睡眠時無呼吸症候群を予防する対策と生活習慣
睡眠時無呼吸症候群は、一度発症すると完治が難しい病気です。さらに、心筋梗塞など命にかかわる合併症を引き起こす恐ろしい病気でもあるため、できるだけ予防したいと考える方も多いでしょう。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群の予防方法について説明します。いびきや昼間の眠気など、疑わしい症状のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が浅くなったり止まったりすることを繰り返す病気です。
医学的には、「10秒以上の呼吸停止や低呼吸が、1時間あたり平均で5回以上ある」ときに、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
この病気の主な症状は、激しいいびきと日中の眠気です。
いびきは、周りの人が起きてしまうほど音が大きく、「うるさい」「眠れない」と指摘されることも少なくありません。
また、呼吸が妨げられることで睡眠の質が下がるため、日中に我慢できないほどの強い眠気が現れることがあります。
◆「そのいびき・昼間の眠気、睡眠時無呼吸症候群の初期症状では?」>>
この病気の原因には、閉塞性と中枢性がありますが、患者さんのほとんどは閉塞性です。
閉塞性は、眠っている間に空気の通り道である気道が塞がってしまい、呼吸が妨げられるために起こります。気道が塞がる原因の多くは肥満ですが、もともとあごの骨格が小さい人は、やせていても睡眠中に気道が塞がってしまうことがあります。
中枢性は、脳や神経、心臓などの病気によって、脳からの指令がうまく伝わらずに呼吸が止まってしまいます。中枢性だと、いびきが現れないことも多いです。
睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、体内の酸素不足や睡眠不足が高じ、知らず知らずのうちに高血圧や糖尿病など、さまざまな合併症が引き起こされます。
最悪の場合、心筋梗塞や脳梗塞を発症し、命にかかわる恐れもあるので注意が必要です。
【参考情報】『Sleep apnea』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sleep-apnea/symptoms-causes/syc-20377631
2.睡眠時無呼吸症候群の予防法
この章では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の予防法について説明します。
2-1.肥満を防ぐ
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の主な原因は肥満です。肥満により首周りに脂肪が付くと、脂肪により気道が圧迫されて狭くなり、寝ている間の呼吸が妨げられます。
さらに、舌にも脂肪が付くので重くなって喉に落ち込み、気道が塞がれることがあります。
肥満体型の人は、食事の見直しと運動を中心に体重を管理し、まずは標準体型を目指しましょう。ただし、無理なダイエットはリバウンドを招く恐れもあるので、徐々に体重を減らしていきましょう。
標準体型の人は、今の体重が維持できるように、良い生活習慣をキープしていきましょう。
2-2.口周辺の筋力低下を防ぐ
口周りの筋力が低下すると、寝ている間に口が開いてしまい、口呼吸になることがあります。
睡眠中に口呼吸になると、舌が気道に落ち込みやすくなるので、気道が舌で塞がって呼吸が妨げられます。
口呼吸を防ぐためのテープやグッズもありますが、口周りの筋肉や舌の筋肉を鍛えると、口呼吸が改善できる上に、口元が引き締まった印象になります。
加齢などによる筋力低下が気になる人は、口輪筋や舌を鍛えるストレッチやエクササイズを行い、口呼吸を防ぎましょう。
◆「口呼吸がいびきにつながる理由と予防のためにできること」>>
2-3.寝酒を控える
アルコールには筋弛緩作用があるので、寝る前にお酒を飲むと、喉の周辺の筋肉がゆるんで気道が狭くなり、呼吸が妨げられます。
お酒を飲むときは、就寝時間の4時間前くらいに飲み終えると、寝る時には体内にアルコールがほとんど残らない状態となり、筋肉のゆるみを防ぐことができます。
2-4.禁煙する
タバコに含まれる化学物質は、気道の粘膜を刺激して炎症を引き起こします。この炎症が長く続くと気道が狭くなり、睡眠時の呼吸が妨げられる恐れが高まります。
喫煙の習慣がある人は、禁煙して気道の炎症を防ぎましょう。ただし、タバコには依存性のある物質も含まれているため、意志の力だけでは禁煙が難しいかもしれません。その場合は、病院の禁煙外来を利用しましょう。
2-5.寝姿勢を変えてみる
