咳にはちみつは効果がある?期待できる働きや食べ方、受診の目安を医師が解説

「咳にはちみつが効くらしい」と聞いて、「薬を飲む前に試してみたい」と考える方も多いのではないでしょうか。
はちみつは古くからのどの不快感を和らげるために用いられてきましたが、近年では風邪による咳に対する効果が研究でも報告されています。
一方で、すべての咳に効果があるわけではなく、原因となる病気によっては適切な治療が必要です。
この記事では、はちみつが咳を和らげると考えられる理由や効果が期待できる咳の種類、取り入れ方や注意点、受診の目安について医師がわかりやすく解説します。
1. 咳にはちみつは効果がある?
はちみつは昔から、咳やのどの痛みを和らげる民間療法として親しまれてきました。
古代エジプトや古代中国、インドのアーユルヴェーダなどでは、はちみつは食品であると同時に、のどの痛みや咳を和らげる目的でも利用されていました。
日本でも古くから、のどの違和感や咳があるときに、はちみつ湯やはちみつ大根などを口にする家庭療法が広く行われてきました。
医薬品が身近でなかった時代には、家庭で手軽に試せるセルフケアとして受け継がれ、現在でも「のどに良い食べ物」として広く知られています。
ただし、はちみつはあくまで症状を和らげる補助的な手段であり、咳の根本原因を治療するものではありません。
【参考情報】『History, phytochemistry, experimental pharmacology and clinical uses of honey: A comprehensive review with special reference to Unani medicine』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34508800/
2. はちみつはどんな咳に効果が期待できる?
はちみつは、咳の原因によっては症状を和らげる可能性がありますが、病気そのものを治療するものではないため、原因に応じた対応が重要です。
2-1. 風邪による咳
はちみつは、風邪などのウイルス感染による急性の咳に対して、効果が期待できることが報告されています。
複数の研究では、はちみつを摂取することで、咳の回数や強さが軽減し、夜間の咳による睡眠への影響が改善する可能性が示されています。そのため、風邪などによる急性の咳では、セルフケアの一つとして取り入れられることがあります。
【参考情報】『Effectiveness of honey for symptomatic relief in upper respiratory tract infections: a systematic review and meta-analysis』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32817011/
2-2. のどの乾燥による咳
空気が乾燥する冬場や、エアコンを使用する季節は、のどの粘膜が乾燥し、咳が出やすくなることがあります。
また、教師やコールセンターのオペレーターなど、仕事で会話をする機会が多い方は、のどへの負担が大きくなり、乾燥や刺激によって咳が続くことがあります。
このようなのどの乾燥や軽い刺激による咳では、はちみつがのどの粘膜を覆って刺激を和らげることで、症状が軽減する可能性があります。
【参考情報】『Sore Throat? Try Some Honey』Cleveland Clinic
https://health.clevelandclinic.org/honey-for-sore-throat
2-3. 効果が期待しにくい咳
一方で、以下のような病気が原因となっている咳は、はちみつだけで改善することは期待できません。
・喘息
・肺炎
・百日咳
・肺がん
・副鼻腔炎
・肺結核
・心不全
【参考情報】『心不全』国立循環器病センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/heart-failure/
こうした病気が原因の咳の場合、はちみつを摂ることで一時的に不快な症状が和らぐことはあっても、原因そのものを治すことはできません。
3. はちみつの取り入れ方
はちみつは、医薬品ではないため決まった飲み方はありません。
咳やのどの乾燥が気になるタイミングに、無理のない範囲で取り入れるとよいでしょう。
3-1. 食べるタイミング
はちみつは、就寝前や咳が気になるときに取り入れるとよいでしょう。
特に、夜間は咳によって眠りが妨げられやすいため、寝る前にはちみつをそのままなめたり、飲み物に加えて摂取したりすると、のどの粘膜が保護され、咳による不快感が和らぐことがあります。
