CPAPをやめたいと思ったら?中止できるケースや自己判断のリスク、対処法を医師が解説

・CPAP(シーパップ)をつけるのがつらい
・いびきが良くなったから、もう必要ないのでは?
このような理由から、CPAPをやめたいと考える方は少なくありません。しかし、自己判断で中止すると、睡眠時無呼吸症候群が再び悪化する可能性があります。
この記事では、CPAPをやめたいと思う主な理由や中止できるケース、やめる前に確認すべきポイントについて解説します。
1. CPAPをやめたいと思う主な理由
CPAPをやめたいと感じる理由は人によってさまざまですが、原因に応じた対策によって改善できる場合もあります。
1-1. 症状が改善して「治った」と感じている
CPAPを続けていると、いびきが減ったり日中の強い眠気が改善したりして、「もう治ったのでは」と感じる方は少なくありません。
実際、CPAPは睡眠中に空気を送り込んで気道が塞がるのを防ぐことで、睡眠時無呼吸症候群の症状を改善します。
そのため、治療を続けている間は睡眠の質が向上し、日中も快適に過ごせるようになることが多いのです。
しかし、自己判断で使用を中止すると、いびきや無呼吸が再発し、日中の眠気や倦怠感も戻る可能性があります。
1-2. マスクや装着感がつらい
CPAPをやめたい理由として多いのが、マスクや装着感への不快感です。
CPAPは睡眠中にマスクを装着して空気を送り続けるため、人によっては「圧迫感があって苦しい」「息苦しく感じる」といった違和感を覚えることがあります。
特に治療を始めたばかりの時期は慣れず、装着すること自体がストレスになる方も少なくありません。
また、寝返りを打つたびにマスクがずれたりチューブが引っかかったりして、「自由に寝られない」と感じることもあります。
その結果、睡眠中に無意識にマスクを外してしまい、十分な治療効果が得られないケースもあります。
1-3. 副作用や不快感が気になる
CPAPを続ける中で、副作用や体の不快感が気になり、「治療をやめたい」と考える方もいます。
代表的なのが、鼻や口の乾燥です。CPAPは気道へ空気を送り続けるため、鼻の粘膜が乾燥しやすくなったり、口呼吸をしている方では口の渇きを感じたりすることがあります。
また、もともとアレルギー性鼻炎などがある方は、鼻づまりによってマスクを装着しにくくなることもあります。
さらに、マスクが肌に触れ続けることで、肌荒れや赤み、マスク跡が生じることがあります。
締め付けが強すぎたり、マスクのサイズが合っていなかったりすると、こうした症状が起こりやすくなります。
一部の方では、睡眠中に空気を飲み込んでしまうことで、お腹に空気がたまり、張りやげっぷなどの症状が現れることもあります。
【参考情報】『CPAP machines: Tips for avoiding 10 common problems』National Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/obstructive-sleep-apnea/in-depth/cpap/art-20044164
1-4. 通院や費用が負担
CPAPを続けたい気持ちはあっても、通院や費用が負担となり、「やめたい」と考える方もいます。
CPAP治療を保険診療で継続する場合は、定期的な診察による治療管理が必要です。受診時には、症状の変化やCPAPの使用状況、機器から得られるデータなどを確認し、治療が適切に行われているかを評価します。
そのため、仕事が忙しい方や通院先が遠い方では、「毎回受診する時間が取れない」「通院そのものが負担」と感じることがあります。
また、CPAPはレンタルで利用することが一般的で、保険診療であっても自己負担分の医療費が発生します。長期間にわたって治療を続けることを考えると、経済的な負担を感じる方もいるでしょう。
1-5. 旅行や出張で使いにくい
旅行や出張のたびにCPAPを持ち運ぶことが負担となり、「そのまま治療をやめたい」と考える方もいます。
CPAP機器には小型・軽量化された機種も増えていますが、本体に加えてマスクやチューブ、電源アダプターなどを持参する必要があります。そのため、荷物が増えることを負担に感じる方は少なくありません。
