咳をすると血の味がするのはなぜ?原因と対処法

咳をしたときに、口の中に血の味や鉄のような味を感じると、思わず不安になる人は少なくありません。
痰に血が混じっているわけでもなく、はっきりと血が見えない場合でも、実際にはごく微量の出血があるケースもあります。
このような場合、咳のし過ぎが原因であることが多いのですが、注意が必要な病気が隠れていることもあります。
この記事では、咳や痰に血が混じる場合に考えられる疾患やその対応方法についてお伝えします。
目次
1.血の味の主な原因は咳のし過ぎ
咳をすると血の味がする原因として多いのは、咳のしすぎによって喉の粘膜が傷つき、微量の出血が起きることです。
強い咳が続いたり、咳の回数が多くなると、喉の粘膜に摩擦や圧がかかり、表面の毛細血管が切れやすくなります。
この出血は量がごくわずかなため、痰や唾液の中にも血が見えないことが多いのですが、血液成分による鉄っぽい・金属のような味がします。
咳によって粘膜の傷がやや大きくなると、実際に血が見えることもあります。
少量・一時的であれば緊急性は高くないことが多いですが、「血の量が増える」「数日以上続く」「発熱・息切れ・胸痛を伴う」場合は、喉だけでなく肺や気管支からの出血も考える必要があるため、病院を受診してください。
【参考情報】『Coughing up blood』MSD Manual
https://www.msdmanuals.com/home/lung-and-airway-disorders/symptoms-of-lung-disorders/coughing-up-blood
2.咳とともに痰が出て、痰に血が混じっていた場合
咳とともに痰が出て、その中に血が混じっている状態は「血痰(けったん)」と呼ばれます。
多くの場合、少量の出血によるもので、すぐに重い病気を意味するとは限りませんが、原因の見極めは重要です。
2-1.血痰の主な原因
やはり多いのは、咳のしすぎで喉や気管支の粘膜が傷ついたことによる出血です。この出血が痰に混じって血痰となります。
急性気管支炎や肺炎などの感染症でも、炎症によって気道の粘膜が弱くなり、咳の刺激で出血しやすくなります。この場合、発熱や全身のだるさ、黄緑色や濁った痰など、感染症特有の症状を伴うことがあります。
さらに、慢性気管支炎や気管支拡張症のような呼吸器疾患でも、炎症や気道の変形によって血管がもろくなり、咳や軽い刺激で出血することがありますし、肺結核や肺がんなど、肺の病気が原因で血痰が出ることもあります。
このように、血痰は軽い咳のしすぎによる一時的な出血から、慢性・重症の呼吸器疾患まで幅広い原因が考えられます。
また、歯茎や口の中が傷ついて出た血、鼻血が唾液と混じったものを、血痰と誤解しているケースもあります。
【参考情報】『痰に血が混じりました』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q04.html
◆「血痰が気になりますか?呼吸器内科で原因を調べましょう」>>
2-2.血痰が出たときの対処
血痰が出ても、血の量がごく少なく、咳や喉の違和感が軽い場合は、慌てず安静にして様子を見ることも可能です。
このときは、喉の乾燥を防ぐために十分な水分をとり、加湿やマスクで喉を保護することが有効です。
また、刺激の強い飲食物やタバコを避けることも症状の悪化を防ぐ助けになります。
ただし、血痰が以下のような状態の場合は、自己判断せず早めに呼吸器内科を受診しましょう。
・血痰が数日以上続く
・血の量が増えている、あるいは鮮明な赤色の血が混じる
・発熱、息切れ、胸の痛み、体重減少など体調の変化を伴う
・喫煙歴がある
・過去に肺や気道の病気を指摘されたことがある
血痰が出る場合に考えられる主な病気には、急性気管支炎や慢性気管支炎、気管支拡張症、肺炎、肺結核、肺がんなどがあります。
受診時には、血痰の量や色、出た頻度、咳の様子や他の症状をできるだけ詳しく伝えると、医師による診断や必要な検査の判断に役立ちます。
3.咳とともに血を吐いた場合
咳をしたときに、血液そのものを吐き出す状態は「喀血(かっけつ)」と呼ばれます。
血痰のように少量の出血ではなく、明らかに血が混ざった痰や、赤い血そのものが口から出る状態です。泡が混じっていることもあります。
