糖尿病と高血圧の関係~一緒に整える理由・放置リスク・今日からの対策

糖尿病と高血圧は、どちらも血管に負担をかける病気です。
二つが重なると、影響は単純な足し算ではなく掛け算のように大きくなり、心臓・脳・腎臓といった重要な臓器に合併症が起こりやすくなります。
そのため、「片方が落ち着いてからもう片方を治す」のではなく、両方を無理のない範囲で少しずつ整えていくことが大切です。
この記事では、糖尿病と高血圧の関係を解説します。放置した場合に起こりうること、受診や検査の進め方、そして日常生活でできる食事・運動・睡眠・禁煙の工夫、薬との上手な付き合い方までを、順を追ってわかりやすく解説します。
目次
1.糖尿病と高血圧が重なるとどうなるのか
糖尿病の高血糖は血管の内側(内皮)を傷つけ、炎症や酸化ストレスを引き起こします。一方で高血圧は、その血管に物理的な負担をかけ続けます。
この2つが重なると動脈硬化が早く進み、心筋梗塞・脳卒中・腎機能の低下といった重大な合併症が起こりやすくなります。
対策の基本はシンプルです。体重・食事・運動・睡眠・禁煙という生活の五本柱を軸に、主治医と相談しながら薬の種類・量・服用時間を調整します。
目標値は年齢や腎機能、既往歴によって異なります。「毎日100点」を目指すより、週単位で70点を積み重ねるイメージの方が続けやすく、結果にもつながります。
<押さえておくと楽になるポイント>
・両方を同時に少しずつ整える方が、片方だけに集中するより効果的
・数値は一度きりではなく、平均(流れ)で判断する
・無理のない計画こそが、継続=効果につながる
2.糖尿病と高血圧が重なると、体の中で何が起こるのか
糖尿病と高血圧は別々の病気ですが、どちらも血管に負担をかけ、動脈硬化を進めるという共通点があります。
ここでは、体の中で起きている主な変化を整理します。
2-1.インスリン抵抗性と血圧上昇の関係
糖尿病の患者さんには、肥満体型の人も多いのですが、内臓脂肪が増えるとインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が強まり、血糖値が上がりやすくなります。
【参考情報】『Insulin Resistance』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/22206-insulin-resistance
同時に、交感神経が活発になって腎臓が塩分(ナトリウム)や水分をため込みやすくなり、血管が収縮します。その結果、体内の水分量が増えて血圧も上昇しやすくなります。
つまり、体重増加 → インスリン抵抗性 → 血糖上昇と、交感神経・腎機能の変化 → 血圧上昇が、同じメカニズムの中で並行して進んでいくのです。
2-2.血管の変化:内皮障害と圧負荷による動脈硬化
血管の内側を覆う「内皮」は、血流をなめらかに保ち、血管の拡張や収縮を調整する重要な役割を担っています。
高血糖はこの内皮を傷つけて血管をもろくし、さらに高血圧による圧力が加わると傷が深まり、プラーク(血管のコブ)ができやすくなります。
【参考情報】『What Causes Arterial Plaque and How to Determine Your Personal Risk』Jefferson Health
https://www.jeffersonhealth.org/your-health/living-well/what-causes-arterial-plaque-and-how-to-determine-your-personal-risk
この内皮障害と圧力の負荷の組み合わせが動脈硬化を加速させ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。
2-3.呼吸との関係:睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。
主な原因は、肥満により気道が狭くなることや、あごの形・舌の位置・扁桃の肥大などで、空気の通り道である気道が塞がりやすくなることです。
この状態が続くと、睡眠中に酸素が不足して交感神経が過剰に働き、夜間高血圧が起こりやすくなります。
また、インスリン抵抗性が悪化し、血糖のコントロールも乱れやすくなります。
3.糖尿病と高血圧が合併すると起こりやすいトラブル