また、宿泊先ではコンセントの位置やベッド周りのスペースによって設置しにくいことがあります。親しい人や友人との旅行では、「CPAPを使って寝るところを見られたくない」と心理的な抵抗を感じる方もいます。
1-6. 他の治療法に変更したい
CPAPをやめたい理由として、「別の治療法に切り替えたい」と考える方もいます。
例えば、肥満が原因の一つとなっている睡眠時無呼吸症候群では、減量によって気道の狭窄が改善し、無呼吸やいびきなどの症状が軽くなることがあります。そのため、「体重が減ったのでCPAPはもう必要ないのでは」と考える方も少なくありません。
また、特に軽症から中等症の患者さんでは、就寝時に装着するマウスピース(口腔内装置)による治療が選択肢となる場合があります。CPAPと比べて持ち運びや装着の負担が少ないことから、マウスピースへの変更を希望する方もいます。
さらに、顎の形態や扁桃肥大など、気道が狭くなる原因が明らかな場合には、手術による治療が検討されることがあります。
近年では、睡眠中に舌の動きを調整して気道の閉塞を防ぐ「舌下神経刺激療法」も、新たな治療選択肢として注目されています。
【参考情報】『Hypoglossal Nerve Stimulation Implant for Sleep Apnea』Johns Hopkins Medicine
https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/obstructive-sleep-apnea/hypoglossal-nerve-stimulation
ただし、これらの治療法は誰にでも適しているわけではありません。睡眠時無呼吸症候群の重症度や原因、全身状態などを総合的に評価したうえで選択する必要があります。
2. CPAPは自己判断でやめてもよい?
睡眠時無呼吸症候群は、自覚症状だけでは治療の必要性を判断できない病気です
CPAPを中止しても問題ないかどうかは、睡眠検査の結果や症状、体重の変化などを総合的に評価したうえで判断する必要があります。
2-1. CPAPは症状を抑える治療
睡眠時無呼吸症候群は、肥満や顎の骨格、舌や扁桃の大きさ、加齢による筋力の低下など、さまざまな要因によって気道が狭くなることで起こります。
そのため、こうした原因が改善していなければ、CPAPを外すと再び無呼吸や低呼吸が起こる可能性があります。
実際、CPAPの使用を自己判断で中止すると、いびきや無呼吸が再発し、日中の眠気や倦怠感が戻るだけでなく、睡眠の質も再び低下することが報告されています。
【参考情報】『Effects of continuous positive airway pressure therapy withdrawal in patients with obstructive sleep apnea: a randomized controlled trial』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21836134/
2-2. 症状がなくても無呼吸が残っていることがある
睡眠時無呼吸症候群は、自覚症状だけでは重症度を判断できないことがあります。
CPAPを使用している間は症状が改善していても、機器を外すと無呼吸が再発しているケースは珍しくありません。
また、人によっては無呼吸があっても日中の眠気をあまり感じないこともあります。
「眠くないから大丈夫」「いびきを指摘されなくなったから治った」と思っていても、睡眠中には無呼吸や低酸素状態が続いている可能性があります。
3. CPAPをやめられるケース
CPAPは長期間続けることが多い治療ですが、すべての方が一生使い続けなければならないわけではありません。
睡眠時無呼吸症候群の原因が改善した場合や、別の治療で十分な効果が得られた場合には、CPAPを中止できることがあります。
3-1. 減量によって改善した場合
肥満は睡眠時無呼吸症候群の代表的な原因の一つです。体重が増えると首まわりや舌の周囲に脂肪がつき、睡眠中に気道が狭くなりやすくなります。
そのため、食事療法や運動療法などによって減量すると、気道の閉塞が改善し、無呼吸の回数が大幅に減少することがあります。睡眠時無呼吸症候群が十分に改善した結果、CPAPが不要になるケースもあります。
