いびきをかく高齢者は注意!命にかかわる病気のリスクと対処法

年齢を重ねるにつれ、いびきをかくことが多くなったり、いびきの音が激しくなったと感じる人は多いのではないでしょうか。
実は、60歳以上の高齢者の約3割が、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする何らかの睡眠障害を抱えていると言われています。
これを放置すると、脳梗塞や心筋梗塞などの命に関わる病気のリスクが高まることがわかっており、決して「年のせいだから仕方ない」と見過ごしてよい問題ではありません。
この記事では、高齢者のいびきの原因や、病気のサインとなる危険ないびきへの対処法を解説します。
目次
1.いびきとは何か
いびきは、空気の通り道である気道が、何らかの原因で狭くなると生じます。
狭くなった気道を通り抜ける際に空気に勢いがつくため、その勢いで気道の粘膜が振動して音が鳴るのです。
いびきは、老若男女問わず誰にでも起こり得る現象ですが、加齢に伴い、いびきの回数やいびきをかいている時間が増えることがあります。
自分では気づかなくても、家族やパートナーから「うるさい」「眠れない」と指摘され、いびきがひどくなったことに気づいた人もいるでしょう。
【参考情報】『Snoring』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/snoring/diagnosis-treatment/drc-20377701
1-1.今すぐ救急車を呼ぶべき危険ないびきのサイン
以下のような症状が見られた場合は、脳卒中(脳梗塞・脳出血)の可能性があります。
直ちに救急車(119番)を呼んでください。
<直ちに救急車を呼ぶべき症状>
・普段いびきをかかない人が、突然大きないびきをかき始めた
・いびきをかきながら、呼びかけても目を覚まさない(意識障害)
・呼吸が不規則で、大きくなったり小さくなったりを繰り返す(チェーンストークス呼吸)
・顔や手足にしびれ・麻痺が見られる
・けいれん(体が震える)を起こしている
脳卒中は発症後、できるだけ早く治療を開始することが重要です。
特に脳梗塞の場合、発症から4.5時間以内に血栓を溶かす治療を受けることで、後遺症を最小限に抑えられる可能性が高まります。
2.いびきの主な原因
いびきの原因には、以下のようなものがあります。
・疲労やストレス
・飲酒
・喫煙
・肥満
・口呼吸(鼻詰まり、アデノイド肥大、口周辺の筋力低下などによるもの)
・睡眠薬
いびきには、一時的なものと慢性的なものがあります。
例えば、疲労やストレス、飲酒が原因で出るいびきは、その原因が改善されれば治まってくるでしょう。
一方、アレルギー性鼻炎などの病気により鼻が詰まっていることが原因で、毎晩のようにいびきが出ているなら、原因となる病気を治療せずに改善するのは難しいでしょう。
3.高齢者のいびきの主な原因
いびきの原因のうち、特に高齢者に多いものを紹介します。
3-1.筋力の衰え
加齢により筋力が低下すると、口周りや気道の筋力も低下します。
口周辺の筋力が衰えると、寝ている間に口がポカンと開いてしまい、口呼吸になることがあります。
すると、舌が喉に落ち込んで気道が狭くなるため、いびきが出やすくなります。
そこに舌の筋肉の衰えも加わると、ますます舌が喉に落ち込みやすくなり、気道を塞ぐことが多くなります。
また、気道の筋力が衰えると、気道を広げる力が弱まり、結果として気道が狭くなってしまいます。
このように、筋力の衰えが重なって、いびきが増えることがあります。
特に「オトガイ舌筋」という舌を支える筋肉の働きが弱まると、睡眠中に舌が気道に落ち込みやすくなります。
以下の研究によると、このオトガイ舌筋の持久力が年齢とともに低下する可能性が示唆されています。
【参考情報】『Age-related changes in upper airway muscles morphological and oxidative properties』ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0531556501001279?via%3Dihub
3-2.ホルモンの影響
女性ホルモンの中には、気道を広げる働きを持つものがあります。
このホルモンが閉経によって減少すると、閉経前より気道が狭くなり、いびきが増える原因となります。
具体的には、プロゲステロンという女性ホルモンが気道を広げる「オトガイ舌筋」の緊張を保つ作用を持っています。
閉経後にこのホルモンが減少すると、筋肉の緊張が落ちて気道が狭くなりやすくなります。
3-3.基礎代謝量の低下
基礎代謝とは、生命を維持するために必要な最小限のエネルギーのことです。
この基礎代謝により、人は安静にしている時でもエネルギーを消費しているのですが、加齢により基礎代謝量が落ちてくると、エネルギーの消費量が減少するので太りやすくなります。
体重が増えると、喉周りの脂肪が気道を圧迫したり、舌に脂肪がついて重くなり、気道をふさいでしまいます。
そのため、気道が狭くなります。
BMI(体格指数)が25を超える肥満体型の方の約60%、BMIが30を超える方の約75%が、睡眠時無呼吸症候群を発症しているという研究もあるほど、体重増加といびきには密接な関係があるのです。
【参考情報】『The relationship between obesity and obstructive sleep apnea in four community-based cohorts: an individual participant data meta-analysis of 12,860 adults』NLM
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12051718/
3-4.睡眠障害の治療に用いる睡眠薬
高齢者は、「なかなか寝付けない」「寝ている途中で目が覚める」などの睡眠障害を抱えていることが多いため、睡眠薬を服用している人もいるでしょう。
高齢者の約30%が何らかの睡眠障害を抱えていると言われており、睡眠薬を服用している方も少なくありません。
