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喉の乾燥対策完全ガイド~原因・症状・予防法と受診の目安を徹底解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年11月04日

空気が乾燥する季節になると「朝起きると喉がカラカラ」「エアコンをつけると咳が出やすい」といった不快感を覚える人は少なくありません。

のど飴や加湿器でしのいでいても、なかなか改善しない喉の乾燥が続いているなら、単なる不快感にとどまらず、健康に影響するサインである場合があります。

この記事では、生活の中で気をつけたい原因や対策に加え、放置するとどんな医学的リスクにつながるのかを解説していきます。さらに、症状が続くときの受診の目安についても紹介します。

1.喉が乾燥する原因


喉の乾燥は、季節に関係なく一年中起こることがあります。主な原因は次の通りです。


<空気の乾燥>
エアコンや扇風機の風にさらされると、喉の水分が奪われやすくなります。

<水分不足>
水分をあまり摂らないと、喉の粘膜が乾きやすくなります。

<口呼吸>
鼻づまりや習慣で口呼吸をしていると、息をするたびに喉の水分が失われます。

<タバコやアルコール>
タバコの煙やお酒は、喉の粘膜を乾かす原因になります。

<年齢による変化>
年を重ねると唾液の分泌が減り、喉が乾きやすくなります。

<薬の影響>
抗アレルギー薬や血圧の薬などの副作用で喉が乾くことがあります。

<生活習慣や仕事の影響>
長時間空調の効いた部屋で過ごした場合や、教師など声をよく使う仕事をしている人は、喉が乾きやすくなります。


特に秋から冬にかけては、空気の湿度が下がり、暖房の使用も重なるため、喉の乾燥が一層強まりやすくなります。

【参考情報】『Why is Your Throat Dry or Scratchy and Ways to Find Relief』University of Utah Health
https://healthcare.utah.edu/the-scope/health-library/all/2025/01/why-your-throat-dry-or-scratchy-and-ways-find-relief

2.喉の乾燥が引き起こす症状


喉が乾燥すると、ヒリヒリ感やつかえ感、飲み込みにくさのほか、痛みや声のかすれ、咳といった症状が出やすくなります。

2-1.喉の乾燥が招く炎症と感染リスク

乾燥により、本来うるおっているはずの喉の粘膜が炎症を起こしやすくなると、細菌やウイルスが侵入しやすくなります。

その結果、風邪やインフルエンザといった感染症にかかるリスクが高まります。

また、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、アレルギー性鼻炎などの持病がある方は、症状が悪化して、咳や息苦しさにつながることもあります。

◆「喉がムズムズ・イガイガして咳が止まらないのはなぜ?」>>

2-2.喉の乾燥と呼吸器感染症

喉の乾燥による症状は、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの初期症状と似ていることがあります。

ただし、喉の乾燥そのものは必ずしも感染症の前兆とは限らず、空気の乾燥や口呼吸などの環境要因でも起こります。

感染症か単なる乾燥かを見分けるには、発熱・倦怠感など他の症状の有無や経過を観察することが大切です。

◆「呼吸器感染症の主な種類と予防法」>>

3.乾燥対策とケア方法


乾燥を防ぐためにできる簡単な対策には、以下のようなものがあります。

3-1.加湿器

加湿器は、室内の湿度を一定に保つことで、喉の乾燥を防ぐ効果があります。

特に冬場や空調の効いたオフィスでは、空気が乾燥しやすく、喉の粘膜の水分が失われやすいため、加湿器を使用することで快適な湿度を保つことが重要です。

理想的な室内湿度は50〜60%程度とされ、この範囲を維持することで喉の粘膜を潤し、乾燥による痛みや違和感、咳などの症状を軽減できます。

また、加湿器を使用する際は、タンクやフィルターの清掃を定期的に行うことで、カビや雑菌の繁殖を防ぎ、衛生的に使用することができます。

加湿器には、小型の卓上タイプから大型までさまざまなタイプがあり、部屋の広さや使用目的に合わせて選ぶと効果的です。

◆「加湿器を選ぶポイントと注意点」>>

3-2.マスク

マスクを着用することで、外部の乾燥した空気やほこり、花粉、微小な飛沫などから喉や口の粘膜を守ることができます。

特に冬場や乾燥した室内では、空気中の水分が少なくなるため喉が乾燥しやすく、炎症や咳の原因になりやすいですが、マスクをすることで呼吸時の水分を保持し、喉の潤いを保つ効果があります。

