お風呂で喘息が悪化する原因と入浴時のポイント

喘息をお持ちの方の中には、「お風呂に入ると咳が出る」「入浴後に息苦しくなる」といった経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、入浴が原因で喘息の症状が現れる原因を紹介し、できるだけ咳や息苦しさを引き起こさないようにする対策と、子どもや高齢者への入浴サポートについてお伝えします。
1.喘息の症状が悪化する原因は?
喘息は、気道が慢性的に炎症を起こし、様々な刺激に対して過敏に反応する病気です。
日常生活の中には、喘息の症状を悪化させる要因が数多く存在します。
お風呂もその一つであり、複数の要因が重なることで症状が悪化しやすくなります。
まずは、喘息が悪化する基本的な原因について理解しておきましょう。
【参考情報】”What Is Asthma?” by National Heart, Lung, and Blood Institute
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma
1-1. 気道を刺激する物質と環境要因
喘息の方の気道は、ダニやハウスダスト、花粉、カビなどのアレルゲンに敏感に反応します。
さらに、タバコの煙や排気ガス、香水、芳香剤、塗料などの化学物質も気道を刺激し、炎症を引き起こす原因と言われています。
日常生活で何気なく使用している製品や、避けられない大気汚染が喘息症状を悪化させることがあるため、自分にとっての刺激物質を把握し、できる限り避ける工夫が必要です。
1-2. 急激な温度変化による気道への影響
暖かい室内から寒い屋外へ移動したときや、冷たい空気を急に吸い込んだときに、喘息症状が悪化することがありますが、これは急激な温度変化によって気道が刺激され、気管支が収縮するためです。
特に冬場の朝晩や、エアコンの効いた室内と外気温の差が大きい夏場は注意が必要となります。
温度差による刺激を最小限にするため、マスクの着用や室温調整などの対策が効果的でしょう。
1-3. 脱水と気道の乾燥
体内の水分が不足すると、気道の粘膜も乾燥しやすくなり、喘息症状が悪化する原因となります。
気道が乾燥すると粘液が濃くなり、気道が狭くなりやすい状態になるだけでなく、刺激に対する防御機能も低下しやすくなります。
特に乾燥する季節や、水分摂取が不足しがちな日常生活では、意識的な水分補給と室内の加湿が喘息管理において重要なポイントと言えるでしょう。
【参考情報】”Asthma and Dehydration” by Asthma and Allergy Foundation of America
https://www.aafa.org/asthma-triggers/
2.お風呂で症状が悪化する具体的な原因と対策
1章では、喘息が悪化する基本的な原因を説明しました。
ここでは、お風呂場特有の問題点について、具体的な原因と対策方法を詳しく解説します。
2-1.カビ
カビがもっとも育ちやすい環境は、湿度が65%以上、温度が25~28℃です。浴室は、どうしても湿気も温度も上がるので、カビを完全になくすことは難しいのが現実です。
また、お風呂には、カビにとって必要な栄養分である石けんカスや皮脂などもたくさんあるので、繁殖には好都合な環境です。
そのような環境で、喘息の人がお風呂に入ると、カビを吸うことでアレルギー反応が起こり、症状が悪化する恐れがあります。
カビ対策として、お風呂はなるべくこまめに換気・掃除するよう心がけましょう。
入浴後に、バスタブや壁、床の水分をふき取っておくと、湿気が溜まりにくくなるのでおすすめです。
カビの胞子は、お風呂の天井にもくっついています。1カ月に1回ほど、天井も掃除しておくと、カビ防止に効果的です。
カビが頑固で、自分で掃除しても取り除けない場合は、専門の業者に依頼するのが安心です。
【参考情報】『カビ対策マニュアル 基礎編』文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/sonota/003/houkoku/08111918/002.htm
2-2.カビ取り剤
しつこいカビを落とすため、カビ取り剤を使うこともあるでしょう。
しかし、このカビ取り剤が原因で、喘息の症状が現れることがあります。
カビ取り剤の成分には、塩素系のにおいが強いものがあります。
そのにおいを吸い込むと、喘息の発作が引き起こされることがあります。
カビ取り剤を使う際は、十分な換気を行い、マスクを着けて掃除しましょう。
また、一度に大量に使ったり、長時間使用することはやめましょう。
◆「喘息・アレルギーを悪化させない、カビと掃除の注意点」>>
2-3.入浴剤
入浴剤の中には、香りが強いものがあります。
