喘息治療薬「パルミコート」の特徴と効果、副作用

パルミコートは喘息の治療に用いる吸入ステロイド薬です。「タービュヘイラー」とよばれるデバイス(吸入用器具)を使って吸入するタイプと、ネブライザーという器具を使って吸入する吸入液があります。
毎日継続して使用することで効果を発揮しますが、「発作のときにも使えるの?」「吸った感じがしないけれど大丈夫?」「副作用はある?」など、使い始めると疑問を感じる方も少なくありません。
この記事では、パルミコートの特徴や作用の仕組み、正しい使い方、副作用、使用時の注意点、シムビコートとの違いについてわかりやすく解説します。
1. パルミコートとはどのような薬か
まずは、パルミコートの特徴や作用、効果が現れるまでの期間、シムビコートとの違いについて解説します。
1-1. 気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬
パルミコートは、有効成分「ブデソニド」を含む吸入ステロイド薬です。
【参考情報】『Budesonide』MedlinePlus.gov
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a608007.html
喘息では、気道に慢性的な炎症が起こることで、気道が狭くなったり、わずかな刺激にも過敏に反応したりする状態が続いています。そのため、咳や息苦しさ、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音)などの症状が繰り返し現れます。
パルミコートは、この気道の炎症を抑えることで、喘息を長期的にコントロールする薬です。毎日継続して使用する「コントローラー(長期管理薬)」に分類され、喘息発作が起こりにくい状態を維持することを目的としています。
一方、発作が起こったときに症状をすぐに和らげる「リリーバー(発作治療薬)」ではありません。発作時には、医師から処方されたリリーバー(発作治療薬)を使用してください。
1-2. パルミコートの作用
パルミコートは、気道で起こっている炎症を抑え、喘息症状が起こりにくい状態へ導きます。
炎症が改善すると、気道の腫れや痰の分泌が抑えられ、空気の通り道が広がります。
また、気道が刺激に過敏に反応する「気道過敏性」も改善されるため、冷たい空気や運動、アレルゲンなどがきっかけとなる咳や喘息発作を起こしにくくする効果が期待できます。
1-3. 効果が現れるまでの期間
パルミコートは、吸入してすぐに症状を改善する薬ではありません。
効果の現れ方には個人差がありますが、一般的には数日から数週間かけて徐々に気道の炎症が改善し、喘息症状が起こりにくくなります。
症状が落ち着いているときでも、気道の炎症が完全に治まっているとは限りません。自己判断で吸入を中止すると炎症が再び悪化し、発作が起こりやすくなることがあります。
喘息を良好な状態に保つためにも、医師の指示に従って毎日継続して吸入することが大切です。
1-4. シムビコートとの違い
パルミコートとシムビコートは、どちらも有効成分として「ブデソニド」を含む吸入薬です。
大きな違いは、シムビコートには気管支を広げる成分である「ホルモテロール(LABA:長時間作用性β₂刺激薬)」が配合されている点です。
そのため、パルミコートは気道の炎症を抑える長期管理薬として使用されますが、シムビコートは長期管理に加えて、医師の指示のもと発作時の症状を和らげる薬として使用されることがあります(SMART療法)。
2.パルミコートの使い方
以下、タービュヘイラーと吸入液にわけて、使用方法を説明します。
2-1.タービュヘイラー
通常、成人は1回100〜400μgを、1日2回吸入します。
小児は1回100〜200μgを、1日2回吸入します。
①キャップを外す
②右に回す
③カチッと音がするまで左に戻す
カチッと音がしたら、1回分の薬が準備できた合図です。
※②〜③の動作は「クルッ」「カチッ」と覚えておくと良いです。
④息を吐き出す
姿勢を正し、無理のない程度で、しっかり息を吐き切ります。
⑤薬剤を吸い込む
マウスピース(吸入口)を深くくわえて口をすぼめ、「強く」「早く」「一気に」スーッと息を吸い込んでください。
⑥息を止める
薬剤を吸い込んだら、マウスピースから口を離して3~5秒ほど息を止め、その後ゆっくりと息を吐いて呼吸を再開します。