また、マスクは風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症の予防にも役立ちます。

◆「マスクの付け方と選び方」>>

3-3.のど飴・喉スプレー

のど飴や喉スプレーは、口や喉の潤いを補い、乾燥による不快感を和らげ、喉の保護に役立ちます。

のど飴にはハーブやはちみつ、メントールなどが含まれていることが多く、喉のイガイガを和らげたり、スッとした爽快感を感じたりするのに役立ちます。

のど飴には、お菓子の一種で唾液の分泌を促して喉を潤す「食品のど飴」と、咳を止めたり炎症を抑えたりする成分を含む「医薬品のど飴」があります。

医薬品のど飴は症状の緩和が期待できますが、食品のど飴ははっきりとした効果は期待できません。しかし、軽い喉の不快感をやわらげるには便利です。

喉スプレーは粘膜に直接作用するため、すぐにうるおいを感じやすく、外出先や仕事中でも手軽に使うことができます。

3-4.こまめな水分補給

常温の水やお茶を少量ずつこまめに飲むことで、喉の粘膜を潤し、乾燥による不快感や咳の予防に役立ちます。

喉の乾燥は風邪やインフルエンザなどの感染症のリスクを高める要因にもなるため、日常的に水分を補給することが重要です。

冷たい飲み物は一時的に喉を刺激する場合があるため、常温や温かい飲み物が望ましく、特に冬場や暖房で空気が乾燥している環境では効果的です。

また、水分だけでなく、緑茶や麦茶などには抗酸化作用や保湿効果がある成分も含まれるため、健康維持にもつながります。

水分は、喉が渇くと感じる前に定期的に少量ずつ飲むことを習慣化することで、粘膜を常に保護することができます。

3-5.室内環境の工夫

喉の乾燥を防ぐためには、室内環境を整えることも重要です。

例えば、部屋の換気を定期的に行うことで、空気の循環を保ち、湿度を適度に保つことができます。

暖房を使う際は、温度を上げすぎないように注意することが大切です。暖房の効いた室内は空気が乾燥しやすく、喉の粘膜の保護機能が低下する原因になります。

また、観葉植物を置くことで、自然な湿度を維持しやすくなります。植物は葉から水分を放出する蒸散作用により、室内の湿度を緩やかに上げる効果があります。

【参考情報】『植物の蒸散について』日本植物生理学会
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=4168

