いびきの原因は鼻?鼻といびきの関係・改善方法を解説
・最近いびきがうるさいと家族に言われた
・朝起きると喉がカラカラ
──それ、もしかすると鼻づまりが原因かもしれません。
鼻といびきには深い関係があり、鼻のトラブルを改善することで、いびきの軽減や睡眠の質の向上が期待できます。
この記事では、医師の視点から、いびきと鼻の関係やその対策についてわかりやすく解説します。
目次
1.鼻が原因でいびきをかく?その仕組みを解説
何らかの理由で鼻での呼吸が難しくなると、いびきや睡眠の質の低下など、さまざまな不調の原因になることがあります。
1-1.鼻が詰まると口呼吸になる
私たちは本来、鼻で呼吸をするように体が設計されています。しかし、鼻が詰まってしまうと、自然と口呼吸になってしまいます。
口呼吸は、空気がのどを直接通過するため、気道の粘膜の振動が起こりやすくなり、いびきが出やすくなるのです。
特に、寝ている間は筋肉がゆるみ、口が開きやすくなるため、鼻づまりによる口呼吸がいびきの原因になるケースが非常に多いといえます。
1-2.口呼吸といびきの深い関係
口呼吸をすると、舌が喉の奥に落ち込みやすくなります。この状態では気道が狭まり、空気の流れが乱れることで、粘膜や周辺組織が振動していびきが発生します。
また、口の中が乾燥することで、喉の粘膜が炎症を起こしやすくなり、いびきの悪化を招くこともあります。つまり、口呼吸はいびきを慢性化させる大きな要因なのです。
◆「口呼吸がいびきにつながる理由と予防のためにできること」>>
1-3.鼻呼吸ができないと起きる他の問題
鼻づまりによる口呼吸は、いびきだけでなく睡眠の質にも影響を与えます。口呼吸では十分に加湿・加温されない空気が直接気管に入るため、呼吸が浅くなりやすく、睡眠が浅くなったり途中で目が覚めたりする原因になります。
また、起床時の口の乾きや喉の違和感、日中の眠気なども、口呼吸による悪影響と考えられます。これらの症状がある人は、いびきだけでなく「鼻の通り」にも注目すべきかもしれません。
2.いびきを悪化させる鼻のトラブルとは?
いびきの原因となる鼻の不調には、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症、ポリープなどさまざまな病気が関係しています。
2-1.アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、花粉やハウスダストなどのアレルゲンによって鼻の粘膜が炎症を起こす疾患です。くしゃみや鼻水に加えて、慢性的な鼻づまりが続くことが多く、夜間の口呼吸やいびきの原因になります。
特に花粉の飛散時期やホコリの多い環境にいると症状が悪化しやすく、睡眠時の呼吸を妨げる要因となります。市販薬で抑えきれない場合は、病院での診断と治療が効果的です。
◆「花粉症治療に用いる抗アレルギー薬・クラリチンの特徴と効果、副作用」>>
2-2.副鼻腔炎
副鼻腔炎は、鼻の周囲にある空洞(副鼻腔)に膿がたまって炎症が起こっている状態です。急性のものは風邪の後などに一時的に起こりますが、慢性化すると長期間にわたって鼻づまりが続くため、いびきの原因となることがあります。
副鼻腔炎による鼻づまりは、口呼吸やいびきだけでなく、頭痛や顔の重だるさ、においが分かりにくくなるなど、日常生活にもさまざまな影響を及ぼします。
【参考情報】『Sinusitis』Johns Hopkins Medicine
https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/sinusitis
2-3.鼻中隔湾曲症
鼻の中には左右の鼻腔を分ける「鼻中隔(びちゅうかく)」という仕切りがありますが、これが曲がっている状態を鼻中隔湾曲症と呼びます。
先天的なものや外傷によって起こり、片方または両方の鼻の通りが悪くなることで、慢性的な鼻づまりやいびきの原因となることがあります。湾曲の程度が強い場合は、手術による矯正が検討されます。
【参考情報】『Deviated septum』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/deviated-septum/symptoms-causes/syc-20351710