睡眠薬の中には、筋弛緩作用を持つものがあります。
この作用を持つ薬を飲んでいると、気道の筋肉が緩んで気道が狭くなり、いびきの原因となることがあります。
【参考情報】『睡眠障害』厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-027
3-5.脳卒中
脳卒中は65歳以上の高齢者に多い病気です。
加齢により、血管がもろくなったり詰まりやすくなったりすることで、発症しやすくなります。
脳卒中になると、意識障害や麻痺によって舌が気道に落ち込むことで気道が狭くなり、いびきが生じることがあります。
高齢者が突然大きないびきをかいた場合、脳卒中の可能性があります。
その際は意識を確認し、呼びかけに反応しないなど異常を感じたら、直ちに救急車を呼ぶか救急外来を受診してください。
【参考情報】『脳卒中』国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2
4.高齢者のいびきの種類と危険度チェック
いびきには、健康への影響が異なる2つのタイプがあります。
自分や家族のいびきがどちらに該当するかを知ることで、適切な対処ができます。
<安全ないびき>
・疲労やストレス、飲酒など一時的な原因で発生
・日中の眠気や倦怠感はほとんどない
・睡眠の質にあまり影響しない
・周囲の人にとっては気になるが、本人の健康には大きな問題はない
これらは一時的ないびきで、健康への影響はあまりありません。
原因が解消されれば、自然にいびきも治まることが多いため、深刻に心配する必要はありません。
<危険ないびき>
・大きないびきをかく
・睡眠中に呼吸が止まる
・夜中に息苦しくて目が覚める
・BMIが35kg/m²を超えている
・50歳以上である
・首の周囲が40㎝以上ある
・男性である
これらが5項目以上チェックがあると、中程度以上の睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなることで、身体が低酸素状態となり、重大な健康影響をもたらします。
AHI(無呼吸低呼吸指数)とは、1時間あたりの無呼吸および低呼吸の回数を示す指標です。
・軽症:1時間あたり5~14回
・中等症:1時間あたり15~30回
・重症:1時間あたり30回以上
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、脳梗塞のリスクが約3倍に高まることが研究で明らかになっています。
また、睡眠時無呼吸症候群の患者の生存率は、未治療の場合は約63%ですが、適切な治療を受けることで約96%まで改善することが報告されています。
睡眠時無呼吸症候群は、放置しても良くなるどころか、健康リスクが高まる一方なので、すぐに治療を開始しましょう。
◆睡眠時無呼吸症候群の重症度がわかる指標「AHI」について>>
5.いびきを防ぐ対策
年齢とともにいびきがひどくなってきたと感じる人は、まずは自分でできる対策を試してみましょう。
5-1.口呼吸の防止
口の周りの筋力が衰えていると、自分では気づかなくても、眠っている間に口が開いてしまうことが多くなります。
睡眠中の口呼吸を防ぐためには、専用のテープやマスクで口を閉じることを試してみましょう。
同時に、口周りや舌の筋力を高めることも重要です。
5-2.肥満体型の人は減量する
肥満体型の人は、首回りや舌の脂肪を落とすために体重を減らしましょう。
ただし、高齢者の場合、過度な運動は足や腰に負担がかかることがあります。
また、運動をほとんどしない人が急に運動すると、転倒や痛みの原因となります。
安全を考慮しつつ、ウォーキングや水中ウォーキングのような運動を無理のない範囲で行い、今よりも動く時間を増やすようにしましょう。
運動と同時に、食事に気を配ることも大切です。
活動量に適した量をバランスよく食べるようにしましょう。
肉や魚、大豆製品などのタンパク質を毎食取り入れると、筋肉量の減少を防ぐのに役立ちます。
【参考情報】『肥満と睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群』日本肥満症予防協会
https://himan.jp/column/diseases/009.html
5-3.睡眠薬を変更する
睡眠薬を使うことが多い人は、その薬の影響でいびきをかくこともあります。
特にベンゾジアゼピン系と呼ばれる睡眠薬は、筋肉を緩める作用が強いため、いびきを悪化させる可能性があります。
いびきが気になる場合は、医師に相談して、筋弛緩作用の少ない薬への変更を検討することも大切です。
6.対策しても効果が感じられない場合
上記の対策を試してもいびきが改善しない場合は、睡眠時無呼吸症候群という病気が原因でいびきが出ている恐れがあります。
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることを、毎晩のように繰り返す病気です。
この病気の主な症状は、激しいいびきや日中の眠気です。ほかに、起床時の頭痛や倦怠感などの症状もあります。
睡眠時無呼吸症候群の治療は、主にCPAP(シーパップ)という医療機器を用いて行います。
CPAPで、鼻から空気を送り込み、睡眠中に息が止まるのを防ぎます。
治療により、睡眠中に呼吸が止まらなくなるといびきが軽減し、睡眠の質も上がるので眠りが深くなります。
7.おわりに
加齢によりいびきがひどくなる原因には、筋力の衰えによる口呼吸や、基礎代謝量の低下による体型の変化などが挙げられます。
このような原因に対しては、筋力を鍛えたり、肥満を解消することで、いびきが軽減する可能性があります。
しかし、対策してもいびきがよくならない場合は、睡眠時無呼吸症候群という病気が原因でいびきがひどくなっているのかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群は、呼吸器内科で検査と治療ができます。
おかしいと感じたら、早めに病院を受診して検査を受けてみましょう。






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