さらに加湿器を併用すると、より一定の湿度を保つことができ、乾燥による喉の痛みや咳を予防しやすくなります。

3-6.口呼吸の改善

口呼吸は喉の乾燥を引き起こしやすく、咳や喉の痛みの原因になることがあります。そのため、口呼吸の原因となる鼻づまりの対策を行うことが重要です。

具体的には、鼻うがいや生理食塩水による洗浄、点鼻薬の使用などで鼻腔を清潔に保ち、通りを良くすることが有効です。

また、寝ている間の口呼吸を防ぐために、横向きで寝る、口元を軽く閉じる工夫、マウスピースの使用なども乾燥予防に役立ちます。

◆「寝ている間に喉が渇くのはなぜ?」>>

3-7.睡眠環境の工夫

寝室の湿度を50〜60%に保つことは、睡眠中の喉や鼻の乾燥を防ぐうえで非常に効果的です。

加湿器を使用するほか、室内に濡れタオルを干す、観葉植物を置くなどの方法でも自然に湿度を維持できます。

湿度が適切に保たれると、喉や気道の粘膜が乾燥しにくくなり、夜間の咳や喉の痛みを予防しやすくなります。

また、暖房を使う場合は温度を上げすぎず、空気の循環を意識することで、過乾燥を防げます。

寝る前に十分な水分補給を行うことや、口呼吸を避けて鼻呼吸を意識することも、睡眠中の喉の保護につながります。

3-8.生活習慣・食事の工夫

喉の乾燥を防ぐためには、日常の生活習慣や食事内容にも注意が必要です。

辛い食べ物やアルコール、カフェインの過剰摂取は、体内の水分を失いやすくし、喉の粘膜を乾燥させる原因となります。

また、喫煙や刺激の強い食品も、喉への負担を増やすため控えることが望ましいです。

一方で、水分を多く含む野菜や果物、はちみつやスープなど、喉に優しい食品を積極的に摂ることは潤いを保つのに役立ちます。

規則正しい食事や十分な睡眠を確保することも、喉の健康維持に重要です。

さらに、適度な運動を取り入れることで血流が良くなり、喉や口腔内の保湿機能をサポートする効果も期待できます。

3-9.蒸気を利用する

お湯を入れた容器から出る蒸気を吸い込んだり、シャワーの蒸気を浴びたりすることで、喉や鼻の粘膜を直接潤すことができます。

蒸気は空気中の水分を増やすため、乾燥した環境でも喉の乾きや痛みを和らげる効果があります。また、蒸気吸入は鼻づまりの緩和にも有効で、口呼吸の改善にもつながります。

安全のため、熱湯を使う場合はやけどに注意し、顔を近づけすぎないようにすることが重要です。

3-10.口腔ケアの徹底

加齢により唾液の分泌量が減り、のどが渇きやすくなっている方は、口腔内を清潔に保ち、唾液の分泌を促しましょう。

舌や歯の手入れを丁寧に行うほか、口腔体操やガムを取り入れることで、唾液を出す習慣をつけることも効果的です。

4.受診が必要なサイン


喉の乾燥は多くの場合、一時的な環境要因で起こりますが、乾燥対策をしても改善しない場合や、咳や息苦しさなど別の症状も続く場合は、何らかの病気の可能性があります。

次のような症状がある場合は、悪化する前に医療機関の受診を検討してください。

4-1.症状が2週間以上続く

喉の痛みや違和感が2週間以上続く場合は、単なる乾燥や一時的な刺激だけではなく、感染症や慢性疾患が関わっている可能性があります。

例えば、細菌やウイルスによる咽頭炎・扁桃炎、あるいはアレルギー性の炎症が長引いているケースなどです。

また、慢性的な鼻炎や副鼻腔炎、喘息やCOPDなどの呼吸器疾患が背景にあることもあり、症状が自然に改善しない場合は注意が必要です。

◆「喘息と副鼻腔炎の関係」>>

また、自己免疫疾患であるシェーグレン症候群でも、唾液の分泌が減るため、喉の渇きや乾燥感が強くなります。

【参考情報】『シェーグレン症候群(指定難病53)』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/111

4-2.強い痛みや飲み込みにくさ

喉の痛みや飲み込みにくさが強く、食事や水分の摂取が困難になる場合は、感染症や炎症性疾患のサインである可能性があります。

例えば、細菌やウイルスによる咽頭炎や扁桃炎では、喉の腫れや赤み、膿の付着などが伴い、強い痛みを感じることがあります。

また、食事や水分を飲み込むときに痛みが増す場合は、咽頭や扁桃の炎症が進行しているサインのこともあります。

4-3.発熱や倦怠感を伴う

喉の乾燥や痛みに加えて、発熱や強い倦怠感がある場合は、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの感染症が原因である可能性があります。

