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睡眠時無呼吸症候群の治療で耳鳴りやめまいが改善?メニエール病との関連とは

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年05月08日

睡眠時無呼吸症候群とメニエール病には、関連性があることが指摘されています。

メニエール病による耳鳴りやめまいに悩む患者の中に、睡眠時無呼吸症候群を併発しているケースが報告されており、さらに睡眠時無呼吸症候群を治療することで、めまいや耳鳴りが改善したという例も見られます。

この記事では、この二つの病気がどのように関連しているのか、また共通して見られる生活習慣について詳しく解説します。

1.睡眠時無呼吸症候群とメニエール病の関係


近年の研究で、睡眠時無呼吸症候群とメニエール病の関連性が報告されています。

1-1.睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まったり、弱くなったりする病気です。具体的には、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や呼吸が浅くなる状態(低呼吸)が、一晩のうちに何度も起こります。

最も多いタイプが、肥満などが原因となる閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)です。睡眠中に喉の筋肉がゆるんで気道が狭くなり、空気の通りが悪くなることで呼吸が止まります。このとき、大きないびきを伴うことが多いのが特徴です。

◆「いびきの原因は肥満?」>>

この病気により呼吸が止まると体内の酸素が不足し、脳が覚醒反応を起こして眠りが浅くなります。本人が気づかなくても、これが一晩に何十回、重症の場合には何百回も繰り返されます。

<主な症状>

 ・大きないびき

 ・夜間に何度も目が覚める

 ・起床時の頭痛やだるさ

 ・日中の強い眠気や集中力の低下

睡眠時無呼吸症候群を放置すると、慢性的な低酸素状態や睡眠不足により、高血圧・心疾患・脳卒中などのリスクが高まります。また、日中の眠気が原因で事故につながる危険性もあります。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっとくわしく>>

1-2.メニエール病とはどのような病気か

メニエール病は、内耳の異常によって激しいめまいを繰り返す病気です。

内耳には音を感じる機能とバランスを保つ機能がありますが、ここにリンパ液が過剰にたまる(内リンパ水腫)ことで働きが乱れ、さまざまな症状が引き起こされると考えられています。

最も特徴的な症状は、突然始まる激しい回転性のめまいで、数十分から数時間続きます。めまいと同時に、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。

また、以下のような耳の症状が現れることも多いです。

 ・耳鳴り(ジー、ゴーという低い音)

 ・耳の詰まった感じ(耳閉感)

 ・聞こえにくさ(難聴)

これらの症状は発作的に繰り返し起こり、回数を重ねるうちに聴力が少しずつ低下していくこともあります。

原因はまだ完全には解明されていませんが、ストレス・疲労・睡眠不足・自律神経の乱れなどが発症に関係していると考えられています。

【参考情報】『メニエール病』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=24#menieru

1-3.二つの病気の関連性

メニエール病では、めまいや耳鳴りが続くことにより、不眠や不安、抑うつ症状を伴うことがあり、睡眠薬や抗不安薬が使用される場合があります。

これらの薬の一部には筋肉をゆるめる作用があり、睡眠中の気道を狭くすることで、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を悪化させる可能性が指摘されています。

◆「睡眠時無呼吸症候群でも使える睡眠薬とは?」>>

また、睡眠中の低酸素状態が、内耳の血流や前庭機能に影響を与える可能性も示唆されています。

【参考情報】『睡眠障害が内耳に及ぼす影響』中山明峰
http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/igak.dir/P115-121_nakayama.pdf

睡眠時無呼吸症候群とメニエール病の併発を報告する研究もありますが、その頻度や因果関係についてはまだ明確な結論が出ていません。

メニエール病の発症・悪化との関係については、さらなる研究が待たれるところです。
【参考情報】『Obstructive sleep apnoea syndrome (OSAS): effects on the vestibular system』NCBI
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3146317/

2.睡眠時無呼吸症候群とメニエール病の共通点


睡眠時無呼吸症候群とメニエール病の患者さんには、生活習慣や健康状態においていくつか共通点がみられることがあります。

2-1.睡眠障害がみられることがある

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸が繰り返し妨げられるため、深い眠りが得られません。

自分では「眠れている」と感じていても、実際には睡眠が細かく分断されており、日中に強い眠気や熟睡感のなさとして現れます。

◆「昼間の眠気が耐えられないなら、睡眠時無呼吸症候群を疑いましょう」>>

一方、メニエール病でも、耳鳴りやめまい、あるいは「また発作が起きるのでは」という不安から、寝つきが悪くなったり夜中に目が覚めやすくなったりすることがあります。

このように原因は異なりますが、睡眠の質が低下するという点は両者に共通しています。睡眠の質の低下はさらなる症状の悪化や日常生活への支障につながるため、両方の病気において重要な管理ポイントといえます。

