喘息・COPD治療薬「ホクナリンテープ」の特徴と効果、副作用
ホクナリンテープは、喘息、気管支炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺気腫の治療に用いる薬剤です。
この記事では、ホクナリンテープの使い方や効果、副作用などについて解説します。初めて使う方も、現在使用中の方も、ぜひ読んで基本的な知識や使い方を確認してください。
1.ホクナリンテープとはどのような薬か
ホクナリンテープは、「ツロブテロール」を主成分とする経皮吸収型の気管支拡張薬です。せまくなっている気管支を広げ、息苦しさをやわらげる効果があります。
皮膚に貼ることで成分が吸収され、血流にのって気管支まで届く仕組みの薬です。小さな湿布薬のようなものを想像すると、イメージしやすいかと思います。
喘息の治療薬には、発作を未然に予防する「コントローラー(長期管理薬)」と、発作時に症状を抑えるために使用する「リリーバー(発作治療薬)」があります。
※喘息の発作とは、気管支がせまくなり、息を吐くときにヒューヒュー、ゼーゼーするような呼吸困難となる状態です。
ホクナリンテープは、コントローラーにあたる薬です。コントローラーは、使ってすぐに効果は現れませんが、使い続けることで発作を予防することができます。
※注意点として、「ホクナリンテープは咳止め薬ではない」ということを覚えておきましょう。気管支が広がり、空気の通りがよくなることで呼吸が楽になったり、咳が減ったりすることで、咳に効果があると思う方がいらっしゃいますが、咳止めではありません。
【参考情報】『Effects of the tulobuterol patch on the treatment of acute asthma exacerbations in young children』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22737706/
2.ホクナリンテープの使い方
ホクナリンテープには、0.5mg、1mg、2mgの3種類があります。
通常、成人は2mg、小児は0.5~3才未満には0.5mg、3~9才未満には1mg、9才以上には2mgを、1日1回貼ります。1日1回貼ることで、効果は24時間持続します。
貼ってから8~12時間後に、有効成分の濃度がいちばん高くなるので、夜寝る前に貼ると呼吸機能が低くなりやすい早朝の発作を防ぐことができます。
貼る場所は、胸、背中、上腕部のいずれか1か所にしてください。貼る場所は、タオルなどで汗や皮脂、水分を拭いて清潔にし、乾かしておきましょう。
<貼り方の手順>
1. 切り口表示に従ってアルミ袋を開封
2. テープを山折りにして台紙を半分はがす
3. 皮膚にしっかりと密着させる
4. 残りの台紙をはがしながら完全に貼り付ける
5. 貼付後は手のひらで軽く押さえる
<テープが剥がれてしまった時の対処法>
・12時間以上貼っていた場合:新しいテープを貼る必要はありません
・12時間未満で剥がれた場合:医師に相談して、必要があれば新しいテープを貼ります
ホクナリンテープは、貼ってから12時間たつと、薬の成分の約75%が皮膚に吸収されます。これは、24時間貼った時の約85%にあたります。つまり、12時間以上貼っていれば、十分な効果が期待できるということです。
もし間違って新しいテープを貼り直しても、薬の量が体に入りすぎて危険になることは、ほとんどありません。
しかし、必要以上に薬を使わないためにも、12時間の目安を覚えておきましょう。
保管は、直射日光、高温、湿気を避け、子どもの手の届かない場所へ袋のまま保管してください。
【参考情報】『ホクナリンテープの正しい使い方』VIATRIS
http://hokunalin.jp/patient/manual/use.html
【参考情報】『ホクナリンテープが剥がれた場合の対応』福岡県薬剤師会
https://www.fpa.or.jp/johocenter/yakuji-main/_1635.html
3.ホクナリンテープの副作用
ホクナリンテープの代表的な副作用は、動悸や手の震え、皮膚のかぶれです。
ホクナリンテープの主成分であるツロブテロールは、「β2刺激薬」と呼ばれるタイプの薬で、心臓に働きかけることで動悸や手の震えを引き起こす可能性があります。
これらの副作用は、基本的に大きな問題となることはありませんが、不整脈など心疾患のある方や、強い動悸を感じた場合は主治医にご相談ください。
ホクナリンテープを毎回同じ部位に貼り付けていると、その部分がかゆくなったり、かぶれてしまうことがあります。
テープを貼り替える際には、毎回違う部位に貼り付けてかゆみやかぶれを防ぎましょう。