◆「止まらない咳、喉の痛み…ほんとうに風邪?」>>

これらの症状は、体がウイルスや細菌と戦っているサインであり、放置すると症状が悪化することがあります。

また、発熱や倦怠感が長引く場合や、急に体調が悪化する場合は、肺炎や気管支炎など重篤な合併症が隠れていることもあります。

特に高齢者や基礎疾患のある人は症状が重く出やすいため、早めに医療機関での診察や検査を受けることが重要です。

◆「65歳になったら知っておきたい肺炎の知識と予防」>>

4-4.咳や痰が長引く、呼吸がしにくい

喉の乾燥に加えて、咳や痰が長期間続いたり、呼吸がしにくいと感じる場合は、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、気管支炎などの呼吸器疾患が関与している可能性があります。

◆「喘息」についてくわしく>>

◆「COPD」についてくわしく>>

こうした症状は、単なる乾燥による一時的な咳とは異なり、気道の炎症や粘膜の腫れ、分泌物の増加によって起こります。

特に痰が黄色や緑色に変化したり、咳が夜間や運動後に悪化する場合は、呼吸器疾患の進行や感染症の合併が疑われます。

◆「痰がからみ、咳が止まらない時に考えられる呼吸器の病気」>>

4-5.声のかすれが続く

声のかすれが2週間以上続く場合は、単なる喉の乾燥や一時的な疲労だけでなく、喉頭や声帯の異常が原因である可能性があります。

例えば、声帯の炎症(声帯炎)やポリープ、結節などがあると、声のかすれや出しにくさが長引くことがあります。

【参考情報】『声帯炎』徳島県医師会
https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/915-2014-02-25-02-06-16

また、咳や喉の違和感を伴う場合は、慢性的な炎症や感染症が背景にあることも考えられますし、喫煙やアレルギー、胃酸の逆流(胃食道逆流症)が影響していることもあります。

◆「胃食道逆流症」についてくわしく>>

4-6.口内や喉にしこり、腫れ、白い斑点がある

口内や喉にしこり、腫れ、白い斑点などが見られる場合は、感染症だけでなく、腫瘍などの重大な疾患が隠れている可能性があります。

例えば、細菌やウイルスによる扁桃炎や口内炎では白い膿や斑点ができることがありますが、これが長引いたり、しこりが硬く大きくなる場合は、悪性腫瘍の初期症状の可能性も否定できません。

また、腫れやしこりが片側だけに見られる場合や、痛みがなくても違和感が続く場合も注意が必要です。

5.喉の乾燥に関するよくある質問

Q1. 喉の乾燥は季節要因以外でも起こりますか?
A1.ストレスや緊張、長時間の会話やカラオケなども、喉の乾燥を引き起こす原因になります。

◆「カラオケで咳が出るのはなぜ?」>>

Q2. 就寝中に喉が乾燥しやすいのはなぜですか?
A2. 就寝中は唾液の分泌が減り、口呼吸をしているとさらに乾燥が進みます。また、暖房やエアコンで室内の湿度が低い場合も喉が乾きやすくなります。

Q3. 喉の乾燥は口臭の原因になりますか?
A3. 唾液が減って喉や口内が乾燥すると、細菌が増えやすくなり口臭の原因になることがあります。水分補給や口腔ケアで予防が可能です。

6.おわりに

喉の乾燥は、季節や環境、生活習慣などさまざまな要因で起こりますが、加湿器やマスク、水分補給、のど飴や喉スプレーなどの対策を組み合わせることで、日常生活の中でも十分に予防・改善することができます。

一方で、乾燥対策を行っても症状が改善しない場合や、咳・痛み・発熱・声のかすれなどが長引く場合は、感染症や慢性的な疾患の可能性もあります。こうした場合は自己判断せず、早めに医療機関で相談することが大切です。

日々の工夫と適切な受診を組み合わせることで、喉の健康を守り、快適な生活を維持しましょう。

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