また、アレルギーを引き起こす成分が入っているものもあります。
喘息の方は、香りや特定の成分により、発作を引き起こしてしまう可能性があります。
入浴剤を使用する場合は、下記に気を付けると良いでしょう。
・無香料・無着色の入浴剤を選ぶ
・刺激の少ない、低アレルゲンの製品を選ぶ
・新しい入浴剤を試す際は、少量から始めて様子を見る
・パッケージに「敏感肌用」「低刺激」と表示されているものがおすすめ
・症状が悪化する場合は、入浴剤の使用を中止し、お湯だけで入浴する
2-4.適正な入浴温度と時間の設定
お風呂の湯気を吸い込むと、過敏になった気道が刺激され喘息発作が起きることがあります。
喘息の方は38〜40℃のぬるめのお湯に10〜15分程度浸かるのがおすすめです。
この温度帯はリラックス効果があるうえ、気道への過度な刺激を避けられます。
42℃以上の熱いお湯は体への負担が増し、高温多湿の湯気が気道を収縮させるリスクが高まる可能性があります。
サウナなど極端に高温の環境から急に冷たい空気にさらされることも、喘息発作の引き金となるため避けましょう。
【参考情報】『体があたたまり、元気に冬を過ごせる入浴法とは?』環境省
https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/warmbiz/article/action_detail_201909.html
3.小児喘息のお子様への入浴サポート
小児喘息のお子様がお風呂に入る際は、保護者による適切なサポートが欠かせません。
小さなお子様は自分の症状を正確に伝えられないことがあるため、保護者がよく観察し、安全に配慮することが大切です。
ここでは、入浴前の確認事項から入浴中の見守り方、お風呂上がりのケアまで、具体的なサポート方法を解説します。
3-1.入浴前の体調確認と準備
入浴前には、お子様の体調をしっかり確認しましょう。
咳や息苦しさがないか、呼吸の様子はいつもと変わらないか、顔色は良いかなどをチェックします。
咳が出ている場合や、普段より呼吸が速い場合は、入浴を控えるか、短時間のシャワーで済ませることを検討してください。
脱衣所と浴室を事前に温めておき、温度差を少なくすることも重要です。
お風呂の温度は大人よりもぬるめの38℃程度に設定し、お子様が快適に感じる温度に調整しましょう。
また、発作治療薬を浴室の近くに用意しておくと、万が一の時にすぐ対応できます。
【参考情報】”Managing Asthma Attacks in Children” by National Heart, Lung, and Blood Institute
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma/children
3-2.入浴中の見守りと声かけ
入浴中はお子様を一人にせず、必ず保護者が付き添いましょう。
浴室のドアを開けておくか、「お湯は熱すぎない?」「苦しくなったらすぐに教えてね」とこまめに声をかけて様子を確認します。
「苦しい」「疲れた」と訴えた場合はすぐに入浴を中止してください。
万が一、咳が激しくなったり息苦しさを訴えたりした場合は、すぐに浴槽から出して発作治療薬を使用し、症状が改善しなければ速やかに医療機関に連絡しましょう。
入浴時間は5〜10分程度と短めにし、タイマーで管理するのも効果的です。
3-3.お風呂上がりのケアと観察
お風呂から上がったら、すぐに体と髪をしっかり拭き、温かい服を着せて湯冷めを防ぎましょう。
髪はタオルで拭くかドライヤーで乾かします。
その後、コップ1杯程度の常温または温かい麦茶や白湯で水分補給をさせます。
冷たい飲み物は気道を刺激するため避けてください。
入浴後もしばらく様子を観察し、咳や呼吸の状態を確認しましょう。
【参考情報】”Daily Care for a Child with Asthma” by Asthma and Allergy Foundation of America
https://www.aafa.org/asthma-in-children/
4.高齢の喘息患者の方への入浴サポート
高齢の喘息患者の方の場合、喘息の症状に加えて、ヒートショックや転倒のリスクも高まるため、より慎重なサポートが必要です。
また、高齢者は自分で症状の変化に気づきにくいこともあるため、家族の注意深い観察と適切なサポートが重要です。
ここでは、安全な入浴環境の整備から、入浴中の見守り、緊急時の対応まで、具体的なサポート方法を解説します。
4-1.安全な入浴環境の整備
高齢の喘息患者の方が安全に入浴できるよう、まずは環境を整えることが大切なポイントです。
特に、高齢者の方はヒートショックに注意が必要となります。
