睡眠時無呼吸症候群の予防 いびきや眠気の原因と対策

睡眠時無呼吸症候群は、いびきが出るだけでなく、睡眠の質が低下することで日中の眠気や体調不良につながることもあります。
自覚症状がないまま進行することも多いため、予防や早期の対応が重要です。
この記事では、日常生活でできる予防のポイントと、症状が疑われる場合の対処法について詳しく解説します。
目次
1. 睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。
ここでは、その仕組みや種類、合併症のリスクについて説明します。
1-1. よくみられる症状
代表的な症状は、大きないびきと日中の強い眠気です。
いびきは本人が自覚しにくく、家族や同居人から「呼吸が止まっている」「苦しそう」と指摘されて気づくことも少なくありません。
また、睡眠中に何度も呼吸が妨げられることで、眠っている時間が十分でも睡眠の質が低下し、日中に強い眠気や集中力の低下、頭痛などが現れることがあります。
◆「そのいびき・昼間の眠気、睡眠時無呼吸症候群の初期症状では?」>>
1-2. 睡眠時無呼吸症候群のタイプ
睡眠時無呼吸症候群には大きく分けて2つのタイプがあります。
・閉塞性(へいそくせい)
多くの方が該当するのが、閉塞性タイプです。
睡眠中に喉や舌の周囲の筋肉がゆるみ、空気の通り道である気道が塞がることで起こります。
主な原因として肥満があげられますが、あごが小さい方や首が短い方など、体の構造的な特徴によっては、痩せていても発症することがあります。
・中枢性(ちゅうすうせい)
中枢性タイプは脳や心臓の病気などが関係し、呼吸の指令そのものがうまく出なくなることで起こります。
1-3.合併症のリスク
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、慢性的な酸素不足と睡眠不足が続き、体に大きな負担がかかります。
その結果、高血圧や糖尿病、不整脈などの合併症を引き起こしやすくなります。
重症の場合、心筋梗塞や脳梗塞につながることもあるため、早めの対策が重要です。
【参考情報】『Sleep apnea』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sleep-apnea/symptoms-causes/syc-20377631
2. 睡眠時無呼吸症候群の予防・生活習慣の見直し
1章でご説明したように、睡眠時無呼吸症候群には2つのタイプがあります。
中枢性睡眠時無呼吸症候群は基礎疾患や薬剤の影響が大きいのに対し、閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、日々の生活習慣と深く関係しています。
そのため、適切な生活習慣を心がけることで、発症リスクを下げたり、症状の悪化を防いだりすることが期待できます。
この章では、予防の基本となる生活習慣のポイントを一つずつ確認していきましょう。
2-1. 肥満を防ぐ
肥満は、睡眠時無呼吸症候群の最大のリスク因子とされています。
首や喉の周囲に脂肪がつくと、気道が圧迫されやすくなり、睡眠中に呼吸が妨げられてしまいます。
また、舌にも脂肪がつくことで、舌が重くなって喉に落ち込み、気道が塞がれることがあります。
体重が標準よりも多い方は、減量することで症状の改善が期待できます。
ただし、急激な減量は体に負担がかかるため、食事内容の見直しと無理のない運動を継続することが大切です。
バランスの取れた食事と、ウォーキングなどの有酸素運動を習慣化することで、健康的な体重管理につながります。
◆「肥満を改善する食事・栄養の摂り方」について>>
2-2. 口周辺の筋力低下を防ぐ
口周りや舌の筋力が低下すると、睡眠中に口が開きやすくなり、口呼吸になることがあります。
口呼吸になると、舌が気道に落ち込みやすくなり、無呼吸やいびきを悪化させる原因になります。
予防には、日頃から口周りや舌の筋肉を意識的に鍛えることが有効です。
簡単な舌の体操や、口を閉じて鼻呼吸を意識する習慣をつけることで、筋力の維持につながります。
また、食事の際によく噛んで食べることも、口周りの筋肉を鍛える効果があります。
2-3. 寝酒を控える
アルコールには筋肉を緩める作用があり、寝る前にお酒を飲むと、喉の筋肉がゆるみ、気道が狭くなりやすくなります。
「寝つきが良くなるから」と寝酒の習慣がある方もいるかもしれませんが、睡眠の質を下げる原因にもなってしまいます。
飲酒する場合は、就寝の3〜4時間前までに済ませ、体内のアルコールが分解される時間を確保しましょう。
2-4. 禁煙する
禁煙は、睡眠時無呼吸症候群の予防だけでなく、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患、心臓病、がんといったさまざまな病気の予防にもつながります。