3-1.喀血が起こる主な原因
喀血の主な原因は、呼吸器の病気です。
<感染症による出血>
肺炎や結核など、肺や気管支の感染症で炎症が強くなると、血管がもろくなり咳の刺激で出血しやすくなります。特に結核は、少量の喀血が初期症状として現れることがあります。
<慢性呼吸器疾患>
気管支拡張症や慢性気管支炎などでは、気道の構造が変化し血管がもろくなるため、軽い咳でも出血することがあります。
<肺腫瘍(肺がん)>
肺に腫瘍がある場合、腫瘍周囲の血管が破れて喀血することがあります。特に中高年の方で咳や血痰が長く続く場合は注意が必要です。
<その他の原因>
その他、非結核性抗酸菌症、特発性喀血症(原因不明で発症する喀血)、肺アスペルギルス症、肺塞栓症など、さまざまな呼吸器疾患で喀血が出ることがあります。
また、心臓病、血液の病気などでも喀血が起こることがあります。
【参考情報】『Coughing up blood』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/symptoms/coughing-up-blood/basics/definition/sym-20050934
3-2.喀血が出たときの対処
喀血が出たときは、まず落ち着いて状況を確認することが大切です。
咳は無理に止めようとせず、座るか上半身を起こして呼吸を楽にします。横になると気道に血がたまりやすくなるため避けます。
少量(ティッシュに少し血がつく程度)なら、呼吸器内科か内科を受診して診察を受けましょう。状況に応じ、止血剤などを用います。
少量でも繰り返す場合や、発熱や胸痛、息苦しさを伴う場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。
大量に血を吐いた時や、呼吸困難、意識の低下、血圧低下などがある場合は、迷わず119番に連絡してください。
家族や周囲の人が、喀血の量、色、出たタイミング、咳の有無などをメモして医師に伝えると診断に役立ちます。
【参考情報】『119番通報のポイント』東京消防庁
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/learning/contents/jiei/chapter/step-14.html
<喀血と吐血の違い>
喀血と似た症状に、胃や食道など消化管からの出血で、口から黒っぽい血を吐く「吐血(とけつ)」があります。ただし、吐血は咳とは直接関係がありません。
【参考情報】『吐血・下血』日本臨床外科学会
https://www.ringe.jp/civic/20190603/
一方で、睡眠中に喀血が起きると、血液を飲み込んでしまい、あとで嘔吐することがあります。この場合、血液が胃液で黒褐色に変わるため、吐血と勘違いされることがあります。
4.血痰・喀血で行われる主な検査
咳とともに血が出た場合、原因を特定するため、必要に応じて以下の検査を行います。
<胸部X線検査>
肺や気道の炎症、肺炎、結核、腫瘍の有無を確認します。まずは基本的な画像検査として行われることが多いです。
<胸部CT検査>
X線で確認できない微細な病変や腫瘍、慢性疾患による気道の変化を詳しく見ることができます。
<喀痰検査>
痰に含まれる細菌や結核菌、異常細胞の有無を調べることで、感染症や腫瘍の可能性を確認します。
<血液検査>
貧血や炎症の程度、凝固異常の有無を確認します。出血量や体の状態を把握するうえで重要です。
<気管支鏡検査>
出血源が気道内にある場合、直接観察やサンプル採取が可能です。出血が続く場合や原因が不明な場合に行われます。
5.血痰や喀血が見られる主な疾患
この章では、血痰や喀血が見られる主な疾患をまとめて紹介します。
5-1.呼吸器感染症
<肺炎>
細菌やウイルスなどの感染によって肺に炎症が起こる病気です。咳や発熱、痰、胸の痛みなどがみられ、炎症により血管が傷つくと血痰が出ることもあります。
<結核>
結核菌による感染で肺の組織が傷つく病気です。長引く咳に加え、血痰や喀血が比較的よくみられます。進行すると微熱や寝汗、体重減少などの全身症状を伴うこともあります。