⑦キャップをしめる
⑧うがいをする
口の中に残った薬剤を洗い流します。
【空打ちに関して】
未使用の吸入器を初めて使用する場合のみ、茶色の回転グリップを左右に回し、カチッと2 回鳴らします。
『パルミコート®タービュヘイラー®を使用される患者さんへ』アストラゼネカ
http://www2.astrazeneca.co.jp/yourhealth/pulmicort/pdf/safeuse.pdf
2-2.吸入液
通常、成人は1アンプルを1日2回、または2アンプルを1日1回吸入します。
小児は0.25mgを1日2回、または1アンプルを1日1回吸入します。
吸入用のネブライザーは、「ジェット式」を使ってください。
◆「ネブライザー」の種類と使い方>>
①アルミ袋から吸入液の入ったアンプルを取り出し、1回分のアンプルを切り離す
②アンプルの上を持ち、円を描くようにゆっくりと振り混ぜる
③アンプルの上を持ち、ねじるようにして切り離す
④ネブライザーの薬液ボトルの中に吸入液を全部入れる
⑤薬液ボトルをネブライザーにセットする
⑥ネブライザーの電源スイッチを入れる
⑦マウスピースまたはフェイスマスクをつけ、ネブライザーから出てくる霧状の薬をゆっくりと吸入する
⑧薬が出なくなったら吸入終了
3. パルミコートの副作用
パルミコートは副作用の少ない吸入ステロイド薬ですが、副作用について正しく理解しておくことが大切です。
3-1. よくみられる副作用
パルミコートは比較的安全性の高い薬ですが、副作用が現れることもあります。
よくみられる副作用として、口腔カンジダ症や嗄声(させい:声枯れ)があります。
口腔カンジダ症は、口の中に薬剤が残ることで、カンジダ菌という真菌(カビ)が増殖して起こる病気です。舌や頬の内側に白い苔(こけ)のようなものが付着したり、口の中の痛みや違和感、味覚異常が現れたりすることがあります。
【参考情報】『口腔カンジダ症』日本口腔外科学会
https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_koku/#c05
また、吸入した薬剤が声帯に付着すると、声がかすれることがあります。
そのほか、のどへの刺激感や咳などが現れることもあります。症状が続く場合や気になる場合は、医師や薬剤師に相談してください。
3-2. 副作用を予防する方法
パルミコートの副作用の多くは、吸入方法を工夫することで予防できます。
タービュヘイラーを使用した後は、必ずうがいを行いましょう。口の中に残った薬剤を洗い流すことで、口腔カンジダ症や嗄声の予防につながります。
パルミコート吸入液をネブライザーで吸入した場合は、吸入後に口の周りや顔を洗うことも大切です。皮膚に付着した薬剤を洗い流すことで、皮膚への刺激を防ぐことができます。
また、薬剤が気道まで十分に届くよう、吸入器やネブライザーは正しい方法で使用しましょう。自己流で使用すると、十分な効果が得られないだけでなく、副作用が起こりやすくなることがあります。
3-3. 注意が必要な副作用
まれではありますが、注意が必要な副作用もあります。
皮膚のかゆみ、発疹、蕁麻疹、顔や唇、舌、のどの腫れ、息苦しさなどが現れた場合は、薬に対するアレルギー反応の可能性があります。使用を中止し、速やかに病院を受診してください。
【参考情報】『薬剤アレルギー』日本アレルギー学会
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=10
また、通常の用量では全身への影響は少ないとされていますが、高用量を長期間使用した場合には、ステロイド薬の全身作用が現れることがあります
副腎機能への影響や骨密度の低下、白内障などが報告されているため、長期間使用する場合は、医師の指示に従って定期的な診察を受けることが大切です。
4. パルミコートを使用するときの注意点
パルミコートの効果を十分に得るためには、正しい方法で使用し、いくつかの注意点を守ることが大切です。
4-1. 発作時には使用しない
パルミコートは、喘息発作を予防するための吸入ステロイド薬です。発作が起こって症状が強くなったときに、すぐに改善する効果はありません。