2-4.ポリープ(鼻茸)や腫瘍など
鼻腔内にできる良性のポリープ(鼻茸)や、まれに悪性腫瘍が鼻づまりの原因となることがあります。特にポリープは慢性副鼻腔炎に合併することが多く、鼻孔を物理的にふさぐため、いびきや口呼吸を引き起こします。
小さなポリープでも鼻の通りに影響を与えることがあり、CTや内視鏡による検査で正確な診断が必要です。必要に応じて手術で除去することが可能です。
【参考情報】『Nasal Polyps』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/15250-nasal-polyps
3.鼻づまりによるいびきのセルフチェック方法
いびきには、主に「鼻いびき」と「喉いびき」の2種類があります。自分のいびきがどちらのタイプかを知ることで、対策の方向性も見えてきます。
3-1.いびきの種類(鼻いびき vs 喉いびき)
鼻いびきは、鼻づまりによって空気の通りが悪くなることで起こるもので、ブーブーといった音が特徴です。
一方、喉いびきは、舌や軟口蓋が喉の奥に落ち込み、気道をふさぐことで生じ、ゴーゴーという音になることが多いです。
3-2.寝ている時の口の開き方でチェック
就寝中に口が開いているかどうかは、鼻呼吸ができているかの目安になるので、家族に観察してもらうとよいでしょう。
あるいは、起床時に口が乾いていたり、喉がイガイガしていたりする場合は、口呼吸になっている可能性が高いといえます。
3-3.録音アプリや睡眠トラッカーの活用法
最近では、スマートフォンの録音アプリや、睡眠時の身体の状態を記録する睡眠トラッカーを使って、就寝中のいびきを記録・分析することが可能です。
これらの機器により、音のパターンや発生時間帯を確認することで、鼻づまりによるいびきかどうかを推測する手がかりになります。
特に、寝始めや寝返りの後に強いいびきが確認される場合は、鼻の通りが関係している可能性が高いため、セルフチェック後は医師への相談を検討しましょう。
4.鼻の通りを改善していびきを防ぐ方法
鼻づまりによるいびきを軽減するには、市販薬や鼻うがい、寝姿勢の工夫、生活習慣の見直しなど、日常でできる対策が有効です。
正しい方法を知り、無理なく続けることが改善の鍵となります。
4-1.市販薬や点鼻薬の使い方と注意点
鼻づまりによるいびきを軽減するために、市販の点鼻薬や抗アレルギー薬を使う方法があります。
血管収縮剤入りの点鼻薬は即効性があり、一時的に鼻の通りを改善しますが、使いすぎると「薬剤性鼻炎」を引き起こすことがあるため注意が必要です。
【参考情報】『Rhinitis Medicamentosa』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/23393-rhinitis-medicamentosa
使用は1週間以内を目安とし、症状が続くようであれば医師の診察を受けることが推奨されます。長期的な対策としては、抗アレルギー薬やステロイド点鼻薬の継続使用が有効な場合もあります。
4-2.鼻うがい・スチーム吸入などのホームケア
鼻のケアとして人気なのが「鼻うがい」です。生理食塩水を使って鼻の中を洗い流すことで、アレルゲンや分泌物を除去し、粘膜の炎症を和らげる効果が期待できます。就寝前や起床時に行うと効果的です。
また、スチーム吸入器やお風呂の蒸気を利用して鼻の粘膜を潤す方法もおすすめです。乾燥を防ぐことで、粘膜の機能を保ち、鼻の通りを改善しやすくなります。
4-3.枕の高さ・寝姿勢の工夫
睡眠時の姿勢もいびきに影響します。仰向けで寝ると舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道が狭くなるため、いびきが起こりやすくなります。
一方、横向きに寝ることで気道が確保されやすくなり、いびきの軽減につながることがあります。
また、枕の高さを調整して首の角度を安定させることも重要です。高すぎず、低すぎず、自然な姿勢を保てる枕を選ぶようにしましょう。