また、日中でも、のどの乾燥やイガイガ感が気になるときに取り入れることで、粘膜を保護し、刺激による咳を軽減できる可能性があります。
3-2. はちみつの食べ方・飲み方
はちみつは、そのまま食べるだけでなく、飲み物や料理に取り入れることもできます。
<スプーン1杯をそのまま食べる>
ゆっくり口の中で溶かすようにすると、のど全体になじみやすくなります。
<はちみつ湯>
40~50℃程度のぬるめのお湯にはちみつを溶かして飲みます。熱湯よりものどへの刺激が少なく、飲みやすい方法です。
<はちみつレモン>
はちみつをぬるま湯で溶き、少量のレモン果汁を加えます。酸味が強すぎるとのどを刺激することがあるため、入れすぎには注意します。
<はちみつ生姜湯>
すりおろした生姜や生姜パウダーを少量加えます。生姜の風味が好きな人に向いています。
<ホットミルク+はちみつ>
温めた牛乳にはちみつを加えます。まろやかな甘さで、就寝前にも飲みやすい組み合わせです。
<カモミールティー+はちみつ>
カフェインを避けたい場合にも取り入れやすく、就寝前の飲み物としても人気があります。
<紅茶・コーヒー+はちみつ>
砂糖の代わりにはちみつを加えると、まろやかな甘みを楽しめます。ただし、カフェインや熱すぎる飲み物はのどへの刺激となることがあるため、咳が気になるときは少し冷ましてから飲むのがおすすめです
<ヨーグルトにはちみつをかける>
朝食や間食として取り入れやすい方法です。ただし、咳が強いときは冷たいヨーグルトが気になる人もいるため、常温に少し戻すと食べやすくなります。
<はちみつ大根>
角切りにした大根にはちみつを加えて数時間置き、出てきたシロップを少量ずつ飲みます。日本でよく知られる家庭療法の一つです。
<トーストやオートミールにかける>
朝食に無理なく取り入れられます。
はちみつは、熱湯に入れると風味や香りが損なわれやすくなるため、温かい飲み物に入れるときには、少し冷ましてから加えるのがおすすめです。
なお、熱によって風味は変化しますが、通常の飲用方法であれば安全性に問題はありません。
4. はちみつを食べる際の注意点
はちみつは食品であり、多くの方が安心して取り入れられますが、年齢や体質によっては注意が必要です。
4-1. 1歳未満の乳児には与えない
はちみつは1歳未満の乳児には絶対に与えてはいけません。
はちみつには、ごくまれにボツリヌス菌の芽胞が含まれていることがあります。大人や1歳以上の子どもでは通常問題になりませんが、腸内環境が未熟な1歳未満の乳児では、乳児ボツリヌス症を発症するおそれがあります。
乳児ボツリヌス症は、便秘や哺乳力の低下、元気がなくなるなどの症状が現れ、重症化すると呼吸に影響を及ぼすこともあります。そのため、厚生労働省も1歳未満の乳児には、はちみつや、はちみつを含む食品を与えないよう注意を呼びかけています。
【参考情報】『ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html
4-2. 糖分の摂り過ぎに注意
はちみつは自然由来の食品ですが、糖分を多く含んでいます。
適量であれば大きな問題はありませんが、毎日大量に摂取すると、エネルギーの摂り過ぎにつながる可能性があります。特に、糖尿病のある方や体重管理が必要な方は、摂取量に注意しましょう。
◆「管理栄養士が教える、糖尿病の方でも血糖値に影響が出にくい間食“8つ”のルール」>>
咳を和らげたいからといって、一度にたくさん食べれば効果が高まるわけではありません。普段の食事とのバランスを考えながら、適量を心がけることが大切です。
4-3. アレルギー体質の方
はちみつでアレルギー症状が起こることはまれですが、体質によっては注意が必要です。
特に、花粉に対するアレルギーがある方では、はちみつに含まれる微量の花粉などが影響し、口の中のかゆみや違和感などの症状が現れることがあります。
はちみつを食べて体調に異変を感じた場合は摂取を中止し、症状が強い場合は速やかに病院を受診してください。
過去にはちみつや蜂製品でアレルギー症状を起こしたことがある方は、摂取を控えましょう。
5. はちみつで咳が改善しないときは病院を受診
はちみつは、風邪による咳やのどの乾燥による咳を和らげることが期待できますが、すべての咳に効果があるわけではありません。
次のような症状がある場合は、はちみつだけで様子を見続けず、早めに呼吸器内科などの病院を受診しましょう。
・2週間以上咳が続いている
・息苦しさや呼吸のしづらさがある
・発熱が続く、または高熱を伴う
・血痰が出る
・夜間や早朝に咳で目が覚めることが多い
・咳を何度も繰り返している
咳はさまざまな病気でみられる症状です。「はちみつを試しても改善しない」「症状が悪化している」と感じた場合は、自己判断を続けず、原因を明らかにするためにも呼吸器内科を受診しましょう。