糖尿病と高血圧が同時にあると、心臓・脳・腎臓・目・神経など、全身のさまざまな臓器に障害が起こりやすくなります。
3-1.心臓・脳のトラブル
糖尿病で血管がもろくなり、高血圧で血管に強い圧がかかると、動脈硬化が進みやすくなります。
その結果、心臓では狭心症や心筋梗塞、脳では脳梗塞や脳出血のリスクが高まります。
【参考情報】『狭心症とは』日本心臓財団
https://www.jhf.or.jp/check/opinion/category/c4-1/
「胸の圧迫感が一瞬走る」「動いたときに息切れがする」「言葉が出にくい・ろれつが回らない」――こうした前ぶれのサインを見逃さず、早めに医療機関へ相談することが重要です。
3-2.腎臓と生活への影響
糖尿病による腎障害に高血圧が加わると、腎臓への負担がさらに大きくなり、機能の低下が進みやすくなります。
尿検査で「微量アルブミン尿」が出た段階で、生活習慣や薬を見直すことで、腎機能の低下をゆるやかにできる可能性があります。
微量アルブミン尿とは、ごく少量のタンパク質(アルブミン)が尿に含まれる状態を指します。これは腎臓の初期障害、特に糖尿病性腎症の早期サインとされています。
【参考情報】『Albuminuria (proteinuria)』National Kidney Foundation
https://www.kidney.org/kidney-topics/albuminuria-proteinuria
放置すると腎機能がさらに低下して、食事や薬の制限、通院の負担が増え、日常生活の自由度が小さくなります。
3-3.目・神経・足のトラブル
血管が傷つきやすい糖尿病に高血圧が加わると、目や神経の細い血管に障害が起こりやすくなります。
目の網膜の血管に障害が起こると視力が落ち、末梢神経障害があると足の傷に気づきにくくなり、潰瘍(かいよう)のリスクが高まります。
4.こんな症状が出たらすぐに受診!
日々の血糖値や血圧が安定していても、すぐに受診が必要なサインが現れることがあります。
次のような症状が見られたときは、「少し休めば治る」と思わず、ためらわずに医療機関を受診してください。
・強い胸の圧迫感、冷や汗、肩・あご・背中への痛みの広がり
・片側の手足に力が入りにくい、言葉が出にくい、突然の激しい頭痛
・急な息切れや呼吸の苦しさ(安静にしても改善しない)
・ひどいふらつきや冷汗(低血糖の可能性)
・極端な口の渇きやだるさ(高血糖の可能性)
・非常に高い血圧に加えて、頭痛・吐き気・見え方の異常がある
これらの症状は、心筋梗塞・脳卒中・重度の血糖変動・高血圧緊急症などの前ぶれである場合があります。
起きた時刻・状況・症状の出方をメモして、そのまま受診しましょう。
【参考情報】『もしものときの救急車の利用法 どんな場合に、どう呼べばいいの?』政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/article/201609/entry-7888.html
5.評価と検査:数字は「次の行動」につなげるために
病院では患者さんの体調をチェックするため、さまざまな検査を行いますが、検査は「点数をつけるため」に行うものではなく、これからの行動を決めるために行うものです。
やるべきことを整理するために、検査の基本の項目を押さえておきましょう。
5-1.血糖の評価
空腹時・随時の血糖に加え、HbA1cで過去1〜2か月の平均値を把握します。
【参考情報】『HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)ってなに?』国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ld/endocrinology/hba1c/
境界型糖尿病(糖尿病予備軍)が疑われるときは、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で「隠れた血糖の段差」を確認します。
大切なのは、数値そのものよりも、前回から良くなっているか・悪くなっているかという「変化の方向」です。
5-2.血圧の評価(家庭血圧を軸に)
外来での測定値だけでは、病院で緊張することで血圧が上がってしまう「白衣高血圧」や、逆に病院では正常なのに自宅で測ると数値が上がる「仮面高血圧」を見逃すことがあります。