ただし、体重が減ったからといって、必ずしも睡眠時無呼吸症候群が治るわけではありません。減量後は睡眠検査の結果や症状などを総合的に評価し、医師が中止可能と判断した場合に限り、CPAPの終了を検討します。
3-2. マウスピースや手術で改善した場合
CPAP以外の治療によって睡眠時無呼吸症候群が改善した場合も、CPAPを中止できる可能性があります。
例えば、特に軽症から中等症では、歯科で作製するマウスピース(口腔内装置)によって下あごを前方に出し、気道を広げることで無呼吸が改善することがあります。
また、扁桃肥大など、気道が狭くなる原因が明らかな場合には、手術によって症状が改善することもあります。患者さんによっては、舌下神経刺激療法などの新しい治療法が適応となるケースもあります。
ただし、これらの治療法が有効かどうかは、睡眠時無呼吸症候群の原因や重症度によって異なります。治療法を変更する際は、睡眠検査の結果なども踏まえて専門医の評価を受けることが大切です。
3-3. 再検査で改善が確認された場合
CPAPを終了できるかどうかは、睡眠検査による客観的な評価を含めて総合的に判断します。
減量や他の治療によって症状が改善していても、実際に無呼吸や低呼吸が十分に減っているとは限りません。
そのため、簡易検査や終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行い、睡眠時無呼吸症候群の重症度が改善しているかを確認します。
検査の結果、無呼吸低呼吸指数(AHI)が十分に改善し、症状や全身状態も安定していると判断された場合には、医師の管理のもとでCPAPの中止を検討できることがあります。
一方で、CPAPを中止した後に症状が再発したり、体重が増加したりすると、再び治療が必要になることもあります。
4. やめたい理由別の対処法
CPAPをやめたいと思う理由の多くは、工夫や調整によって改善できる可能性があります。
「つらいからやめる」という選択をする前に、まずは原因に応じた対策を試してみましょう。
4-1. マスクが合わない
マスクの圧迫感や空気漏れ、寝返りのしにくさなどは、マスクの種類やサイズが合っていないことが原因のことがあります。
CPAPのマスクには、鼻だけを覆うタイプ、鼻の穴に装着するタイプ、鼻と口を覆うタイプなど、さまざまな種類があります。
顔の形や寝る姿勢に合ったものへ変更することで、装着感が大きく改善することも少なくありません。
また、ベルトを締めすぎると痛みやマスク跡の原因になるため、適切なフィッティングを受けることも大切です。
【参考情報】『The interface: crucial for successful noninvasive ventilation』ERS publications
https://publications.ersnet.org/content/erj/23/1/7
4-2. 鼻や口が乾燥する
鼻や口の乾燥は、CPAP治療でよくみられる悩みの一つです。
このような場合、加湿器を使用すると、送り込まれる空気に適度な湿度が加わり、乾燥が和らぐことがあります。ま
また、口呼吸が原因の場合は、マスクの種類を変更したり、口が開きにくくなる工夫をしたりすることで改善する場合があります。
鼻づまりがある方では、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの治療によってCPAPが使いやすくなることもあります。
4-3. 圧力がつらい
「空気の圧が強すぎて息苦しい」と感じる場合は、圧力設定の見直しが必要なことがあります。
CPAPには、眠りにつくまで圧力を低めに保つランプ機能や、息を吐くときの圧力を下げて呼吸を楽にする機能を備えた機種があります。また、圧力設定や機種を見直すことで、装着時の負担が軽減される場合もあります。
息苦しさがあるからといって自己判断で圧力を変更したり、使用を中止したりせず、主治医に相談して原因を確認し、自分に合った設定へ調整してもらいましょう。
4-4. 通院・費用が負担
仕事や家庭の事情で、定期的な通院が負担になる方も少なくありません。
最近では、オンライン診療に対応している医療機関もあり、診療体制によっては通院の負担を軽減できる場合があります。
また、医療機関によっては受診方法や予約体制を工夫しているほか、通いやすい医療機関への紹介に対応していることもあるため、一度相談してみるとよいでしょう。