喘息の患者さんの中には、以下の気管支拡張薬が処方されている人もいるでしょう。
・テオドール
・テオフィリン徐放錠
これらの薬とホクナリンテープを一緒に使うと、低カリウム血症となる恐れがあります。
もし、うっかり一緒に使ってしまって手足のだるさや脱力感などを感じた場合は、早めに医師に相談しましょう。
◆「咳喘息治療に用いる気管支拡張剤「テオドール」の特徴と効果、副作用」>>
◆「喘息治療に用いる気管支拡張薬「テオフィリン徐放錠(旧ユニフィル)」の特徴と効果、副作用」>>
また、初めての使用の際、まれに、呼吸困難、全身潮紅、蕁麻疹(アナフィラキシー)といった症状があらわれる場合があります。その際は、すぐに医師に相談してください。
【参考情報】『低カリウム血症』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000209227.pdf
4.使用上の注意点
ホクナリンテープは、貼るだけでいいので使いやすく便利ですが、以下のような事例も報告されているので、取扱いや保管方法には注意が必要です。
・貼り付ける部位を間違える
・誤って飲み込んでしまう
・喘息ではない子どもが自分の体に貼り付けてしまう
・無意識のうちにテープをはがしてしまう
特に小児や高齢者は、テープが気になってはがしてしまうことがあるので、手が届きにくい部位に、大人が貼ってあげてください。
もしテープがはがれた場合は、絆創膏を使って貼りなおしても構いません。
1章でも述べましたが、ホクナリンテープは、狭くなった気管支を拡げることで呼吸をラクにする薬であり、咳止め薬ではありません。
咳止め薬と勘違いして、風邪をひいた家族に貼ってしまう患者さんもいるようですが、効果がないのでしないでください。
特に、大人に処方されたホクナリンテープを子どもに使うのは危険なので、絶対にしないでください。
妊娠中やその可能性のある方、授乳中の方は医師に相談してください。
ホクナリンテープを使用してはいけない方、または特に注意が必要な方は以下の方々です。
<使用禁忌(絶対に使用してはいけない方)>
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方
<慎重投与(特に注意が必要な方)>
・甲状腺機能亢進症の方
・高血圧症の方
・心疾患のある方(冠不全、心筋梗塞、不整脈など)
・糖尿病の方
・アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患のある方
<併用注意( 以下の薬剤との併用時は特に注意が必要)>
・カテコールアミン製剤(アドレナリンなど)
・キサンチン誘導体(テオフィリンなど)
・ステロイド薬
・利尿薬
【参考情報】『Asthma During Pregnancy』Asthma and Allergy Foundation of America
https://www.aafa.org/asthma-during-pregnancy/
【参考情報】『添付文書情報』医薬品医療機器総合機構
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2259707S1020_7_02/
5.ホクナリンテープの薬価
ホクナリンテープ の薬価(2025年7月現在)は、以下となります。
・ホクナリンテープ0.5mg 19.3円/枚
・ホクナリンテープ1mg 26円/枚
・ホクナリンテープ2mg 39円/枚
ホクナリンテープの代わりとなるジェネリック医薬品は「ツロブテロールテープ」です。
ジェネリック医薬品ツロブテロールテープの薬価(2025年7月現在)は、以下となります。
・ツロブテロールテープ0.5mg「サワイ」 22.9円/枚
・ツロブテロールテープ1mg「サワイ」 22.8円/枚
・ツロブテロールテープ2mg「サワイ」 31.9円/枚
【参考情報】『商品一覧 : ツロブテロール』GenomeNet
https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=D02151
6.おわりに
喘息治療薬には、吸入薬など使用方法が難しい薬剤が多いため、1日1回貼り付けるだけでいいホクナリンテープは、とても使いやすいでしょう。
しかし、喘息治療の基本は、吸入ステロイド薬を正しく使用することです。また、COPDについても、治療の基本は気管支拡張薬の吸入です。
◆「喘息治療に使う吸入ステロイド薬の副作用は?」について詳しく>>
ホクナリンテープを使用して調子が良くなっても、自己判断でほかの処方薬の使用を中止することはしないでください。
調子がよくなって、薬を減らしてみたいと考えた時は、医師に相談してみましょう。