6. 咳とはちみつに関するよくある質問
Q. 普通のはちみつよりマヌカハニーの方が咳に効果がありますか?
A. 現時点では、咳に対してマヌカハニーが一般的なはちみつより優れていることを示す十分な科学的根拠はありません。
マヌカハニーには、メチルグリオキサール(MGO)などの成分による抗菌作用があることが知られています。しかし、咳の症状を和らげる効果については、一般的なはちみつと比較して優れていることを示した質の高い研究は限られています。
そのため、咳のセルフケアとしては、必ずしも高価なマヌカハニーを選ぶ必要はありません。一般的なはちみつでも、のどの粘膜を覆って刺激を和らげることで、風邪による急性の咳や、のどの乾燥による咳の症状が軽減する可能性があります。
Q. のど飴とはちみつはどちらがよいですか?
A. どちらが優れているとは一概にはいえません。症状や好みに合わせて選ぶとよいでしょう。
はちみつは、とろみのある性質によってのどの粘膜を覆い、刺激を和らげることで、風邪による急性の咳や、のどの乾燥による咳の症状を軽減する可能性があります。
一方、のど飴は、唾液の分泌を促したり、のどを潤したりすることで、乾燥やイガイガ感を和らげる効果が期待できます。メントールやハーブ成分を含むものは爽快感がありますが、人によっては刺激が強く感じられることもあります。
Q. 薬を飲んでいても、はちみつを一緒に食べて大丈夫ですか?
A. 一般的には、多くの薬とはちみつを一緒に摂取しても問題ないとされています。
はちみつは食品であり、通常の食事量であれば、咳止めや去痰薬、解熱鎮痛薬、抗菌薬などと一緒に摂取しても問題になることはほとんどありません。
ただし、「水で服用してください」と指示されている薬は、はちみつを溶かした飲み物ではなく、水またはぬるま湯で服用するようにしましょう。
7. おわりに
はちみつは、風邪による急性の咳や、のどの乾燥による咳を和らげる可能性がある食品です。昔から家庭療法として親しまれてきた背景があり、現在でも手軽に取り入れられるセルフケアの一つとして利用されています。
一方で、はちみつはあくまで症状を和らげる補助的な手段であり、すべての咳に効果が期待できるわけではありません。喘息や肺炎、COPDなど、病気が原因となっている咳では、適切な治療を受けることが重要です。
はちみつを試しても咳が改善しない場合や、2週間以上咳が続く場合、息苦しさや高熱、血痰などの症状を伴う場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに呼吸器内科を受診しましょう。咳の原因を明らかにし、適切な治療につなげることが、症状の改善への近道です。
以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします
- 咳が2週間以上続いている
- 息切れや息苦しさを感じることがある
- 痰がからんで気になる
- 健康診断で肺や呼吸の異常を指摘された
- 市販薬を飲んでも症状が改善しない
当てはまる項目がある方は、呼吸器専門医に相談してみませんか?