以下の点に気を付けながら、無理なく安全に入浴できるよう対策しましょう。
・脱衣所と浴室を十分に温めておき、温度差を最小限にする。
・暖房器具を使用する場合は、18~20℃程度を目安にする。
・お風呂の温度は38~40℃のぬるめに設定する。
・入浴時間は10~15分程度とし、長風呂にならないよう注意する。
また、発作治療薬を浴室の近くに用意し、緊急連絡先を見やすい場所に貼っておくことも重要です。
【参考情報】”Preventing Bathroom Falls in Older Adults” by National Institute on Aging
https://www.nia.nih.gov/health/falls-and-falls-prevention/falls-and-fractures-older-adults-causes-and-prevention
4-2.入浴前後の体調確認と付き添い
入浴前には、お子様の場合と同じように「咳は出ていない?」「息苦しさはない?」と声をかけて体調を確認し、体調が優れない場合はシャワーで済ませるか入浴を控えましょう。
入浴中は家族が近くにいて、5分おきに「大丈夫?」と声をかけます。
浴室のドアを少し開けておくと、異変にすぐ気づけます。
高齢者は症状の変化に気づきにくいため、返事が遅い、声が小さいなどいつもと違う様子があれば、すぐに確認しましょう。
【参考情報】”Asthma Management for Seniors” by American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/asthma/living-with-asthma
4-3.緊急時の対応と日頃の準備
入浴中の喘息発作に備え、発作治療薬を浴室近くに常備し、使い方を家族全員が理解しておきましょう。
かかりつけ医や救急の連絡先も浴室近くに貼っておくと安心です。
入浴後は立ちくらみを起こしやすいため、ゆっくり浴槽から出るようサポートし、脱衣所への移動も付き添いましょう。
お風呂上がりはすぐに体を拭いて温かい服を着せ、水分補給を促します。その後も咳や息苦しさがないか様子を観察してください。
【参考情報】『高齢者の事故』消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20241219/
5.入浴が難しい時の清潔ケア
喘息の症状が悪化している時や、体調が優れない時には、無理に入浴する必要はありません。
入浴以外にも、体を清潔に保つ方法はいくつもあります。
ここでは、入浴の代わりに活用できる清潔保持の方法について、具体的にご紹介します。
体調に合わせて、これらの方法を上手に取り入れましょう。
5-1.部分浴で体を清潔に保つ
部分浴とは、体の一部分だけをお湯で洗う方法で、足浴(足湯)や手浴など体への負担が少なく気軽に行えるのが特徴です。
洗面器やバケツにぬるめのお湯(38~40℃程度)を入れ、足首や手首まで10~15分程度浸けるだけで、血行が良くなりリラックス効果も得られます。
喘息の症状で全身浴が難しい時でも、気道への負担が少なく安心です。
部分浴の後は、しっかりと水分を拭き取り、保湿クリームを塗って皮膚の乾燥を防ぎましょう。
また、陰部など特に清潔を保ちたい部分だけをぬるめのお湯で優しく洗う方法も有効です。
【参考情報】『体調を崩しやすい季節に試してほしい部分浴』大樹生命
https://www.taiju-life.co.jp/joyful/health/066/
5-2.体を拭く
入浴ができない時は、タオルをぬるま湯(40℃前後)で濡らして絞り、体を優しく拭きましょう。
特に首や脇の下、背中など汗をかきやすい部分は念入りに行い、拭いた後は乾いたタオルで水分を取り除きます。
体を拭く際は室温を22~24℃程度に保ち、拭く部分以外は覆って一部分ずつ進めると体が冷えません。
市販の体拭きシートは、メントール不使用のものを選ぶと安心です。
5-3.ドライシャンプーと頭皮ケア
入浴ができない時は、水を使わずに髪を清潔に保てる「ドライシャンプー」が便利です。
パウダー、スプレー、フォーム、シートなど様々なタイプがあり、無香料や低刺激のものを選ぶと喘息の方でも安心です。
強い香りの製品は気道を刺激する可能性があるため避けましょう。
ドライシャンプーがない場合は、蒸しタオルで頭皮を優しく拭き、その後ブラッシングすることで汚れや皮脂を取り除けます。
6.おわりに
喘息のある方でも、原因を理解し、環境や入浴方法を工夫することで、お風呂の時間を安心して過ごしやすくなります。
一方で、症状が強い時や体調が悪い時は、無理をしない判断も大切です。
日々の治療と生活の工夫を続けながら、喘息と上手に付き合っていきましょう。