発作時には、医師から処方されたリリーバー(発作治療薬)を使用してください。リリーバーを使用しても症状が改善しない場合や、呼吸が苦しく会話が困難になるなど症状が重い場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
4-2. 吸った感じがしなくても追加吸入しない
パルミコートタービュヘイラーは、「ドライパウダー」と呼ばれる非常に細かい粉末状の薬を吸入するタイプの吸入器です。
そのため、吸入しても薬を吸った感覚や味をほとんど感じないことがあります。
しかし、正しい手順で吸入できていれば、薬剤は気道へ届けられているため、「吸えなかったかもしれない」と思って追加で吸入しないようにしましょう。
また、吸入器を振ると「カサカサ」という音が聞こえることがありますが、これは薬剤ではなく乾燥剤の音です。薬が残っているかどうかは音では判断できません。
薬剤の残量は、吸入器の小窓に表示される残量表示で確認してください。残量がなくなった吸入器を使い続けても、薬を吸入することはできません。
4-3. 吸入を忘れた場合
吸入を忘れたことに気づいたら、その時点で1回分を吸入してください。
ただし、次の吸入時間が近い場合は、忘れた分は吸入せず、次の予定どおり1回分を吸入します。
吸入を忘れたからといって、2回分をまとめて吸入したり、1日に指示された回数以上吸入したりしてはいけません。
毎日決まった時間に吸入する習慣をつけると、吸い忘れの予防につながります。
【参考情報】『お薬を飲み忘れた場合はどうすればいいですか?』兵庫県薬剤師会
https://www.hps.or.jp/faq/detail/?id=7
4-4. パルミコートび保管方法
パルミコートタービュヘイラーは、湿気の影響を受けやすい吸入器です。
使用後は毎回キャップをしっかり閉め、高温多湿になる場所を避けて保管してください。浴室や洗面所など湿気が多い場所での保管は避けましょう。
また、吸入口に水分が付着すると薬剤が固まり、正常に吸入できなくなることがあります。吸入口は水洗いせず、汚れが気になる場合は乾いた布やティッシュペーパーで軽く拭き取ってください。
4-5. 妊娠・授乳中に使用する場合
妊娠中や授乳中の方、または妊娠している可能性がある方は、パルミコートを使用する前に医師へ相談してください。
一方で、自己判断で吸入を中止することは避けましょう。喘息のコントロールが悪化すると、母体だけでなく赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性があります。
ブデソニドは、吸入ステロイド薬の中でも妊娠中の使用に関するデータが比較的多く、必要と判断された場合には使用されることがあります。
妊娠中・授乳中も、医師と相談しながら喘息を適切にコントロールし、安心して治療を続けることが大切です。
【参考情報】
『Asthma During Pregnancy』Asthma and Allergy Foundation of America
https://www.aafa.org/asthma-during-pregnancy/
5. パルミコートの薬価
パルミコートの薬価(2026年7月調べ)は、以下となります。
<パルミコートタービュヘイラー>
・パルミコート100μgタービュヘイラー112吸入 996円
・パルミコート200μgタービュヘイラー56吸入 996円
・パルミコート200μgタービュヘイラー112吸入 1,244円
<パルミコート吸入液>
・パルミコート吸入液0.25mg 117.3円/アンプル
・パルミコート吸入液0.5mg 160.1円/アンプル
※薬価は診療報酬改定などにより変更されることがあります。
パルミコートには、ブデソニドを有効成分とするジェネリック医薬品(後発医薬品)があります。
ジェネリック医薬品は、有効成分や効果、安全性が先発医薬品と同等であることが確認されたうえで承認されており、一般的に先発医薬品より薬価が低く設定されています。
薬剤費を抑えたい場合は、ジェネリック医薬品を使用できるかどうか、医師や薬剤師に相談してみましょう。
6.おわりに
パルミコートと同じような、喘息治療用の吸入ステロイド薬には、以下のようなものがあります。
パルミコートを使っても症状が良くならない人や吸入が難しいと感じる人は、ほかの薬が使えるかどうか医師に相談してみましょう。