4-4.生活習慣の見直し
喫煙は鼻や喉の粘膜に悪影響を及ぼし、炎症や腫れの原因になります。いびきのリスクを減らすためにも、禁煙は有効な対策です。
また、体重が増えると喉まわりに脂肪がつき、気道が狭くなるため、肥満もいびきの一因となります。
◆「いびきの原因は肥満?改善法と危険なサインを知っておこう」>>
バランスの取れた食事と運動を心がけ、適正体重を維持することが、鼻の通りを良くし、いびきを予防するための基本となります。
5.医療機関でのいびきと鼻の治療法
生活習慣の見直しやホームケアを続けてもいびきが改善しない場合は、病院での診察や検査で原因を特定することが大切です。
5-1.病院でできる検査
いびきが続く場合や市販薬やセルフケアで改善しない場合は、病院を受診することが重要です。診察では、鼻腔の状態を確認する視診に加え、内視鏡検査やアレルギー検査、画像検査が行われることがあります。
これにより、鼻中隔湾曲やポリープの有無、炎症の状態などを詳しく把握でき、いびきの根本原因を特定する手がかりとなります。
5-2.治療
診断結果に応じて、適切な治療が提案されます。アレルギー性鼻炎であれば抗アレルギー薬の投与などが行われ、副鼻腔炎や鼻中隔湾曲症などの構造的な問題がある場合は手術が検討されます。
また、睡眠時に無呼吸を伴っている場合は、CPAP(シーパップ:経鼻的持続陽圧呼吸療法)という装置を使った治療が必要になることもあります。これにより気道を常に開いた状態に保ち、いびきや無呼吸を防ぐことができます。
5-3.睡眠時無呼吸症候群の可能性
強いいびきや呼吸の停止が見られる場合、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れている可能性もあります。
睡眠時無呼吸症候群はいびきだけでなく、日中の強い眠気や集中力の低下、高血圧や心疾患のリスクとも関連がある重大な疾患です。
呼吸器内科や耳鼻咽喉科、睡眠外来では、簡易検査や精密な終夜睡眠ポリグラフ検査によって診断が可能です。症状が気になる場合は早めに専門医に相談しましょう。
6.よくある質問(FAQ)
この章では、鼻といびきの関係について、よくある質問と答えを紹介します。
6-1・鼻いびきだけでも治療すべき?
はい、鼻いびきも放置すると睡眠の質を下げたり、口呼吸による喉の炎症を引き起こしたりするため、早めの対策が望ましいです。軽度であっても、日常生活に影響を及ぼしている場合は、医療機関への相談をおすすめします。
6-2.いびき防止グッズは効果ある?
いびき防止グッズ(鼻腔拡張テープ、マウスピース、枕など)は、症状や原因によって効果がある場合があります。ただし、一時的な対処にすぎないものもあるため、使用しても改善しない場合は、医療機関で根本的な原因を調べることが重要です。
6-3.子どものいびきと鼻づまりの関係は?
子どもはアデノイド肥大やアレルギー性鼻炎などが原因で、鼻づまりといびきが起こることがあります。放置すると発育や集中力に影響することもあるため、気になる場合は早めに小児科や耳鼻科を受診しましょう。
【参考情報】『扁桃炎・扁桃肥大・アデノイド肥大』大阪医療センター
https://osaka.hosp.go.jp/shinryo-navi/disease/e01.html
6-4.口呼吸を治せばいびきも治るの?
多くの場合、口呼吸が改善されるといびきも軽減されます。鼻の通りを良くし、就寝時に口が開かない工夫をすることで、自然と鼻呼吸に戻すことができ、いびきの予防や睡眠の質向上にもつながります。
7.おわりに
鼻が詰まることで口呼吸になり、気道が狭くなっていびきが発生しやすくなります。鼻の通りを良くすることは、いびき対策の第一歩です。
いびきに悩んでいる人は、市販薬や鼻うがい、生活習慣の見直し、寝姿勢の工夫など、できることから始めてみましょう。鼻呼吸がスムーズになることで、いびきだけでなく、睡眠の質そのものが改善される可能性があります。
対策してもいびきが改善されない場合は、アレルギー性鼻炎のような鼻の疾患や、睡眠時無呼吸症候群などが隠れているかもしれません。
疑わしい場合は病院を受診して、いびきの原因を突き止めましょう。