しかし、「タバコをやめたいと思ってもなかなか難しい」と感じる方が多いのも事実です。
そのような場合には、医師の管理のもとで進める禁煙治療を検討することもひとつの選択肢でしょう。
禁煙治療では、禁煙補助薬を使用しながら、喫煙への依存を和らげ、無理のないペースで禁煙を目指します。
ひとりで抱え込まず、専門的なサポートを受けることで、禁煙を続けやすくなることが期待できます。
【参考情報】『禁煙治療ってどんなもの?』厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/tobacco/t-06-007
3. 睡眠環境と体の状態を整える工夫
生活習慣の改善に加えて、睡眠時の姿勢や体の状態を整えることも大切です。
ちょっとした工夫で、いびきや喉の負担を軽減できることがあります。
この章では、日常生活に取り入れやすい具体的な工夫を紹介します。
3-1. 寝姿勢を見直す
仰向けで寝ると、重力の影響で舌が喉の奥に落ち込みやすくなり、気道が狭くなります。
特に、慢性的な疲労がある時やアルコール摂取後は注意が必要です。
いびきが強い方は、横向きで寝ることで気道が開きやすくなり、呼吸が楽になる場合があります。
横向き寝に慣れていない方は、抱き枕やクッションを背中に置いて、自然と横向きの姿勢を保てるようにするのも一つの方法です。
また、横向き寝専用の枕を使用すると、首や肩への負担を減らしながら、快適な姿勢を維持しやすくなります。
3-2. 鼻づまりを放置しない
鼻炎や花粉症、副鼻腔炎などで鼻が詰まっていると、鼻呼吸がしづらくなり、無意識に口呼吸になりやすくなります。
口呼吸は喉の乾燥を招き、いびきの原因にもなるため、鼻づまりの症状がある場合は早めの対処が大切です。
市販の点鼻薬を使用する方法もありますが、長期間の使用は逆に鼻づまりを悪化させることがあるため注意が必要です。
鼻の症状が続く場合は、耳鼻咽喉科などを受診し、原因となる病気をしっかりと診断してもらい、適切な治療を行いましょう。
根本的な原因を治療することで、いびきの改善にもつながります。
◆「鼻といびきの関係」>>
3-3. 睡眠薬・抗不安薬の影響について
一部の睡眠薬や抗不安薬には、筋弛緩作用があり、睡眠中に喉まわりの筋肉が緩むことで、いびきが出やすくなる場合があります。
特にベンゾジアゼピン系の薬を使用している方では、日中の眠気を感じることがあるとされています。
ただし、これらの薬は不眠や不安を和らげるために大切な治療のひとつです。
医師の判断のもとで服用している場合、過度に心配する必要はないと考えられます。
気になる症状があるときは、自己判断で中止せず、処方した医師や薬剤師に相談しましょう。
薬の種類や量を調整することで、症状が軽くなることもあります。
また、睡眠環境や生活リズムを整えるなど、薬に頼りすぎない睡眠習慣を意識することも、より良い睡眠につながる可能性があります。
4.睡眠時無呼吸症候群の予防効果が感じられない場合
生活習慣や睡眠環境を見直しても、いびきや日中の眠気が続く場合、すでに睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性があります。
この章では、受診や検査、治療について整理します。
4-1.何科を受診すればいいのか
大きないびきを指摘されている、日中の眠気が強い、夜間に息苦しさで目が覚めるといった症状がある場合は、一度医療機関で相談することをおすすめします。
いびきの診療は、主に呼吸器内科、耳鼻咽喉科、睡眠外来などで行われています。
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合や、日中の強い眠気がある場合は、呼吸器内科や睡眠外来が適しています。
一方、鼻づまりや扁桃腺の腫れなど、鼻や喉の問題が原因と考えられる場合は、耳鼻咽喉科を受診するとよいでしょう。
どの科を受診すればよいか迷う場合は、まずはかかりつけ医に相談し、適切な診療科を紹介してもらうのも一つの方法です。
早めに専門医の診察を受けることで、原因に応じた適切な治療を受けられます。
◆「呼吸器内科での睡眠時無呼吸症候群の検査」>>
4-2. 睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸症候群の検査には、簡易検査と精密検査の2つがあります。
まず簡易検査を行い、その結果に応じて精密検査が必要かどうかを判断します。
・簡易検査(自宅でできる検査)
簡易検査は、アプノモニターという小型の医療機器を使って、寝ている間の呼吸状態を調べる検査です。
この機器を自宅に持ち帰り、就寝時に装着して一晩眠るだけで検査ができます。
検査では、呼吸の回数やいびきの有無、血中酸素濃度などが記録され、睡眠中に呼吸が止まっていないか、酸素が十分に取り込まれているかなどを確認します。