仰向けの姿勢で寝ると、舌が気道に落ち込みやすくなり、気道が狭くなることがあります。
仰向けで寝るといびきが出やすくなる人は、気道を確保するため、横向きで寝ることを試してみましょう。横向きで寝ることに慣れない場合は、抱き枕などのグッズを使ってもいいでしょう。
2-6.鼻詰まりを治す
アレルギー性鼻炎や花粉症などで鼻が詰まっている人は、鼻での呼吸が難しくなるので、寝ている間に口呼吸になってしまいがちです。すると、舌が気道に落ち込んで睡眠中の呼吸が妨げられます。
思い当たる人は、耳鼻咽喉科やアレルギー専門医のいる病院を受診して、鼻詰まりのもととなる病気を治療しましょう。鼻詰まりが解消すれば、睡眠中に鼻呼吸ができるようになり、口呼吸が治まるでしょう。
【参考情報】『近くの耳鼻咽喉科専門医を探しましょう』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/search_citizens/
2-7.睡眠薬を変更する
ベンゾジアゼピン系と呼ばれる睡眠薬には、筋弛緩作用があります。そのため、服用すると気道の筋肉がゆるんで狭くなり、呼吸に影響が及ぶことがあります。
「眠れない」などの症状があり睡眠薬が必要な人は、筋弛緩作用の少ない薬に変更できないかどうか、医師や薬剤師に相談してみましょう。
3.予防の効果が感じられない場合
上記の予防法を試してみても、いびきや昼間の眠気などの症状に悩まされているなら、既に睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性も否定できません。
もし、睡眠時無呼吸症候群を発症しているなら、初期のうちに治療を受けることで睡眠の質を上げ、合併症を防ぐことができます。
3-1.何科を受診すればいいのか
睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるなら、呼吸器内科やいびき外来など、睡眠時無呼吸症候群の検査や治療ができる診療科を受診しましょう。
いびきのほかに、鼻詰まりなど鼻の症状がある人は、耳鼻科を受診するのもいいでしょう。鼻の病気を治療して症状が改善すると、睡眠中に口が開かなくなり、いびきが治まるかもしれません。
◆「呼吸器内科で睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができます」>>
3-2.検査
睡眠時無呼吸症候群の検査には、簡易検査と精密検査があります。
簡易検査は、アプノモニターという小型の医療機器を用いて、寝ている間の呼吸回数やいびきの有無、血中酸素濃度などを調べます。この検査は自宅で行うことができます。
検査の結果は、AHI(無呼吸低呼吸指標)という指標を用いて表します。AHIとは、1時間当たりの無呼吸や低呼吸の合計回数のことで、5~15は軽症、15~30は中等症、30以上は重症となります。
簡易検査の結果、より詳しく調べる必要があると判断された場合は、精密検査で脳波や心臓の動きなどを記録し、さまざまな観点から睡眠に関するデータを集めます。
精密検査は、医療機関や検査施設に一泊して行うことが多いのですが、当院では入院せずに自宅で検査を受けることも可能です。
3-3.治療
睡眠時無呼吸症候群の治療は、主にCPAP(シーパップ)という医療機器を用いて行います。CPAPは、寝ている間に鼻から空気を送り込み、睡眠中の呼吸をサポートする機能を持ちます。
CPAPを使って無呼吸や低呼吸がなくなると、体への負担が軽くなり、睡眠の質も向上します。
CPAP以外には、ASVやマウスピース、手術などの治療法があります。
4.睡眠時無呼吸症候群は治せるのか
睡眠時無呼吸症候群を自力では治すのは難しいでしょう。ただし、肥満が原因で発症した人で、軽度のうちならば、体重を減らすことで症状が改善する場合はあります。
治療により症状が出なくなっても、病気が治ったわけではないので、治療を止めてしまうと再び症状が現れる恐れがあります。
しかし、完治は難しくても、CPAPをはじめとした治療を続けていけば、いびきなどの症状は改善され、命にかかわる合併症を防ぐことはできます。
同時に、治療と平行して先に説明した予防法を行うと、治療の効果を上げることもできます。
5.おわりに
いびきや昼間の眠気が気になる人は、寝ている間に呼吸が妨げられて、睡眠の質量が低下しているのかもしれません。
思い当たる人や、いびきを周りから指摘された人は、減量をはじめとした予防法を試してみましょう。
予防法で効果が感じられたら、そのまま続けて、良い生活習慣を身につけていきましょう。効果が感じられない場合は、念のため、病院で睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみましょう。