ブログカテゴリ
外来

喘息治療に用いる注射薬「デュピクセント」の特徴と使い方、副作用を解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年05月12日

吸入薬などによる治療を続けていても喘息症状が十分にコントロールできない場合には、現在の治療に追加する選択肢として注射薬が検討されることがあります。

この記事では、デュピクセントがどのような薬か、使い方、副作用、注意点、薬価についてわかりやすく解説します。

1.デュピクセントとはどのような薬か


デュピクセントは、従来の吸入薬や内服薬ではコントロールが難しい喘息に対して、新たな選択肢として注目されている治療薬です。

ここでは、その作用の仕組みや特徴、どのような方に使われるのかについて、わかりやすく解説します。

1-1.アレルギーの炎症を抑える注射薬


デュピクセントはデュピルマブという成分を配合した注射薬です。デュピルマブは、喘息やアレルギーに関わる炎症の信号を弱めることで、症状のコントロールを助ける薬です。

私たちの体内では、細胞同士が情報をやりとりするために、インターロイキンと呼ばれるタンパク質が使われています。

【参考情報】『インターロイキン』日本薬学会
https://www.pharm.or.jp/words/word00057.html

インターロイキンは、免疫の働きを助けたりコントロールしたりする重要な役割を持っていますが、増えすぎるとアレルギー反応を起こすことがあります。

デュピルマブは、IL(インターロイキン)-4とIL-13が、特定の受容体(体の中のスイッチのようなもの)に結合できないようにしてアレルギー反応を抑える「ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体」という薬剤です。

1-2.重症・難治喘息に使われる生物学的製剤

デュピクセントは、そのような重症または難治の喘息に対して用いられる生物学的製剤のひとつです。

◆「重症喘息と生物学的製剤」について詳しく>>

喘息では、吸入薬や気管支拡張薬などの長期管理薬を使っていても十分にコントロールできない場合に、これらの治療に追加して使用されます。

なお、デュピクセントは今起きている喘息発作をすぐにしずめるための薬ではありません。発作時には、別途、発作を抑えるための治療が必要になります。

1-3.適応となる病気と対象年齢

日本では喘息のほかに、アトピー性皮膚炎、結節性痒疹(けっせつせいようしん)、特発性の慢性蕁麻疹、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、COPDなどに適応がありますが、適応や使える年齢は病気ごとに異なります。

喘息に対しては6歳以上で使用されます。

1-4.自己注射が可能な治療薬

喘息の治療に使う注射薬の中には、医師や看護師が医療機関で注射するものもありますが、デュピクセントは医師の指導のもとで自宅で自己注射を行うこともできます。

また、ご家族の方がお子さんに注射してあげることも可能です。

自己注射を行う場合は、最初に医療機関で十分な説明を受け、注射の方法や保管方法、副作用が出たときの対応を確認してから始めることが大切です。

【参考情報】『Dupilumab Injection』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a617021.html

2.デュピクセントの使い方


デュピクセントには、ペンとシリンジ(注射筒)の2つのタイプがあります。

喘息に対する用法用量は、年齢や体重によって異なります。

成人では、通常、初回に600mgを皮下注射し、その後は300mgを2週間に1回投与します。

12歳以上18歳未満では体重によって用量が異なり、30kg以上60kg未満では初回400mg、その後200mgを2週間に1回、60kg以上では初回600mg、その後300mgを2週間に1回投与します。

6歳以上12歳未満の小児では、15kg以上30kg未満は300mgを4週間に1回、30kg以上は200mgを2週間に1回投与します。

実際の投与量や製剤の種類は、必ず医師の指示に従ってください。



<用法用量>

初回のみ、300mgペンまたはシリンジ2本分を皮下注射します。

その後は2週間に1回、1本を皮下注射します。

※この用法は主に成人・12歳以上の喘息で用いられる方法です。小児では異なる場合があります。

ペンタイプの自己注射方法は、以下を参考にしてください。
シリンジタイプは、基本的には補助具に注射器の筒をセットして注射します。


<注射部位>

・腹部(へそ周り5cm以内は避ける)

・太もも

・二の腕(自分で注射するときは避ける)

同じ場所に続けて打つのではなく、毎回少しずつ場所を変えると、皮膚への負担を減らしやすくなります。赤み、腫れ、硬くなっている部位、傷やあざのある部位は避けましょう。

【参考情報】『自己注射の準備』サノフィ株式会社
https://www.support-allergy.com/selfinjection/preparation?utm_source=chatgpt.com

<自己注射の仕方>

①薬は冷蔵庫に保管しておきます。

②使用する45分前までに冷蔵庫から取り出し、平らな場所で室温に戻します。

※室温に戻す目安は製剤によって異なり、200mgシリンジまたはペンは30分以上、300mgシリンジまたはペンは45分以上です。電子レンジやお湯などで温めず、自然に室温へ戻してください。