【参考情報】『白衣高血圧とは・・・。』総合検診推進センター
https://www.ichiken.org/blog/1114-20220603/
【参考情報】『仮面高血圧』奈良県医師会
https://nara.med.or.jp/for_residents/4613/
そのため、家庭での測定を習慣化し、朝と夜に各2回、1〜2週間記録して平均値で判断することが大切です。
<測定のコツ>
・朝:起床後1時間以内、排尿後、朝食と薬の前。椅子で1〜2分安静にしてから2回測定
・夜:就寝前、同様に安静にして2回測定
・毎回、同じ腕・同じ姿勢で測る
・単発の高値に一喜一憂せず、全体の傾向を見る
5-3.合併症のスクリーニング
以下の検査が、糖尿病・高血圧に共通する基本セットです:
・脂質(LDL・HDL・中性脂肪)
・腎機能(eGFR・尿アルブミン)
・肝機能
・眼底検査
・末梢神経の感覚チェック
小さな変化を早めに見つけることで、生活習慣や薬での軽い調整で済ませやすくなります。
5-4.睡眠の評価(必要な人に)
いびき、日中の強い眠気、睡眠中の無呼吸を指摘されたことがある人は、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査、必要に応じて精密検査の順で確認します。
睡眠の質が整うと、血圧や血糖の1日の変動が落ち着くケースも多く見られます。
◆「呼吸器内科で睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができます」>>
6.生活の五本柱:続けられる形に設計し直す
生活習慣を改善する際に大切なのは、「小さく始めて、週単位で積み上げる」ことです。
完璧を目指すより、無理なく続けられる形に整えるほうが、長く効果が続きます。
6-1.体重:まずは3〜6か月で5〜7%減
減量は週0.5kg以内のペースで十分です。
体重だけでなく、ウエストや起床時の体調、階段での息切れも一緒に記録すると、停滞期でも前進を実感できます。
6-2.食事:減らすより「置き換え」と「追加」
塩分は1日6gを目安に、味はだし・酸味・香味で工夫します。
白い主食の一部を全粒穀物や雑穀に置き換え、野菜→たんぱく質→主食の順でゆっくり食べるだけでも、食後血糖値の急上昇を抑えられます。
たんぱく質の量は腎機能に合わせ、主治医と相談して調整しましょう。
6-3.運動:こま切れでも合計150分/週+筋トレ
速歩・自転車・水中ウォーキングなど、関節にやさしい運動から始めます。
食後10〜15分の歩行は最初の一歩として非常に効果的です。
筋トレは脚・背中・胸を中心に、10〜12回×2〜3セットを週2〜3回。負荷よりも頻度と習慣化を優先します。
6-4.睡眠:夜を整えると昼の数値も安定
就寝・起床時刻をそろえ、寝る前の強い光(スマホ・PC)は控えめに。
いびきや日中の強い眠気があれば、睡眠時無呼吸症候群の検査が役立ちます。
夜の眠りが整うと、日中の血圧や血糖の変動も穏やかになります。
6-5.禁煙・飲酒:体の土台を静かに整える
血糖値や血圧の安定にのためには、禁煙は最優先です。
お酒は少量・休肝日・食事と一緒を基本に。数値が不安定な時期は控えめにしましょう。
7.食事の実践:一日の合計で整える
三食すべてを完璧にする必要はありません。一日の合計でバランスをとる方が、無理なく続けられます。
ここでは、朝・昼・夜それぞれの工夫と、外食やつまずいた日の調整方法を整理します。
7-1.三食の整え方(無理のないコツ)
・朝:主食は小盛り、たんぱく質(卵・魚・大豆)と野菜を少しずつそろえる
・昼:主食を控えめにして、副菜(サラダ・温野菜・汁物)を足す
・夜:脂質・塩分を控え、就寝前の間食は避ける
ワンプレートに盛ると、主食:主菜:副菜=1:1:2の配分を守りやすくなります。
汁物は具だくさんで薄味にすると、満足感が出て続けやすくなります。
7-2.外食・コンビニの選び方
・丼ものは定食に置き換え、主食は小盛りにし、サラダや汁物を追加
・サンドイッチは全粒粉を選び、甘い飲料は水やお茶に置き換え
「低糖質」と表示されていても、脂質や塩分が多い製品もあるので注意が必要です。
表示を見て、エネルギー・脂質・食塩相当量をざっくり確認するだけでも、崩れを最小限に抑えられます。
7-3.つまずいた日のリカバリー
早食いや外食で濃い味が続いた日は、次の一食で調整しましょう。
・野菜とたんぱく質を先にとる
