるため、正確に見分けることが重要です。
5-1.問診・診察
まず、医師は症状の経過や生活習慣、既往歴を詳しく聞き取ります。
咳の出るタイミング(夜間か昼間か)、痰の有無、息切れや喘鳴の有無、発作の頻度などを確認することで、気管支炎か喘息かの目安をつけます。
5-2.胸部画像検査
X線(レントゲン)やCT検査で肺や気道の状態、炎症や感染の有無を確認します。
<急性気管支炎>
肺や気道に軽い影や炎症の跡が見られることがあります。これらはウイルスや細菌による一時的な炎症によるもので、症状が改善すれば消失することが多いです。
<慢性気管支炎>
肺や気道に慢性的な変化(気道壁の肥厚、過膨張など)が見られることがあります。
<喘息>
気道の慢性的な炎症があっても、画像に明確な異常が現れないことが多いです。重症の喘息では、気道壁の肥厚や気管支の拡張などが見られることがあります。
5-3.血液検査
感染症が疑われる場合、血液を採取して白血球数や炎症マーカーの測定などが行われます。
<急性気管支炎>
感染に伴い、白血球数や炎症マーカー(CRPなど)が一時的に上昇することがあります。これらの数値は、症状が改善すれば徐々に正常値に戻ることが多いです。
【参考情報】『C-Reactive Protein (CRP) Test』Cleveland linic
https://my.clevelandclinic.org/health/diagnostics/23056-c-reactive-protein-crp-test
<慢性気管支炎>
慢性的な炎症が続く場合、白血球数や炎症マーカーは軽度に上昇することがありますが、急性の感染ほど顕著ではありません
<喘息>
喘息では、通常は白血球数やCRPなどの一般的な炎症マーカーはほとんど正常です。ただし、アレルギー性の炎症が関与する場合は、好酸球の増加やIgEの上昇など、特定の血液成分に変化が見られることがあります。
5-4.呼吸機能検査
肺や気道の状態を調べる検査です。呼気NO検査、スパイロメトリー、モストグラフなどの種類があり、主に喘息やCOPDの疑いがある場合に行います。
<急性気管支炎>
急性気管支炎では、一時的に気道に炎症が起きるため、呼吸が少ししづらくなることがあります。しかし、多くの場合は症状が治まると呼吸機能も元に戻ります。
<慢性気管支炎>
呼吸機能の検査では、息を吸ったり吐いたりする力や空気の通りの悪さがわかり、病気の進み具合やCOPDへのリスクを確認することができます。
<喘息>
喘息では、発作が起きると呼吸がしづらくなり、検査でも気道の狭さがわかります
6.おわりに
喘息と気管支炎は、どちらも咳や呼吸のしづらさを伴う病気ですが、原因や症状、治療法に違いがあります。
病気を正しく理解することで、症状の悪化を防ぎ、適切な治療や生活管理につなげていきましょう。
気になる症状がある場合は自己判断せず、早めに医師の診察を受けることが大切です。また、呼吸機能検査や画像検査、血液検査などを活用することで、病気のタイプや状態をより正確に把握することができます。
日常生活では、禁煙やストレス管理、適度な運動なども症状のコントロールに役立ちます。病気と上手に付き合うために、正しい知識と医師のサポートをもとに、無理のない生活習慣を整えていきましょう。
【参考資料】「病気とくすり2020』南山堂
http://www.nanzando.com/journals/yakkyoku/917113.php