2-2.飲酒や喫煙で症状が悪化する可能性がある

睡眠時無呼吸症候群では、アルコールの摂取により上気道の筋肉がゆるみ、気道が狭くなることで無呼吸が起こりやすくなります。

また、喫煙は気道に慢性的な炎症を引き起こし、気道のむくみや狭窄を助長することが知られています。

◆「タバコで睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まる理由」>>

メニエール病でも、飲酒や喫煙がめまい発作に関与する可能性が指摘されています。

アルコールは体液バランスや自律神経に影響を与えることがあり、症状悪化につながる場合があります。

また、喫煙はニコチンによる血流低下や酸化ストレスなどを介して、内耳機能へ悪影響を及ぼす可能性が考えられています。

【参考情報】『Smoking Is Positively Related and Alcohol Consumption Is Negatively Related to an Increased Risk of Meniere’s Disease』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9457180/

2-3.過労やストレスの影響を受けることがある.

睡眠時無呼吸症候群の主な原因は肥満や気道の構造にありますが、過労やストレスによって睡眠の質が落ちると、無呼吸の影響がより強く出たり、日中の症状が悪化したりすることがあります。

◆「睡眠時無呼吸症候群とストレスの関係」について詳しく>>

一方、メニエール病でも、過労や精神的なストレスが発作の引き金になることはよく知られています。ストレスなどで自律神経のバランスが乱れると内耳の状態に影響し、めまいや耳鳴りが起きやすくなると考えられています。

このように、身体的・精神的な負担は両方の病気の症状悪化に関わっている可能性があります。十分な休養とストレスへの対処を意識することが、症状のコントロールにつながります。

2-4.うつ症状や不安との関連がみられることがある


睡眠時無呼吸症候群では、慢性的な睡眠不足や低酸素状態の影響により、集中力の低下や意欲の低下がみられ、うつ症状や不安を伴うことがあります。そして、これらの精神症状が適切な治療を行うことで改善するケースも報告されています。

◆「睡眠時無呼吸症候群とうつ病との関連」についてくわしく>>

メニエール病でも、めまいや耳鳴りといった症状が長期間続くことで、日常生活に支障が出たり、発作への不安が強くなったりすることがあります。その結果、抑うつ状態や不安障害につながることがあります。

いずれの病気においても、身体症状と心理的ストレスが相互に影響し合うため、必要に応じて心身両面からのサポートが重要になります。

3.睡眠時無呼吸症候群の治療で耳鳴りやめまいは改善する?


睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に低酸素状態や睡眠の分断が繰り返されることで、自律神経の乱れや血流障害が起こると考えられています。これらは、内耳の機能にも影響を与える可能性があります。

そのため、睡眠時無呼吸症候群を適切に治療することで、耳鳴りやめまいなどの症状が改善するケースも報告されています。

【参考情報】『A Pilot Study on the Efficacy of Continuous Positive Airway Pressure on the Manifestations of Ménière’s Disease in Patients with Concomitant Obstructive Sleep Apnea Syndrome』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26094927/

特に、CPAP治療によって睡眠中の低酸素状態が改善すると、睡眠の質や全身状態の改善につながる場合があります。

◆「CPAP」について詳しく>>

また、睡眠不足や強い眠気、疲労感が軽減することで、めまいや耳鳴りによる不調を感じにくくなることもあります。

ただし、耳鳴りやめまいの原因はさまざまであり、睡眠時無呼吸症候群の治療だけで症状が必ず改善するとは言い切れないため、耳鼻科での診察や治療を並行して受けることが大切です。

4.おわりに

耳鳴りやめまいは、内耳の病気だけでなく、睡眠時無呼吸症候群のような睡眠障害が関係している場合もあります。

また、耳鼻科で治療を続けていても症状の改善が乏しい場合には、背景に睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性も考えられます。

耳鳴りやめまいに加え、いびきや日中の強い眠気、起床時の頭痛などの症状があるなら、睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができる病院に、一度相談してみましょう。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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