・主食は少なめに
・夜は温かい汁物で満足感を確保
・就寝前の間食は避ける
・翌日は水分をしっかりとり、食後10〜15分歩く
挽回の手順を決めておくと、ブレはその日のうちに整えやすくなります。
8.運動の実践:意志より「仕組み」で続ける
運動は「長く・きつく」より、「短く・こまめに・積み上げる」ほうが続きます。
最初の一歩としては、食後10〜15分の歩行がおすすめです。血糖の急上昇を抑え、血圧の安定にも役立ちます。
8-1.運動を日常に取り入れる工夫
・朝の支度前にその場で足踏み3分
・通勤で一駅分歩く、エレベーターは1〜2階分だけ階段を利用
・昼食後に外へ出て10分だけ歩く
・テレビのCM中に椅子からの立ち座り10回(ゆっくり)
「できた日に小さな丸をつける」だけでも習慣化しやすくなります。
ポイントは、負荷よりも頻度、重さよりも継続です。
8-2.有酸素+筋トレの「二刀流」
・有酸素運動:合計で週150分が目安(速歩・自転車・水中ウォークなど)
・筋トレ:脚・背中・胸など大きな筋群を10〜12回×2〜3セット、週2〜3回。自重やチューブで十分
両方を組み合わせることで、血糖・血圧・筋力の維持に効果的です。
8-3.注意が必要なケース
低血糖の既往がある方、血圧が非常に高い方、進行した網膜症や足病変がある方は、運動前に医師と安全な範囲を確認してください。
体調が優れない日は休むことも重要です。
9.薬との基本的なつき合い方
薬は生活の土台です。自己判断で止めたり増減したりせず、医師と相談しながら使いましょう。
9-1.糖尿病薬の考え方
薬は、低血糖のリスク、腎機能、体重、心腎血管リスクを考慮して選びます。
生活習慣の改善と並行させるほど、少ない負担で効果が積み上がり、合併症が予防できます。
9-2.降圧薬の考え方
薬の種類だけでなく、服用の時間帯も効果に影響します。
朝夕の家庭血圧の平均を医師と共有すると、日内リズムに合わせた最適化がしやすくなります。
9-3.飲み合わせ・副作用の相談
市販薬やサプリも含め、すべての服用を医師に伝えましょう。
眠気・咳・むくみ・胃腸症状など、生活に影響する変化は早めに相談することが大切です。
自己判断での中止は、反動で数値を乱すことがあります。
10.よくある質問(FAQ)
Q1. 血糖も血圧も「平均で判断」と書かれていますが、どのくらいの期間で平均を見ればよいですか?
一般的には、血糖は1〜2か月単位(HbA1c)、血圧は1〜2週間単位の平均で判断しますが、季節・体調・睡眠などの要因で数値は変動します。
特に降圧薬を変更した直後や体調を崩した後は、1週間ほど短期的にデータを集め、主治医と傾向を共有するのが望ましいです。
Q2. 家庭で測った血圧が朝と夜でかなり違います。どちらを重視すればいいですか?
糖尿病を合併している場合は「朝の血圧」を重視します。朝の高血圧は心筋梗塞や脳卒中の発症と関係が深く、夜の値が正常でも朝が高ければ治療調整の対象になります。
夜の血圧は、睡眠の質や飲酒・塩分摂取量の影響を見る参考に使います。
Q3. 微量アルブミン尿が出た段階で、薬はすぐに必要ですか?
検査で微量アルブミン尿が確認されても、必ずしも薬の追加が必要とは限りません。まずは塩分制限・体重管理・血圧の最適化を行い、それでも改善が乏しい場合に薬が検討されます
特に「ARB」や「ACE阻害薬」という種類の薬、は腎保護作用を目的に使われることがあります。
Q4. 睡眠時無呼吸症候群の治療を始めると、血糖や血圧はどのくらいで改善しますか?
改善の速度には個人差がありますが、CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)などで安定した睡眠が得られると、1〜3か月で朝の血圧や血糖変動が落ち着くケースが多いです。
特に夜間高血圧や早朝高血圧がある人では、効果が明確に出やすくなります。
11.おわりに
糖尿病と高血圧は、どちらも血管に負担をかける病気なので、二つが重なると影響は掛け算になります。
だからこそ、体重・食事・運動・睡眠・禁煙という生活の五本柱を無理なく整え、あなたに合う薬の使い方を時間帯まで設計することが近道です。
数字は単発ではなく平均で眺め、少しずつ目標に合わせていきましょう。
不安があれば、どうぞ早めにご相談ください。今日の小さな一歩が、数か月後の安心につながります。