③緑色のキャップをまっすぐ引っ張って外します。

④ペン本体にある確認窓が見えるように持ち、注射部位に垂直になるようにあてます。

⑤ペン先の黄色い針カバーが見えなくなり、「カチッ」と音がするまで押しあててください。

⑥音が鳴ったら20秒以上そのままにします。

⑦確認窓が黄色に変わり始めるので、確認窓全てが黄色になったら、押しあてたままゆっくり5秒数えてください。

⑧ペンをまっすぐに持ち上げて皮膚から離します。

⑨注射した部位はこすらないでください。出血した場合には、消毒用アルコール綿で軽くおさえましょう。

注射の前には、薬液がにごっていないか、変色していないか、異物が入っていないかも確認します。気になる点がある場合は使わず、医療機関に相談してください。

<注意点>

・緑のキャップはねじらないでください。

・黄色い針カバーには触らないでください。中には針が入っています。

・注射部位に押しあてたらすぐには抜かずにいてください。押しあてている間に薬が体内に入っていきます。

・万が一、すぐに抜いてしまい薬が残っていても、再利用したり2本目を注射したりしないでください。一度医師に連絡して、対処法を聞くようにしましょう。

・一度注射したペンは再利用しないでください。

・打ち忘れた場合や、予定より多く注射してしまった場合は、自己判断で調整せず主治医に連絡してください。



注射する時間帯は、特に決められていません。ご自身の都合の良い時間か、医師に決められたタイミングで注射しましょう。

ただし、毎回ばらばらでは忘れやすくなるため、生活の中で続けやすい曜日や時間帯を決めておくと管理しやすくなります。

3.デュピクセントの副作用


デュピクセントを使用すると、以下のような副作用が起きることがあります。

 ・注射部反応(赤み、腫れ、かゆみなど)

 ・頭痛

 ・目の症状(結膜炎、充血、かゆみなど)

 ・関節痛

 ・ヘルペス

注射部位の赤みやかゆみ、軽い腫れなどは比較的みられる副作用です。多くは強い心配のいらないことが多いですが、

・腫れが強い

・痛みが長引く

・熱をもつ

・広い範囲に広がる

このような場合は、医療機関に相談しましょう。

また、デュピクセントでは目の症状にも注意が必要です。

結膜炎だけでなく、目のかゆみ、充血、まぶたの違和感、目の乾きなどがみられることがあります。目の症状が続く場合は、自己判断で様子を見すぎず、処方を受けた医療機関へ相談してください。

めったにありませんが、アナフィラキシーなどの重いアレルギー反応が起こることがあります。

注射後に、急な息苦しさ、じんましん、ふらつき、吐き気、顔やのどの腫れなどがあらわれた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

【参考情報】『アナフィラキシー/Q&A』日本アレルギー学会
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=14

さらに、まれに好酸球が増えることに関連した症状がみられることがあります。

発熱、発疹、しびれ、息苦しさの悪化など、いつもと違う全身症状が出た場合は、早めに主治医へ相談することが大切です。

4.デュピクセント使用上の注意点


デュピクセントは効果が期待できる一方で、正しく安全に使用するためにはいくつかの注意点があります。

治療を継続するうえで大切なポイントをあらかじめ理解しておくことで、安心して使用しやすくなります。

ここでは、併用薬や生活上の注意、自己注射のポイントについて解説します。

4-1.既存治療の継続と併用の考え方

デュピクセントは、これまでの治療をやめて置き換える薬ではなく、既存の治療に追加して使う薬です。

現在使っている吸入薬や飲み薬は医師からの指示がない限り、通常どおり続けてください。

自己判断で吸入薬や飲み薬を減らしたり中止したりすると、喘息の症状が悪化する恐れがあります。

◆「喘息治療に使う吸入薬の種類と特徴、副作用」>>

また、デュピクセントは今起きている喘息発作をすぐにしずめる薬ではないため、発作時の対応についてもあらかじめ確認しておくことが大切です。

◆「喘息発作を悪化させない応急処置と発作を減らす予防のポイント」>>

4-2.感染症・ワクチンに関する注意

デュピクセントを使用する際に注意が必要な病気として、寄生虫感染症があります。デュピクセントによって寄生虫に対する体の防御力が弱まる可能性があるため、もし寄生虫に感染した場合は、医師にデュピクセントを使っていることを伝えてください。

抗寄生虫薬による治療を行っても改善しない場合は、寄生虫感染が治るまでデュピクセントを一時中止することがあります。

また、生ワクチン接種については安全性が十分に確認されていないため、接種予定がある場合は事前に医師へ相談することが大切です。

予防接種の予定があるときは、受診時に早めに伝えておくと安心です。

4-3.保管方法と自己注射時のポイント

デュピクセントは保管方法に注意が必要な薬です。持ち帰った後は箱ごとすぐに冷蔵庫(2〜8℃)に保管しましょう。また、凍らせたり温めたりしないでください。

以下に該当する場合は、使用しないでください。

 ・ラベルの使用期限が切れている

 ・注射液が濁っている(通常は無色または薄い黄色)

 ・注射液に粒子のようなものが浮いている

 ・破損がある

 ・緑色のキャップが取れていた

なお、注射液は確認窓から見ることができます。

自己注射を行う場合は、医療機関で注射方法や取り扱いについて十分な説明を受けてから始めることが大切です。

注射の方法に不安がある場合や、予定どおりに打てなかった場合は、自己判断せず医療機関に相談しましょう。

5.デュピクセントに関するよくある質問(FAQ)

Q1.デュピクセントは吸入薬の代わりになりますか?