費用や通院の負担を理由に自己判断で治療を中止するのではなく、まずは主治医に相談することが大切です。
状況に応じて、無理なく治療を継続できる方法を一緒に検討してもらえる場合があります。
4-5. 旅行・出張が多い
旅行や出張が多い方でも、工夫次第でCPAPを継続できることがあります。
現在は小型・軽量のトラベル用CPAPもあり、患者さんによっては持ち運びの負担を軽減できる場合があります。
また、飛行機への持ち込みや機内での使用については航空会社の規定を確認し、海外で使用する際は電圧やコンセントの形状なども事前に確認しておくと安心です。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群(CPAPをご利用)のお客さま』JAL
https://www.jal.co.jp/jp/ja/jalpri/pre-application/sleep.html
宿泊先での設置方法や必要な持ち物をあらかじめ準備しておけば、旅行中も普段と同じように治療を続けやすくなります。
5. CPAPをやめる前に行うこと
CPAPをやめたいと思ったときは、治療が本当に必要なくなったかを確認することが大切です。
5-1. 主治医へ相談する
「症状が改善した」「マスクがつらい」「通院が負担」「別の治療法を試したい」など、やめたいと思う理由をそのまま主治医へ伝えましょう。
原因によっては、マスクの変更や圧力設定の調整、加湿器の使用などで快適に治療を続けられることがあります。
また、マウスピースや手術など、他の治療法が選択できるかどうかについて相談することもできます。
5-2. 睡眠検査で再評価する
CPAPを中止できるかどうかは、自覚症状だけで判断することはできません。
そのため、必要に応じて簡易睡眠検査や終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行い、無呼吸や低呼吸が十分に改善しているかを客観的に評価します。
特に、減量に成功した方や、マウスピース(口腔内装置)・手術などの治療を受けた方では、再検査で睡眠時無呼吸症候群が十分に改善していることが確認され、CPAPの中止を検討できる場合があります。
一方で、自覚症状がなくても無呼吸や低呼吸が残っていることも少なくありません。そのため、症状だけで判断せず、睡眠検査の結果や全身状態などを踏まえて、医師が総合的に判断することが大切です。
5-3. 中止後も経過を確認する
医師の判断でCPAPを中止した後も、定期的に経過を確認することが大切です。
睡眠時無呼吸症候群は、体重の増加や加齢、生活習慣の変化などによって再び悪化することがあります。そのため、中止後にいびきや日中の眠気、起床時の頭痛などの症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
また、自覚症状がなくても、医師が必要と判断した場合には睡眠検査を行い、睡眠時無呼吸症候群が再発していないかを確認することがあります。
CPAPをやめることがゴールではなく、その後も睡眠時無呼吸症候群を適切に管理し、健康な状態を維持していくことが大切です。
6. おわりに
CPAPをやめたいと感じる理由は、人それぞれです。しかし、こうした悩みの多くは、主治医や病院のスタッフに相談することで改善できる可能性があります。
CPAPは睡眠時無呼吸症候群を適切にコントロールし、日中の眠気の改善だけでなく、高血圧や心血管疾患などの合併症リスクを低減するためにも重要な治療です。
「もうやめても大丈夫だろう」と自己判断で中止するのではなく、まずは主治医に相談し、自分の状態に合った治療方針を一緒に検討しましょう。
以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします
- 家族にいびきや呼吸の止まりを指摘されたことがある
- 日中に強い眠気を感じる
- 朝起きたときに頭痛や口の渇きがある
- 十分寝ているのに疲れがとれない
- 夜中に何度も目が覚める
当てはまる項目がある方は、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみませんか?