自宅で普段通りに眠りながら検査できるため、体への負担が少なく、気軽に受けられるのが特徴です。
・AHIでの検査結果の見方
検査の結果は、AHI(無呼吸低呼吸指標)という指標を用いて表します。
AHIとは、1時間あたりに無呼吸や低呼吸が何回起きたかを示す数値で、この値によって重症度を判断します。
・AHI 5~15回:軽症
・AHI 15~30回:中等症
・AHI 30回以上:重症
・精密検査(より詳しい検査)
簡易検査の結果、より詳しく調べる必要がある場合は、精密検査を行います。
精密検査では、呼吸状態だけでなく、脳波や心電図、筋肉の動きなど、睡眠に関するさまざまなデータを同時に記録し、より正確な診断が可能になります。
精密検査は、通常、医療機関や検査施設に一泊して行いますが、施設によっては自宅での検査が可能な場合もあります。
検査方法については、受診時に確認しましょう。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群』 日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html
また、検査によって睡眠時無呼吸症候群と診断された場合でも、適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。
診断後にどのような治療法があるのか、次の章で詳しく見ていきましょう。
4-3. 睡眠時無呼吸症候群の治療
・ CPAP(シーパップ)療法
寝ている間に鼻から空気を送り込む医療機器
気道を開いた状態に保ち、呼吸をサポート
無呼吸や低呼吸を防ぐことで、睡眠の質が向上
体への負担が軽減され、日中の眠気や疲労感の改善が期待できる
また、CPAPが適さない場合や、症状に応じて以下のような治療法もあります。
・ASV(適応補助換気療法)
呼吸状態に合わせて自動的に圧力を調整する装置
・マウスピース
下あごを前方に固定して気道を広げる器具(軽症~中等症の場合)
・外科手術
扁桃腺肥大やあごの形状などが原因の場合に検討
治療法は、症状の重症度や原因、患者さんの状態に応じて選択されます。
医師とよく相談して、自分に合った治療法を見つけることが大切です。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群とは?ぜん息・COPDと深い関わりがあります』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202307_4/
5.睡眠時無呼吸症候群は治るのか
睡眠時無呼吸症候群と聞くと、治る病気なのかと不安に感じる方もいるかもしれません。
多くの場合、治療や生活習慣の見直しによって症状を安定させることが期待できます。
ここでは、治療と予防を続けていくうえで知っておきたい考え方を簡単に整理します。
5-1. 完治が難しいとされる理由
睡眠時無呼吸症候群は、あごの形や首周りの構造、筋肉のゆるみや生活習慣など、複数の要因が関係して起こる病気です。
そのため、原因そのものを完全になくすことが難しく、「完治」という形を取りにくいとされています。
ただし、適切な治療や管理によって、症状を安定させることは可能です。
5-2. 生活習慣の改善で症状が軽くなるケース
2章でご紹介したように、肥満を防ぐ、寝酒を控える、禁煙するといった生活習慣の改善は、睡眠時無呼吸症候群の予防に有効です。
軽症の段階であれば、これらの取り組みにより、いびきや無呼吸の回数を減らせる可能性があります。
こうした生活習慣の改善は、睡眠時無呼吸症候群の予防という意味でも重要で、治療と並行して続けることで、体への負担を軽くする助けになるでしょう。
【参考情報】『健康づくりのための睡眠指針 2014 』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001208251.pdf
5-3. 治療と予防を続けることの大切さ
治療によって症状が落ち着いても、治療を中断したり生活習慣が元に戻ったりすると、再び症状が強くなることがあります。
そのため、医師と相談しながら治療を続けることと同時に、日常生活の中でできる予防策を無理なく続けていくことが大切です。
6.おわりに
睡眠時無呼吸症候群は、日々の生活習慣と深く関係する病気です。
減量、禁煙、飲酒習慣の見直し、寝姿勢の工夫など、小さな取り組みの積み重ねが予防につながります。
いびきや日中の眠気が気になる場合は、様子を見るだけでなく、早めに医療機関へ相談することが大切です。
予防と適切な対応によって、将来の健康リスクを減らすことができます。
◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>




1-2.睡眠時無呼吸症候群のタイプ.png)




3-1.-寝姿勢を見直す(あおむけ寝と横向き寝).png)