A.いいえ、基本的には吸入薬の代わりに完全に置き換える薬ではありません。

デュピクセントは、吸入ステロイド薬などの治療を続けても喘息が十分にコントロールできない場合に、追加で使う治療として検討されます。自己判断で今までの吸入薬や飲み薬を中止せず、主治医の指示に従いましょう。

Q2.デュピクセントは、注射したらすぐに発作がおさまりますか?

A.デュピクセントは、今起きている喘息発作をその場でしずめる薬ではありません。

喘息の炎症を長い目でみてコントロールし、発作や症状の悪化を減らすことを目的に使われます。急な息苦しさや発作が出たときは、医師から指示された発作時の対応を優先してください。

◆「もしも喘息発作が起こったら」>>

Q3.注射を打ち忘れたときはどうすればよいですか?

A.打ち忘れた場合は、自己判断で2回分をまとめて注射したり、次回分で調整したりしないでください。

気づいた時点で、まず主治医や医療機関に連絡し、今後の打ち方について指示を受けましょう。

【参考情報】『自己注射のよくあるご質問』サノフィ株式会社
https://www.support-allergy.com/selfinjection/faq

Q4.妊娠中・授乳中でも使えますか?

A.妊娠中や授乳中の使用は、自己判断ではなく、主治医と相談して決めることが大切です。

妊娠中の安全性については限られた情報しかないため、喘息の重症度や治療の必要性をふまえて、使用するかどうかを個別に判断します。

妊娠を希望している方も、あらかじめ相談しておくと安心です。

◆「喘息の妊婦が知るべき安全な治療法と赤ちゃんへの影響」について>>

Q5.旅行や外出のときは、どのように持ち運べばよいですか?
A.デュピクセントは保管方法に注意が必要な薬です。

基本的には冷蔵庫で保管し、持ち運びが必要な場合は、温度管理に注意しながら取り扱います。詳細は製剤や状況によって異なるため、旅行や長時間の外出を予定している場合は、事前に医療機関で確認しておくと安心です。

自己判断で高温の場所に長く置いたり、凍らせたりしないようにしましょう。

【参考情報】『自己注射に使う製剤・器具』サノフィ株式会社
https://www.support-allergy.com/selfinjection/tool

6.デュピクセントの薬価


デュピクセントの1本あたりの価格(2026年3月調べ)は以下のとおりです。

 ・デュピクセント皮下注300mgペン 53,659円/キット

 ・デュピクセント皮下注300mgシリンジ 53,493円/筒

 ・デュピクセント皮下注200mgペン 39,706円/キット

 ・デュピクセント皮下注200mgシリンジ 39,549円/筒

喘息では、成人および12歳以上では主に300mg製剤が使われますが、6歳以上12歳未満で体重30kg以上の小児では200mg製剤が使用されます。

体重や年齢によって用量が異なるため、実際に使用する製剤は医師の指示に従ってください。
200mg製剤は、喘息の一部の小児に用いられるほか、アトピー性皮膚炎など他の適応でも使われます。

デュピクセントは高額なため、高額療養費制度の対象になることがあります。
「多数回該当」は高額療養費制度のひとつで、直近12か月以内に3回以上、自己負担限度額に達した場合、4回目以降は自己負担限度額がさらに下がる仕組みです。

マイナ保険証を利用している場合は、限度額情報の提供に同意すると、窓口での支払いが自己負担限度額までになることがあります。マイナ保険証を利用しない場合は、「限度額適用認定証」の申請や、あとから払い戻し手続きが必要になることがあります。

【参考情報】『高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)』全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3030/r150/

また、健康保険組合によっては、独自の付加給付がある場合もあります。ご自身の医療費については、加入している健康保険組合に相談してみてください。

デュピクセントにはジェネリック医薬品や市販薬はありません。使い切ってしまったら、かかりつけ医を受診して処方してもらいましょう。

7.おわりに

デュピクセントのような喘息に使う注射薬には、ヌーカラ(メポリズマブ)やファセンラ(ベンラリズマブ)などがあります。

どの注射薬が適しているかは、喘息のタイプや血液検査の結果、合併しているアレルギー疾患の有無などによって異なります。

◆「喘息のタイプ」をチェック>>

デュピクセントの使用を検討している方や、治療を続けても不安がある方は、他の選択肢も含めて医師に相談してみましょう。

喘息の注射薬は、吸入薬などの治療を続けても症状が十分にコントロールできない方にとって、治療の選択肢を広げる薬です。

ただし、注射薬だけで治療が完結するわけではなく、吸入薬や飲み薬を医師の指示どおりに続けることも大切です。

日々の治療を積み重ねながら、発作や症状の悪化をできるだけ防ぎ、安定した生活を目指していきましょう。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

電話番号のご案内
電話番号のご案内
横浜市南区六ツ川1-81 FHCビル2階