<非結核性抗酸菌症(NTM症)>
結核菌以外の抗酸菌によって起こる慢性的な肺の感染症です。結核に似た経過をとり、咳や痰が長く続き、血痰がみられることもあります。気管支拡張症を伴うことが多く、ゆっくり進行するのが特徴です。
<真菌性肺感染症(肺アスペルギルス症など)>
カビ(真菌)が肺に感染して起こる病気です。もともと肺に空洞や障害がある場合に発症しやすく、炎症や血管の侵食により血痰や喀血がみられることがあります。慢性的に経過する例もあります。
5-2.慢性呼吸器疾患
<気管支拡張症>
気管支が慢性的な炎症や感染を繰り返すことで元に戻らないほど広がり、痰がたまりやすくなる病気です。
痰の排出がうまくいかないため、長引く咳や多量の痰、感染の再発を起こしやすくなります。進行すると息切れや血痰がみられることもあります。
<慢性気管支炎>
気管支に炎症が長く続き、咳や痰が慢性的にみられる病気です。長期間続く炎症と強い咳により、気管支の粘膜が傷ついて血痰が出ることがあります。
進行すると息切れが強くなり、COPD(慢性閉塞性肺疾患)という慢性の肺の病気の一つとして位置づけられます。
◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>
5-3.腫瘍性疾患
<肺がん>
肺や気管支にできる悪性腫瘍です。腫瘍が気道や血管を傷つけることで、血痰や喀血がみられることがあります。初期は少量の血痰にとどまることが多いものの、進行すると咳や息切れ、胸の痛み、体重減少などを伴うことがあります。
<気管支カルチノイド腫瘍>
肺神経内分泌腫瘍の一つで、気管支に発生する比較的まれな腫瘍です。血管が豊富なため、咳に伴って血痰や喀血がみられることがあります。進行は比較的ゆっくりですが、気道を塞ぐことで症状が出る場合があります。
【参考情報】『肺神経内分泌腫瘍』国立がん研究センター 希少がんセンター
https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/pulmonary_neuroendocrine_tumor/index.html
5-4.循環器系の異常
<肺塞栓症>
血の塊(血栓)が肺の血管を詰まらせる病気です。血流が途絶えることで肺梗塞を起こすと、血痰や喀血がみられることがあります。突然の息切れや胸の痛みを伴うことが多く、緊急対応が必要となる場合があります。
【参考情報】『肺塞栓症』東京大学医学部附属病院循環器内科
https://cardiovasc.m.u-tokyo.ac.jp/consultation/diseases/pulmonary_embolism
<心不全>
心臓のポンプ機能が低下し、全身や肺に血液がうっ滞する状態です。肺にうっ血や肺水腫が起こると、泡状で血の混じった痰(血痰)がみられることがあります。
【参考情報】『心不全』国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/heart-failure/
5-5.その他
<胸部への外傷>
事故などで肺や気道、血管が傷つくことで血痰や喀血がみられることがあります。程度は少量から多量までさまざまで、胸の痛みや息切れを伴うことが多く、外傷後に出現した場合は速やかな評価が必要です。
<血液疾患>
血小板減少症や白血病などの血液疾患では、血が止まりにくくなることで、血痰や喀血がみられることがあります。
【参考情報】『出血しやすい・血小板減少』国立がん研究センター がん情報センター
https://ganjoho.jp/public/support/condition/thrombocytopenia/index.html
6.おわりに
咳や痰に血が混じることでパニックになる人もいるかと思いますが、まずは落ち着いて「どのような血液なのか」を観察しましょう。
そして、しっかりとその情報を医師に伝えられるようにしておきましょう。適切に情報を伝えることで、診断や治療を行いやすくなるからです。
特に咳などの呼吸器症状を合併している場合には、呼吸器系に大きな病気が隠れている可能性があるため、早めに呼吸器の専門医を受診することをおすすめします。











